自己都合退職と会社都合退職の違いは、辞めるに至った事情と、それに応じた失業保険の扱いです。正当な理由のない自己都合退職は、2025年4月以降の離職なら給付制限が原則1か月になりました。一般の離職者の所定給付日数は原則90〜150日ですが、特定受給資格者などは年齢と雇用保険の被保険者期間で変わります。
会社が「自己都合」と言っただけで、雇用保険の扱いがすべて決まるわけではありません。離職票に何と書かれ、実際に何が起きたのかをそろえ、ハローワークで確認します。制度は厚生労働省・ハローワークの公式資料を2026年10月23日に確認しました。
会社都合という言葉と、雇用保険の正式な区分を分ける
日常の会話では、自分から辞めることを自己都合、解雇や倒産などで辞めることを会社都合と呼びます。ただし、雇用保険では、特定受給資格者、特定理由離職者、それ以外などの区分で扱いを確認します。単純な二択にすると、病気や契約満了などの事情を見落とします。
ハローワークの特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要では、それぞれの対象を示しています。解雇や倒産だけでなく、退職勧奨、一定の労働条件の相違、契約更新をめぐる事情なども挙げています。
| 確認する区分 |
公式資料にある事情の例 |
読み違えやすい点 |
| 特定受給資格者 |
倒産、一定の解雇、退職勧奨など |
会社の呼び方だけで決まらない |
| 特定理由離職者 |
一定の雇止め、正当な理由のある自己都合 |
全員が同じ給付日数ではない |
| 上記以外など |
正当な理由のない自己都合など |
待期と給付制限は別に確認する |
同じ「退職届を出した」という外形でも、本人が自由に辞めたのか、会社から辞めるよう働きかけられたのかで確認事項は違います。書類の表題だけで済ませず、退職までの話し合いの記録を残します。
受給できるかは離職理由だけでなく、加入期間や、就職する意思・能力があり求職中かなどでも変わります。会社都合なら申請なしで支給される、自己都合なら一切もらえない、という理解はどちらも違います。手続きの全体は失業保険の受給条件と申請で確認できます。
給付制限が短くなっても、離職直後に振り込まれるわけではない
厚生労働省の基本手当・再就職手当のQ&Aでは、正当な理由のない自己都合退職について、退職日が2025年4月1日以降なら給付制限は原則1か月としています。それ以前の退職は原則2か月です。
ただし、離職日から遡る5年間に、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けたことが2回以上ある場合は、給付制限が3か月です。自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇も3か月とされています。自分が原則の対象かは、過去の受給歴を含めて確認します。
待期は、受給手続後に失業の状態にある通算7日間です。給付制限とは別にあります。退職日から自動で待期が始まると考えず、離職票などを受け取った後の手続きも見込みます。失業認定を受けてからの振込もあるため、待期と給付制限を足した翌日が入金日とは限りません。
生活費の見通しでは、「受給の対象になる期間」と「口座に入る日」を別にします。退職した月の給与、健康保険や年金などの支出と、未確定の給付を混ぜないことです。窓口では、受給手続日と初回の認定予定を確認し、未確定の金額を収入として使わないようにします。
教育訓練による給付制限の解除は、対象の確認が先
2025年4月からは、一定の教育訓練等を受ける場合に給付制限が解除される仕組みも始まっています。厚生労働省の教育訓練等を受ける場合の給付制限解除の案内などで、対象となる訓練や必要な手続きを確認します。
何かの講座に申し込めば、すべて給付制限がなくなるという意味ではありません。受講する講座の区分、受講した時期、提出資料をハローワークへ確認します。学費を払う前に、講座の広告の説明と雇用保険の制度を区別して調べます。
解除の対象かが未確認なら、「講座を取るので来月は必ず入金される」と家計を組まないことです。給付制限の扱いが変わっても、失業状態や認定などの要件がなくなるわけではありません。申請先と期限は自分の手続きに沿って聞きます。
一般の離職者の所定給付日数は、被保険者期間で変わる
ハローワークの基本手当の所定給付日数のうち、特定受給資格者等と就職困難者を除く区分は次のとおりです。単位は給付対象の日数です。勤続年数そのものではなく、雇用保険の被保険者であった期間を確認します。
| 被保険者であった期間 |
所定給付日数 |
| 1年以上10年未満 |
90日 |
| 10年以上20年未満 |
120日 |
| 20年以上 |
150日 |
出典:ハローワーク、基本手当の所定給付日数、区分2の表。制度上の日数で、調査年のある統計値や平均・中央値ではない。確認日は2026年10月23日。
同じ表には、特定理由離職者の被保険者期間が1年未満の扱いもあります。通常の自己都合退職で、期間が短くてもこの日数を受け取れると読み替えてはいけません。受給資格の確認と、資格を満たした後の日数の確認は別です。
日数は、退職から何日後にすべての入金が終わるかを示すものではありません。途中で就職する、失業認定の対象が変わるなど、実際の受給の経過は人によって違います。所定給付日数の全日数分を、退職時に一括で受け取る仕組みでもありません。
特定受給資格者などは年齢も合わせて読む
同じ公式表の1の区分を、狭い画面で読めるよう被保険者期間で分けて載せます。対象は特定受給資格者と一部の特定理由離職者で、就職困難者を除きます。数字はすべて所定給付日数です。
| 離職時の年齢 |
1年未満 |
1年以上5年未満 |
5年以上10年未満 |
| 30歳未満 |
90日 |
90日 |
120日 |
| 30歳以上35歳未満 |
90日 |
120日 |
180日 |
| 35歳以上45歳未満 |
90日 |
150日 |
180日 |
| 45歳以上60歳未満 |
90日 |
180日 |
240日 |
| 60歳以上65歳未満 |
90日 |
150日 |
180日 |
出典:ハローワーク、基本手当の所定給付日数、区分1の表。制度上の日数。受給資格を満たすことが前提。
| 離職時の年齢 |
10年以上20年未満 |
20年以上 |
| 30歳未満 |
180日 |
ー |
| 30歳以上35歳未満 |
210日 |
240日 |
| 35歳以上45歳未満 |
240日 |
270日 |
| 45歳以上60歳未満 |
270日 |
330日 |
| 60歳以上65歳未満 |
210日 |
240日 |
出典:同資料の1の表。期間の列は被保険者であった期間。「ー」は原表どおり。
特定理由離職者のすべてに、この手厚い日数が使われるわけではありません。公式ページは、特定理由離職者の範囲1に当たる人について、離職日が2009年3月31日から2027年3月31日までの間なら、特定受給資格者と同様の日数としています。制度の対象期間も確認します。
正当な理由のある自己都合が認められる話と、特定受給資格者と同じ日数になる話は、同じではありません。「特定理由」という言葉だけを見て、長い日数を自分に当てはめないことです。窓口でどの表のどの行と列かを確認します。
給付日数ランキング:同じ被保険者期間で比べる
被保険者期間20年以上の列を、所定給付日数が多い順に並べると次のとおりです。特定受給資格者および対象となる一部の特定理由離職者の制度上の比較で、平均受給日数や実際に受け取った人の順位ではありません。30歳未満の原表は「ー」のため除いています。
| 順位 |
離職時の年齢 |
所定給付日数 |
| 1 |
45歳以上60歳未満 |
330日 |
| 2 |
35歳以上45歳未満 |
270日 |
| 3 |
30歳以上35歳未満 |
240日 |
| 3 |
60歳以上65歳未満 |
240日 |
出典:ハローワーク、基本手当の所定給付日数、1の表、被保険者であった期間20年以上の列。2026年10月23日確認。同じ日数は同順位。
この表を退職時期を決めるための順位には使いません。日数の多さだけで、退職後の生活や再就職のしやすさは決まりません。自分の区分、健康状態、応募の予定を先に整理し、制度上の日数を後から照合します。
退職勧奨に応じたときは、話し合いの経緯を残す
退職勧奨は、会社から辞めるよう働きかけられることです。解雇の通知と、退職への合意を求める話し合いは分けて確認します。「自主退職の書面を出してほしい」と言われても、それまでの働きかけがなかったことになるわけではありません。
ハローワークの範囲の概要の2(11)には、事業主から直接または間接に退職を勧奨されて離職した人が、特定受給資格者の範囲として示されています。ただし、従来から恒常的に設けられた早期退職優遇制度などへの応募は、この項目から除かれています。
退職勧奨だから必ず会社都合、希望退職だから必ず自己都合、と先に決めず、誰が、いつ、何を伝え、本人がどう返答したかを記録します。面談の案内、メール、提示された合意書などを、自分の手元で整理します。
話し合いが続いている段階では、離職理由と退職日、金銭の条件などを一緒に理解します。給付日数が増えると言われたことだけを根拠に退職を承諾しないことです。雇用保険の判断を会社が確約することはできないため、未確認の説明は窓口へ持ち込みます。
病気・介護・雇止めは、事情をまとめずに伝える
特定理由離職者の範囲には、疾病や負傷、家庭事情の急変などによる正当な理由のある自己都合が挙げられています。妊娠、出産、育児に関する項目は受給期間延長措置との関係も示されています。「家庭の事情」とだけ書いて終わらず、離職に至った事情を説明します。
病気などですぐに働けないなら、求職して働ける状態かという基本手当の前提も確認します。離職理由がどう扱われるかと、今すぐ給付を受けられるかは別の質問です。申請を遅らせてよいかを自分で決めず、受給期間の延長などをハローワークへ相談します。
契約満了も、すべて同じ扱いではありません。更新を希望したか、契約時に更新がどう示されていたか、これまでの更新経過などを確認します。雇用契約書や更新通知を保存し、「契約が終わった」という一言の裏にある経緯を伝えます。
自分の事情を公式の項目へ無理に合わせるために、経験していない事実を加える必要はありません。会社の説明と食い違うところ、書類がないところをそのまま伝え、何の資料が必要かを聞きます。
離職票の理由が違うなら、ハローワークへ異議を伝える
離職票が届いたら、離職年月日や賃金の記載だけでなく、離職票2の離職理由を読みます。事業主が記入した事情と、自分が把握している事実が同じかを確認します。離職票1と2の役割は離職票はいつ届くか・どこを見るかでも説明しています。
公式の雇用保険の具体的な手続きは、離職理由に異議があるときはハローワークに申し出るよう案内しています。厚生労働省の離職票の理由に異議がある場合のQ&Aも、事情の説明や証拠の提出について案内しています。会社が修正してくれるまで何もできないと思い込まないことです。
| 事情 |
相談時に整理するもの |
| 退職を勧められた |
面談の経緯、メール、提示書面 |
| 契約を更新してもらえなかった |
契約書、更新の通知、希望を伝えた記録 |
| 賃金や労働条件が説明と違った |
通知書、給与明細、勤怠記録 |
| 病気や家族事情があった |
離職との関係がわかる経緯、窓口が求める資料 |
相談では、結論だけでなく時系列を説明します。証拠をそろえようとして他人の個人情報や業務の秘密を持ち出さず、自分の労働条件ややり取りを中心にまとめます。必要な資料は窓口で確認します。
加入期間と勤続年数は、同じものとして数えない
受給の相談では、職歴と雇用保険に加入していた期間を分けて整理します。正社員だった期間の印象だけで年数を決めず、契約の切替えや離職、以前の給付の受給歴があれば伝えます。所定給付日数の列に使う期間と、自分の履歴書に書いた勤続年数が同じかは窓口で確認します。
在職中にできる準備は、加入に関する書類が手元にあるか、離職後の書類をどこへ送ってもらうかを確認することです。複数の職場の経歴があるなら、入社と退職の時期を順に書きます。勤務先で使っていた連絡先が退職後に使えなくなるなら、自分の連絡先を用意します。
書類の数字と記憶が違うときは、記憶を資料に合わせて書き換えるのではなく、違う箇所を質問します。雇用形態の名称だけから加入の有無を決めないことです。わからない期間を残したままでも、その期間の確認方法を相談できます。
離職理由に納得できない場合も、加入期間の確認は別に進めます。どちらかだけが確認できれば給付の条件がすべて決まるわけではありません。必要な手続きと未確認事項を分けて持っておくと、窓口で何を聞くかがはっきりします。
退職の合意と、雇用保険の判断を一緒にしない
会社との話し合いで退職日や条件が決まることと、ハローワークが離職理由を判断することは別です。「書類にはこう書くので給付もこうなる」と説明を受けたら、その説明を記録し、正式な扱いは窓口で確認します。会社の担当者の見込みを、給付の決定として受け取らないことです。
退職への同意を求める書面には、離職理由以外の条件も載ることがあります。何に同意する文書かを読み、わからない項目を質問します。雇用保険の手続きを急ぎたいからという理由だけで、理解していない退職条件までまとめて承諾しないようにします。
会社へ質問するなら、「退職に至った経緯と離職証明書の記載を確認したい」と具体的に伝えます。事実と違う箇所は、実際のやり取りの日付とともに示します。会社が回答しないときも、返事を待っている事情をハローワークへ伝え、必要な手続きと資料を確認します。
離職理由を争うことと、退職自体を争うことも同じではありません。自分が求めているのが書類の確認なのか、退職合意に関する相談なのかを分けます。窓口で説明しにくいときは、起きたことと希望する対応を短いメモにして持参します。
退職前に、書類と生活費の確認を分けて進める
離職理由の確認と、退職後に必要な手続きは並行して進めます。離職票の発行について会社へ確認し、自分の連絡先や送付先を整理します。書類が届かない、会社と話せないといった事情があるなら、ハローワークへその状況を伝えます。
健康保険や年金の切替え、住民税などの支払いは、基本手当が入るまで待ってくれるとは限りません。給付を受ける見込みだけで、退職後の支出を埋めないことです。手続きの確認には退職後の健康保険と年金も使えます。
次の会社が決まっている人と、求職中の人でも、雇用保険で確認することは変わります。退職を考え始めた時点の予定と、申請時の実際の状態を混ぜず、変化があれば窓口へ伝えます。自分の受給可否と金額は個別に確認します。
次の会社の条件は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる
次の応募では、契約期間と更新条件、試用期間、勤務地と業務の変更の範囲、給与の内訳を求人票で確認します。前の会社で説明と違った点があるなら、同じ項目を面接で具体的に聞きます。退職理由を聞かれた場で、統計の順位を自分の理由に置き換える必要はありません。
厚生労働省のしょくばらぼで採用や離職、労働時間の情報があるかを調べます。公開値には集計年度と対象があるため、会社全体の数字から配属先の事情まで断定せず、面接で補います。
失業保険の日数は、次の会社の働きやすさを示す数字ではありません。退職後の手続きを確認したうえで、求人票の条件と面接の説明を照合します。その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。