退職理由は、男女と年齢によって順位が変わります。厚生労働省「令和7年雇用動向調査」では、その他の個人的理由とその他の理由を除くと、男性の最多は「定年・契約期間の満了」16.1%、女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%です。給料、休日、人間関係は、実際に転職した人が挙げている理由です。自分が辞めるかどうかは、順位ではなく、今の問題が変わるか、次の職場でも起きないかで決めます。
数字を見たら、自分の不満を仕事の条件に直して書き出します。「給料が低い」なら基本給と評価の仕組み、「人間関係がつらい」なら相談や指示の出し方です。次の求人で確かめられる言葉にしておくと、同じ理由で辞めることを防げます。
退職理由ランキングの対象:辞めた人全員の調査ではない
使う資料は、厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」転職入職者の状況の表5です。2025年の転職入職者が前職を辞めた理由を示しています。2026年10月19日に確認しました。
表の対象は、前の仕事で雇われて働いており、転職して調査時点でも在籍している人です。自営業から移った人は含みません。辞めた後にまだ就職していない人を含む、すべての離職者の理由でもありません。
男女別の割合は、それぞれの集団の中での割合です。男女を足したり、単純に平均したりして「全体の割合」を作ることはできません。男女の人数や年齢構成も違うため、差をそのまま性格や価値観の差と読むのも避けます。
「その他」を除いた順位だと明示する
この先の順位表では、「その他の個人的理由」と「その他の理由(出向等を含む)」を除きます。理由の中身を比べるためです。残った項目だけを100%に換算し直すことはせず、資料の割合をそのまま載せます。
除いた項目は小さくありません。その他の個人的理由は男性16.8%、女性23.8%、その他の理由は男性12.1%、女性7.8%です。その他の個人的理由まで含めると、男女ともこの項目が最多です。「退職者の本音の最多は必ず給与」といった読み方はできません。
定年・契約期間の満了、会社都合も表には残します。自分から別の仕事を求めた人と、契約や会社の事情で移った人を一緒に扱っている点を押さえてから読みます。
男性の退職理由ランキング:定年・契約満了、収入の順
| 順位 |
前職を辞めた理由 |
割合 |
| 1 |
定年・契約期間の満了 |
16.1% |
| 2 |
給料等収入が少なかった |
9.9% |
| 3 |
職場の人間関係が好ましくなかった |
8.9% |
| 4 |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった |
8.5% |
| 5 |
会社の将来が不安だった |
6.9% |
| 6 |
会社都合 |
5.3% |
| 7 |
仕事の内容に興味を持てなかった |
5.2% |
| 7 |
能力・個性・資格を生かせなかった |
5.2% |
| 9 |
介護・看護 |
0.8% |
| 10 |
結婚 |
0.5% |
| 10 |
出産・育児 |
0.5% |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」表5。その他の個人的理由、その他の理由を除く。公表値が同じ項目は同順位としています。
定年や契約満了を別に見ると、収入、人間関係、労働時間や休日が続きます。仕事内容や資格の活用も理由に挙がっています。「仕事そのものは嫌いではないが、働く条件が合わない」という悩みも、転職を考える理由に含まれます。
ただ、この表では収入の低さが具体的に何を意味するかまではわかりません。基本給が低いのか、賞与が減ったのか、昇給がないのかは別の話です。自分の問題を整理するときは、給与明細や評価結果に戻って確かめます。
女性の退職理由ランキング:労働条件、人間関係の順
| 順位 |
前職を辞めた理由 |
割合 |
| 1 |
労働時間、休日等の労働条件が悪かった |
12.9% |
| 2 |
職場の人間関係が好ましくなかった |
11.5% |
| 3 |
定年・契約期間の満了 |
9.8% |
| 4 |
給料等収入が少なかった |
8.6% |
| 5 |
会社都合 |
6.2% |
| 6 |
仕事の内容に興味を持てなかった |
4.6% |
| 7 |
会社の将来が不安だった |
4.3% |
| 8 |
能力・個性・資格を生かせなかった |
3.9% |
| 9 |
出産・育児 |
1.6% |
| 10 |
結婚 |
1.4% |
| 11 |
介護・看護 |
1.0% |
出典:同調査表5。除外項目と割合の扱いは男性の表と同じです。
労働時間や休日の項目は、男性より上の順位です。ただし、調査の項目名だけで「残業だけが原因」「育児との両立だけが原因」とは言えません。休日の配置、勤務時間帯、雇用形態などの事情を、この数字から取り出すことはできないためです。
自分に当てはめるときも、単に「労働条件が悪い」とまとめず、困っている時間帯や勤務日を書きます。残業が少なくても、急なシフト変更が続けば予定を組めません。休日数だけが多くても、必要な曜日に休めなければ問題は残ります。
年齢階級別の上位:男性は若い層で収入が上位
次の表も、その他の個人的理由とその他の理由を除き、各年齢階級の割合が高い順に並べています。読みやすいように、収入は「給料等収入が少なかった」、労働条件は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」、契約満了等は「定年・契約期間の満了」と略しました。
| 年齢階級 |
1位 |
2位 |
3位 |
| 19歳以下 |
人間関係16.3% |
収入10.6% |
仕事内容8.0% |
| 20〜24歳 |
収入13.8% |
労働条件12.4% |
人間関係10.3% |
| 25〜29歳 |
収入13.1% |
会社の将来11.0% |
人間関係10.7% |
| 30〜34歳 |
収入13.4% |
労働条件13.0% |
会社の将来10.0% |
| 35〜39歳 |
会社の将来12.7% |
収入11.2% |
労働条件11.1% |
| 40〜44歳 |
能力・資格等11.0% |
会社の将来10.7% |
労働条件9.6% |
| 45〜49歳 |
人間関係13.3% |
収入11.5% |
会社都合7.9% |
| 50〜54歳 |
収入11.6% |
会社の将来9.2% |
人間関係7.9% |
| 55〜59歳 |
人間関係14.4% |
契約満了等9.5% |
労働条件7.0% |
| 60〜64歳 |
契約満了等57.8% |
人間関係7.2% |
会社都合6.0% |
| 65歳以上 |
契約満了等52.5% |
会社都合7.9% |
労働条件4.1% |
出典:同調査表5。仕事内容は「仕事の内容に興味を持てなかった」、能力・資格等は「能力・個性・資格を生かせなかった」、人間関係は「職場の人間関係が好ましくなかった」、会社の将来は「会社の将来が不安だった」です。
男性全体で定年・契約満了が最多でも、若い年齢階級では並びが変わります。全体の順位を、そのまま若手の転職理由として説明することはできません。
会社の将来への不安が高い層もありますが、その背景までは表にありません。景気、業界、配属先などの原因を、この順位だけで付け足さないようにします。応募先を調べるときは、事業計画と、自分が担当する仕事がどうつながっているかを確かめます。
年齢階級別の上位:女性は労働条件と人間関係が目立つ
| 年齢階級 |
1位 |
2位 |
3位 |
| 19歳以下 |
労働条件28.3% |
収入17.1% |
人間関係11.5% |
| 20〜24歳 |
労働条件18.8% |
人間関係10.3% |
契約満了等6.5% |
| 25〜29歳 |
労働条件14.1% |
収入13.4% |
人間関係10.5% |
| 30〜34歳 |
収入12.2% |
人間関係10.6% |
労働条件10.1% |
| 35〜39歳 |
労働条件13.7% |
収入8.5% |
人間関係8.3% |
| 40〜44歳 |
人間関係15.4% |
収入11.4% |
契約満了等10.0% |
| 45〜49歳 |
労働条件13.1% |
人間関係11.2% |
収入10.1% |
| 50〜54歳 |
労働条件13.2% |
会社都合9.0% |
人間関係8.9% |
| 55〜59歳 |
人間関係16.5% |
労働条件13.5% |
会社都合10.9% |
| 60〜64歳 |
契約満了等34.7% |
人間関係11.9% |
会社都合8.3% |
| 65歳以上 |
契約満了等28.5% |
人間関係14.8% |
会社都合10.3% |
出典:同調査表5。除外項目と略称は男性の年齢別表と同じです。
年齢が同じでも事情は違います。この順位は、自分の理由が珍しいかを気にしすぎないために使えますが、辞めるべき人を判定する表ではありません。
若手でも定年・契約満了の項目が出てくるのは、項目に契約期間の満了が含まれているためです。若い層の値を「定年退職の割合」と呼ぶのは誤りです。統計の項目名を短くするときも、意味を削りすぎないように読みます。
「退職理由の本音」はランキングだけではわからない
公的調査でわかるのは、調査で回答された理由の分布です。上司に伝えた理由と心の中の理由を比較したものではありません。「表向きは一身上の都合だが、本音は人間関係」という割合も、この資料にはありません。
その他の個人的理由を、隠された不満として給与や人間関係に割り振ることもできません。回答の中身が公表されていない部分は、そのままわからないものとして扱います。
自分の本音を整理するなら、退職届に何と書くかから考えないことです。仕事を続けるうえで、何が困るのかを先に書きます。言いにくい理由でも、順位に合わせて別の理由に置き換える必要はありません。
たとえば、仕事の内容には満足していても、相談できない状態がつらいなら、問題は職種そのものとは限りません。職種を変える前に、指示系統や相談先が変われば続けられるかを考えます。逆に、部署が変わっても仕事内容が合わないなら、配置の相談だけでは解決しません。
辞める前に、不満を事実と希望に分ける
気持ちが強い日は、嫌だったことが全部つながって見えます。判断するときは、起きた事実、変えてほしいこと、自分で確認したことを分けてメモします。
| 今の不満 |
確かめる事実 |
次の職場に求める条件 |
| 給料が低い |
基本給、手当、賞与、評価結果 |
給与の内訳と昇給の基準がわかる |
| 休めない |
休日出勤、休暇申請、勤務予定の変更 |
休日と代わりの休みの運用がわかる |
| 人間関係がつらい |
指示や相談で何が起きたか |
相談先と仕事の決め方がわかる |
| 仕事が合わない |
実際の担当業務、希望との違い |
入社後の担当範囲を確認できる |
| 会社の将来が不安 |
事業の説明、投資や配置の変更 |
任される仕事と事業計画がつながる |
ここで使うメモは、自分が見聞きした事実に絞ります。噂を確定した話として扱うと、応募先の判断もぶれます。取引先の情報や他の人の個人情報を、応募書類に持ち込む必要もありません。
今の会社で変えられることはあるか
業務の分担、配置、勤務時間など、相談によって変えられる点を確認します。相談した相手、伝えた内容、返ってきた説明を残すと、期待だけで待ち続けることを防げます。
「そのうち変わる」と言われたなら、何を、いつから、誰が変えるのかを聞きます。具体的な説明がないまま同じ問題が続いているのか、実際に対応が進んでいるのかで判断は変わります。
ただし、心身の不調や暴力、脅しなどがあるときに、社内での解決を試し切る必要はありません。休養、医療機関、社外の相談先を使います。厚生労働省の総合労働相談コーナーは、いじめ・嫌がらせや労働条件などの相談先です。
給料が理由なら、転職後の給与の内訳を比べる
同じ雇用動向調査の表6では、転職後の賃金が増えた人は40.8%、減った人は31.0%、変わらなかった人は25.5%です。理由や賃金変動が不詳の人も含むため、掲載した区分の合計が100%になるとは限りません。
増加した人のほうが多くても、自分の給料が必ず増えるわけではありません。収入を理由に移るなら、内定時に示される給与の内訳を現在の条件と並べます。月給の総額だけを見て決めないことです。
基本給、固定残業代、職務手当、賞与の支給条件を分けます。賞与は前年度の実績と、今後必ず支払われる契約上の条件を混ぜないようにします。手当も、自分に適用されるかを確認します。
給与が上がっても、通勤や勤務時間が増えれば、求めていた生活と離れることがあります。何を増やしたくて転職するのかを先に決め、内訳と働く時間を一緒に見ます。
休みと人間関係が理由なら、会社全体の印象より配属先を聞く
休日や残業が理由なら、求人票の制度と、配属予定部署の運用を分けて聞きます。「休暇制度がある」と「取りたい日に申請できる」は違う質問です。繁忙期、担当者が休む日の引き継ぎ、休日出勤後の休みを確認します。
人間関係が理由なら、「雰囲気はよいですか」だけでは答えが広すぎます。誰が仕事の優先順位を決めるか、意見が分かれたときにどう決めるか、困ったときに直属の上司以外へ相談できるかを聞きます。
| 次の会社で避けたいこと |
面接などで聞くこと |
| 指示が食い違う |
業務が重なったとき、優先順位を誰が調整しますか |
| 相談できない |
配属後に仕事の相談をする相手と、面談の機会を教えてください |
| 休むと仕事が止まる |
担当者が休暇を取る日の引き継ぎは、どう行っていますか |
| 入社後に仕事が違う |
今回の募集で、入社直後に任される業務を教えてください |
厚生労働省のしょくばらぼには、掲載企業の採用や働き方に関する情報があります。公開されている数字を読み、わからない点を質問に残します。調べる順番は企業研究のやり方で整理しています。
契約満了や会社都合なら、次の雇用条件を書面で確認する
契約期間の満了や会社都合は、仕事への不満とは分けて整理します。自分の意思だけでは変えられなかった事情まで、自分の働き方の失敗として背負う必要はありません。
次も有期契約で働くなら、契約期間だけでなく、更新の有無、更新を判断する基準、更新上限を確認します。厚生労働省の労働条件明示のルールの案内では、有期契約の更新上限の明示などを説明しています。
勤務地や担当業務も、入社直後の内容と変更の範囲を分けます。「長く働きたい」という希望があるなら、何を確認すれば長く働ける条件がわかるかまで落とし込みます。希望だけを書いても、契約条件は変わりません。
退職を伝える前に、生活と次の応募の準備を並べる
退職理由が決まっても、退職の時期は別に考えます。手元のお金、毎月の支出、次の仕事を探す間に必要な手続きを整理します。給付を受けられるか、いつ受け取れるかは個別の条件があるため、未確認の見込みを収入として置かないことです。
在職中に応募するなら、面接に使える時間と連絡方法も決めます。勤務先の機器や業務時間を応募活動に使わず、自分の連絡先で管理します。応募を急ぐほど、労働条件を読む時間が短くなりやすいので、確認事項を先に用意しておきます。
同じ理由で辞めないためには、譲れない条件と、調整できる条件を分けます。給料も仕事内容も休日も気になるときは、特に困っていた事実から順に並べます。条件の言葉が決まらないときは、就活の軸の決め方の整理方法を転職にも使えます。
面接では、順位より自分の事実を話す
応募先に伝えるときは、統計の上位の理由を借りる必要はありません。「多い理由だから通る」「少ない理由だから落ちる」と、この調査から判断することもできません。
前の職場で何が合わなかったか、次は何を求めるか、その条件を応募先でどう確かめたかをつなげます。相手の悪口を避けようとして、経験していない出来事に変えると、仕事の経歴や希望条件とのつながりが崩れます。
辞めるかを考える段階では本音を細かく整理し、面接では仕事に関係する事実を短く伝えます。給料、人間関係、労働条件など、理由ごとの例文と伝え方は転職理由・退職理由の伝え方で確認できます。