解雇予告手当は、原則として30日前の予告に足りない日数分以上の平均賃金です。予告なしで解雇するなら30日分以上、10日前に予告するなら20日分以上を会社が支払います。労働基準法20条のルールで、2026年10月23日に厚生労働省の公式案内を確認しました。金額は月給だけでは決まりません。予告の日付、解雇日、平均賃金の算定期間をそろえて確かめます。
急に辞めるよう言われても、その場で退職届を書く前に、会社が何を求めているのかを確認します。会社からの解雇なのか、退職への同意を求める退職勧奨なのか、契約満了なのかで扱いが違います。自分の受給の可否や金額は、契約と通知の内容を持って相談します。
30日前に予告するか、不足日数分を支払う
厚生労働省の労働契約の終了に関するルールで、予告と手当の関係を確認できます。会社には、原則として解雇の予告期間を確保するか、それに代わる平均賃金を支払う義務があります。
予告と支払いを組み合わせることもできます。手当を払った日数分だけ、30日の予告期間を短縮できます。「働いた日が少ないから短くてよい」「月末まで在籍しているから足りる」という判断ではありません。何日前に解雇を予告したのかを見ます。
| 予告から解雇までの日数 |
不足する日数 |
支払う手当の原則 |
| 30日 |
なし |
予告不足による手当は不要 |
| 20日 |
10日 |
平均賃金の10日分以上 |
| 10日 |
20日 |
平均賃金の20日分以上 |
| 予告なし |
30日 |
平均賃金の30日分以上 |
出典:厚生労働省、労働契約の終了に関するルール、解雇予告の説明。労働基準法20条の仕組みを整理した表です。
この日数は出勤日数ではありません。休日を抜いた勤務日数で不足日数を計算しないようにします。通知を受けた日と解雇日があいまいなら、メールなどに残っている日付を先に確認します。受け取った通知の日付と、実際に説明された日が違うときも、その違いをメモします。
予告期間中の通常の給与と解雇予告手当も別です。会社から支払予定額を示されたら、最後の給与、未払いの残業代、退職金、解雇予告手当のどれなのか、内訳を求めます。合計額だけでは、予告不足に対する支払いが入っているか判断できません。
平均賃金は直前の賃金総額を暦日数で割る
平均賃金は労働基準法12条の計算です。基本の式は、算定すべき事由が発生した日以前3か月間の賃金総額を、その期間の総日数で割った額です。賃金締切日があれば、原則として直前の締切日を基準にさかのぼります。解雇予告では、予告した日を基準に算定することを確かめます。
神奈川労働局の平均賃金についてに、算定期間、賃金の範囲、除外する期間の説明があります。給与明細の基本給だけを足す計算ではありません。算定対象の賃金に当たる手当や時間外労働の賃金も確認します。
総日数とはカレンダー上の日数です。出勤した日だけで割ると、原則の計算とは違う額になります。月給を30で割るだけでも、直前の期間の賃金総額と暦日数を確認したことにはなりません。
臨時に支払われた賃金、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金などは算定から除かれます。賞与という名称だけで処理せず、支払う間隔と性質を見ます。毎月支給されるものと、年の一定の時期に支給されるものを、明細上で分けておきます。
業務上の負傷や病気による療養のために休業した期間、産前産後休業期間、使用者の責めに帰すべき事由による休業期間、育児・介護休業期間などは、日数と賃金を除いて計算する扱いがあります。休みがあった人は、給与が少なかった月をそのまま入れず、どの休業だったかを伝えます。
時給や日給には最低保障がある
日給、時給、出来高払いなどは、原則の式だけでは平均賃金が低くなることがあります。そのため、その賃金総額を実際に労働した日数で割った額の60%という最低保障と比較し、高いほうを使います。
月給部分と時給部分が混じる給与も、全額を同じ式に入れるとは限りません。一定期間で決まる部分の平均と、日給・時給などの部分に対する最低保障を組み合わせる扱いを確かめます。最低保障は「どんな給与でも最後に60%にする」という意味ではありません。
原則の平均賃金に60%を掛けて解雇予告手当を減らすのも誤りです。平均賃金を決める段階の最低保障と、別制度である休業手当の割合を混同しないようにします。解雇予告手当の不足日数には、こうして求めた平均賃金を掛けます。
計算例は前提をそろえて比べる
次は制度を理解するための仮定です。実在する人の給与や、統計上の平均額ではありません。算定期間に除外する休業がなく、賃金の全額が算定対象に入るものとします。端数の出ない条件で、計算の流れだけを示します。
| 仮定する項目 |
月給のみの例 |
時給のみの例 |
| 直前3か月の賃金総額 |
900,000円 |
360,000円 |
| 算定期間の総日数 |
90日 |
90日 |
| 実際の労働日数 |
最低保障の比較は省略 |
30日 |
| 原則の平均賃金 |
10,000円 |
4,000円 |
| 時給部分の最低保障 |
対象外 |
7,200円 |
| この例で使う平均賃金 |
10,000円 |
7,200円 |
| 10日前予告の手当 |
200,000円 |
144,000円 |
| 予告なしの手当 |
300,000円 |
216,000円 |
計算根拠:厚生労働省、退職、解雇、雇止めなどの平均賃金の説明、労働基準法12条・20条。金額・日数は計算用の仮定です。
月給の例は900,000円を90日で割って10,000円。時給の例は360,000円を90日で割ると4,000円ですが、360,000円を労働した30日で割り、60%を掛けると7,200円です。高い7,200円を使うため、予告不足の20日分は144,000円になります。
自分の計算では、最初に期間を確定させます。次に対象賃金を拾い、除外期間を確認し、最低保障が必要かを見ます。最後に予告不足の日数を掛けます。給与明細の総支給額にいきなり日数の割合を掛けると、この途中の確認が抜けます。
会社の計算書に違いがあっても、すぐにどちらが正しいと決めず、使った期間、日数、賃金項目を並べます。「計算が違う」だけでなく「この手当が算定対象から外れている理由を知りたい」と聞くと、確認する点がはっきりします。
試用期間や短期契約には適用除外がある
厚生労働省の退職、解雇、雇止めなどは、労働基準法21条による例外を示しています。パート、アルバイト、契約社員という呼び名ではなく、契約期間や使用された期間を確認します。
| 原則として予告の適用除外となる人 |
除外のままではなくなる条件 |
| 日日雇い入れられる人 |
1か月を超えて引き続き使用されたとき |
| 2か月以内の期間を定めて使用される人 |
定めた期間を超えて引き続き使用されたとき |
| 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される人 |
定めた期間を超えて引き続き使用されたとき |
| 試の使用期間中の人 |
14日を超えて引き続き使用されたとき |
出典:厚生労働省、退職、解雇、雇止めなど、解雇手続の例外、労働基準法21条。
試用期間が長く設定されていても、その期間全部が予告不要になるわけではありません。入社した日、実際に働き続けた期間、契約の定めを確かめます。試用期間の扱いは試用期間中の条件と本採用でも整理しています。
この表は解雇予告の手続の例外です。解雇の理由を問わず自由に辞めさせられるという意味ではありません。試用中に本採用しないと伝えられたときも、予告の問題と、判断の理由を分けて確認します。
懲戒解雇と即時解雇は違う
懲戒解雇は、会社が懲戒処分として行う解雇です。即時解雇は、予告期間を置かずに解雇することです。前者は処分の性質、後者は時期と手続の話です。「懲戒だから今日で終わり、手当もない」と名称だけで決まりません。
厚生労働省は、懲戒解雇について、あらかじめ就業規則に事由が定められている必要があると説明しています。会社がどの規定の、どの事実を理由にしているかを確認します。口頭で処分名だけを伝えられたら、解雇理由の証明書を請求して説明を残します。
予告も手当も不要にする労働基準法20条の例外は、天災事変などで事業継続が不可能になったとき、または労働者の責めに帰すべき事由による解雇で、所轄労働基準監督署長の認定を受けたときです。この除外認定と、先ほどの21条の適用除外は別です。
会社が「本人に責任がある」と言っただけで、除外認定が済んだことにはなりません。認定の有無を確認します。ただし、認定の有無だけで解雇そのものの有効・無効まで決まるわけでもありません。判断する問題を混ぜず、予告と手当、懲戒理由、解雇の有効性を分けます。
相談内容の順位では解雇も多い
厚生労働省の令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況にある、民事上の個別労働関係紛争の相談内容を件数順に並べました。すべての相談内容を含む順位です。対象期間は令和7年度、単位は件、平均や中央値ではなく延べ件数です。
| 順位 |
相談内容 |
件数 |
| 1 |
その他の労働条件 |
59,647件 |
| 2 |
いじめ・嫌がらせ |
55,614件 |
| 3 |
自己都合退職 |
38,386件 |
| 4 |
その他 |
34,209件 |
| 5 |
労働条件の引き下げ |
33,368件 |
| 6 |
解雇 |
32,651件 |
| 7 |
退職勧奨 |
26,022件 |
| 8 |
雇止め |
15,775件 |
| 9 |
雇用管理等 |
14,046件 |
| 10 |
出向・配置転換 |
12,682件 |
| 11 |
募集・採用 |
2,643件 |
| 12 |
採用内定取り消し |
2,316件 |
出典:厚生労働省、令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況の参考第1表、令和7年度の行。2026年10月23日確認。
同じ相談で複数の内容を数えるため、相談した人数ではありません。解雇予告手当の受給件数や不当解雇の認定件数でもありません。労働基準法などの違反に関する相談とは集計を分けています。法定のパワーハラスメントに当たる相談も、すべてがこの表のいじめ・嫌がらせに入るわけではありません。
解雇、退職勧奨、雇止めが別項目なのは、契約を終える経緯が違うからです。相談するときも「退職になった」とだけ伝えず、誰が終了を申し出たか、更新を希望したか、いつ終了すると言われたかを説明します。
通知・給与明細・就業規則を持って相談する
会社の説明と合わないときは、解雇通知、雇用契約書、給与明細、勤務の記録、就業規則の該当箇所をそろえます。手元にないものは「ない」と伝えて相談できます。全部の書類がそろうまで連絡を待つ必要はありません。
確認用のメモは「【予告を受けた日】に【終了予定日】で解雇すると説明された。理由は【説明された内容】。手当については【会社の説明】」と書きます。自分が退職に同意したかどうかも分けて残します。書類の内容が理解できないまま、合意したことにしないようにします。
予告手当の不払いなど労働基準法の問題は労働基準監督署に、解雇に納得できないという民事上の紛争は総合労働相談コーナーなどに相談します。窓口の使い分けと持参する資料は労働基準監督署への相談方法で確認できます。
退職後の手続に使う離職票も、解雇予告手当の計算書とは別の書類です。離職理由が実際の経緯と合っているかを確認し、疑問があればハローワークに伝えます。離職票の受け取り方と離職理由の確認も合わせて確認します。
退職への同意と、解雇理由の確認を分ける
会社から退職届や合意書を渡されたら、何のための書類かを確認します。解雇通知を受け取ることと、自分から辞める意思を示すことは同じではありません。解雇なのか退職勧奨なのかがはっきりしないまま、書類の表題だけを見て記入しないようにします。
会社に残ることを求めたいのか、手当の支払いを確認したいのか、終了日を調整したいのかも、相談時に分けて伝えます。すべてをひとつの要求にまとめると、会社とどこまで話が進んだかがわかりにくくなります。自分が納得していない点を、短い言葉で並べておきます。
解雇理由の証明書には、会社がどの理由で解雇したのかを書いてもらいます。会社が口頭で述べた理由と書面の内容が違うなら、そのまま相談先へ伝えます。証明書を受け取ったこと自体を、解雇の理由に同意したという意味で扱わないよう、やり取りの内容も残します。
計算書では日付と賃金項目を照合する
会社が示す金額を確認するときは、算定期間の最初と最後の日、対象となった賃金、総日数、最低保障の比較、不足する予告日数を順に見ます。給与明細が複数あれば、明細ごとに対象期間を確認します。振込日だけで算定期間を決めると、締切日との関係を見落とします。
担当者に聞く文は「【計算書の日付】の算定について、対象期間と対象賃金の内訳、最低保障の比較の有無を確認したいです」とします。手当の名称が同じでも、算定に含めたかどうかがわからなければ、除外した理由も聞きます。自分で直した試算は、会社の確定額と区別して保存します。
退職金が支払われるという説明があっても、それだけで予告不足に対する手当が含まれると判断しません。最後の給与から控除されるものがあるなら、その根拠と内訳も別に確認します。受け取る総額だけを比較せず、何の支払いが残っているかを整理してから相談します。
相談で確認したい点を短く書く
相談の前に、何を解決したいかを短くまとめます。「予告が不足しているか知りたい」「平均賃金の算定に疑問がある」「解雇の理由に納得できない」は、確認する資料や説明が違います。同じ出来事でも論点を分けて伝えれば、窓口の案内に沿って話を進められます。
電話で話すときは、契約期間の有無、予告を受けた日、終了予定日、会社の支払いの説明から伝えます。その後に、理由や自分の希望を説明します。最初からすべての経緯を細かく話すより、日付と契約の状況が先にわかる形にします。
相談後には、案内された窓口、次に必要な資料、会社に確認する点をメモします。回答を受けた事実と、まだ判断されていない点を区別しておくと、会社と再び話したときの食い違いを整理できます。書面が増えたら、受け取った日付も付けてまとめます。
会社に確認する資料を受け取ったら、元の通知や明細を上書きせず保存します。追加の説明がどの日付のものかを残せば、最初の説明と何が違うかを相談先へ伝えられます。
次の会社は契約終了の条件と実際の数字を確かめる
次の応募先では、契約期間、試用期間、更新基準、退職・解雇に関する規定を確認します。面接で「長く働けますか」と聞くだけでは、会社がどの条件で雇い、どう更新を決めるかはわかりません。労働条件通知書の内容と、面接での説明を照らし合わせます。
公開されている働き方の数字は、厚生労働省のしょくばらぼで確認します。採用と離職の人数、勤続、残業などは対象年度と対象者を見ます。数字が載っていないことだけで会社の良し悪しは決めず、配属先や募集する雇用形態について聞く項目に残します。
手当の法律を知ったうえで、次はその会社の契約と運用を確かめます。その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。