退職前の有給は、退職日までの勤務日に使います。退職日より後へ持ち越して使うことはできません。厚生労働省の令和7年の就労条件総合調査では、有給の取得率は66.9%、労働者1人平均の取得日数は12.1日です。ただし、これは退職者の消化率でも、自分の残日数でもありません。自分の残日数を確認し、引き継ぎの予定と並べて日程を決めます。
最終出社日は最後に出勤する日、退職日は雇用関係が終わる日です。この間に有給や所定休日を置けます。先に日付だけを伝えるより、勤務予定と引き継ぎ表を用意すると、必要な作業を具体的に話せます。制度の説明と公的資料は2026年10月23日に確認しました。
最初に確認するのは、残日数・失効日・勤務予定
残日数は勤怠システムや会社の管理記録で確認します。前年からの繰り越し分、新しく付与された分、すでに申請している分を分けます。給与明細の数字が古いなら、その後に使った分が反映されているかも聞きます。
次に失効日を確認します。厚生労働省の年次有給休暇の説明は、発生した年休の権利は2年の時効にかかると説明しています。退職日まで在籍していても、その前に失効する分を使える残日数へ入れないことです。
勤務予定も必要です。所定休日に有給を重ねて消化する計算はしません。土日休みの人と、曜日が変わるシフトの人では、同じ残日数でも最後に出勤する日は変わります。会社の営業日だけでなく、自分の勤務する日で数えます。
| 確認する項目 |
見るもの |
食い違ったら聞くこと |
| 残日数 |
勤怠画面、管理記録 |
申請中の分を含むか |
| 失効日 |
付与日と繰越記録 |
先に失効する分はどれか |
| 勤務する日 |
自分の勤務予定 |
休日と出勤日の区別 |
| 次の付与 |
基準日と就業規則 |
退職前に付与日が来るか |
| 退職の予定 |
会社との確認内容 |
退職日が確定しているか |
付与の条件から確認したい人は有給休暇の付与日数で整理できます。残日数が不明のまま「全部使いたい」と伝えるより、使える分と希望する日を照合して話します。システムの表示だけで説明がつかない点は人事へ聞きます。
有給取得率の規模別ランキングは、残日数とは別に読む
厚生労働省の令和7年の就労条件総合調査から、企業規模別の取得率を高い順に並べました。調査対象は常用労働者30人以上の民営法人です。取得状況は令和6年、又は令和5会計年度の1年間で、繰越日数を除いた付与日数を使っています。
| 順位 |
企業規模 |
取得率 |
| 1 |
1,000人以上 |
69.0% |
| 2 |
300〜999人 |
66.8% |
| 3 |
100〜299人 |
65.5% |
| 4 |
30〜99人 |
64.9% |
| ― |
調査計 |
66.9% |
出典:厚生労働省、令和7年の就労条件総合調査・労働時間制度の第5表。単位は%。取得日数計を付与日数計で割った割合で、個人の取得率の中央値ではありません。
調査計の労働者1人平均付与日数は18.1日、平均取得日数は12.1日です。この平均から自分の未消化分を計算してはいけません。付与の基準日や繰り越し、自分が使った日が違うためです。退職する人だけを抜き出した集計でもありません。
規模が大きいほど表の取得率は高くなっていますが、会社から「平均以上だからこれ以上は取れない」と言われる根拠にはなりません。個人の権利と調査の平均を分けます。次の会社の取得実績を比べるときも、同じ対象期間の数値かを確かめます。
最終出社日と退職日は、別の欄で決める
退職日を決めたら、そこまでの勤務日を並べ、希望する有給を後ろから置きます。出勤する必要のある引き継ぎや返却があるなら、その作業をどこで行うかを相談します。「有給が残っているから何日後が退職日」と暦日だけで足さないことです。
最終出社日が決まっても、退職日までは在籍しています。会社の連絡先、貸与品、システムの利用について、いつまで何を使えるかを確認します。有給開始日から連絡が一切取れない前提にも、休暇中も通常どおり働く前提にもしないようにします。
日程を組む架空の例
次の表は架空の記入例です。特定の日数を全員に当てはめる表ではありません。【】の欄へ、自分の残日数と勤務予定から確かめた内容を入れます。
| 項目 |
記入すること |
| 退職日 |
【雇用関係が終わる日】 |
| 有給にする日 |
【勤務予定と照合した取得希望日】 |
| 最終出社日 |
【最後に出勤する日】 |
| 引き継ぎの確認日 |
【後任が作業を試す日】 |
| 返却・精算の確認日 |
【窓口と取り決めた日】 |
休みの期間が途中で分かれても、希望日と出勤日を一覧にすれば相談できます。まとめて取ることにこだわって、失効する分を見落とさないようにします。退職日までにどの日に取得できるかを確かめます。
転職先の入社日は、有給消化と合わせて確認する
次の入社日が決まっているなら、現在の会社との退職日調整と並べて確認します。有給消化中は現職に在籍しているので、入社日が重なる計画を立てるときは、両社の手続きや就業規則を確認する必要があります。
「最後に出勤しない日から自由に次の会社で働ける」とだけ考えて、入社日を約束しないことです。書面の退職日と入社日を見比べ、雇用や保険の手続きがどうなるかを担当窓口へ聞きます。予定の食い違いは早めに直します。
時季変更権は、退職日を超えて移す権利ではない
年休は、原則として労働者が請求する時季に与えるものです。事業の正常な運営を妨げるときには、会社が別の時季へ変更する時季変更権があります。「忙しいと言えば年休を消せる」という制度ではありません。
厚生労働省の年次有給休暇の説明は、退職直前に残存する年休を使い切って退職したいと申請する場合、退職をもって権利が消滅するため、時季変更権を行使できないとしています。退職後の日へ変更して、結果的に使えなくすることはできません。
ただし、退職前のどこにも変更できないのか、まだ別の取得日を置けるのかは日程を見て話します。退職予定と伝えれば、どんな申請も一切調整されないと広げず、残日数と退職前の勤務日を具体的に示します。
退職日の延期を頼まれたら、取得の話と分ける
引き継ぎのために退職日を遅らせてほしい、と会社から打診されることがあります。厚生労働省の説明では、その打診に応じるかどうかは労働者に委ねられています。有給を認める条件として、当然に延期を受け入れる話ではありません。
延期を検討するなら、次の入社日、生活の予定、追加される仕事を確認します。応じるときも、変更後の退職日と有給の取得日を残します。曖昧なまま引き継ぎを続け、終わる日が消えてしまう状態を避けます。
引き継ぎは、業務名より次に何をするかを残す
引き継ぎ資料を作るときは、知っていることを全部書き始めるより、業務の一覧から作ります。定例業務、進行中の案件、締切のある仕事、まだ判断が必要な仕事を分けます。そのうえで、後任が次に行う作業を明確にします。
担当者が決まっていない仕事は、空欄にして放置せず、上司へ判断を求めます。退職する本人が会社の配置をすべて決める必要はありません。どこまで進んでいて、何の判断待ちかがわかるように残します。
引き継ぎ資料の架空の記入例
以下は架空の業務を使った表です。実際の取引先や担当者の情報は含めていません。共有する資料には、会社のルールに沿った情報だけを記載します。
| 業務 |
現在の状態 |
次にすること |
資料の場所 |
| 定例の集計 |
【確認待ちの項目】 |
【確認先と締切】 |
【共有先の保存場所】 |
| 進行中の依頼 |
【完了した範囲】 |
【未処理の作業】 |
【管理表の場所】 |
| 月末の処理 |
【準備済みの資料】 |
【実施する手順】 |
【手順書の場所】 |
| 判断が必要な仕事 |
【止まっている理由】 |
【判断を依頼する役割】 |
【経緯の記録】 |
後任や確認する相手は、別の担当一覧で管理しても構いません。表を横に広げすぎるより、業務の状態と次の作業を短く置き、詳しい手順は保管先から読めるようにします。古い版と新しい版が混在しないよう、使う資料を明確にします。
作業手順と、判断が必要な場面を分ける
操作の順番だけを書いても、例外が起きると止まります。入力が足りない、締切に間に合わない、依頼内容が違うときなど、どんな場面で誰に相談するかを残します。自分だけが知っていた判断の基準を探します。
ただし、過去のやり方が今も正しいとは限りません。会社の正式な手順があるなら、それを優先します。自分用のメモをそのまま正式ルールとして渡さず、確認済みの手順と個人的な工夫を区別します。
後任に実際の作業を試してもらう
資料を送って「見ておいてください」で終えると、わかりにくい点が退職後に見つかります。引き継ぎの時間があるうちに、後任が資料を見て次の作業へ進めるかを試します。止まった箇所を直すと、資料の不足が具体的になります。
後任が未定なら、上司や指定された引受先へ状態を共有します。誰も決まらないことを理由に、退職日まで新しい仕事を無制限に積み上げないよう、完了させる範囲と引き継ぐ範囲を相談します。
退職と有給の希望は、日付と作業をセットで伝える
会社に伝えるときは、退職の意思、希望する退職日、有給の取得希望日、引き継ぎの予定を分けます。退職届だけを出して休暇申請が済んだと思ったり、有給の相談だけで退職日も確定したと思ったりしないことです。
退職届の文面と提出方法を確認したい人は退職届の書き方を使えます。休暇の申請は、会社の方法に沿って別途行います。口頭の相談で日程を変更したら、確認できる形で残します。
上司への相談文の架空例
退職日は【退職日】を希望しています。残っている年休を確認し、【取得希望日】に取得したいと考えています。引き継ぎは【担当業務】を一覧にし、【確認予定日】までに資料の共有と作業の確認を進めます。後任が決まっていない業務について、引受先の指定をお願いします。
架空の例文です。相手が同意した事実まで含めてはいません。自分の希望として伝え、退職日の確認と有給の申請を進めます。「後任が決まるまで退職しません」と、予定を無期限にする表現は入れません。
会社が引き継ぎの追加を求めたら、何が残っていて、どの資料が必要かを聞きます。必要な仕事を具体化したうえで日程を見直すと、単に「全部終わってから」というやり取りを減らせます。
有給消化中の連絡と返却も、出社前に決めておく
休暇に入る前に、貸与品、精算、書類、連絡窓口を確認します。最終出社日にすべて返す運用もあれば、別の方法を指定されることもあります。自分の判断で機器を初期化したり、業務データを持ち帰ったりしないことです。
必要な資料は会社の共有先へ置きます。個人のメールへ送れば便利でも、機密や個人情報が含まれる資料を持ち出す理由にはなりません。後任が会社の権限で読める状態にして引き継ぎます。パスワードそのものを表へ並べず、権限変更は管理担当へ依頼します。
有給中の通常業務を前提にしないことも必要です。休暇日は就労義務が免除される日です。退職後に「いつでも質問へ対応する」と約束すると、終わる範囲が曖昧になります。未処理の業務と社内の相談先を資料に残し、会社の中で対応できる形へ移します。
最後の給与と年休の扱いを確認する
有給中の賃金をどう支払うかは、会社の定めも確認します。厚生労働省の説明は、通常の賃金、平均賃金などの支払方法を示しています。「有給だからどんな計算でも普段の手取りと同額」とは決めません。給与の締めや控除も別にあります。
最後の給与明細では、有給として処理された日と、精算された項目を照合します。予定と違う欠勤処理があれば、日程の記録を示して確認します。申請した日と、会社の勤怠に反映された日の両方を残すと話が進みます。
買取を見込んで、有給の申請をやめない
余った有給が必ずお金になるとは限りません。取得できる日を確認せず、「退職時に買い取ってもらえるはず」と待つと、使う機会を失います。会社がどう扱うかは規定と説明を確認します。
買取の話が出たときは、対象となる日数、計算方法、支払時期を確認します。口頭の期待と確定した条件を分けます。詳しい論点は有給休暇の買取で確認し、退職前に取得する日程の相談も続けます。
会社が「買取はない」と答えたことと、「年休を申請できない」は別の話です。話題を混ぜず、取得希望日の扱いを確認します。年休は退職日をもって権利が消滅するので、書面の回答を待つ間にも予定を整理します。
予定が変わったら、引き継ぎ表の状態を更新する
有給の申請後に仕事が追加されたら、既存の引き継ぎ表へ戻します。追加の作業名、今の状態、残っている判断、引受先を更新し、最終出社日までに本人が行う範囲を確認します。新しい仕事が出るたびに、以前の予定を白紙にする必要はありません。
後任が決まったときは、引き継ぐ相手が資料へアクセスできるかを確かめます。手順が書いてあっても、必要な共有先を開けなければ作業は進みません。権限が必要なものは管理担当へ依頼し、本人同士のアカウント共有で済ませないようにします。
引き継ぎの説明を終えた日と、業務の完了日は分けて残します。説明済みでも進行中の依頼は残り得ます。その仕事がどの状態で引き継がれたかを残せば、後から完了したはずという認識の違いを減らせます。未処理であることを隠すより、次に行う作業を明確にします。
出社して確認できる時間が限られているなら、何を先に確かめるかを上司と相談します。締切が近い作業や、資料だけでは判断が難しい部分を共有します。後任の配置が未定でも、資料を提出した先と、未決の判断事項を記録して退職の準備を進めます。
揉めたときは、拒否された理由と日程を持って相談する
「退職者は有給を取れない」「後任がいないから認めない」などと説明されたら、発言の内容、日時、窓口を記録します。残日数、取得希望日、退職日、申請した記録をそろえ、何が争点になっているかを整理します。
年休の取得や欠勤扱いなど労働基準法に関する問題は、労働基準監督署へ相談します。退職をめぐる嫌がらせや幅広い労働問題は、厚生労働省の総合労働相談コーナーでも相談できます。窓口で必要に応じた案内を受けます。
社内との話し合いが終わるまで外部へ相談できないわけではありません。残日数や退職日が迫っていることも伝えます。手元にそろわない資料があれば、その事情を説明します。自分だけで違法かどうかを断定して、相談の時期を遅らせないことです。
次の会社では、休める体制と取得実績を確かめる
退職前に引き継ぎで困ったなら、次の面接では「休むときは誰が業務を引き受けるか」「担当者以外も手順を読めるか」と聞きます。休暇制度の有無だけでは、実際に休める体制までわかりません。
有給の数字も、付与日数、取得日数、取得率を分けます。会社全体の平均なのか、配属予定の部署の実績なのかを確認します。特定の時期にまとめて取る運用なら、希望する休み方と合うかも聞きます。
規模別の順位で決めず、その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。休む人の代わりをどう組むかまで確認しておくと、制度の名前だけでは見えない働き方を比べられます。