社会保険料は、健康保険や厚生年金では標準報酬月額に料率を掛け、原則として会社と本人で折半して計算します。令和8年度の協会けんぽ東京支部の健康保険料率は9.85%、厚生年金保険料率は18.3%です。仮に標準報酬月額が26万円、40歳未満なら、健康保険12,805円、厚生年金23,790円、子ども・子育て支援金299円が本人負担です。公式資料の確認日は2026年10月23日です。
今月の給料が少し減ったのに保険料が同じでも、直ちに計算間違いとは限りません。保険料の元になる額は、毎月の振込額とは別に決められています。給与明細を確かめるときは、加入している保険、標準報酬月額、何月分の控除かを先に聞きます。
最初に決定済みの標準報酬月額を確認する
標準報酬月額は、毎月受け取る報酬を一定の区分に当てはめた額です。基本給だけでなく、通勤手当や残業代なども報酬に入ります。所得税で非課税の手当だから、社会保険の報酬からも必ず外れる、というわけではありません。
協会けんぽの令和8年度東京支部の保険料額表には、報酬月額の範囲と標準報酬月額が並んでいます。報酬月額25万円以上27万円未満なら、標準報酬月額は26万円です。25万円をそのまま料率に掛ける計算とは違います。
| 報酬月額の範囲 |
標準報酬月額 |
| 195,000円以上210,000円未満 |
200,000円 |
| 250,000円以上270,000円未満 |
260,000円 |
| 290,000円以上310,000円未満 |
300,000円 |
出典:協会けんぽ、令和8年度東京保険料額表・健康保険17・20・22等級、厚生年金14・17・19等級。単位は円。給与の平均や中央値ではなく保険料計算の区分です。
表には「以上」と「未満」があります。25万円ちょうどは25万円以上の区分に入ります。境目の数字を両方の行へ入れたり、近いほうへ自己判断で丸めたりしません。報酬の範囲が決まったら、対応する標準報酬月額の行を横に読みます。
ただし、この表へ今月の給与だけを当てはめ、会社が使っている標準報酬月額を自分で変更することはできません。いつ、どの手続きで決定された額かを確認します。定時決定、資格取得時の決定、随時改定では、見る期間と要件が違います。
算定基礎届では支払われた報酬をそろえる
日本年金機構の定時決定・算定基礎届で原則として7月1日現在の加入者について、4・5・6月の報酬を届け出て、毎年標準報酬月額を決め直します。その額は原則として9月から翌年8月まで使います。
ここで確認するのは、その期間に支払われた報酬です。会社が翌月払いなら、働いた月と支払った月がずれます。「4月に働いた分」なのか「4月に支給された分」なのかを合わせないと、計算の元が変わってしまいます。明細の支給日も見ます。
一般の被保険者では、支払基礎日数が原則17日以上ある月を対象にします。適用拡大の対象となる短時間労働者では11日以上など、働き方による扱いがあります。欠勤がある人や短時間で働く人が、必ず3カ月を単純平均するとは限りません。
春の残業代だけを見て判断しない
春に残業が多ければ、定時決定の対象となる報酬にも影響します。ただし、残業を抑えれば誰でも同じ金額だけ保険料が下がるという計算にはなりません。区分の境目、対象月、基本給や手当の額を合わせる必要があります。
季節で業務量が変わる仕事には、一定の条件で年間平均を使う取扱いもあります。自分に適用されるかは、日本年金機構の案内と会社の届出内容で確かめます。通常の計算と特例を混ぜて、都合のよい月だけ選ぶことはできません。
給与明細を並べるなら、各月の基本給、通勤手当、時間外手当、支払基礎日数を分けて残します。会社に確認する際も「なぜ上がったか」だけでなく、「どの対象月の報酬を使ったか」「現在の標準報酬月額はいくらか」と聞けば、元の数字に戻れます。
昇給や降給のときは随時改定の条件を見る
日本年金機構の随時改定・月額変更届で固定的賃金が変わり、変動月から3カ月の平均報酬による標準報酬月額と従前の額に原則2等級以上の差があるなどの条件を満たすと、4カ月目から改定します。
固定的賃金には基本給や固定の手当などがあります。残業代が増えただけのときと、基本給が上がったときでは、随時改定の判断が違います。給料の総額が増えたという結果だけで、月額変更届の対象になるとは決められません。
支払基礎日数の条件も必要です。固定給の上がり下がりと、平均報酬から見た等級の上がり下がりの方向なども確認します。上限・下限にかかる変更には例外があるため、「2等級」という言葉だけを抜き出して判定しないようにします。
| 給与の変化 |
確認すること |
| 基本給が上がった |
変動月からの報酬、等級差、支払基礎日数 |
| 固定手当がなくなった |
固定的賃金の変更内容と改定条件 |
| 残業代だけ増減した |
固定給も変わっているか |
| 欠勤で支給額が減った |
支払基礎日数と現在の決定額 |
| 入社直後に給与が違う |
資格取得時の決定内容 |
出典:日本年金機構、定時決定、随時改定。条件確認のための整理表で、件数のランキングではありません。
東京の健康保険料は折半額を読む
東京支部の保険料額表には、健康保険料の全額と折半額が並んでいます。給与から引かれる本人負担を見たいなら、原則として折半額を読みます。9.85%をそのまま本人負担の率だと思うと、控除額を大きく計算してしまいます。
標準報酬月額26万円なら、全額は25,610円、折半額は12,805円です。今回使うのは40歳未満で、介護保険第2号被保険者に該当しない欄です。介護保険対象者の欄と横に並んでいるので、年齢条件も合わせます。
健康保険料率は、協会けんぽの都道府県支部で違います。健康保険組合などに加入していれば、その保険者の料率や負担割合を確認します。住んでいる都道府県だけを見て、協会けんぽの支部や料率を決めることはできません。
都道府県別の料率ランキングは健康保険だけを比べる
令和8年度の都道府県ごとの保険料率から、高い順の上位を載せます。令和8年3月分から適用する一般被保険者の健康保険料率です。介護保険と子ども・子育て支援金を含めない、労使合計の率です。
| 順位 |
支部 |
健康保険料率 |
| 1 |
佐賀 |
10.55% |
| 2 |
北海道 |
10.28% |
| 3 |
徳島 |
10.24% |
出典:協会けんぽ、令和8年度都道府県単位保険料率・令和8年度欄。表番号なし。平均や中央値ではありません。本人負担は原則として表示率の半分です。
これは保険料率の順位で、職場の良し悪しの順位ではありません。料率だけで就職先を選ぶより、提示された報酬と本人負担を同じ条件で計算します。比較するときは、別の年度の率を混ぜないことも必要です。
厚生年金の本人負担は標準報酬月額に率を掛ける
厚生年金保険料率は18.3%で、労使折半なら本人負担は9.15%です。標準報酬月額26万円なら、26万円 × 18.3% ÷ 2=23,790円になります。計算の基本は、加入する都道府県によって変わりません。
日本年金機構の保険料の計算方法で給与から前月分の保険料を控除できることや、本人負担の端数処理が説明されています。今月の明細で引かれた額と、今月分として発生する保険料のどちらを見ているかも合わせます。
標準報酬月額には上限と下限があり、健康保険と厚生年金の等級も同じではありません。今回は双方で同じ標準報酬月額を使える範囲の例です。月給が高い人や低い人が、表の行を読み替えずに同じ式を無制限に延ばすことはできません。
会社負担分を給与からもう一度引かない
全額と折半額の両方が表にあるのは、事業主が納める保険料と、本人が負担する額を確認するためです。手取りを出すときに全額を引いたあと、折半額を追加で引く計算はしません。本人の控除欄には本人分を使います。
会社から提示された人件費の総額と、求人票の額面給与も別です。保険料の会社負担があるからといって、求人票に書かれた月給を自分でその分だけ減らして計算する必要はありません。何が給与として支払われ、何が事業主の負担かを分けます。
子ども・子育て支援金と介護保険を加える
令和8年4月分からの子ども・子育て支援金率は0.23%です。協会けんぽ東京支部の額表では、標準報酬月額26万円の全額598円、折半額299円と載っています。新しい控除を足すときも、健康保険と同じ標準報酬月額の行を使います。
介護保険の対象は40歳から64歳の第2号被保険者で、協会けんぽの令和8年度介護保険料率は1.62%です。標準報酬月額26万円なら折半分は2,106円です。対象外の人の計算へ、この額を加える必要はありません。
支援金と、事業主が負担する子ども・子育て拠出金は区別します。額表の注意書きには複数の制度が並んでいます。名前が似ているからといって、事業主だけの負担まで本人の給与から差し引かないようにします。
月給の異なる例で保険料を計算する
仮に東京の協会けんぽに加入する40歳未満の会社員で、決定済みの標準報酬月額が下表の額なら、本人負担は次のとおりです。通勤手当や賞与などの別支給はないとします。令和8年4月分以後の率を使い、介護保険は含めません。
| 月給の仮定 |
標準報酬月額 |
健康保険 |
厚生年金 |
| 200,000円 |
200,000円 |
9,850円 |
18,300円 |
| 250,000円 |
260,000円 |
12,805円 |
23,790円 |
| 300,000円 |
300,000円 |
14,775円 |
27,450円 |
出典:協会けんぽ、令和8年度東京保険料額表・標準報酬月額200,000円、260,000円、300,000円の折半額。表番号なし。各額は平均値ではなく、仮定した区分に対応する保険料です。
| 月給の仮定 |
支援金 |
上表との合計 |
雇用保険・別計算 |
| 200,000円 |
230円 |
28,380円 |
1,000円 |
| 250,000円 |
299円 |
36,894円 |
1,250円 |
| 300,000円 |
345円 |
42,570円 |
1,500円 |
出典:同保険料額表の支援金折半額、厚生労働省の令和8年度雇用保険料率のご案内・一般の事業の労働者負担5/1,000。合計欄は健康保険・厚生年金・支援金の合算です。
この例では、各本人負担額に1円未満の端数はありません。端数が出る額を計算する際は、給与からの控除では原則として50銭以下を切捨て、50銭超を切上げます。労使間の特約がある場合の扱いは別に確認します。雇用保険の端数も、厚生労働省の労働保険事務のしおり11ページで、給与から控除する場合の扱いを確認できます。
雇用保険は実際の賃金で別に計算する
雇用保険では、健康保険や厚生年金の標準報酬月額を使いません。対象となる実際の賃金に、事業区分ごとの率を掛けます。上表は一般の事業で5/1,000です。月給25万円の例で使う元の額は26万円ではなく25万円です。
上表の社会保険料等を合計しても、手取りはまだ出ません。所得税、住民税、会社独自の控除があれば差し引きます。月給から手取りを計算する方法で税額表まで含めて順番を追えます。
加入対象になる働き方かを知りたい人は、社会保険の加入条件で確認します。保険料の計算と、そもそも加入するかどうかの判断は別です。短時間で働く人が、正社員の例だけを見て自分も必ず同じ控除になると決めないようにします。
固定給と実際の支給額を分けて記録する
標準報酬月額の変更を確認するには、給料の合計額だけでは足りません。基本給の改定なのか、残業代の増減なのか、欠勤による減額なのかを分けます。随時改定の対象かを考えるときに、固定的賃金が変わった月を特定するためです。
たとえば、残業が少なくなって総支給額が減っても、基本給や固定手当が変わっていなければ、固定給の降給と同じには扱いません。逆に基本給が変わっても、平均報酬の等級差などの条件を満たすかは別に確認します。変化の原因と、その結果としての支給額を分けて記録します。
| メモする欄 |
確認する資料 |
| 固定給が変わった時期 |
給与改定通知、会社の説明 |
| 実際に支給された報酬 |
対象月の給与明細 |
| 支払基礎日数 |
会社の算定内容 |
| 変更前後の標準報酬月額 |
決定・改定の通知 |
| 給与から控除する月 |
給与の控除ルール |
会社へは「基本給が変わったため、標準報酬月額の変更対象になるか確認したいです。現在の決定額と、改定する場合の適用月を教えてください」と聞きます。まだ平均を取る対象月がそろっていなければ、確定していないことも確認できます。
賞与の保険料は月給の区分表へ足さない
賞与がある人は、今回の月給の例と分けて考えます。東京の保険料額表の注意書きでは、賞与額の1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に料率を掛けると説明されています。月給の標準報酬月額へ賞与をそのまま足し、同じ区分表で計算する方法ではありません。
標準賞与額には上限があり、健康保険などと厚生年金では上限を見る期間も違います。賞与が多い人は、月給の本人負担率を年収全額へ一律に掛けた計算と一致しないことがあります。賞与の支給回数や金額がわかってから、対象となる額を確認します。
年収を比較する際も、月給と賞与の内訳を分けます。年収の合計が同じでも、毎月の給与が違えば標準報酬月額は変わり得ます。月給の表だけから賞与のある人の年間保険料を断定することはできません。
明細を見るときは健康保険と支援金の合算表示も確認する
会社の明細では、制度の名前が短くなっていたり、関連する控除がまとめて表示されていたりすることがあります。表にある額と違って見えたら、健康保険と支援金、介護保険のどこまでを含む欄なのかを聞きます。略称を見ただけで、支援金が二重に引かれていると決めつけないことです。
確認用には「【明細の欄名】には何の保険料が含まれていますか。健康保険、介護保険、子ども・子育て支援金の内訳と、計算元の標準報酬月額を教えてください」と伝えます。内訳がわかれば、額表の同じ行と比較できます。
会社の納付総額と本人負担の控除額は、端数処理の段階も違います。今回の例は給与から引く本人負担を計算したものです。納入告知書の総額を社員数で単純に割り、個人の控除額と一致するかを調べる方法ではありません。
求人票と面接で、報酬の内訳と控除月を聞く
応募先では、基本給、固定手当、通勤手当、残業代の扱いを聞きます。「月給のうち、標準報酬月額の計算に入る手当を教えてください」「保険料は何月分をどの給与で控除しますか」と聞くと、入社後の明細と合わせられます。
昇給がある会社なら、給与改定の時期と、標準報酬月額の変更をどう通知するかも確認します。給与が上がることと、保険料が変わることを同じ月の出来事として決めつけないことです。年収全体での控除は年収別の手取り比較で見られます。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。報酬の条件に加えて、残業時間や有給休暇の実績を見ます。公的な料率は共通でも、その会社で支払われる報酬や働く時間は会社ごとに違います。