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在籍出向とは:転籍との違い・給料と社会保険・断れるか

・ナギサコーポレーション(運営)

この記事の答え

  • 在籍出向は元の会社との雇用契約を残したまま、出向先とも雇用関係を結んで働く形。転籍は元の会社との契約が終わる
  • 令和7年雇用動向調査では、離職者のうち出向は2.0%⁠、出向元への復帰は1.7%⁠。男性は45〜49歳⁠で出向6.2%⁠、50〜54歳⁠で復帰9.4%
  • 命令できるのは本人の同意か、出向先の条件・期間・復帰の仕方を定めた規程があるとき。必要性や人選に照らして権利の濫用なら無効

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在籍出向は、今の会社に籍を残したまま、別の会社で働く形です。厚生労働省の令和7年雇用動向調査では、1年間の離職者のうち「出向」⁠によるものが2.0%⁠、「出向元への復帰」⁠が1.7%でした。男性に限ると、出向は45〜49歳⁠で6.2%⁠、出向元への復帰は50〜54歳⁠で9.4%⁠と高くなります。

出向を打診されたら、最初に確かめるのは3つです。籍が今の会社に残るのか(在籍出向か転籍か)⁠、命令の根拠は何か、給料と社会保険をどちらの会社で扱うのか。この記事の制度の説明と数字は、厚生労働省・e-Govの公式資料を2026年10月25日⁠に確認したものです。個別の命令が有効かどうかまでは、この記事では判断できません。

在籍出向とは:2つ⁠の会社と雇用関係を持つ働き方

厚生労働省の在籍型出向のハンドブックは、在籍型出向を次のように説明しています。出向元と出向先の出向契約によって、働く人が両方の会社と雇用契約を結び、出向先で一定期間続けて働くこと。籍は出向元に残り、ふだんの仕事の指示は出向先から受けます。

労働契約法14条にも「出向」⁠が出てきます。厚生労働省の労働契約法のあらましは、この「出向」⁠をいわゆる在籍型出向だと説明しています。出向元との労働契約が終わらないまま、出向先に使われて働くことです。

同じハンドブックには、出向契約に定めがないときの読み方も載っています。出向元に残るのは、解雇や復帰を命じる権利など、社員としての地位にかかわるもの。出向先に移るのは、仕事を指示する権利など、日々の就労にかかわるものです。

派遣・副業とも違う

在籍出向は、出向先とも雇用関係がある点で派遣と違います。派遣で働く人が雇用契約を結ぶのは派遣元だけで、派遣先とは指揮命令の関係だけです。ハンドブックのQ&Aでも、この違いを説明しています。

副業・兼業は、働く人が自分で決めて始めるものです。在籍出向は、会社が命じて行います。2つ⁠の会社で働く点は似ていますが、始まり方が逆です。

転籍との違い:元の会社との契約が残るか

転籍(移籍とも言います)⁠は⁠、元の会社との労働契約が終わり、移る先の会社の社員になる形です。在籍出向と違い、期間が終わって元の会社に戻る前提がありません。

比べる点 在籍出向 転籍
元の会社との労働契約 続く 終わる
移る先との雇用関係 ある ある(新しい会社の社員)
期間と復帰 期間を決め、戻る前提 戻る前提がない
本人の同意 個別の同意か、利益に配慮した規程が要る 移る先での契約に本人の承諾が要る
主な決まり 労働契約法14条 民法625条1項

民法625条1項は、使用者は労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができないと定めています。条文はe-Govの民法⁠で読めます。

呼び名だけで判断しないことです。社内で「出向」⁠と言われても、書面を読むと元の会社を退職する手続きになっていることがあります。退職届や新しい会社との契約書を求められたら、それは籍が移る話です。退職金の扱い、勤続年数の通算、有給休暇の日数がどうなるかを、その場で聞きます。

在籍出向は断れるか:命令に要る根拠と権利の濫用

厚生労働省のハンドブックは、在籍型出向を命じるには次のどちらかが要るとしています。

  • 本人の個別の同意を得る
  • 出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが、就業規則や労働協約などで労働者の利益に配慮して整っている

就業規則に「出向を命じることがある」⁠と1行あるだけで、条件や期間、復帰の扱いが何も書かれていないなら、どこまで命じられるかが争いになりやすい部分です。自分の会社の就業規則に出向規程があるか、そこに何が書かれているかを先に読みます。

命令できる場合でも、権利の濫用なら無効

労働契約法14条は、会社が出向を命じることができる場合でも、その必要性、対象者の選び方などの事情に照らして権利の濫用と認められる命令は無効と定めています。条文はe-Govの労働契約法⁠にあります。

ハンドブックは、出向命令を無効とした裁判例として、希望退職への応募を断った人を子会社へ出向させ、それまでと無関係な単純作業に就かせた例(東京地裁、平成25年)⁠を紹介しています。退職を促す目的で、業務上の必要性も人選の合理性もないと判断された例です。

断るかどうかを決める前に、次の点を書き出します。

確かめること 会社に聞く例
命令の根拠 就業規則のどの条文に基づく出向ですか
出向の目的 出向先で担当する仕事と、今回の目的を教えてください
期間と復帰 期間は何年で、戻ったあとの部署と職務はどうなりますか
給料と手当 出向中の基本給・手当・賞与は、今と比べてどうなりますか
勤務地と時間 勤務地、勤務時間、休日は出向先の決まりですか

家族の介護や子育てで勤務地や時間が変わると困るなら、困る時間帯や距離を具体的に伝えます。転勤や配置転換と同じく、生活上の事情と会社の必要性を分けて話すと、話がかみ合います。勤務地と配置の確かめ方は転勤・異動は断れるか⁠でまとめています。

戻るときの命令

出向元に戻すときの命令について、ハンドブックは最高裁の判決(昭和60年)⁠を引いています。出向のときに「戻らない」⁠と⁠い⁠う合意があったと言える事情がない限り、出向元は本人の同意なしに復帰を命じられるという内容です。戻りたくない事情があるなら、出向のときに書面で残しておきます。

出向はどのくらいあるか:年齢別の割合

公的な統計で出向の多さを見られるのは、厚生労働省の雇用動向調査です。この調査の「離職者」⁠に⁠は⁠、他の会社への出向者と、出向元への復帰者が含まれます。用語の定義は用語の定義のPDFにあります。

使う表は、付属統計表の3-1です。2025年1年間の離職者を100としたときの、離職理由ごとの割合を、性別・年齢別に示しています。理由は事業所が回答したものです。

2025年⁠の離職者全体では、出向が2.0%⁠、出向元への復帰が1.7%でした。男性は出向2.5%・復帰2.5%⁠、女性は出向1.6%・復帰1.0%です。

男性:出向の割合が高い年齢

順位 年齢 出向 出向元への復帰
1 45〜49歳 6.2% 3.6%
2 50〜54歳 5.8% 9.4%
3 35〜39歳 4.8% 2.6%
4 55〜59歳 4.2% 8.8%
5 40〜44歳 3.8% 2.4%
6 30〜34歳 3.4% 2.2%
7 25〜29歳 2.2% 1.4%
8 60〜64歳 1.4% 1.4%
9 20〜24歳 0.8% 0.8%
10 19歳以下 0.2% 0.1%
10 65歳以上 0.2% 0.1%

出典:厚生労働省、令和7年雇用動向調査結果の概要の付属統計表3-1。各年齢の離職者を100%とした割合。出向の割合が高い順で、同じ値は同順位。

女性:出向の割合が高い年齢

順位 年齢 出向 出向元への復帰
1 45〜49歳 3.6% 1.5%
2 35〜39歳 2.6% 0.6%
3 40〜44歳 2.5% 0.2%
4 25〜29歳 1.8% 1.9%
5 20〜24歳 1.6% 0.2%
6 50〜54歳 1.5% 2.1%
7 30〜34歳 1.4% 0.5%
8 60〜64歳 1.1% 0.1%
9 55〜59歳 0.9% 3.6%
10 19歳以下 0.2% 0.3%
11 65歳以上 0.0% 0.4%

出典:同じ付属統計表3-1。読み方は男性の表と同じです。

男性は40代後半で出向の割合が最も高く、50代では出向元への復帰の割合が出向を上回ります。どの年齢でも、最も多い離職理由は個人的な理由で、出向は一部です。

この割合は「離職者のうち何%が出向か」⁠で⁠、「社員のうち何%が出向しているか」ではありません。同じ調査の付属統計表3-2では、1月1日⁠の常用労働者に対する出向による離職率は0.3%⁠、出向元への復帰は0.2%でした。

出向中の給料:出向契約で決まる

出向中の給料を誰が払うかは、出向元と出向先が話し合って決めます。厚生労働省のハンドブックが挙げる払い方は2つです。

  • 出向先が本人に直接払う
  • 出向先が出向元に負担金を払い、出向元が本人に払う

ハンドブックの税務の説明では、出向元の給与水準が出向先より高く、出向元が差額を補う場合の扱いにも触れています。差額を補うかどうかは会社ごとの決めごとです。基本給、残業代、通勤手当、賞与のそれぞれを、どちらの会社の決まりで払うのかを確かめます。

賞与と評価も聞いておきます。出向中は出向先で働くので、評価を誰がつけ、出向元の昇給や昇進にどうつながるのかが変わります。参考例では、出向期間を出向元の勤続年数に通算し、出向元の人事部が出向先の勤務状況をもとに評価する形を示しています。これも例で、すべての会社がこうなっているわけではありません。

労働条件は書面で受け取ります。ハンドブックでは、出向先での労働条件は出向先が明示し、出向元が代わりに明示してもよいとしています。就業の場所、仕事の内容、労働時間、賃金などを、通知書で確かめます。書面の読み方は労働条件通知書⁠の記事でまとめています。

労働時間・休日・有給休暇:出向先の決まりで働くことが多い

出向中は出向先で働くので、始業・終業の時刻、休日、残業の扱いは出向先の決まりになることが多くなります。厚生労働省のハンドブックにある出向規程と出向契約書の参考例も、労働時間、休憩、休日、休暇、服務規律、安全衛生は出向先の定めによるとしています。

同じ参考例では、次のような扱いも示しています。

  • 年次有給休暇は出向元の勤続年数をもとに付与し、年5日⁠を取らせる義務(時季指定)⁠は出向先が果たす
  • 出向先の労働時間や休日が出向元より不利になるなら、その不利を解消する措置をとる
  • 定期健康診断など労働安全衛生法の措置は、出向先が行う
  • 表彰と懲戒は出向先、懲戒解雇などは出向元が行う

あくまで参考例で、実際の扱いは各社の規程と出向契約で決まります。出向元より休日が少ない、勤務時間帯が変わるといった違いがあるなら、その分をどう扱うのかを出向前に聞きます。有給休暇の残りの日数が出向先でそのまま使えるかも、確かめておきたい点です。

社会保険・雇用保険・労災:どちらの会社で入るか

厚生労働省のハンドブックは、出向中の保険の扱いを次のように説明しています。扱いは出向契約の中身によって変わります。

保険 ハンドブックの説明 問い合わせ先
雇用保険 生活を支える主たる賃金を受けている側の雇用関係だけで被保険者になる ハローワーク
労災保険 出向先の組織に入り、その指揮監督で働くなら、出向先で適用 労働局・労働基準監督署
厚生年金・健康保険 使用関係があり報酬が払われている会社(一方または双方)で適用 年金事務所・健康保険組合

出典:厚生労働省、在籍型出向のハンドブック(第4版)24ページ⁠。

雇用保険は、出向先で被保険者になるなら、出向元で資格を失い、出向先で取る手続きが要ります。失業したときの基本手当は、被保険者になっている会社から払われた賃金だけで計算されます。給料を2社から別々に受け取る形だと、手当の額に影響することがあります。

厚生年金と健康保険は、両方の会社で被保険者になる場合、主な事業所を選んで届け出る手続きがあります。保険証がどちらの会社の健康保険になるかは、出向前に人事に聞いておきます。加入の条件そのものは社会保険の加入条件⁠で説明しています。

産業雇用安定助成金:会社が出向に使う助成金

在籍出向には、会社向けの助成金があります。厚生労働省のスキルアップ支援コース⁠のページに、2026年10月25日時点で載っている内容は次のとおりです。

  • 目的:働く人のスキルアップのための在籍型出向。期間が終われば元の事業所に戻ることが前提
  • 要件の一つ:戻ったあと6か月間の各月の賃金を、出向前より5%以上上げる
  • 出向中の賃金:出向前に払っていた賃金以上にする
  • 助成率:中小企業は2/3、それ以外は1/2。期間は最長1年
  • 上限:1人1日あたり9,110円(雇用保険の基本手当日額の最高額、令和8年8月1日時点⁠)⁠。1事業所1年⁠度あたり1,000万円まで
  • 対象:令和8年4月8日以降に計画届を出した場合、出向元だけでなく出向先も対象。企業グループ内の出向は対象外

同じページのガイドブックでは、出向期間を1か月以上2年以内としています。また、出向について労使で協定を結ぶことと、出向する本人が同意していることを支給の条件にしています。

このほか、能登半島地震や熊本地震の影響で事業を縮小した会社が雇用を守るための災害特例のコースもあります。厚生労働省の在籍型出向支援⁠のページに、ハンドブックや出向契約書の参考例がまとまっています。

働く側から見ると、会社がこの助成金を使っているなら、出向中の賃金が出向前を下回らないこと、戻ったあとの賃金が上がることが要件に入っています。説明を受けるときに、助成金を使う出向かどうかを聞いても失礼にはなりません。

出向の相手先はどう決まっているか

ハンドブックには、産業雇用安定助成金を使った会社への調査(令和3年8月⁠、厚生労働省調べ、667件⁠)⁠が載っています。出向の相手先は、もともと取引のある会社が46%⁠、産業雇用安定センターの紹介が20%でした。センターは企業間の出向や移籍を無料で仲介する公益財団法人です。

出向を打診されたときの順番

  1. 書面で、在籍出向か転籍かを確かめる(退職の手続きがあるかを見る)
  2. 就業規則の出向規程を読み、命令の根拠と期間・復帰の扱いを確かめる
  3. 出向先での仕事、勤務地、勤務時間、休日を聞く
  4. 給料・賞与・評価を、どちらの会社の決まりで扱うかを聞く
  5. 雇用保険・健康保険・厚生年金・労災を、どちらの会社で扱うかを聞く
  6. 生活上困ることがあれば、具体的な事情として伝える

納得できない点が残るとき、退職を迫られているように感じるときは、返事を急がず、書面をそろえて労働局の総合労働相談コーナーに相談します。

その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる

これから入る会社を選ぶ段階なら、出向があるかどうかも条件の一つです。求人票の「就業場所の変更の範囲」「業務の変更の範囲」⁠に⁠、グループ会社や関連会社での勤務が含まれているかを見ます。面接では「入社後にグループ会社へ出向する人はいますか」「出向する場合の期間と、戻ったあとの配属はどう決まりますか⁠」⁠と聞けます。

平均勤続年数や離職の状況、残業時間、有給休暇の取得などの数字は、厚生労働省のしょくばらぼで掲載企業のものを調べられます。出向を含む働き方の説明と、こうした数字を並べて読むと、入ったあとの働き方を具体的に考えられます。

よくある質問

在籍出向とは何ですか?

出向元と出向先の出向契約によって、働く人が両方の会社と雇用関係を持ち、出向先で一定期間働く形です。厚生労働省の在籍型出向のハンドブックでこう説明しています。労働契約法14条⁠の「出向」⁠もこの在籍型を指し、出向元との労働契約は終わりません。

在籍出向と転籍の違いは?

在籍出向は元の会社に籍が残り、期間が終われば戻るのが前提です。転籍は元の会社との労働契約が終わり、移る先の会社の社員になります。民法625条1項は、使用者が労働者の承諾なしに権利を第三者に譲り渡せないと定めています。

在籍出向は断れますか?

一律には決まりません。厚生労働省のハンドブックでは、命じるには本人の個別の同意か、出向先での賃金・労働条件、期間、復帰の仕方などを労働者の利益に配慮して定めた就業規則などが要るとしています。命令できる場合でも、必要性や人選に照らして権利の濫用なら労働契約法14条⁠で無効です。

出向中の給料はどちらが払いますか?

出向契約で決めます。出向先が直接払う形と、出向先が出向元に負担金を払い、出向元が本人に払う形があります。産業雇用安定助成金のスキルアップ支援コースでは、出向中の賃金を出向前以上にすることが要件の一つです。

出向中の社会保険と労災はどうなりますか?

厚生労働省のハンドブックでは、雇用保険は主たる賃金を受けている側だけで加入、労災保険は出向先の指揮監督で働くなら出向先で適用、厚生年金・健康保険は使用関係があり報酬が払われている会社(一方または双方)⁠で適用すると説明しています。

出向はどのくらいの人がしていますか?

厚生労働省の令和7年雇用動向調査の付属統計表3-1では、1年間の離職者のうち出向によるものが2.0%(男性2.5%、女性1.6%)⁠、出向元への復帰が1.7%(男性2.5%、女性1.0%)⁠で⁠す⁠。事業所が答えた離職理由の割合で、出向している人の数そのものではありません。

気になる会社の「ホント」⁠を⁠、会社に聞いてみませんか。

残業、休み、評価のしかた、職場の雰囲気。求人票に書いていないことを質問すると、会社に回答をお願いして、届いた答えをこのサイトに載せます。まだ載っていない会社にもリクエストできます。無料で、名前やメールアドレスは会社に伝わりません。

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