子どもが3歳から小学校に入るまでの間、会社は「柔軟な働き方を実現するための措置」を2つ以上用意しなければなりません。2025年(令和7年)10月1日に施行された育児・介護休業法23条の3の決まりです。選択肢は、始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、養育両立支援休暇、短時間勤務制度の5つで、労働者は会社が用意した中から1つを選んで使えます。
厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査(令和7年10月1日現在)では、3歳以降の子の柔軟な働き方の措置等の制度がある事業所は69.5%でした。この記事の条文と厚生労働省の資料は、2026年10月26日に確かめました。自分の会社がどの措置を用意しているか、自分が対象になるかは、就業規則と労使協定で決まります。
2025年10月からの5つの措置
根拠は育児・介護休業法の23条の3です。事業主は、3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、労働者の申出にもとづく措置のうち2つ以上を講じなければならないと定めています。令和6年5月の改正で加わり、令和7年10月1日に施行されました。
3歳未満の子には以前から短時間勤務制度(1日原則6時間)が義務でしたが、3歳以降には同じ義務がありませんでした。今回の措置は、3歳から就学前の期間にも、働き方を選べるようにするものです。3歳未満の時短勤務については育児の時短勤務で説明しています。
| 子の年齢 |
会社の義務(主なもの) |
| 3歳未満 |
短時間勤務制度、所定外労働の制限(残業免除)、テレワークの努力義務 |
| 3歳〜小学校就学前 |
柔軟な働き方を実現するための措置(5つから2つ以上)、所定外労働の制限(残業免除) |
| 小学校3年生修了まで |
子の看護等休暇(年5日、子が2人以上なら10日) |
所定外労働の制限(残業免除)は、2025年4月から小学校就学前の子を育てる人まで請求できる範囲が広がっています。子の看護等休暇の対象も、同じ4月から小学校3年生修了までに広がりました。くわしくは子の看護等休暇とはにまとめています。
5つの選択肢:会社は2つ以上、労働者は1つを選ぶ
厚生労働省の改正ポイントのリーフレットは、5つの措置の中身を次のように示しています。
| 措置 |
中身 |
条件 |
| ①始業時刻等の変更 |
フレックスタイム制、または始業・終業の時刻を繰り上げ・繰り下げる制度(時差出勤) |
1日の所定労働時間は変えない |
| ②テレワーク等 |
自宅などで働く |
1日の所定労働時間を変えず、月に10日以上使える。原則時間単位で取れる |
| ③保育施設の設置運営等 |
保育施設の設置運営、それに準ずる便宜の供与(ベビーシッターの手配と費用負担など) |
― |
| ④養育両立支援休暇の付与 |
就業しながら子を育てやすくするための休暇 |
1日の所定労働時間を変えず、年に10日以上取れる。原則時間単位で取れる |
| ⑤短時間勤務制度 |
所定労働時間を短くする |
1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む |
①から④は、フルタイムのままで働き方を変える選択肢です。⑤だけが、働く時間そのものを短くします。
養育両立支援休暇は、子の看護等休暇、介護休暇、年次有給休暇とは別の休暇です(法律23条の3第1項4号)。条文は、労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇としています。休暇中の賃金の扱いは条文に書かれていないので、会社の就業規則で確かめます。
会社が選ぶときは労働者の意見を聴く
どの2つ以上を用意するかは、会社が選びます。選ぶときは、過半数で組織する労働組合(なければ過半数を代表する者)から意見を聴く機会を設ける必要があります。職場によって使いやすい措置は違うので、意見を言える場面です。
一方で、労使協定で対象から外せる人もいます。法律は、勤続1年未満の人や、措置を講じないことに合理的な理由がある人として省令で定める人などを挙げています。自分が外されていないかは、労使協定の内容で確かめます。
3歳になる前に、会社から個別に説明がある
会社は、3歳未満の子を育てる労働者に、子が3歳になるまでの適切な時期に、選んだ措置の内容を個別に知らせ、利用するかどうかの意向を確かめなければなりません。
| 項目 |
中身 |
| 時期 |
子が3歳の誕生日を迎える1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から、2歳11か月に達する日の翌日まで) |
| 知らせる事項 |
①会社が選んだ措置(2つ以上)の内容 ②措置の申出先(人事部など) ③所定外労働・時間外労働・深夜業の制限に関する制度 |
| 方法 |
面談(オンライン可)、書面交付、FAX、電子メール等のいずれか。FAXと電子メール等は労働者が希望した場合のみ |
| 禁止 |
利用を控えさせるような周知や意向確認 |
同じ時期と、妊娠・出産等を申し出たときには、仕事と育児の両立について、勤務時間帯、勤務地、両立支援制度の利用期間、業務量や労働条件の見直しなどの意向を個別に聴くことも会社の義務です。聴いた意向には、会社の状況に応じて配慮しなければなりません。
リーフレットは、子に障害がある場合などで希望するときに短時間勤務制度や子の看護等休暇の利用期間を延ばすこと、ひとり親家庭で希望するときに子の看護等休暇の日数に配慮することを、望ましい取組として挙げています。
制度がある事業所は69.5%:規模別の数字
厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査(事業所調査)付属統計表第20表は、3歳以降の子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置等の制度があるかを、事業所規模別に聞いています。調査は令和7年10月1日現在で、ちょうど施行日の状況です。対象は常用労働者5人以上の事業所です。
| 事業所規模 |
制度あり |
制度なし |
| 500人以上 |
97.2% |
2.8% |
| 100〜499人 |
96.0% |
4.0% |
| 30〜99人 |
81.7% |
18.0% |
| 5〜29人 |
66.2% |
33.7% |
| 総数 |
69.5% |
30.4% |
施行日の時点で、5〜29人の事業所の33.7%には制度がありませんでした。この調査の「措置等」には、法律の5つの選択肢のほかに、所定外労働の制限や育児休業に準ずる措置なども含まれています。そのため「制度あり」の割合が、法律の義務を満たしている事業所の割合と同じとは限りません。
産業別:建設業は半分を下回る
同じ第20表で、制度がある事業所の割合を産業別に高い順に並べます。
| 順位 |
産業 |
制度あり |
| 1 |
複合サービス事業 |
95.2% |
| 2 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
93.8% |
| 3 |
金融業、保険業 |
91.2% |
| 4 |
情報通信業 |
85.5% |
| 5 |
生活関連サービス業、娯楽業 |
80.7% |
| 6 |
教育、学習支援業 |
79.8% |
| 7 |
医療、福祉 |
74.9% |
| 8 |
卸売業、小売業 |
74.2% |
| 9 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
72.6% |
| 10 |
サービス業(他に分類されないもの) |
71.4% |
| 11 |
不動産業、物品賃貸業 |
68.2% |
| 12 |
製造業 |
65.1% |
| 13 |
運輸業、郵便業 |
62.4% |
| 14 |
鉱業、採石業、砂利採取業 |
58.9% |
| 15 |
宿泊業、飲食サービス業 |
54.7% |
| 16 |
建設業 |
49.3% |
建設業と宿泊業、飲食サービス業は、施行日の時点で半分前後の事業所に制度がありませんでした(制度なしは建設業50.7%、宿泊業、飲食サービス業45.3%)。こうした業種に応募するなら、短時間勤務や養育両立支援休暇、保育の費用の援助など、どの2つを用意したかを確かめます。
制度別の導入状況:短時間勤務制度59.4%が最多
同じ調査の結果概要(図8)と付属統計表第21表から、制度ごとに「制度あり」の事業所の割合を高い順に並べます。
| 順位 |
制度 |
制度がある事業所の割合 |
| 1 |
短時間勤務制度 |
59.4% |
| 2 |
所定外労働の制限 |
51.6% |
| 3 |
始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ |
50.7% |
| 4 |
フレックスタイム制度 |
20.8% |
| 5 |
養育両立支援休暇の付与 |
18.5% |
| 6 |
育児休業に準ずる措置 |
17.3% |
| 7 |
テレワーク等 |
13.4% |
| 8 |
育児に要する経費の援助措置 |
6.8% |
| 9 |
事業所内保育施設の設置・運営 |
4.3% |
フルタイムのまま使える選択肢では、時差出勤(始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ)が50.7%と多く、テレワーク等は13.4%、事業所内保育施設は4.3%でした。テレワークを希望していても、会社が用意していなければ選べません。
何歳まで使えるか:短時間勤務は「就学まで」が57.7%
「制度あり」の事業所で、最長でいつまで使えるかを聞いた結果です(表15)。
| 制度 |
小学校就学の始期まで |
小学校3年生修了(又は9歳)まで |
小学校卒業(又は12歳)まで |
小学校卒業以降も利用可能 |
| 短時間勤務制度 |
57.7% |
16.2% |
12.8% |
13.3% |
| 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ |
55.3% |
11.8% |
8.8% |
24.2% |
| テレワーク等 |
35.9% |
7.2% |
4.6% |
52.2% |
| フレックスタイム制度 |
38.0% |
11.2% |
7.6% |
43.2% |
法律の義務は小学校就学の始期までですが、テレワーク等がある事業所の52.2%、フレックスタイム制度がある事業所の43.2%は、小学校卒業以降も使えるとしています。短時間勤務制度は、就学の始期までの事業所が57.7%です。小学校に上がった後の働き方は、会社ごとの差が大きい部分です。
就業規則で確かめる5つのこと
会社が用意した措置は、就業規則や育児・介護休業規程に書かれています。読むときは次の5つを見ます。
- 5つのうち、どの措置を用意しているか(2つ以上あるか)
- それぞれ何歳まで使えるか(就学の始期までか、それより長いか)
- テレワーク等の日数、養育両立支援休暇の日数と取れる単位
- 休暇や短時間勤務の間の賃金、賞与、評価の扱い
- 労使協定で対象から外される人の範囲
働く側がやること
子が2歳になる少し前(1歳11か月)から、会社の説明の時期に入ります。説明を受けたら、会社が用意した措置の一覧、使える期間、申出の締め切り、賃金の扱いを書面でもらいます。とくに短時間勤務と養育両立支援休暇は、給与と賞与の計算に影響することがあります。
措置を申し出たこと、措置を使ったこと、意向確認で伝えた内容を理由に、解雇その他の不利益な扱いをすることは、育児・介護休業法23条の3第7項で禁止されています。会社が措置を用意していない、説明がない、使わないよう求められたといったときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。育休の期間や延長の手続きは育休の期間はいつまで?で説明しています。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる
子育てしながら転職するなら、制度の名前だけでなく使われている数字を見ます。厚生労働省のしょくばらぼには、会社が公表した育休の取得率や平均残業時間、有給の取得日数が載っています。カイシャのホントの会社の比較ページでは、県ごとにこうした数字を並べて比べられます。
面接では「3歳から就学前の子について、どの措置を用意していますか」「テレワークは月何日まで使えますか」「短時間勤務は何歳まで使えて、賞与の計算はどうなりますか」と聞きます。制度の中身を具体的に答えられる会社は、実際に使っている人がいる会社です。