通勤手当の所得税の非課税限度額は、電車・バスなら合理的な経路の運賃等で月15万円、マイカー・自転車なら片道の通勤距離に応じた額です。2026年4月の改正後は、車などの片道95km以上の区分で月66,400円。一定の要件を満たす駐車場等を利用し料金を負担する人は、距離別の額に料金相当額を月5,000円まで加算します。
非課税は、会社がその金額まで支払う義務があるという意味ではありません。会社の支給規程と、税金を計算するときの上限を分けます。制度は国税庁と日本年金機構の公式資料を2026年10月23日に確認しました。
電車・バスは、合理的な運賃等が非課税になる
国税庁のタックスアンサー(No.2582)の公式説明は、電車・バスだけの通勤と、車などを併用する通勤を説明しています。距離別の車の表はNo.2585にあります。資料番号を取り違えないように読みます。
電車・バスだけなら、時間、距離、運賃などを踏まえた最も経済的かつ合理的な経路・方法による通勤定期券などの金額が対象です。その額が月15万円を超えたときは、月15万円が非課税の限度です。
「一番安い経路なら必ず認められる」「本人が選んだ経路ならすべて対象」という説明ではありません。所要時間や運行状況も関係します。会社が申請経路をどう確認するのか、乗り換えや勤務地変更があったときの再申請も確かめます。
新幹線や特急の料金も、合理的な経路・方法に当たるなら対象に含まれます。ただしグリーン料金は、その合理的な経路・方法のための料金としては認められません。交通機関の名前だけで一括判断せず、支給の中身を分けます。
会社が定期券を現物で渡すときも、給与とは別の物だから上限と無関係になるわけではありません。金銭で支払うか定期券を渡すかより、通勤のための支給内容と月額の扱いを確認します。
マイカー・自転車の距離別非課税限度額
以下は国税庁No.2585の令和8年4月1日現在の区分です。片道の通勤経路に沿った距離で判断します。直線距離でも、往復を足した距離でもありません。駐車場等の加算や有料道路との併用を含めない基本の表です。
| 片道の通勤距離 |
月の非課税限度額 |
| 2km未満 |
全額課税 |
| 2km以上10km未満 |
4,200円 |
| 10km以上15km未満 |
7,300円 |
| 15km以上25km未満 |
13,500円 |
| 25km以上35km未満 |
19,700円 |
| 35km以上45km未満 |
25,900円 |
| 45km以上55km未満 |
32,300円 |
| 55km以上65km未満 |
38,700円 |
| 65km以上75km未満 |
45,700円 |
| 75km以上85km未満 |
52,700円 |
| 85km以上95km未満 |
59,600円 |
| 95km以上 |
66,400円 |
出典:国税庁のタックスアンサー(No.2585)の距離別の表の非課税となる限度額の1。月額、制度上の限度額であり、調査による平均や中央値ではありません。
区分の境目では「以上」「未満」をそのまま読みます。片道10kmなら、2km以上10km未満の区分には入りません。会社に出す距離の根拠は、通勤経路と一緒に残します。地図の表示を都合よく丸めて上の区分に入れることは避けます。
会社が距離別に決めた支給額は、この表と違うことがあります。税の上限より支給額が少なくても、差額が自動で追加される仕組みではありません。ガソリン価格に合わせて手当が変わるのか、会社の規程を見ます。
逆に、会社が税の限度額より多く支給すること自体は禁止されていません。超過分を給与として課税するかが問題です。「非課税上限だから会社はそれ以上払えない」という説明とは分けます。
改正は、支払われるべき時期まで確認する
国税庁の令和7年改正の案内PDFでは、2025年11月20日施行、同年4月1日以後に支払われるべき通勤手当への適用を説明しています。施行前に支払った分の扱いもあるため、以前の明細を調べるときは当時の会社の精算を確認します。
現在の額を調べるなら、そこで止めません。国税庁の令和8年改正の改正Q&AのQ1-1とQ1-2に、長距離区分の見直し、駐車場等の加算、適用時期が載っています。改正後は2026年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に適用されます。
古い記事の「55km以上はすべて同じ上限」という説明は、現在の表とは合いません。自分が長距離区分に当たるなら、距離の届出と会社の給与計算が新しい区分になっているかを確認します。
改正を理由に、過去のすべての通勤手当が同じ扱いになるわけでもありません。何月分かだけでなく、規程上いつ支払われるべきものかを確認します。差額の追加支給があるときも、給与担当に対象期間を聞きます。
非課税枠の改正は、会社の通勤手当規程の自動改定ではありません。税の扱いだけ直したのか、支給額も変えたのかを分けます。給与明細の課税・非課税の区分が変わっても、総支給額は同じということもあります。
駐車場代は、場所と本人の負担を確かめる
令和8年改正の駐車場等の加算は、すべての駐車料金に無条件で付くものではありません。勤務先の周辺、通勤で使う駅や停留所などの周辺にある駐車場等で、本人が料金を負担することを常例とするなどの要件を確認します。
国税庁の改正Q&Aでは、自転車やバイクの駐輪場も取り上げています。自宅付近の駐車場を同じように扱うことはできません。どこに停めるかが、税の扱いを分けます。
加算額は月5,000円の定額ではなく、料金相当額についての上限です。負担している料金が上限に届かなければ、上限いっぱいを加える計算にはしません。複数の駐車場を使うときは、合計の扱いをQ&Aで確認します。
車などを使う距離が片道2km未満の人は、通常の加算の対象から除かれています。駐車場を借りたから距離の条件が消えるわけではありません。通勤経路、交通用具を使う区間、料金の負担を一緒に整理します。
給与担当に出すメモは、「通勤経路は【通勤経路】、駐車場は【利用場所】、料金の対象期間は【対象期間】」と分けると読みやすくなります。契約書や領収書などの確認方法は会社に聞き、必要な範囲の資料を提出します。
電車と車を併用するときは、区間ごとに分ける
自宅から駅まで車、駅から会社まで電車という通勤は、すべて電車の枠で計算するわけではありません。交通機関の運賃等と、車などを使う距離の区分を分けて合計し、全体の上限も確認します。
国税庁No.2582では、交通機関の定期券などの額と交通用具の距離等に応じた限度額を合計し、月15万円を限度としています。駐車場等を利用するなら、令和8年改正後の要件も合わせて確認します。
有料道路と車を併用するケースはNo.2585で確認します。合理的な料金の額と、距離に応じた限度額などを合わせる仕組みです。有料道路を選んだ事実だけで料金全額が認められるとは限りません。
通勤経路が複雑な人ほど、総額だけを給与担当に伝えないことです。区間、使う交通手段、定期券の期間、駐車場等の利用を分けて出すと、どこが課税になったのかも確認できます。
限度額を超えた分は、給与に加算して課税する
国税庁No.2582とNo.2585は、限度額を超える部分を、その月の給与に上乗せして源泉徴収すると説明しています。上限を超えた瞬間に、通勤手当の全額を課税にする仕組みではありません。
ただし、車などで片道2km未満という通常の区分は全額課税です。上限のある区分で超過分が課税になる話と、そもそも全額課税とされる区分を混ぜないようにします。例外的な事情は国税庁の個別の案内や税務署で確認します。
給与明細を見るときは、通勤手当の支給総額と、そのうち課税に入った額を照合します。非課税欄だけを見て、会社が手当を減らしたと判断しないことです。引っ越しや勤務地変更後は、距離区分や定期代が変わっていないかも見ます。
在宅勤務の費用や出張旅費は、名称だけで通勤手当と同じ扱いにはしません。何のための支給かを分けて確認します。通勤以外の手当は出張・在宅の手当で整理しています。
業種別ランキング:通勤手当の平均支給額
令和7年就労条件総合調査の原表第34表から、産業大分類の通勤手当などの受給者平均が高い上位6業種を並べました。隣の列は原表第33-2表の支給企業割合です。令和6年11月分を調べた数字で、通勤手当は1か月換算です。
| 順位 |
業種 |
平均額(千円) |
支給企業割合 |
| 1 |
情報通信業 |
33.9 |
80.6% |
| 2 |
教育・学習支援業 |
16.1 |
95.6% |
| 3 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
14.1 |
95.3% |
| 4 |
金融業・保険業 |
13.7 |
97.2% |
| 4 |
不動産業・物品賃貸業 |
13.7 |
89.1% |
| 6 |
サービス業 |
13.6 |
89.4% |
出典:厚生労働省、令和7年就労条件総合調査の原表第34表の支給額CSVと原表第33-2表の割合CSV。企業規模計。サービス業は他に分類されないもの。同額は同順位です。
対象企業は常用労働者30人以上の民営企業です。平均額はその手当を支給された労働者1人当たりで、パートタイム労働者を除くなど調査の対象に注意が必要です。支給企業割合は、何らかの諸手当を支給した企業を100とする複数回答です。平均額と割合は分母が違います。
調査産業計は平均12.7千円、同じ分母での支給企業割合は90.2%です。「全企業の90.2%」「全員が月12.7千円受け取る」とは読めません。支給なしの人を含めた平均や中央値でもありません。
平均額が高い理由を、この表だけで会社の待遇のよさと決めることもできません。通勤距離、勤務地、使う交通手段などの内訳はここからはわかりません。通勤費が高いから、その分だけ自由に使えるお金が多いとも限りません。
所得税が非課税でも、社会保険の報酬には含まれる
日本年金機構の通勤手当に関する公式回答は、給与規程に定める通勤手当が標準報酬月額の対象となる報酬に含まれると説明しています。数か月分の定期券などをまとめて受け取る場合も、通勤手当として報酬に含まれます。
非課税という言葉だけを見て、「保険料も掛からない」と考えないことです。源泉所得税を計算する課税対象額と、社会保険の報酬月額は一致しません。給与明細では、それぞれの計算の土台を分けて確認します。
日本年金機構の保険料の説明にあるように、保険料は報酬を一定の幅で区切る標準報酬月額などを使います。通勤手当が増えた金額に比例して、必ず同額の保険料差が直ちに生まれるという計算ではありません。
引っ越しや定期代の改定で通勤手当が変わったら、会社に報酬の届出や改定への影響を聞きます。自分の加入制度、給与の変動、改定の条件を確認せず、手取り額を断定しないことです。計算の仕組みは社会保険料の計算につながります。
転居・転勤・在宅勤務への変更は、経路の届出を見直す
引っ越しや勤務地の変更があれば、前の経路の申請が残ったままになっていないか確認します。電車から車へ変えるときも、会社の許可、距離の測り方、駐車場等の申請を別に確認します。手当の金額だけを自己判断で変更するものではありません。
交通費の値上げがあったときは、いつからの定期券に新しい運賃が適用されるかを見ます。まとめて購入した定期券の期間と、会社が通勤手当を改定する時期が同じとは限りません。購入済みの分と更新後の分を分けて説明します。
在宅勤務が増えると、定期券代の支給から出社日ごとの実費支給に変わることがあります。そのときは、会社が何を通勤費として支払うか、申請の締め日、課税・非課税の計算を聞きます。出社回数だけを見て、今までの定期代が必ず支払われると決めません。
国税庁No.2582は、パートやアルバイトなど短期間雇い入れる人でも、非課税限度額を月単位で計算すると説明しています。短時間勤務という理由だけで、電車や車の上限を独自に日割りした表を使わないことです。個別の支給方法は給与担当に照会します。
明細の変更理由を、支給額と税の区分に分けて聞く
通勤手当の欄が前月と違うときは、会社の支給規程が変わったのか、経路や出社日数が変わったのか、税の区分だけが変わったのかを分けます。課税支給額が増えていても、それが基本給の昇給とは限りません。
確認用のメモには、申請した経路、支給対象期間、通勤手当の総額、課税に入った部分、会社の説明を並べます。定期券の払い戻しがあったなら、その期間と精算方法も残します。単に手取りが減ったという比較より、変更の原因をたどれます。
会社に聞く文面は「【対象月】の通勤手当について、支給額の根拠と、課税・非課税に分けた金額を教えてください」で十分です。駐車場等の加算が関係するなら、提出済みの資料が計算に反映されているかも確認します。
税の扱いがわからないときは、会社の給与担当だけで結論を出さず、国税庁の案内や税務署の相談先で確認します。社会保険の報酬の扱いは、年金機構の案内や年金事務所で照会します。同じ通勤手当についての相談でも、何の計算に疑問があるかを先に示します。
非課税限度額と、通勤で残る自己負担を分ける
就職先を比べるときは、手当の多さだけを給与の上乗せとして数えないことです。通勤のために実際に払う運賃、ガソリン代、駐車場等の料金と、会社が支給する金額を分けて書きます。税の限度額は、その差額を埋める補助金の上限ではありません。
会社が定期券代を支給していても、最初の購入まで立て替えが必要なことがあります。入社月にいつ支払われるか、申請が間に合わなければどう精算するかを聞きます。手当の総額が同じでも、支給時期が違えば入社直後に必要な準備は変わります。
転勤の可能性がある求人では、最初の勤務地だけの通勤費で決めないことです。勤務地が変わったときの経路申請、車通勤の許可、手当の上限、引っ越しに関する費用の扱いを確認します。会社の制度と、そのときの自分の条件を分けて聞きます。
駐車場等の費用を会社が直接払うときも、自分への現金支給と同じかを独自に決めず、契約の形と実際の負担を給与担当へ伝えます。国税庁の改正Q&Aにも、会社が駐車場を契約して負担する例があります。誰が払ったかだけで、税の扱いがすべて決まるわけではありません。
応募先の説明を比べるメモには、支給の対象、上限、精算の時期、変更時の届出を並べます。わからない欄は平均値で埋めず、会社に聞く欄として残します。自分の通勤で使う条件がそろってから、給与と生活費を考えます。
求人票・面接・しょくばらぼで、実際の支給条件を確かめる
求人票の「交通費支給」だけでは、全額支給か、会社独自の上限があるかはわかりません。車通勤の可否、距離の測り方、駐車場代、定期券の支給期間、在宅勤務の日の扱いを確認します。
面接では「【通勤方法】で通う場合、申請経路と支給上限、駐車場等の扱いを教えてください」と聞きます。内定後に住所や勤務地が変わるなら、変更後の条件で再確認します。非課税の上限だけで毎月の負担を決めないことです。
厚生労働省のしょくばらぼで勤務先の働き方の情報を読み、出社頻度や勤務時間も照らし合わせます。通勤手当の細かい規程が載っていなければ、会社に書面で確認します。その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。