給料や残業代が支払われないときは、事業場を管轄する労働基準監督署に相談します。賃金請求権の時効は支払期日から5年に延長され、当分の間は3年です。令和7年度の総合労働相談件数は1,198,010件でしたが、これは幅広い労働問題の相談を数えたもので、未払い賃金だけの件数ではありません。相談先を確かめ、給与明細と実際の勤務記録をそろえます。
制度と窓口の公式案内は2026年10月23日に確認しました。会社への問い合わせの記録があれば持参しますが、資料が完璧になるまで相談を遅らせないことです。いつの賃金が、いつ支払われる約束で、何が支払われていないのかを先に整理します。
労働基準監督署と総合労働相談コーナーを使い分ける
労働基準監督署は、労働基準法などに関する監督指導を行う機関です。給与の未払い、時間外労働の割増賃金が出ないなど、法違反が疑われることを相談します。問題がある事業場の場所を伝え、管轄と相談方法を確認します。
厚生労働省の都道府県労働局・労働基準監督署の所在地一覧から、各地域の窓口を探せます。本社の住所だけでなく、自分が働く支店や事業所の場所も伝えます。受付の時間、予約や持参資料は窓口で確かめます。
厚生労働省の総合労働相談コーナーの案内は、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引き下げ、いじめ・嫌がらせなど、幅広い労働問題を対象にしています。無料で、電話や面談による相談ができます。どこに相談するか決められないときにも使えます。
| 困っていること |
相談先の整理 |
| 給料・残業代の未払い |
労働基準監督署に法違反の疑いを相談 |
| 労働条件の引き下げや退職の争い |
総合労働相談コーナーで制度と窓口を確認 |
| 職場のいじめ・嫌がらせ |
総合労働相談コーナーなどで担当窓口を確認 |
| 違反が疑われる事業場の情報を伝えたい |
労働基準関係情報メール窓口 |
同じ建物に窓口があっても、手続きは同じではありません。事情を説明したうえで、相談なのか、法違反を申告する手続きなのか、他の制度で解決を求めるのかを確認します。「窓口へ連絡した」だけで、すべての手続きが済んだとは考えないようにします。
相談すれば必ず振り込まれるとは限らない
労基署への相談や申告と、民事上の請求を進めることは分けて考えます。相談したその日に会社から支払いがある、行政が本人の代わりに必ず回収する、といった保証はありません。未払いの事実と、どの手続きを希望するかを相談先で整理します。
契約の解釈や労働者性などが争われることもあります。会社の説明と自分の認識が違う点は、感情的な評価でまとめず、契約の記載、勤怠、支払いの事実として伝えます。必要に応じて案内された専門の相談先へつなぎます。
都道府県別ランキング:総合労働相談件数の上位
厚生労働省の令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況から、都道府県別の総合労働相談件数を多い順に並べました。対象期間は令和7年4月から令和8年3月です。単位は件で、相談を受け付けた件数を数えています。人数、平均値、法違反の認定件数ではありません。
| 順位 |
都道府県 |
総合労働相談件数 |
| 1 |
東京 |
171,056件 |
| 2 |
大阪 |
144,871件 |
| 3 |
愛知 |
77,768件 |
| 4 |
神奈川 |
68,783件 |
| 5 |
埼玉 |
52,750件 |
| — |
全国計 |
1,198,010件 |
出典:厚生労働省、令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況別添2の5、都道府県別の件数一覧(資料内16ページ)。上位5都府県を抜粋。
この順位は、働く人の数や事業所数で割っていません。上位の地域ほど法違反が多い、相談すれば解決しやすい、といった順位ではありません。給料が未払いになった人が珍しいかを判断する数字でもありません。
全国計も、労基署に寄せられた賃金未払いの相談だけを集めたものではありません。窓口の区別を知らないまま、総合労働相談の数字を「未払い被害者数」と言い換えないことです。自分の相談では件数の多さより、賃金の支払期日と記録を優先します。
給与明細と振込履歴で未払いの範囲を分ける
給料が全く振り込まれていないのか、一部しか支払われていないのか、残業代だけが不足しているのかを分けます。最初から総額を確定できなくても、どの月のどの項目がおかしいかがわかれば相談の出発点になります。
| 確認する資料 |
確かめること |
| 労働条件通知書・契約書 |
基本給、手当、支払日、勤務時間 |
| 給与明細 |
総支給、控除、残業手当の項目 |
| 振込履歴 |
実際に受け取った日と金額 |
| 就業規則・給与規程 |
締切、支払い、手当の条件 |
| 会社とのやり取り |
問い合わせた内容と返答 |
給与明細の総支給額と口座の入金額の差が、すべて未払いとは限りません。税や社会保険料などの控除も確認します。明細に書かれた控除自体に疑問があるなら、その項目と説明を分けて相談します。給与の約束がどこに書かれているかは労働条件通知書の見方でも確認できます。
会社が「支払った」と説明しているのに入金が見当たらないときは、対象月、支払日、支払方法を聞きます。別の月の精算や前払金が混ざっているなら、会社の説明と資料を並べます。確認できない金額を推測して未払いに足さないようにします。
残業代は実際に働いた時刻と業務の内容を残す
残業代を確かめるには、何時まで職場にいたかだけでなく、どの時間に何の仕事をしたかが必要です。始業、終業、休憩、勤務日、休日の作業を日ごとに整理します。会社の勤怠記録と違うときは、どこが違うかを示します。
タイムカードや勤怠システムの記録が手元にないときも、勤務予定表、業務メール、指示のメッセージ、作業記録などを整理します。パソコンの記録は仕事の実態を確認する材料になりますが、ログインしていた時間がすべて労働時間になる、と自分で断定しないことです。
手書きのメモには、記録した日、勤務した日、開始・終了時刻、休憩、仕事の内容を書きます。後で思い出した部分は、そのことがわかるように分けます。当時の記録と後日の記憶を同じ確実さで扱わないようにします。
固定残業代がある会社でも、何時間分のどの割増賃金を含むか、超えた分をどう精算するかを確認します。計算を始める前に必要な項目は残業代の計算方法で整理できます。計算に使う基本給や手当が不明なら、不明としたまま資料を持って相談します。
記録の原本と自分の整理表を分ける
スクリーンショットを加工して見やすくする前に、元の記録を保管します。日付や前後のやり取りが切れていると、いつの指示か確認しづらくなります。自分が付けた説明は、原本の文章と区別します。
相談に関係しない顧客情報や他の社員の個人情報を大量に集める必要はありません。会社の権限を越えてシステムへアクセスせず、自分が適法に確認できる記録を残します。提出する範囲に迷う資料は、窓口に扱いを相談します。
退職を予定している人は、私物の連絡先に届く書類と会社のアカウントでしか見られない記録を区別します。アクセスできなくなってから何が足りないかを探すより、手元にある資料と足りない資料の一覧を先に作ります。
会社への確認は対象月と支払項目を明示する
社内に確認できる窓口があるなら、支払いの事実を短く尋ねます。連絡が危険だったり難しかったりするときに、社内のやり取りを済ませないと外部へ相談できないと考える必要はありません。今までの経緯を外部窓口へ伝えます。
確認の例文は「【対象月】の給与について、【支払予定日】時点で【未入金/残業手当の不足】を確認しています。【確認した資料】を添えますので、計算内容と支払予定を回答してください」です。金額が未確定なら、その部分は未確定と書きます。
口頭で返答されたときは、日時、内容、担当窓口を記録します。「来月払う」と言われたなら、いつ、何月分を、どの項目まで払う予定かを確認します。説明が変わったときも、元の記録を消して上書きせず経緯を残します。
「本人が残業を認めた」「すべて精算済み」といった文書へ署名を求められ、内容を理解できないときは、署名前に相談します。受け取った書類の控えも保管し、未確認のまま自分の請求範囲を決めないことです。
賃金請求権の時効は支払期日ごとに確認する
厚生労働省、未払賃金が請求できる期間などが延長されていますで、2020年4月以降に支払期日が来る賃金について、消滅時効期間を5年に延長しつつ、当分の間は3年と説明しています。2026年10月23日に確認した公式案内もこの記載です。
起点は、原則として賃金の支払期日です。退職した日から過去の給与をまとめて数える説明ではありません。毎月の支払期日を並べ、古いものがどれかを確かめます。残業代も、いつ支払うべきだった賃金かを確認します。
退職金請求権の時効は従来から5年で、同じ資料でも変更なしとされています。毎月の給与と退職金を混ぜて、どちらも一律3年としないことです。何の賃金・給付を求めているかを最初に整理します。
労基署への相談や情報提供をしただけで、民事上の時効の進行が当然に止まるとは考えないようにします。どの手続きが必要かは、支払期日と会社の対応を示して相談します。期限が近い可能性があるなら、その点を最初に伝えます。
資料がなくて金額を計算できないことと、時効を放置してよいことは別です。記録を集めながら窓口へ連絡し、次に何を確認するかを決めます。ネットの説明から本人の請求可能額や期限を断定しないことです。
相談時は経緯を短い時系列にする
相談の最初は、「給与の未払いについて相談したい」「残業代の支払いに疑問がある」と用件を伝えます。会社全体の評判や人間関係の説明から始めるより、対象となる賃金と支払期日を先に示すほうが確認が進みます。
| 整理する項目 |
記入の形 |
| 対象となる仕事 |
【勤務期間・雇用形態・業務】 |
| 約束された支払い |
【対象月・支払期日・給与項目】 |
| 実際の支払い |
【入金日・金額・未確認の部分】 |
| 会社の返答 |
【問い合わせ日・返答内容】 |
| 手元にある資料 |
【契約書・明細・勤怠・連絡記録】 |
| 希望する確認 |
【未払いの判断・申告手続き・他の窓口】 |
相談先へは、事業場の情報など、確認に必要な事実を正確に伝えます。この記事の記入例は実在の事業者や個人の情報を含まない形ですが、実際の窓口で事業場を特定できなければ確認が進みません。提出すべき情報は窓口の案内に従います。
相談後は、次に集める資料、会社へ確認する事項、別の相談先へ持っていくものをメモします。進捗を問い合わせたいなら、どの窓口でどの手続きを扱っているかを確認します。メール情報提供の窓口へ送ったものと、個別相談の記録を混ぜないようにします。
メール窓口は情報を伝えるために使う
厚生労働省の労働基準関係情報メール窓口は、労働基準法などの違反が疑われる事業場の情報を受け付けます。情報は立入調査対象の選定など、監督署や労働局の業務の参考に使われます。
同じ案内には、受け付けた情報に関する照会や相談には答えられないと記載されています。送れば個別に回答が返る、調査が必ず始まる、本人の未払い額を回収してくれるという窓口ではありません。個別に相談したいときは、電話や面談の窓口を使います。
厚生労働省、情報提供のポイントでは、事業場の正確な情報、法違反の特定につながる具体的な情報を求めています。いつ、どの部署で、どのような勤務と支払いがあるのか、何の資料で確認できるかを伝えます。
匿名の選択は何を事業場へ明かしてよいかの確認
公式資料にある選択肢は、匿名で情報の内容を明らかにしてよい、匿名で情報提供があったことのみ明らかにしてよい、匿名のうえ情報提供があったことも明かさないでほしい、の3つです。
内容を明かせるかどうかは、監督署が調査するときの方法に関わります。資料には、改ざんされた勤怠記録だけでは実態の特定が難しいことなども説明されています。どの選択肢が自分の目的に合うかを、通知の範囲を読んで選びます。
連絡先を記入したときは、内容を詳しく確認するため後日監督署から連絡することがあります。公式資料は、その連絡用の個人情報を事業場を含む第三者へ開示しないと説明しています。ただし、出来事の内容から会社が情報提供者を推測しないとまで保証しているわけではありません。
資料が不足しているときは不足の理由も伝える
相談前にすべての給与明細や勤怠を集められるとは限りません。会社のシステムを見られない、明細が交付されていない、退職後に連絡が取れないなど、足りない理由をまとめます。「証拠がない」とだけ言うより、どの記録が会社側にあるかを説明できます。
手元の資料で裏付けられる期間と、記憶だけの期間を分けます。記録が途切れた部分を、前後の月と同じ勤務だったはずと推測して埋めないことです。相談先に、不明な範囲をどう確認できるかを聞きます。概算を作るとしても、実際に確認した数字とは区別します。
| 資料の状態 |
相談時の伝え方 |
| 一部の明細だけある |
残っている対象月と欠けている月を示す |
| 勤怠は会社側にある |
記録方法と確認できなくなった経緯を示す |
| 指示は口頭が多い |
日時、業務、当時のメモを分けて整理する |
| 金額がまだ計算できない |
不明な賃金項目と勤務期間を示す |
会社から後日資料を受け取ったら、相談用に作った整理表と照合します。数字が違っていたときは、修正した箇所がわかる形にし、古い表のまま別の窓口へ持っていかないようにします。資料の更新日を付けておくと、どの版で相談したかを追えます。
未払いの対応と退職・生活の相談を分けて進める
給料が出ないと、請求だけでなく、働き続けるか、次の支払日に生活費が足りるかも問題になります。相談の場では、未払いの対象期間に加え、今も勤務中か退職済みか、直近で困っている点を伝えます。必要な別の窓口を案内してもらいます。
会社から支払予定を聞いても、入金が確認できるまでは未入金の記録を残します。一部が支払われたなら、何月分の何の支払いかを確認し、残っている分と分けます。支払われたことにして総額を書き換えたり、逆に一部の入金を無視して全額未払いと扱ったりしません。
退職を選ぶかどうかと、すでに働いた賃金の支払いは別の確認です。感情的なやり取りで資料を処分せず、契約、勤怠、給与、会社の返答を保管します。次の応募を始めるときも、相談の記録と応募書類を分け、前の職場の顧客情報などを持ち込まないようにします。
次の会社では給与と勤怠の運用を具体的に聞く
未払いへの対応と、次の職場選びは分けて進めます。今の請求を整理するための資料を保管し、応募先では給与の締切・支払日、勤怠の記録方法、固定残業代を超えた分の精算方法を確認します。見分ける項目はブラック企業の特徴でも整理しています。
面接では「残業代は出ますか」だけで終わらず、「勤怠はどのように記録し、給与明細では何の項目で精算しますか」と聞けます。説明と通知書の記載が違うなら、入社を決める前に確認します。会社を調べる順番は企業研究のやり方で確認できます。
公的な相談件数から応募先の支払い実態はわかりません。給与の条件と残業の記録を読み、その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。