変形労働時間制は、会社が労働日と労働時間をあらかじめ定め、一定期間を平均して原則週40時間以内に収める制度です。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査の原表16では、採用企業割合は60.2%でした。この統計はフレックスタイム制も含みます。シフトで長く働く日があっても、残業がすべてなくなるわけではありません。日、週、対象期間の順に、予定と実績を比べます。
制度は2026年10月23日に厚生労働省の公式資料で確認しました。シフト制については、2026年6月19日改正の最新の留意事項を使います。求人に「変形労働時間制」とだけあれば、単位、対象期間、勤務予定の通知方法を会社に聞いてください。
月単位・年単位・週単位の違い
日によって勤務時間が違う、土曜日も働く月がある、というだけで制度を判別することはできません。会社がどの制度を、どの規則や協定に基づいて使っているかを確認します。
| 制度 |
時間をならす期間 |
主に確認するもの |
| 1か月単位 |
1か月以内 |
就業規則等または労使協定、各日の予定 |
| 1年単位 |
1か月超、1年以内 |
労使協定と届出、年間等の勤務予定 |
| 1週間単位 |
1週間 |
対象業種・規模、労使協定と届出 |
| フレックス |
3か月以内の清算期間 |
就業規則等、労使協定、本人が決める時刻 |
出典:厚生労働省、労働時間・休日の制度案内と、令和7年12月版モデル就業規則、兵庫労働局の週単位の制度解説。
フレックスは、一定の総労働時間の範囲で、労働者が始業・終業を決める仕組みです。会社が勤務表で各日の時刻を決める変形制とは、誰が時間を決めるかが違います。詳しくはフレックスの仕組みで確認できます。
週単位の非定型的な変形制は、どの会社でも使える制度ではありません。兵庫労働局の週単位の解説では、労働者30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店が対象で、1日の上限は10時間と説明しています。月単位の制度と混ぜて読み取らないでください。
月単位は各日・各週の時間を前もって決める
1か月単位は、1か月以内の期間を平均して週の法定労働時間に収めます。厚生労働省のモデル規則PDFは、労使協定または就業規則等により定める制度として説明しています。労使協定で導入するなら届出も必要です。
特定の日に長い所定時間を設定できる代わりに、各日、各週の所定時間を事前に具体化します。繁忙日が終わってから、その日の予定を長く書き換え、後日の短い勤務で帳尻を合わせる仕組みではありません。
対象期間の始まりも確認します。暦の月初と給与の締日、変形期間の起算日が一致しているとは限りません。勤怠画面の月合計だけを見ると、制度上の対象期間とは違う範囲を比較してしまうことがあります。
原則は週40時間ですが、一部の小規模事業場には週44時間の特例があります。どの会社でも44時間を使えるわけではありません。自社の対象となる業種・規模と制度を確認せず、長いほうの枠を当てはめないでください。
予定時間の総枠を満たしていることと、各日に生じた法定時間外があるかは別の確認です。会社から「月の合計は収まっている」とだけ言われたときは、日と週の判定をどうしたかも聞きます。
年単位は年間等の繁閑に合わせて設定する
1年単位では、1か月を超え1年以内の対象期間を定めます。名称が1年単位でも、必ず暦年の1月から12月までを使うという意味ではありません。対象期間と起算日を労使協定で確認します。
労使協定では、対象の労働者、対象期間と起算日、労働日と労働日ごとの時間などを定め、労働基準監督署へ届け出ます。会社のカレンダーがあるだけで、必要な制度の手続きがすべて済んでいるとは判断できません。
厚生労働省の年単位のQ&Aは、対象期間を1か月以上の期間ごとに区分する方法も説明しています。その場合でも、後の期間の労働日と時間をいつでも自由に決めてよいわけではなく、所定の事前特定の手続きが必要です。
年単位には、日・週の労働時間、労働日数、連続して働く日数などの制限もあります。年平均だけを満たせば、忙しい時期に上限なく働かせられる制度ではありません。実際の勤務表が協定の条件に沿っているかを見ます。
年度の途中で入社や退職をした人などは、対象期間の一部だけ働いた時間の清算も問題になります。年間カレンダーを一部だけ切り取ると、繁忙期の長い勤務だけが残ることがあるためです。入退社時に、対象期間と在籍期間の扱いを給与担当へ確認してください。
残業は日・週・期間の順に数える
厚生労働省の年単位のQ&Aは、法定時間外を3段階で判定すると説明しています。月単位も、日・週・変形期間を順に確認する考え方で、すでに時間外として数えた部分を重ねて数えないことが必要です。
| 順番 |
比べる範囲 |
時間外になる部分 |
| 1 |
1日 |
8時間超を予定した日はその予定超、それ以外は8時間超 |
| 2 |
1週 |
40時間超を予定した週はその予定超、それ以外は40時間超 |
| 3 |
対象期間 |
期間全体の法定総枠を超える部分 |
出典:厚生労働省、変形労働時間制に関するQ&A、Q3-2。原則週40時間の制度について整理。週では日で数えた時間外を、期間では日・週で数えた時間外を除く。
実際に働いた時間は、拘束時間から実際の休憩を除いて確認します。勤務表に休憩が印刷されていても、その時間に業務をしていたなら、単に予定どおり控除した数字だけでは実態を確認できません。
日の判定では、短い予定を延ばしたときに注意する
厚生労働省のQ&Aの区分を、予定表に当てはめて読みます。8時間を超える所定時間を適法に定めてある日は、その定めた時間を超えた部分が日の法定時間外です。所定が8時間以下の日は、所定時間そのものではなく、8時間を超えた部分で判定します。
つまり、短い勤務予定の日に予定を延ばしたら、その延長が全部法定時間外になるとは限りません。ただし、法定時間外でなくても、契約上の所定時間を超えて働いた賃金の確認は必要です。割増が付くかと、働いた分の賃金が必要かを分けてください。
別の日に早く帰ったからといって、すでに日の判定で発生した法定時間外を消すことはできません。日ごとの予定と実績が必要なのは、その違いを見落とさないためです。
週の判定は日で数えた部分を重ねない
日ごとには大きく延びていなくても、勤務日が増えると週の枠を超えることがあります。40時間を超える所定時間を定めた週はその予定、そうでない週は40時間を基準に確認します。
この段階では、日の判定で法定時間外にした部分を除きます。同じ時間を日と週で二重に数えると、時間外が実際より多く出てしまいます。会社へ計算を聞くときは、合計値だけでなく、日で数えた分と週で追加した分を分けてもらいます。
週の区切りも会社の定めを確認します。自分の予定表で月曜から日曜を足した数字と、制度上の週が異なっていると、説明が噛み合いません。起算日を先にそろえてから照合します。
期間の判定は最後に追加分を探す
対象期間全体では、法定の週労働時間に対象期間の暦日数を掛け、7で割った総枠と比べます。数式で書くと、法定の週労働時間 × 対象期間の暦日数 ÷ 7 です。月ごとに暦日数が違えば、同じ総枠にはなりません。
日や週で数えた時間外を除いても、期間の総枠を超える部分が残るなら、その部分を追加します。期間での追加分がなくても、先に日や週で数えた時間外までなくなるわけではありません。
給与担当へは「日ごとの時間外、週で追加した時間外、期間の総枠で追加した時間外を分けて確認したい」と伝えます。自分だけで判定が難しいときは、勤務表、実績、協定の対象期間、給与明細をそろえて相談してください。
公式の勤務例で予定と実績の見方を確認する
厚生労働省のモデル就業規則28ページには、月単位の変形制の枠内で、変形期間を2週間とした勤務例があります。各日の所定労働時間は7時間15分で、前の週は6日勤務、次の週は5日勤務という組み方です。
資料に載る週の所定時間は、前の週が43時間30分、次の週が36時間15分です。ここで前の週の所定時間が40時間を超えているという理由だけで、その超えた部分すべてを残業とするのは、この制度の読み方とは違います。適法に定めた予定と、実際に働いた時間を比べる必要があります。
日の判定では、この例の所定は8時間以下なので、8時間を超えて働いた部分を確認します。週の判定では、前の週はあらかじめ定めた43時間30分、次の週は40時間を基準にし、日で数えた時間外を除いて追加分を見ます。
最後に、変形期間全体の総枠と実績を比較し、日・週で数えた時間外と重複しない追加分を確認します。資料の勤務例は予定の組み方を示すもので、実際に何時間残業したかまで掲載した事例ではありません。自分の予定表と比べるときも、所定時間と実績を別々の欄へ書いて確認します。
勤務表と給与明細を確認するときも、この順番を使えます。会社から月の残業合計だけを渡されたら、元になった日別実績、週の区切り、対象期間、日・週で除いた時間を確認します。合計だけでは、計算のどこに食い違いがあるかを探せません。
短いシフトの日の延長と休憩の記録を分ける
勤務表では短時間勤務でも、引き継ぎや片付けで実際の終業が延びることがあります。所定の終業時刻と、業務を終えた時刻を分けて記録します。勤怠の入力欄が予定時間で自動入力されるなら、実績に直す方法を確認します。
休憩中に呼び出される仕事では、どの時間にどの対応をしたかも控えます。予定された休憩が全部取れたことにすると、実働時間が短く集計されてしまいます。休憩を取り直したなら、その時刻も記録します。
シフトが減った日と、会社の指示で早く帰った日も、単に同じ短時間勤務として片付けないようにします。確定した勤務の変更なのか、休業に当たる扱いなのかを確認します。自分の希望で休んだ日と、会社の都合で働けなかった日は、事情を分けて残してください。
残業代の確認で必要なのは、求人に載る平均だけではなく、自分の勤務に使う制度と実績です。勤務表の変更前と変更後が確認できれば、予定の特定と実績の記録を混同せず、給与担当への質問も具体的にできます。
シフト制という呼び方だけでは制度は決まらない
シフト制は勤務日の配置や勤務時刻の決め方を表す言葉です。変形労働時間制は法定労働時間の扱いに関する制度です。会社がシフトと呼んでいても、通常の労働時間制度を使っていることがあります。
厚生労働省のシフト制の案内で扱うのは、契約時に労働日や時間を確定せず、一定期間ごとのシフト表で初めて具体化する働き方です。あらかじめ日数や時間が決まった交替勤務は、この留意事項での定義から除かれます。
自分の勤務先がどちらの意味で使っているかを確認します。留意事項の対象から外れる交替勤務だから、労働時間や賃金の法律が適用されないということではありません。定義の違いと、労働者の権利を混同しないでください。
最新のシフト制留意事項で通知と変更を確認する
厚生労働省の留意事項は2026年6月19日に改正されました。留意事項PDFは、契約時に明示する条件、勤務表の作成や変更、年次有給休暇などを説明しています。
契約時点で始業・終業が決まっている日について、単に「シフトによる」と書くだけでは足りません。決まった時刻や一定期間のシフト表を示すなどの対応が必要です。休日の曜日が未定でも、どう休日を設定するかという基本の考え方は確認します。
| 項目 |
会社に聞くこと |
| 希望の提出 |
いつまでに、どの方法で伝えるか |
| 勤務表の確定 |
通知日と通知方法は何か |
| 確定後の変更 |
申出の期限、双方の合意の方法は何か |
| 最低限の勤務 |
最低の日数や時間を定めているか |
| 休暇の申請 |
シフト提出と有給申請をどう分けるか |
確定後の労働日や時間の変更は、基本的に労働条件の変更に当たり、双方の合意が必要と説明されています。会社の都合で勤務がなくなったときも、契約で約束した内容や休業手当の扱いなど、別に確認する点があります。
シフト変更に合意したことだけで、変形制の事前特定の要件まで満たすとは限りません。勤務の変更自体の合意と、時間外労働の法的な計算を分けます。本人の希望で入れ替えたときも、残業の計算を省略しないでください。
業種別の変形労働時間制採用率ランキング
令和7年就労条件総合調査の原表16から、大分類の採用企業割合を高い順に並べました。対象は同調査の常用労働者30人以上の民営企業、令和7年1月1日現在の制度です。単位は%。フレックスタイム制を含む、何らかの変形労働時間制を採用する企業の割合です。
| 順位 |
業種 |
採用企業割合 |
| 1 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
80.9% |
| 2 |
複合サービス事業 |
73.1% |
| 3 |
医療・福祉 |
67.7% |
| 4 |
製造業 |
67.0% |
| 5 |
鉱業・採石業・砂利採取業 |
65.7% |
| 6 |
宿泊業・飲食サービス業 |
65.4% |
| 7 |
教育・学習支援業 |
64.5% |
| 8 |
運輸業・郵便業 |
63.7% |
| 参考 |
調査産業計 |
60.2% |
出典:厚生労働省、令和7年就労条件総合調査、原表16、統計表CSVの採用企業の列。大分類の上位8業種を掲載。
この割合は労働者の適用率ではなく、企業の採用率です。平均の勤務時間や残業時間、中央値も示していません。制度を採用する企業でも、社員全員に同じ制度を適用しているとは限りません。
同じ原表で医療・福祉の月単位は52.2%、年単位は13.8%、製造業の月単位は11.0%、年単位は51.8%です。同じ変形制でも使う種類が違います。種類別は複数回答なので、単純に足して採用企業の総割合にはできません。
採用率が高い業種を残業が少ない業種と読み替えることもできません。制度の採用と、予定どおり仕事を終えられることは別です。応募先では、勤務予定からどのくらい延長や変更が発生しているかを聞きます。
繁忙期の勤務が長い職場では、勤務表が確定する前に私生活の予定を伝えられるかも確認します。希望を出せる制度と、必ず希望どおりになる約束は別です。採用時に勤務可能な曜日や時間帯を合意したなら、その条件が勤務表にどう反映されるかを聞きます。
確定したシフトの変更を求められたときは、変更する日と時間、理由を確認します。口頭で了承した後に勤務表が更新されていなければ、どの予定が正しいのかを確かめます。実際には変更したのに、給与の集計には変更前の予定が使われるといった食い違いも防げます。
応募先のシフトと実際の残業を確かめる
求人票では制度の単位、主な勤務時刻、休憩、休日、月平均の時間外を確認します。面接では勤務表の例を見せてもらい、確定日、連続勤務、変更の頻度、残業の集計方法を聞きます。
法定時間外や法定休日に働かせるための36協定の内容は、変形制の協定と別に確認します。年間休日数だけでは勤務の負担を比較できないため、年間休日の比較と一緒に、長い勤務が集中する時期も見てください。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。制度名より、配属先の勤務予定と実績がどのくらい違うかを確認し、自分の生活の予定を組める働き方かを判断してください。