年功序列とは、年齢や勤続年数が上がるにつれて、賃金や役職が上がっていく仕組みのことです。法律の制度ではなく、会社の賃金の決め方の特徴を表す言葉です。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、大卒の男性の賃金は20〜24歳の267.4千円から、55〜59歳の556.3千円まで上がっています。計算すると約2.1倍で、年齢とともに上がる形は今も統計に出ています。
一方で、同じ大卒でも女性は約1.6倍、高卒の女性は約1.2倍です。年齢で給料が上がるかどうかは、学歴、男女、会社の規模で大きく違います。この記事では、年齢と勤続年数ごとの賃金を表にして、応募先で何を確かめればよいかにつなげます。数字は2026年10月25日に厚生労働省の資料で確かめました。
年功序列とは:年齢と勤続で賃金が上がる仕組み
年功序列という言葉には、決まった定義はありません。一般に、次のような特徴を持つ会社の人事の仕組みを指します。
- 毎年の昇給で、勤続年数とともに基本給が上がっていく
- 年齢や勤続年数が、昇進や役職に就く時期の目安になる
- 長く勤めるほど、退職金の計算で有利になる
どれも会社の就業規則や賃金規程で決まる中身です。法律で、年齢ごとの賃金が決まっているわけではありません。同じ業界でも、勤続で大きく上がる会社と、担当する仕事や成果で決まる会社があります。
働く人の側から見ると、年功序列には先が見通しやすい良さがあります。若いうちの賃金が低めでも、勤め続ければ上がる見込みが立ちます。反対に、早く成果を出しても若いうちは賃金に反映されにくい、途中で転職すると上がった分を手放しやすい、という面があります。
使う資料:賃金構造基本統計調査の「賃金」は6月の所定内給与
使う資料は、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査の概況です。学歴別の年齢ごとの賃金は第3表に載っています。勤続年数別は第7表です。
概況でいう「賃金」は、令和7年6月分の所定内給与額の平均です。残業代、深夜手当、休日出勤手当などの超過労働給与を引いた額で、税金などを引く前の額です。賞与は入っていません。年収ではなく、月の基本の給与と考えて読みます。
対象は一般労働者で、短時間労働者は含みません。企業規模は、常用労働者1,000人以上が大企業、100〜999人が中企業、10〜99人が小企業です。単位は千円なので、267.4千円は267,400円です。
年齢ごとの賃金は、同じ人の昇給の記録ではない
この表は、令和7年6月に各年齢階級にいた人の平均です。1人の人が20代から50代まで勤めたときの、賃金の変化を追ったものではありません。今の50代と今の20代では、入社した時代の採用や賃金制度も違います。
そのため、「今25歳の人が30年後にこの額になる」とは読めません。年齢が上の層ほど賃金が高いという形を、会社の仕組みの手がかりとして使います。
学歴別・男女別の賃金カーブ
| 年齢階級 |
男性・高校 |
男性・大学 |
女性・高校 |
女性・大学 |
| 〜19歳 |
213.7千円 |
― |
202.2千円 |
― |
| 20〜24歳 |
231.1千円 |
267.4千円 |
214.6千円 |
260.4千円 |
| 25〜29歳 |
262.3千円 |
305.1千円 |
230.0千円 |
286.9千円 |
| 30〜34歳 |
293.0千円 |
358.9千円 |
236.0千円 |
311.5千円 |
| 35〜39歳 |
315.9千円 |
405.9千円 |
248.5千円 |
332.4千円 |
| 40〜44歳 |
336.3千円 |
452.8千円 |
246.8千円 |
363.7千円 |
| 45〜49歳 |
353.9千円 |
491.4千円 |
253.9千円 |
373.8千円 |
| 50〜54歳 |
371.7千円 |
528.8千円 |
263.6千円 |
386.3千円 |
| 55〜59歳 |
367.4千円 |
556.3千円 |
261.0千円 |
416.2千円 |
| 60〜64歳 |
309.2千円 |
430.3千円 |
238.8千円 |
360.1千円 |
| 65〜69歳 |
263.4千円 |
377.5千円 |
220.9千円 |
292.0千円 |
出典:厚生労働省、令和7年賃金構造基本統計調査の概況、第3表。一般労働者の6月分の所定内給与額の平均。大学は大学卒で、大学院卒は別の列です。
一番上がり方が大きいのは、大卒の男性です。20〜24歳の267.4千円から55〜59歳の556.3千円まで、どの年齢階級でも前の階級より高くなっています。計算すると約2.1倍です。
高卒の男性は、20〜24歳の231.1千円から50〜54歳の371.7千円が最も高く、約1.6倍です。55〜59歳は367.4千円で、50代前半とほぼ同じ水準です。
女性は上がり方がゆるやかです。大卒の女性は260.4千円から55〜59歳の416.2千円で約1.6倍、高卒の女性は214.6千円から50〜54歳の263.6千円で約1.2倍でした。高卒の女性は、30代から40代にかけての伸びがほとんどありません。
20〜24歳の時点では、大卒の男性と女性の差は7.0千円です。55〜59歳では140.1千円まで開きます。この差がどこから来るかは、表だけではわかりません。役職に就く人の割合、勤続年数、働いている企業や業種の違いが、重なっていると考えられます。
大学院卒は高い水準から上がる
同じ第3表で、大学院卒の男性は20〜24歳302.0千円、55〜59歳691.9千円です。大学院卒の女性は、20〜24歳288.0千円から60〜64歳の589.0千円が最も高くなっています。大卒と同じく、年齢とともに上がる形ですが、出発点から高い水準にあります。
男女計で見ると、男性は20代前半の1.8倍
概況の第2表では、学歴を分けない男女別の賃金カーブも出ています。男性は55〜59歳の445.6千円が最も高く、20〜24歳を100とすると181.4です。女性は45〜49歳と55〜59歳の305.7千円が最も高く、127.6にとどまります。概況も、女性は男性に比べ、賃金の上昇がゆるやかだとしています。男女の差の詳しい数字は、男女の賃金格差にまとめています。
専門学校卒と高専・短大卒は、高卒と大卒の間
第3表の男女計で見ると、専門学校卒は20〜24歳の238.4千円から55〜59歳の363.7千円、高専・短大卒は243.3千円から55〜59歳の364.0千円が最も高い値です。20代前半は高卒より少し高く、50代後半では大卒の男女計529.1千円との差が大きくなります。
学歴ごとに平均年齢と勤続年数も違います。男女計の平均年齢は高校46.8歳、大学41.8歳で、平均勤続年数は高校14.2年、大学12.2年です。年齢計の賃金を学歴で比べるときは、平均年齢の違いも頭に置きます。
令和7年は若い層ほど賃金が伸びた
第3表と第2表には、前の年からの増減率も載っています。令和7年は、若い年齢階級ほど伸び率が高い年でした。
| 年齢階級 |
男女計の賃金 |
前年からの増減率 |
| 20〜24歳 |
242.8千円 |
4.4% |
| 25〜29歳 |
279.4千円 |
4.6% |
| 30〜34歳 |
312.3千円 |
4.3% |
| 35〜39歳 |
340.6千円 |
3.6% |
| 40〜44歳 |
364.3千円 |
3.7% |
| 45〜49歳 |
377.9千円 |
1.4% |
| 50〜54歳 |
388.8千円 |
2.2% |
| 55〜59歳 |
396.2千円 |
1.1% |
出典:厚生労働省、令和7年賃金構造基本統計調査の概況、第2表。学歴計の男女計、一般労働者の6月分の所定内給与額。
20代と30代前半は4%台、45〜49歳と55〜59歳は1%台です。大卒の男女計でも、20〜24歳は5.2%伸びた一方、45〜49歳は0.2%減、55〜59歳は0.4%増でした。若い層の賃金の伸びが、中高年を上回った年です。
1年分の伸びだけで、年功序列がなくなったとは言えません。それでも、若手と中高年の差は、この年は縮む方向に動いています。応募先を比べるときも、若手の賃金を上げたのか、全体の賃金表を見直したのかで、入社後の上がり方は違ってきます。
60歳を過ぎると賃金は下がる
どの学歴でも、60〜64歳の賃金は50代より低くなっています。大卒の男性は55〜59歳の556.3千円から、60〜64歳では430.3千円です。高卒の男性は367.4千円から309.2千円になっています。
多くの会社が60歳を定年にし、その後は再雇用などで条件を変えて雇い続けています。60歳を境に賃金が下がる形は、こうした仕組みと重なりますが、表は理由までは示していません。勤め先の再雇用後の賃金は、就業規則や再雇用の規程で確かめます。
長く勤めて上がった賃金が、60歳以降もそのまま続くとは限りません。年功序列の会社を選ぶなら、定年の年齢と、定年後の賃金の決め方まで含めて見ておきます。
勤続年数別の賃金:大企業ほど長く勤めると上がる
年功序列のもう一つの軸は勤続年数です。第7表では、勤続年数の区分ごとの賃金を、企業規模別に出しています。
| 勤続年数 |
男女計 |
大企業 |
中企業 |
小企業 |
| 0年 |
274.5千円 |
292.6千円 |
273.4千円 |
255.2千円 |
| 1〜2年 |
285.3千円 |
310.6千円 |
278.5千円 |
267.2千円 |
| 3〜4年 |
297.0千円 |
318.5千円 |
289.0千円 |
285.6千円 |
| 5〜9年 |
312.5千円 |
337.3千円 |
304.3千円 |
297.4千円 |
| 10〜14年 |
333.6千円 |
367.6千円 |
323.2千円 |
311.8千円 |
| 15〜19年 |
370.8千円 |
415.0千円 |
353.6千円 |
333.4千円 |
| 20〜24年 |
400.4千円 |
467.8千円 |
378.6千円 |
344.7千円 |
| 25〜29年 |
433.6千円 |
507.5千円 |
407.5千円 |
364.9千円 |
| 30年以上 |
444.2千円 |
496.8千円 |
413.8千円 |
366.7千円 |
出典:厚生労働省、令和7年賃金構造基本統計調査の概況、第7表。男女計、一般労働者の6月分の所定内給与額の平均。男女計の列は企業規模計です。
勤続0年の時点で、大企業と小企業の差は37.4千円です。25〜29年では142.6千円まで開きます。大企業は勤続とともに上がる幅が大きく、25〜29年の507.5千円が最も高い値です。小企業は30年以上でも366.7千円で、勤続0年の約1.4倍です。
男女別に、企業規模計の勤続年数ごとの賃金を並べると、次のとおりです。
| 勤続年数 |
男性 |
女性 |
| 0年 |
294.0千円 |
252.0千円 |
| 1〜2年 |
305.8千円 |
259.6千円 |
| 3〜4年 |
320.2千円 |
266.8千円 |
| 5〜9年 |
338.3千円 |
276.6千円 |
| 10〜14年 |
362.8千円 |
285.8千円 |
| 15〜19年 |
405.1千円 |
305.4千円 |
| 20〜24年 |
434.7千円 |
327.4千円 |
| 25〜29年 |
463.9千円 |
346.2千円 |
| 30年以上 |
461.8千円 |
375.3千円 |
出典:厚生労働省、令和7年賃金構造基本統計調査の概況、第7表。企業規模計、一般労働者の6月分の所定内給与額の平均。
男性は25〜29年の463.9千円が最も高く、大企業に限ると25〜29年の543.0千円でした。女性は30年以上の375.3千円が最も高い値です。女性は勤続10〜14年までの伸びが小さく、0年から10〜14年までで33.8千円の差です。男性は同じ区間で68.8千円上がっています。
転職すると勤続年数は0年から数え直す
概況の用語の説明では、勤続年数は、その企業に雇い入れられてから、調査の時点までに勤めた年数です。転職すると、前の会社での年数は数えられません。同じ年齢でも、新卒から勤めている人と途中で入った人では、勤続年数の区分が変わります。勤続で上がる会社に途中から入るときは、前の職歴をどう賃金に反映するかが大事になります。入社時の等級や号俸を、年齢で決めるのか、経験で決めるのかを聞いておきます。
勤続が長い人には、年齢が高い人も多い
勤続年数別の表には、年齢の違いも混ざっています。勤続30年以上なら、高校を出てすぐ入社した人でも48歳以上です。勤続で上がったのか、年齢や役職で上がったのかを、この表だけで分けることはできません。
年功序列の会社かどうかを見分ける
統計で見えるのは、日本全体の平均の形です。応募先が年功序列かどうかは、その会社の賃金の決め方を見て判断します。求人票や面接では、次の点を確かめます。
| 確かめたいこと |
聞くこと・見る書類 |
| 昇給の決め方 |
毎年の昇給は、勤続、評価、職務のどれで決まりますか |
| 賃金表の有無 |
等級や号俸の表はありますか。入社時はどこに当たりますか |
| 昇進の時期 |
主任や係長になる人は、入社何年目くらいが多いですか |
| 評価の反映 |
評価が高いと、昇給や賞与はどれくらい変わりますか |
| 定年後の賃金 |
定年は何歳で、再雇用後の賃金はどう決まりますか |
毎年の昇給の平均は、昇給の平均で企業規模別・産業別にまとめています。昇給の額だけでなく、何によって上がるのかを聞くと、その会社の仕組みがわかります。
ジョブ型と書かれていても中身は会社ごとに違う
最近は、担当する職務で処遇を決める「ジョブ型」をうたう会社もあります。ただ、ジョブ型にも決まった定義はなく、年齢や勤続の要素を残している会社もあります。言葉の違いより、職務の範囲、等級の上がり方、賃金表の中身を確かめるほうが確実です。考え方の違いはジョブ型雇用で整理しています。
年功序列が合う人・合わない人
年功序列が自分に合うかは、働き方の希望によって変わります。
一つの会社で長く働き、生活の見通しを立てたい人には、勤続で上がる仕組みは安心材料になります。住宅の購入や子育ての時期に、収入を見込みやすいからです。退職金が勤続年数で大きく増える会社なら、なおさらです。
早いうちから成果に応じた賃金がほしい人や、数年ごとに会社を移って経験を積みたい人には、勤続で上がる分を受け取りにくい仕組みです。中途入社の人の賃金がどう決まるかも、同じ理由で確かめておきます。入社時の年齢で決まるのか、前職の経験を評価して決めるのかで、入社後の上がり方が変わります。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる
学歴別・勤続年数別の賃金は、応募先の賃金が、年齢や勤続とともにどう動くかを見る物差しです。その会社で何歳、何年目にいくらになるのかは、求人票のモデル賃金、面接での質問、内定時の労働条件の説明で確かめます。
厚生労働省のしょくばらぼでは、掲載している企業の平均勤続年数や、有給休暇の取得状況などを見られます。長く勤める人が多い会社かどうかも、賃金の上がり方とあわせて比べます。