国民年金の保険料免除は、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類です。退職して納付が難しいときは、失業した人の前年所得にかかわらず審査する特例があります。退職しただけで自動的に免除になるわけではありません。令和7年度末の全国の全額免除・猶予割合は44.5%ですが、この数字で個人の承認の可否は決まりません。
制度は日本年金機構の免除・納付猶予と追納の公式案内を2026年10月23日に確認しました。退職後は、加入の切り替えと、保険料を払うことが難しいときの申請を分けて進めます。納付書を放置する代わりに、対象となる月と必要書類を窓口で確認します。
退職後は加入の切り替えと免除申請を分ける
会社の厚生年金から外れた後の扱いは、次の会社で厚生年金に入るか、配偶者の扶養の要件を満たすかなどで変わります。国民年金の第1号被保険者になる人は、その加入手続きが必要です。退職した人全員が同じ手続きをするとは限りません。
そのうえで保険料を納めることが難しいなら、免除や納付猶予を申請します。加入したことと、免除が承認されたことは別です。会社を辞めたことを自治体に伝えたから、免除まで完了しただろうとは考えないことです。
| 今の状況 |
先に確かめること |
| 次の会社へ入る |
厚生年金の資格取得日 |
| 配偶者の扶養を考える |
第3号被保険者の要件と手続き |
| 第1号被保険者になる |
加入する月と納付の案内 |
| 保険料の納付が難しい |
免除・納付猶予の申請 |
手元には退職日、次の入社予定日、年金の加入状況をメモします。どの月から国民年金の保険料が必要になるかを確認してから、免除の申請期間を決めます。退職後の手続き全体は健康保険と年金でも整理できます。
日本年金機構の免除の案内は、学生、生活扶助を受ける人、障害年金を受ける人、出産前後の人などを別の制度へ案内しています。どの制度に該当するかを確認し、似た名前の手続きを重ねて自己判断しないことです。
全額免除・猶予割合の都道府県別ランキング
厚生労働省の令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況から、全額免除・猶予割合が高い都道府県を抜き出しました。年度末の第1号被保険者のうち任意加入者を除いた人数が分母です。単位は%、平均保険料や中央値ではありません。
| 順位 |
都道府県 |
全額免除・猶予割合 |
| 1 |
沖縄 |
61.7% |
| 2 |
大分 |
52.9% |
| 2 |
鹿児島 |
52.9% |
| 4 |
福岡 |
51.6% |
| 5 |
大阪 |
51.2% |
| 5 |
宮崎 |
51.2% |
| — |
全国 |
44.5% |
出典:厚生労働省、令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況の統計資料の10ページの参考1、都道府県別全額免除・猶予割合の変化。表番号はありません。令和7年度の列を高い順に並べ、同率は同順位としました。
この集計には、法定免除、申請による全額免除、学生納付特例、納付猶予が入っています。退職者だけの免除率でも、申請した人の承認率でもありません。一部免除の人は、この全額免除・猶予割合の分子には入りません。
全額免除・猶予割合が高い地域ほど、申請すれば通りやすいという意味でもありません。審査は本人や家族の所得、申請期間、失業等の事実などで行います。住む地域の順位で申請を諦めたり、承認を見込んで納付書を捨てたりしないことです。
国民年金の納付率と、この割合の分母も違います。納付率は保険料の月数を使う集計です。免除等になった月をどう扱うかを読まずに、納付率の残りを「払っていない人の割合」とすることはできません。
免除は本人・配偶者・世帯主の所得を審査する
通常の免除は、本人だけでなく配偶者と世帯主の前年所得を確認します。退職して本人の収入がなくなっても、配偶者や世帯主の所得により、希望する免除が承認されないことがあります。
日本年金機構の公式案内の承認基準は次のとおりです。ここでいう所得は、給与の額面年収や今月の手取りとは違います。申請する期間によって審査する年も変わるため、源泉徴収票の支払金額だけを表へ当てはめないことです。
| 免除の種類 |
前年所得の基準となる計算 |
| 全額免除 |
(扶養親族等の数 + 1) × 35万円 + 32万円 |
| 4分の3免除 |
88万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等 |
| 半額免除 |
128万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等 |
| 4分の1免除 |
168万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等 |
出典:日本年金機構、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度、承認基準の所得の基準。確認日は2026年10月23日です。障害者、寡婦、ひとり親などは基準が変わることがあります。
扶養親族等の数を数えるときも、現在同居している人数をそのまま入れるわけではありません。税の申告状況や対象年の情報を確認します。前年所得の証明が確認できない人が家族にいれば、税の申告が必要になることもあります。
実家へ戻ったときや、結婚・離婚などで家族の状況が変わったときは、その事情も窓口に伝えます。自分で世帯主の所得を除いて計算したり、配偶者と別居しているから関係ないと判断したりしないことです。
失業特例は、失業した人の前年所得を通常どおりに数えない仕組み
退職直後は、今の収入が少なくても前年には給与を受け取っています。その前年所得だけで免除の審査をすると、現在の支払い能力とずれが生じます。失業等の特例は、その事情に対応する仕組みです。
日本年金機構は、失業、倒産、事業の廃止などの事実を確認できたとき、失業した人の前年所得にかかわらず免除・納付猶予を受けられる特例を案内しています。本人が失業したなら、その本人の前年所得を通常の所得審査から除外する扱いです。
ただし、本人が失業したことだけで配偶者や世帯主の所得もすべて除外されるわけではありません。免除を申請するなら、ほかの審査対象者の所得等を確認します。家族も失業しているなら、その人について必要な証明を窓口に確認します。
| 雇用保険に入っていた人の書類 |
確認する用途 |
| 離職票のコピー |
失業の事実の確認 |
| 受給資格者証のコピー |
失業の事実の確認 |
| 受給資格通知のコピー |
失業の事実の確認 |
出典:日本年金機構、同案内の失業等による特例免除。書類は案内に挙げられた例で、すべてを重ねて提出するという意味ではありません。
手元に離職票が届いていないときは、そろうまで何もせずに待つのではなく、年金事務所や自治体の担当窓口へ相談します。どの書類で確認できるか、後から提出できるかを、退職日とともに問い合わせます。
失業給付の手続きと免除申請も別です。ハローワークで受給の手続きをしたから、年金の免除も自動で進むわけではありません。受給資格がわかる書類を、年金側の申請に使うと整理します。
過去に同じ失業の事由で申請し、証明書類を添付して確認済みなら、再添付が不要な扱いも案内されています。ただし、申請そのものが不要になる意味ではありません。同じ退職の証明か、新たな退職かを分けて確認します。
納付猶予は世帯主の所得を審査しない
日本年金機構の納付猶予制度は、20歳以上50歳未満で、本人と配偶者の所得が基準の範囲内である人を対象としています。免除と違い、世帯主の所得は審査対象ではありません。
親と同居し、世帯主の所得のため免除が難しい人でも、納付猶予の審査を確認する意味があります。ただし年齢や本人・配偶者の所得等の条件があるため、「親の所得が高ければ猶予が必ず通る」ということではありません。
| 制度 |
所得を確認する人 |
年金額への反映 |
| 保険料免除 |
本人・配偶者・世帯主 |
免除区分に応じて反映 |
| 納付猶予 |
本人・配偶者 |
追納しなければ反映なし |
出典:日本年金機構、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度。納付猶予の所得基準は、全額免除と同じ計算式です。
猶予は支払いを待つ仕組みで、免除と同じ年金額が残る仕組みではありません。承認通知が届いたら、全額免除なのか納付猶予なのか、名前まで読みます。申請をしたという記憶だけで、将来の年金額の扱いまで決めないことです。
学生の人は学生納付特例を確認します。学生でなくなった時期や就職・退職が重なるなら、どの月にどの制度を申請するかを相談します。現在の肩書だけで過去の月まで同じ申請区分にしないことです。
一部免除は減額された保険料の納付まで必要
一部免除の承認を受けても、残りの保険料を払わなければ、その期間を免除期間として扱うことはできません。申請の承認と支払いを一つの作業として確認します。
令和8年度の月額と、平成21年4月以降の免除期間について、全額納付時の年金額に反映する割合は次のとおりです。将来の本人の年金総額を示した表ではありません。
| 承認区分 |
納める月額 |
年金額への反映 |
| 全額免除 |
0円 |
2分の1 |
| 4分の3免除 |
4,480円 |
8分の5 |
| 半額免除 |
8,960円 |
8分の6 |
| 4分の1免除 |
13,440円 |
8分の7 |
| 納付猶予 |
猶予中の納付なし |
追納しなければ反映なし |
出典:日本年金機構、同案内の免除・納付猶予された期間がある場合の年金額。保険料は令和8年度。平成21年3月以前の期間は反映割合が異なります。
4分の3免除とは、4分の3を払うという意味ではありません。免除される部分が4分の3で、残りを納めます。表の支払額は年度で変わるため、古い記事の金額ではなく、承認された年度の納付書で確認します。
承認通知と納付書の対象月が食い違って見えたら、手元の書類を並べて窓口に問い合わせます。申請中に以前の額の納付書が届いたときも、自己判断で破棄せず、今どの納付書を使うかを確認します。
一部免除の残りが払えないなら、そのまま放置せず相談します。審査結果、現在の事情、申請した区分を確認し、今できる手続きを聞きます。「免除の通知が来たから未納にはならない」という思い込みを避けます。
申請は自治体・年金事務所・電子申請で進める
日本年金機構の案内では、住所地の市区町村の国民年金窓口、年金事務所で紙の申請ができます。郵送や電子申請も案内されています。来庁前に必要書類を確認すると、再提出を減らせます。
基本になるのは、基礎年金番号またはマイナンバーによる本人確認と、失業特例を使うなら失業等の事実を示す書類です。番号は問い合わせの本文へむやみに書かず、窓口が指定する方法で提示します。
基礎年金番号がわからないなら、通知書や年金手帳などを確認します。手帳を紛失していても、免除を諦める理由にはなりません。現在の番号の確認方法は年金手帳の扱いで整理しています。
| 手順 |
残しておくもの |
| 加入状況と対象月の確認 |
退職日、加入の切り替えの記録 |
| 必要書類を準備 |
番号確認書類、失業の証明 |
| 申請を提出 |
提出日、申請内容の控え |
| 結果を確認 |
承認区分、対象期間の通知 |
| 一部免除分を納付 |
納付書、支払いの記録 |
電子申請を使うときも、送信だけで承認されたわけではありません。受付や審査結果を確認し、不備の連絡があれば対応します。紙なら控え、郵送なら送付した内容と日付を残します。
窓口では「【退職した月】に退職し、国民年金の保険料の納付が難しいです。失業特例を使う申請期間と、必要な書類を確認したいです」と伝えられます。個人の事情は、公開のコメント欄などではなく担当窓口へ伝えます。
過去の申請と翌年度の申請を忘れない
日本年金機構は、納付期限から2年を経過していない期間、申請時点から2年1か月前までについて申請できると案内しています。過去の未納月がある人も相談できますが、期限直前まで待ってよいという意味ではありません。
日本年金機構の申請期間の案内で示すとおり、免除の年度は7月から翌年6月です。暦年や保険料の年度と同じ感覚でまとめると、申請する期間を落とすことがあります。退職日だけでなく、申請したい月を具体的に伝えます。
原則として申請は毎年度必要です。全額免除や納付猶予では継続審査の仕組みがありますが、失業等による特例で承認された人は翌年度も申請が必要です。前年に承認通知が来たことだけで、その後の月まで免除が続くとは決めないことです。
再就職や家族関係の変化があったときも、必要な届け出を確認します。免除を申請した後に厚生年金へ入るなら、加入記録と対象月がどうなるかを問い合わせます。以前の納付書を持っていることだけでは、現在も第1号の保険料を納める月なのかはわかりません。
未納のまま待つことと、免除の承認は違う
申請をしないまま払わずにいる状態は、免除ではありません。免除や納付猶予が承認された期間は受給資格期間に算入されますが、未納の期間は同じ扱いになりません。払えない事情があるなら、その事情を申請で伝える必要があります。
日本年金機構は、申請が遅れると、障害や死亡が起きたときに障害基礎年金や遺族基礎年金を受けられないおそれがあると説明しています。事故や病気が起きてから過去へさかのぼって申請しても、保険料の納付要件に算入されないことがあります。過去に申請できる期間があるという説明を、いつ申請しても保障が同じという意味に受け取らないことです。
審査中に就職や転居をしたら、結果の通知が届く先や必要な届け出を確認します。承認通知を受け取れないまま、免除されたはずと考えていると、一部免除分の支払いや翌年度の申請を見落とすことがあります。
届いた通知は、承認か不承認かだけでなく、開始月と終了月まで読みます。申請した月の全部が同じ区分とは限りません。わからない月は納付記録と照合し、担当窓口に確認します。
追納は対象月と加算額を確かめて申し込む
日本年金機構の追納の案内では、免除や納付猶予等の承認期間について、追納の承認を受けた月の前10年以内の保険料を納められます。後から支払うには申し込みが必要です。
免除等を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料に加算額が付きます。現在の通常保険料を、過去の対象月数に掛けて追納額を決める計算ではありません。
対象となる月、どの月から払うか、使う納付書を確認します。一部免除の残額を納付していない期間は、追納とは別の確認が必要です。年金記録を見て、全額免除、一部免除、猶予、未納を分けて相談します。
納付猶予は追納しなければ年金額に反映されず、免除は区分に応じて一定割合が反映されます。どちらも、追納すると全額納付時の年金額へ近づける仕組みです。ただし、本人が受け取る年金総額は、ほかの加入期間や受給条件も含めて決まります。
求人票・面接・しょくばらぼで再就職先の加入条件を確かめる
再就職先では、給与だけでなく社会保険の加入条件、加入する時期、所定労働時間を確認します。免除の承認があることと、新しい勤務先で厚生年金に加入する条件は別です。応募する雇用区分について説明を求めます。
面接では「【応募職種】の社会保険の加入時期と、月の所定労働時間を教えてください」と聞けます。入社日と資格取得日の扱いがわかれば、退職から再就職までの年金の切り替えも確認しやすくなります。
厚生労働省のしょくばらぼでは会社の職場情報を確認できます。免除の可否や個人の年金額は年金事務所等で、応募先の賃金・時間・加入条件は会社の書類と回答で確かめます。その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。