休職は、労働基準法などの法律で決まった制度ではありません。会社が就業規則で決める制度です。厚生労働省のモデル就業規則の解説も、休職の定義、休職期間の制限、復職などについて労働基準法に定めはないとしています。休職できる期間、休職中の給料、期間が終わったときの扱いは、会社ごとに違います。
手続きの基本の流れは、主治医の診断書を会社に出し、会社が就業規則にもとづいて休職を命じる形です。復職するときは、主治医が復帰できると判断した診断書を出し、産業医などの意見を聞いて、会社が復職を決めます。
厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査では、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者がいた事業所は10.8%でした。1,000人以上の事業所では90.3%です。休職は、規模の大きい職場ほど身近な手続きになっています。
この記事では、休職を始める手続き、休職中のお金、復職までの5つのステップを順に見ます。資料は2026年10月25日に確認しました。適応障害など心の不調で休むときの順番は適応障害で休職するときで、傷病手当金の条件は傷病手当金の記事で詳しく扱っています。
休職とは:就業規則で決める、会社の制度
モデル就業規則の解説は、休職を、業務外の病気など主に労働者側の事情で長い間働けないときに、社員の身分を保ったまま一定期間、働く義務を免除する扱いと説明しています。会社を辞めるのではなく、籍を残したまま休む制度です。
| 項目 |
法律の決まり |
決める場所 |
| 休職の制度があるか |
法律に定めはない |
就業規則 |
| 休職できる期間 |
法律に定めはない |
就業規則 |
| 休職中の給与 |
法律に定めはない |
就業規則、賃金規程 |
| 期間満了時の扱い |
法律に定めはない |
就業規則 |
| 健康保険の傷病手当金 |
健康保険法で決まっている |
加入している健康保険 |
出典:厚生労働省、モデル就業規則(令和7年12月版)第9条と第43条の解説、協会けんぽの傷病手当金の案内。
休職の制度を設けた会社は、就業規則に書く必要があります。労働基準法89条10号は、すべての労働者に適用される定めをする場合は就業規則に書くとしています。入社のときに示す労働条件にも、休職の定めがあれば含まれます。労働基準法施行規則5条1項11号に「休職に関する事項」があります。
休職を始める手続き:診断書の提出から休職命令まで
モデル就業規則の第9条は、業務外の傷病による欠勤が一定の期間を超え、なお療養を続ける必要があって勤務できないときに、所定の期間休職とする例を示しています。欠勤の期間と休職できる期間は空欄で、会社が数字を入れる形です。
| 順番 |
すること |
確かめること |
| 1 |
主治医に相談し、休む必要があるかの診断を受ける |
診断書に書いてもらう療養の期間 |
| 2 |
上司と人事に休む必要があることを伝える |
連絡の相手と方法 |
| 3 |
診断書を会社に出す |
提出先、原本か写しか、会社の様式の有無 |
| 4 |
欠勤や有給休暇で休み始める |
休職の前に欠勤の期間が要るか |
| 5 |
会社が休職を命じる |
休職の始まる日、満了日、休職中の連絡方法 |
出典:厚生労働省のモデル就業規則第9条と、職場復帰の手引きの第1ステップをもとに整理。会社の決め方で順番は変わります。
モデル就業規則の例では、条件に当てはまったときに会社が「休職とする」形で始まります。就業規則に「欠勤が【〇か月】を超えたとき」とある会社なら、その期間は欠勤や有給休暇で休み、期間を超えてから休職になります。有給休暇は、本人が時季を指定して取る休暇です。
休職の通知を受けたら、始まる日、満了日、休職中の給与、社会保険料の払い方、会社との連絡の頻度を書面で確かめます。口頭だけで済ませると、満了日を勘違いしたまま期間が過ぎてしまいます。
第1ステップで会社が伝えること
職場復帰支援の手引きの第1ステップでは、診断書が出されたら、管理監督者が人事労務の担当者に連絡し、休業する労働者に必要な事務手続きと復帰支援の手順を説明します。安心して療養できるように、次のような情報を伝えるとしています。
- 傷病手当金などの経済的な保障
- 不安や悩みの相談先
- 公的または民間の職場復帰支援サービス
- 休業の最長期間
この4つを会社から聞けていなければ、休職が始まる前に自分から聞きます。とくに休業の最長期間は、満了したときの扱いとつながるため、最初に確かめておく項目です。
休職中のお金:給与・傷病手当金・社会保険料
モデル就業規則の第43条3項は、休職期間中は原則として賃金を支給しない例を示しています。解説では、休職の期間を有給にするか無給にするかは各事業場で決め、就業規則に定めるよう求めています。
給与が出ない期間の生活を支える制度が、健康保険の傷病手当金です。協会けんぽの案内では、業務外の病気やけがで仕事に就けず、連続する3日間を含み4日以上休んだときに、4日目から支給されます。支給期間は、支給を始めた日から通算して1年6か月です。
| 項目 |
協会けんぽの案内の内容 |
| 支給の条件 |
業務外の病気やけがの療養のため、仕事に就けないこと |
| 待期 |
連続する3日間。有給休暇や公休日も含む |
| 支給の始まり |
4日目以降の、仕事に就けなかった日 |
| 支給期間 |
支給を始めた日から通算1年6か月 |
| 1日あたりの額 |
直近12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3 |
| 給与が出たとき |
傷病手当金より少なければ差額が出る |
出典:協会けんぽの傷病手当金の案内。健康保険組合に入っている人は、その組合の案内を見ます。
協会けんぽの計算例では、標準報酬月額の平均が17万円の人は、17万円 ÷ 30で約5,670円、その3分の2で1日3,780円です。自分の額は、加入している健康保険の窓口で確かめます。
休職中も会社に在籍しているため、健康保険と厚生年金の保険料の扱いも確かめます。給与が出ない月に保険料を会社に振り込むのか、復職後の給与から引くのかは、会社によって決め方が違います。
休職期間と勤続年数
モデル就業規則の第55条2項は、退職金の勤続年数を数えるときに、会社の都合による場合を除き、休職の期間を含めない例を示しています。勤続年数の数え方は、退職金の額につながります。退職金規程で、休職期間をどう扱うかを見ておきます。
休職が終わるとき:復職か、期間満了か
モデル就業規則の第9条2項は、休職期間中に休職の理由がなくなったときは、原則として元の職務に戻すとしています。元の職務に戻すことが難しい場合は、ほかの職務に就かせることがあると書かれています。
3項は、業務外の傷病で休職し、期間が満了してもなお治らず働けない場合は、期間満了で退職とする例です。解雇ではなく、就業規則の定めにもとづく退職として扱う形です。
| 休職が終わるとき |
モデル就業規則の例 |
| 期間中に回復した |
原則として元の職務に復帰。難しければほかの職務 |
| 満了しても治らず働けない |
期間満了で退職 |
出典:厚生労働省、モデル就業規則第9条。実際の扱いは会社の就業規則によります。
退職すると、会社の健康保険から外れます。協会けんぽの案内では、退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日の前日に傷病手当金を受けているか受けられる状態なら、退職後も引き続き受けられます。期間満了の退職が近づいたら、退職後の健康保険の入り方と合わせて確かめます。任意継続と国民健康保険の選び方は退職後の健康保険と年金で整理しています。
復職までの流れ:職場復帰支援の手引きの5つのステップ
厚生労働省と労働者健康安全機構の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、休業の始まりから復帰の後までを5つのステップに分けています。
| ステップ |
内容 |
働く人がすること |
| 第1 |
病気休業の開始と休業中のケア |
診断書を出し、休職中の連絡方法を決める |
| 第2 |
主治医による職場復帰可能の判断 |
復帰の意思を伝え、復帰可能の診断書を出す |
| 第3 |
職場復帰の可否の判断と復帰支援プランの作成 |
産業医などとの面談で、体調と働き方を話す |
| 第4 |
最終的な職場復帰の決定 |
会社から復帰日と就業上の配慮の通知を受ける |
| 第5 |
職場復帰後のフォローアップ |
通院を続け、体調の変化を上司や産業医に伝える |
出典:厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(改訂版の紹介パンフレット)の第1〜第5ステップ。
主治医の「復帰できる」と、会社の「復帰させる」は別
手引きは、主治医の診断は日常生活での回復の程度で判断していることが多く、職場で求められる仕事の力まで回復したという判断とは限らないとしています。そのため、産業医などが主治医の判断と職場で必要な力を照らし合わせ、意見を述べることが大切だとしています。
手引きは、復帰できるかの判断基準の例として次の点を挙げています。主治医の診断書を出す前に、自分でも当てはまるかを見ておきます。
- 十分な意欲がある
- 通勤時間帯に一人で安全に通勤できる
- 決まった勤務日と時間に、続けて働ける
- 業務に必要な作業ができる
- 作業の疲れが翌日までに十分回復する
- 睡眠と目覚めのリズムが整い、昼間に眠気がない
- 業務に必要な注意力と集中力が戻っている
通勤の練習や、勤務時間に合わせた生活のリズムづくりは、復帰の前から自分で始められます。うまくいかない点があれば、主治医との面談で伝えます。
第3ステップでは、復帰日、上司による就業上の配慮、配置転換の必要、フォローアップの方法などを、職場復帰支援プランにまとめます。業務量の調整や段階的な配慮も、このプランで決めます。
試し出勤の制度
手引きは、正式な復帰の前に試し出勤などの制度を設けると、早い段階から復帰の準備を始められるとしています。例として3つを挙げています。
- 模擬出勤:勤務時間と同じ時間帯に、デイケアなどで軽い作業をしたり、図書館などで過ごしたりする
- 通勤訓練:自宅から職場の近くまで通勤経路で移動し、一定時間過ごして帰る
- 試し出勤:本来の職場などに、試験的に一定期間続けて出勤する
制度があるかどうか、あるなら賃金や事故のときの扱いは、会社で決めておくべきこととされています。手引きは、作業に会社が指示を出したり、作業が業務に当たったりする場合は、労働基準法などが適用される場合があるとしています。
治療と仕事の両立を支援する事業所の割合:規模別
厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査は、10人以上の民営事業所に、産業保健の取組を聞いています。休職や復職に関わる取組として、病気を抱える人の治療と仕事の両立支援と、メンタルヘルス対策の割合を規模別に並べます。
| 事業所規模 |
治療と仕事の両立支援 |
メンタルヘルス対策 |
| 1,000人以上 |
75.4% |
99.8% |
| 500〜999人 |
70.2% |
100.0% |
| 300〜499人 |
56.1% |
100.0% |
| 100〜299人 |
40.7% |
98.6% |
| 50〜99人 |
35.5% |
92.9% |
| 30〜49人 |
29.0% |
79.4% |
| 10〜29人 |
23.0% |
65.9% |
| 計 |
26.7% |
72.9% |
出典:厚生労働省、令和7年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況、第5表。産業保健の取組を行っている事業所(全体の87.9%)を100とした割合(複数回答)。両立支援はがん、精神障害などの私傷病を抱える労働者が対象。
治療と仕事の両立支援に取り組む事業所は、1,000人以上では75.4%ですが、10〜29人では23.0%です。全体では26.7%で、令和6年の35.4%より下がりました。小さい会社に勤める人ほど、休職と復職の手順を就業規則で自分から確かめる意味があります。
同じ調査の第1表では、休業した労働者がいた事業所の割合も規模で大きく違います。1,000人以上は90.3%、100〜299人は50.2%、10〜29人は4.6%でした。
休職の前に確かめることの一覧
| 確かめること |
見る場所 |
| 休職の制度があるか、対象になるか |
就業規則の休職の条文 |
| 休職の前に必要な欠勤の期間 |
就業規則 |
| 休職できる期間と満了日 |
就業規則、会社からの通知 |
| 休職中の給与と社会保険料 |
賃金規程、人事の担当者 |
| 傷病手当金の申請の方法 |
加入している健康保険、人事の担当者 |
| 休職中の連絡の相手と頻度 |
会社からの通知 |
| 復職の手続きと必要な診断書 |
就業規則、職場復帰支援プログラム |
| 満了したときの扱い |
就業規則 |
就業規則を見られないときは、人事に写しをもらうか、閲覧できる場所を聞きます。労働基準法106条は、会社に就業規則を社員に周知するよう求めています。
休職や退職の扱いに納得できないときは、総合労働相談コーナーで相談できます。コーナーは、都道府県の労働局や労働基準監督署の中にあります。相談するときは、就業規則の写し、会社からの通知、診断書の写し、やり取りの記録を持っていきます。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる
休職の制度は会社ごとに違い、法律で一律に決まっていません。応募の段階で、病気になったときの制度まで聞くのは気が引けるかもしれませんが、長く働くための大事な条件です。
求人票では、福利厚生や休暇の欄に、病気休暇や休職の制度が書かれているかを見ます。書かれていなければ、内定後の条件確認で「私傷病で休むときの休職制度と期間を教えてください」と聞きます。労働条件通知書と就業規則で、休職の条文を確かめます。
厚生労働省のしょくばらぼでは、掲載している会社の平均勤続年数や、有給休暇の取得状況を調べられます。休みを取りやすい職場かどうかを数字で見てから、応募先を選びます。