36協定を結んだ職場でも、法定時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。特別条項があっても年720時間以内で、休日労働を含めた単月は100時間未満、2〜6か月の平均は80時間以内に抑える必要があります。厚生労働省の時間外労働の上限規制わかりやすい解説に示された、一般の労働者に適用するルールです。
「36協定があるので残業できます」という説明だけでは、働く時間はわかりません。自分の業務が協定の対象か、何時間までと定めているか、実際に何時間働いているかを順に確認します。制度と資料は2026年10月23日に確認しました。
36協定は、法定の時間を超えて働かせるための手続き
労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間・週40時間以内です。この法定労働時間を超える労働や、法定休日の労働をさせるには、使用者が労働者側と書面で協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。根拠が労働基準法36条なので、36協定と呼ばれます。
労働者側は、過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ過半数代表者です。会社が一方的に代表者を指名して済むものではありません。過半数代表者の選出方法も含め、厚生労働省の解説資料で確認できます。
協定は、会社全体の名前だけを見て終わりにせず、自分の事業場のものを読みます。同じ会社でも、勤務する事業場や対象業務が違うと、確認する協定が異なることがあります。派遣で働く人も、どの勤務時間の取り決めが自分に適用されるかを担当者に確認します。
協定の届出と、個人に残業を命じられる根拠も分けて考えます。36協定は法定時間外労働を可能にする手続きですが、個々の労働契約や就業規則に何が書かれているかという問題まで、それだけで解決するわけではありません。
原則の上限は、月と年の両方で見る
月45時間・年360時間は、どちらかを選ぶ数字ではありません。月の上限を守っていても、年間の合計が協定の枠を超えれば問題になります。対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制では、原則の限度時間は月42時間・年320時間です。
| 確認する枠 |
原則の限度時間 |
| 通常の月の枠 |
月45時間 |
| 通常の年の枠 |
年360時間 |
| 対象の変形制の月の枠 |
月42時間 |
| 対象の変形制の年の枠 |
年320時間 |
出典:厚生労働省、時間外労働の上限規制わかりやすい解説、4ページ・14ページ。変形制の欄は対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制
協定には、法律の限度より短い時間を定めることもあります。法律の上限内なら、協定に書いた時間を超えてよいという意味ではありません。会社から説明された数字と協定の数字が違うときは、どの条項に基づく説明なのかを確認します。
年の合計を数える起算日も見ます。協定の1年が暦年と一致するとは限りません。毎月の給与明細だけを見て、年初からの残業を足しても、協定の対象期間とずれていれば正しく比べられません。月の締め日と協定の計算期間も確認します。
特別条項でも、すべての上限を守る
特別条項は、臨時的な特別の事情があるときに、原則の限度時間を超えるための取り決めです。単に忙しい、慢性的に人が足りないという説明で、いつも原則を超えるための制度ではありません。厚生労働省の解説は、通常予見することのできない業務量の大幅な増加などに限定するよう示しています。
| 確認するもの |
特別条項でも超えられない枠 |
| 時間外労働の年合計 |
年720時間以内 |
| 時間外と休日労働の月合計 |
単月100時間未満 |
| 時間外と休日労働の平均 |
2〜6か月平均80時間以内 |
| 原則の限度時間を超える月 |
年6か月まで |
出典:厚生労働省、時間外労働の上限規制わかりやすい解説、4ページ。一般則の表であり、業務別の特例は後の節で説明
複数月平均は、都合のよい期間だけを選びません。連続する2か月、3か月、4か月、5か月、6か月について、すべての平均を確認します。今月だけ短くなっても、その前の月までの働き方によっては平均の上限に近づいていることがあります。
「100時間未満」と「100時間以内」も違います。前者なので、ちょうど100時間なら上限を守ったことにはなりません。数字を短く書き換えるときに、この違いを落とさないことです。複数月平均の80時間は「以内」です。
特別条項を読むときは、延長できる時間だけでなく、発動する事情、手続き、健康や福祉を確保する措置も見ます。誰がいつ説明するのか、長時間労働後にどのような対応があるのかまで確認すると、書類の数字と職場の運用をつなげられます。
法定休日の勤務は、枠によって入れ方が違う
年720時間の枠は時間外労働の合計です。法定休日労働は入りません。ただし、単月100時間未満と複数月平均80時間以内の枠には、時間外労働と法定休日労働を合わせて入れます。「休日出勤は残業とは別だから関係ない」という説明では足りません。
ここでいう休日労働は、労働基準法上の法定休日の労働です。会社が休みとしている日がすべて法定休日とは限りません。週休のうち、どの日を法定休日にしているかは、就業規則や勤務予定で確認します。
所定休日の勤務でも、その週の労働時間によって法定時間外労働になることがあります。勤怠画面の「休日出勤」という表示だけで枠を決めず、会社がどの区分で集計しているかを聞きます。制度の名前より、時間をどう分けているかを見るほうが確実です。
月の残業が少なく見えるのに休日出勤が続いているなら、両方を足した時間を尋ねます。上限の計算用の数字と、給与明細の手当の名称が一致しないこともあるため、表示名だけで判断しないようにします。
産業別ランキングで見る所定外労働時間
厚生労働省の令和8年8月分毎月勤労統計調査の速報から、事業所規模5人以上、就業形態計の所定外労働時間を多い順に並べました。対象は常用労働者で、パートタイム労働者も含む1人当たりの月平均です。中央値でも、残業をした人だけの平均でもありません。
| 順位 |
産業 |
月平均 |
| 1 |
運輸業、郵便業 |
20.4時間 |
| 2 |
電気・ガス業 |
16.9時間 |
| 3 |
情報通信業 |
14.8時間 |
| 4 |
製造業 |
12.8時間 |
| 5 |
金融業、保険業 |
12.7時間 |
| 6 |
不動産・物品賃貸業 |
12.2時間 |
| 7 |
建設業 |
12.0時間 |
| 8 |
学術研究等 |
11.7時間 |
| 9 |
鉱業、採石業等 |
11.5時間 |
| 10 |
その他のサービス業 |
9.4時間 |
| 11 |
卸売業、小売業 |
6.9時間 |
| 12 |
複合サービス事業 |
6.5時間 |
| 13 |
生活関連サービス等 |
6.2時間 |
| 14 |
飲食サービス業等 |
5.9時間 |
| 15 |
教育、学習支援業 |
5.8時間 |
| 16 |
医療、福祉 |
4.6時間 |
| ー |
調査産業計 |
9.2時間 |
出典:厚生労働省、毎月勤労統計調査、令和8年8月分結果速報、第2表。産業名は資料の略称。2026年10月23日確認
所定外労働時間は、事業所の就業規則などで定めた時間の外に実際に働いた時間です。36協定で数える法定時間外労働と同じ定義ではありません。所定労働時間が法定労働時間より短い職場では、その間の勤務も所定外に含まれます。
平均が原則の上限より短いことを理由に、個人の長時間労働がないとは判断できません。パートが多い産業と、一般労働者が多い産業でも数字の出方が変わります。就業形態をそろえた見方は残業時間の平均と業界別の数字で確認できます。
この表は速報で、後に確報が公表されます。応募先を比べるときは、業界の月平均と、会社の年間平均や繁忙月を混ぜないようにします。比較する期間が違うと、忙しさの違いより季節の違いが表に出るためです。
建設・運転・医師は、業務ごとの特例を確認する
建設事業、自動車運転業務、医師などでは、2024年4月から上限規制が適用されています。厚生労働省の業務別の上限規制の案内で、一般則と特例を分けて説明しています。
建設事業は原則として一般則が適用されます。ただし、災害時の復旧・復興の事業には、単月と複数月平均の規制に特例があります。建設業だから常に特例なのではなく、自分が従事する事業の内容を確認します。
自動車運転業務は、特別条項を設けたときの時間外労働が年960時間以内です。一般則の単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間を超えられる年6か月までという規制は適用されません。別に拘束時間や休息期間の基準もあるため、年の残業上限だけでは勤務を評価できません。
医師には適用される水準に応じた上限や健康確保措置があります。職種名だけで一般の特別条項と同じ表を当てはめず、勤務先がどの水準の対象なのかを聞きます。兼業先の勤務も関係するため、自分で本務先だけの数字を見て完結させないことです。
新技術・新商品等の研究開発業務にも一般の上限規制の適用除外があります。役職名や業界名だけで対象を決めず、実際の業務と適用制度を確認します。例外に当たるか迷うときは、勤務記録と契約書を持って労働基準監督署へ相談します。
協定の周知場所と自分の勤怠を見比べる
福井労働局の36協定の案内資料では、労働者への周知が必要とされています。掲示や備え付け、書面の交付など、実際に内容を読める方法で確認します。存在を口頭で聞いただけなら、実際に読める場所を尋ねます。
自分の業務に適用される36協定を確認したいです。最新の協定と特別条項の掲載場所、対象期間の起算日を教えてください。
読む順番は、対象業務と有効期間、月と年の延長時間、特別条項、休日労働、健康確保措置です。自分に関係する欄を特定してから勤怠記録と比べます。前年度の協定を見ていると、現在の説明と食い違うことがあります。
勤怠記録は、出勤と退勤の時刻だけでなく、休憩、休日勤務、打刻後の作業も確認します。会社の集計に疑問があるなら、日時と実際の作業を自分でも記録します。業務資料を無断で持ち出す必要はなく、自分の勤務の事実を残します。
固定残業代と上限規制は別に確認する
固定残業代の対象時間が書かれていても、その時間まで必ず残業するという意味ではありません。固定残業代は賃金の計算の話で、36協定は法定時間外労働などをさせるための手続きと上限の話です。片方があるからもう片方を省けるわけではありません。
求人票では、基本給と固定残業代の額、対応する時間、超過分の扱いを分けて読みます。給与明細で残業代が支払われていても、上限を超えた働かせ方が適法になるわけではありません。逆に、上限の範囲内であっても、必要な割増賃金の支払いは別に確認します。
計算の手順は残業代の計算方法で整理しています。時間の記録とお金の記録を同じ月で並べると、何を会社に確認すべきかがはっきりします。
面接では、残業の集計範囲を具体的に聞く
会社が公表する残業時間には、全社員の平均、正社員だけの平均、対象部署だけの平均などがあります。同じ月平均でも対象が違えば比較できません。「平均残業」という見出しだけをメモせず、誰を数えた数字かを聞きます。
繁忙期の勤務も、平均とは別に確認します。仕事が集中する月があるなら、いつ、どんな業務が増えるか、人数をどう調整するかを尋ねます。忙しさの理由と対応が具体的に説明されれば、自分がその働き方を続けられるかを考えやすくなります。
「残業は申請制」という説明も、時間が少ないことの証拠ではありません。申請前の作業、承認されなかった時間、持ち帰りの作業をどう把握しているかを確認します。承認された時間だけが記録されるのか、実際に働いた時間をすべて記録するのかは違う質問です。
フレックスタイム制や変形労働時間制の職場では、日々の退勤が遅いことだけで法定時間外を計算できません。どの制度を使い、どの期間で集計しているかを聞きます。ただし、制度があることを理由に勤務記録を付けなくてよいわけではありません。
上限に近い働き方が続いたら、時間と体調を一緒に相談する
法律の上限は、健康上問題なく働けることを保証する数字ではありません。上限より短くても、睡眠不足や強い疲労が続き、仕事や生活に支障があるなら、体調の相談を先延ばしにしません。勤怠の確認と、休養や勤務調整の相談は同時に進められます。
相談のメモは、勤務した日、始業と終業、休憩、休日勤務、体調の変化を分けます。忙しかったという印象だけでは、どの時期に何が起きていたかが伝わりません。会社に伝えた日と、その後に何が変わったかも残します。
上司に相談しにくいときは、人事や産業保健の担当など、社内の別の窓口を確認します。協定を見せてもらえない、勤務記録が実態と違う、上限を超える勤務を求められるといった問題は、事実を整理して労働基準監督署へ相談できます。
厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、労働条件や職場でのトラブルを相談できます。相談するときは「違法だと思う」という結論だけでなく、確認できた勤務実績、会社の説明、手元の協定の内容を伝えます。
会社への確認文は、対象月を入れて書く
【対象月】の勤怠について確認したいです。記録されている時間外労働と法定休日労働の内訳、適用される36協定の限度時間を教えてください。打刻後に行った【作業内容】の時間も、記録方法を相談したいです。
このように対象月と作業を入れると、抽象的な不満の話で終わりにくくなります。返答があったら、集計の修正が必要か、業務量を調整するか、担当者と予定を確認します。説明を受けたことと、実際に処理されたことを分けて見ます。
残業を減らす説明は、仕事の配分まで確認する
会社が残業を減らす方針を出していても、締切や担当する仕事が同じなら、現場では何を変えるかが問題になります。退勤時刻の指示だけでなく、業務の削減、担当変更、締切の調整を誰が決めるのかを聞きます。
仕事が終わらないときに本人だけで抱え込む運用なら、上限に近づく前に相談する方法も必要です。どの時点で上司へ報告し、優先順位を変えられるかを確認します。特別条項を使うかどうかの話と、今日の作業量をどう調整するかの話を分けます。
採用時に増員の予定を説明されたなら、どの業務を分担するための採用かを聞きます。人が入る予定という説明だけで、残業の実績がすでに下がったとは扱いません。求人票の見込みと、現在の部署の実績を並べて確認します。
その会社の実際の残業を、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる
応募先では「36協定あり」で確認を終えず、配属予定部署の平均、最も忙しい月、休日勤務、特別条項の運用を聞きます。平均だけなら、忙しい担当者の働き方が見えません。対象者と集計期間までそろえて尋ねます。
配属予定の【部署】について、直近の月平均の残業時間と、最も多かった月の実績を教えてください。法定休日の勤務が含まれる数字かも確認したいです。
求人票の固定残業代、面接で聞いた勤務実績、厚生労働省のしょくばらぼに掲載された残業時間を並べます。数字が違えば、部署、雇用形態、期間、休日勤務の範囲を確認します。自分が働く部署の数字と説明がそろってから、続けられる働き方かを判断します。