出生後休業支援給付金は、子の出生直後に両親がそれぞれ通算14日以上の育児休業を取ったとき、育児休業給付金などに上乗せして支給される雇用保険の給付です。額は休業開始時賃金日額の13%で、最大28日分です。もとの給付率67%と合わせて80%になり、社会保険料の免除と非課税を合わせて、厚生労働省は手取り10割相当と説明しています。
2025年(令和7年)4月1日に創設され、雇用保険事業年報の令和7年度速報では、受給者数は293,620人でした。この記事の金額と条件は、厚生労働省のパンフレット(令和8年8月1日改訂版)と雇用保険法の条文で、2026年10月26日に確かめました。自分が受け取れるかは、雇用保険の加入期間と夫婦の休業の取り方で決まるため、勤務先かハローワークで確かめます。
出生後休業支援給付金のしくみ
根拠は雇用保険法の61条の10です。被保険者が、対象期間内に子を養育するための休業をした場合に、次の3つの要件をすべて満たすと支給されます。
- 休業を始めた日の前2年間に、みなし被保険者期間が通算12か月以上あること
- 対象期間内の休業日数が、通算14日以上であること
- 配偶者も、子の出生日から8週間を経過する日の翌日までに、通算14日以上の休業をしたこと
3つ目は、配偶者がいない場合や、配偶者が雇われて働く人でない場合などには求められません。
厚生労働省の育児休業等給付のページでは、出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金は、こども未来戦略にもとづく支援策で、子ども・子育て支援金が充てられると説明しています。
単独の給付ではなく、上乗せ
出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金か育児休業給付金を受けている人への上乗せです。厚生労働省のパンフレットは、もとの給付金が就労状況などで不支給になった場合は、出生後休業支援給付金も支給しないとしています。もとの育児休業給付金の条件と額は、育児休業給付金はいくら・いつまでで確かめます。
いくら出るか:賃金日額の13%
厚生労働省のパンフレットの計算式は次のとおりです。
出生後休業支援給付金 = 休業開始時賃金日額 × 休業日数(28日が上限) × 13%
休業開始時賃金日額は、育休を始める前の直近6か月の賃金(賞与などを除く)を180で割った額で、育児休業給付金と同じものを使います。
| 項目 |
額 |
| 賃金日額の上限 |
16,540円 |
| 賃金日額の下限 |
3,203円 |
| 28日分の上限額 |
60,205円 |
| 28日分の下限額 |
11,658円 |
| 日額1万円・14日の例 |
18,200円 |
同じ例で、出生時育児休業給付金は10,000円 × 14日 × 67% = 93,800円です。上乗せと合わせると112,000円で、賃金日額14日分の80%に当たります。
休業中に賃金が出た場合
休業中に会社から出た賃金が「休業開始時賃金日額 × 休業日数」の13%以下なら、どちらの給付金も減りません。13%を超え80%未満なら、もとの給付金は減りますが、出生後休業支援給付金は減りません。80%以上の賃金が出ると、もとの給付金が出ないため、出生後休業支援給付金も出ません。
休業中に少し働いた場合の例
パンフレットの例では、賃金日額1万円の人が14日の産後パパ育休を取り、その間に3日働いて賃金3万円を受け取りました。この3万円は、賃金日額 × 14日の13%を超え80%未満なので、出生時育児休業給付金は、14日分の80%の112,000円から3万円を引いた82,000円に減ります。出生後休業支援給付金は減らず、18,200円です。
産後パパ育休中に働ける日数や時間には上限があり、超えると給付が出ません。働いた日がある場合は、その日数と賃金を申請書に正しく書きます。
「手取り10割相当」の意味
パンフレットの説明では、育休中は申出により健康保険・厚生年金保険の保険料が免除され、勤務先から給与が出なければ雇用保険料もかかりません。育児休業等給付は非課税です。このため、休業前の賃金の80%の給付で、休業前の手取りとほぼ同じになるという意味で、手取り10割相当と呼んでいます。
注意点は2つです。1つは、休業開始時賃金日額に上限があることです。上限の16,540円を超える賃金の人は、80%の給付でも休業前の手取りに届きません。もう1つは、上乗せは最大28日分だけで、それより長い育休は67%、181日目以降は50%に戻ることです。育休の長さと分け方は育休の期間で確かめます。
月給から見た計算例
休業開始時賃金日額は、休業前6か月の賃金の合計を180で割った額です。たとえば休業前6か月の月給が毎月30万円(賞与などを除く)なら、180万円 ÷ 180 = 1万円が賃金日額です。この人が対象期間に28日の育休を取り、その間に賃金が出なかった場合の計算です。
| 給付 |
計算 |
額 |
| 育休の給付(67%) |
1万円 × 28日 × 67% |
187,600円 |
| 上乗せ(13%) |
1万円 × 28日 × 13% |
36,400円 |
| 合計(80%) |
1万円 × 28日 × 80% |
224,000円 |
パンフレットの計算式に当てはめた例です。賃金日額が上限の16,540円を超える人は、上限で計算します。
67%の期間との関係
パンフレットによると、出生時育児休業給付金が支給された日数は、育児休業給付金の給付率67%の上限日数である180日に通算されます。父親が産後パパ育休で28日を使うと、その後の育児休業給付金で67%が出るのは残り152日で、181日目以降は50%です。
上乗せの13%は28日で終わりますが、67%の日数は夫婦それぞれに180日あります。上乗せのためだけに育休の時期を寄せるのではなく、1年間の育休の分け方の中で、出生直後の14日以上をどう取るかを考えます。
対象期間と「14日以上」の数え方
対象期間は、本人が産後休業をするかどうかで変わります。
| 本人 |
対象期間の終わり |
| 産後休業をしない人 |
出生後8週間を経過する日の翌日 |
| 産後休業をした母親 |
出生後16週間を経過する日の翌日 |
父親は、出生時育児休業(産後パパ育休)でも、通常の育児休業でも、対象期間内の休業日数を通算して14日以上あれば条件を満たします。パンフレットの例では、産後パパ育休の取得日数が12日だと条件を満たさないとしています。分割して取る場合も、対象期間の中の日数を足して数えます。
母親は、産後休業のあとに続けて取る育児休業が対象です。出生後16週間までの対象期間に、通算14日以上の育休を取れば本人の条件を満たします。
配偶者の育休がいらない7つの場合
原則は夫婦の両方が14日以上ですが、子の出生日の翌日に配偶者が次のどれかに当たれば、配偶者の育休は求められません。
- 配偶者がいない
- 配偶者が子と法律上の親子関係がない
- 配偶者から暴力を受け、別居している
- 配偶者が無業者
- 配偶者が自営業者やフリーランスなど、雇われて働く人でない
- 配偶者が産後休業中
- 1〜6以外の理由で、配偶者が給付の対象となる育休を取れない
父親が申請するとき、母親は通常、産後休業中なので6に当たります。このため母親の育休の有無にかかわらず、父親は自分が対象期間に通算14日以上の育休を取れば条件を満たすことになります。母親が申請するときは、父親が14日以上の育休を取るか、上の7つのどれかに当たる必要があります。
7に当たる事情は、配偶者が給付金の対象となる育児休業をすることができないことの申告書の理由欄で決まっています。該当する場合は、確認書類を付けて申請します。
申請の流れ
出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金や育児休業給付金と一体で申請するのが原則です。申請先は事業所を管轄するハローワークです。提出するのは原則として勤務先(事業主)で、本人が希望すれば直接出すこともできます。もとの給付金の支給決定後に、出生後休業支援給付金だけを単独で申請することもできます。
厚生労働省は、令和8年8月1日から手続きの一部を見直しました。母親が申請する場合の配偶者の確認書類として、父親の場合と同じように、母子健康手帳の写し(出生済証明のページで、配偶者の氏名・生年月日が書かれたもの)を出せるようになっています。
配偶者の状態ごとに出す書類
パンフレットの確認のポイントから、申請書の「配偶者の状態」欄と、主な添付書類を並べました。
| 配偶者の状態 |
欄に書く番号 |
主な書類 |
| 父親が申請(母が出産) |
主に4・5・6 |
母子健康手帳の写し |
| 配偶者がいない |
1 |
20頁の書類 |
| 雇われて働いていない |
4か5 |
20頁の書類 |
| 育休を取れない事情 |
7 |
申告書と必要書類 |
| 14日以上の育休を取った |
配偶者の番号 |
育休の確認書類 |
配偶者が雇用保険の被保険者で育休を取った場合、ハローワークは配偶者の給付金の支給決定を確かめます。このため、配偶者の出生時育児休業給付金か育児休業給付金が支給されてから申請します。配偶者が公務員の場合は、公務員の育児休業法などによる育休が対象で、開始年月日を申請書に書きます。
受け取れない・手続きが止まる場面
- 対象期間内の休業が通算13日以下だった(パンフレットは12日の例を不支給としている)
- 休業中に、賃金日額 × 休業日数の80%以上の賃金が出た
- 母親が申請したが、父親の育休が対象期間内に14日に届かず、7つの例外にも当たらない
- 配偶者の給付金が決まる前に、上乗せだけを先に申請した
令和8年8月1日からは、出生時育児休業給付金の申請時に申告する賃金が、休業期間を対象として支払われた賃金から、休業期間中に支払日のある賃金に変わりました。令和8年8月1日以降に始める産後パパ育休から対象です。休業中に給与の支払日がある人は、勤務先に確かめておきます。
会社に早めに伝えること
- 育休の開始日と終了日(夫婦それぞれ)
- 配偶者が雇用保険に入っているか、自営業か、無業か
- 分割して取る予定があるか
出生後8週間は、母親の産後休業と父親の産後パパ育休が重なる時期です。夫婦の日程を先に決めておくと、14日以上の条件を落としにくくなります。
受給者は初年度で29万人
雇用保険事業年報の令和7年度速報から、育児休業給付と出生後休業支援給付金の数字を並べました。
| 項目 |
令和6年度 |
令和7年度 |
| 育休給付の初回受給者 |
553,855人 |
609,302人 |
| うち男性 |
180,100人 |
237,116人 |
| うち女性 |
373,755人 |
372,186人 |
| うち出生時育休給付 |
68,115人 |
106,931人 |
| 出生後休業支援の受給者 |
- |
293,620人 |
| 出生後休業支援の給付額 |
- |
112億8,100万円 |
育児休業給付の初回受給者のうち男性は、令和6年度から令和7年度に31.7%増えました。出生時育児休業給付金の初回受給者も57.0%増えています。女性はほぼ横ばいです。出生後休業支援給付金は、創設1年目で29万人が受け取りました。男性の育休がどの業界で取られているかは、男性の育休取得率で見られます。
その会社の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで見る
給付金は雇用保険から出るため、会社の規模で額は変わりません。変わるのは、14日以上の育休を取りやすいかどうかです。応募先では、男性の育休取得率と取得日数、育休中の業務の引き継ぎ方を確かめます。
厚生労働省のしょくばらぼでは、掲載企業の育児休業の取得状況を見られます。面接では、直近で育休を取った男性社員の人数と期間を聞くと、制度が実際に使われているかがわかります。
- 出生後8週間以内に、男性社員が14日以上休んだ例があるか
- 育休中の仕事を、だれがどう引き継いでいるか
- 給付金の申請を、会社がどのくらいの時期に出しているか
この3つの答えが具体的なら、給付金の上乗せを受けられる取り方が、その会社で現実的かどうかを判断できます。