ダブルワークの社会保険は、2か所それぞれの勤務先で加入要件を判定します。両方で健康保険・厚生年金に加入するなら、本人が事実発生から10日以内に二以上事業所勤務届を出します。2026年10月には短時間労働者の月額8.8万円以上という賃金要件が撤廃されました。2026年10月23日に日本年金機構の最新案内を確認しています。勤務先ごとの加入判定と、加入した後の報酬合算は順番が違います。
本業と副業という呼び方だけでは、どちらで加入するかは決まりません。勤務先ごとに契約時間、日数、雇用見込みなどを確認し、加入対象なのかを聞きます。自分の保険料や資格の扱いは、会社の担当者と年金事務所、加入する健康保険の保険者に確認します。
加入要件は勤務先ごとに確認する
日本年金機構の2か所以上の事業所で勤務する人への案内は、それぞれの事業所ごとに社会保険の加入要件を判断すると説明しています。本業の給与が高いか、副業の給与が安いかだけでは決めません。
通常の労働者に比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数がそれぞれ4分の3以上であるかを確認します。それに満たない短時間労働者についても、適用対象の企業などで、週20時間以上、一定の雇用見込み、学生ではないことなどの条件に該当すれば加入対象になります。
企業規模の条件は、勤務する店舗に何人いるかだけでは判断できません。厚生年金の被保険者数の数え方などを会社に確認します。加入の基本は社会保険の加入条件で確認し、ダブルワークでは同じ確認をそれぞれの勤務先に行います。
複数の会社で働くからといって、最初から両方の勤務時間や給与を足して、健康保険・厚生年金の加入対象にするわけではありません。先に個々の事業所で判定し、複数で加入対象になったときに二以上事業所勤務の手続きに進みます。
賃金要件の撤廃と企業規模を混ぜない
日本年金機構の2026年10月の賃金要件撤廃の案内で、短時間労働者の所定内賃金が月額8.8万円以上という要件の撤廃を確認できます。「年収を一定額未満にすれば必ず加入しない」とは言えません。
賃金要件の撤廃によって、勤務先の適用や時間、学生などの条件まで一緒になくなったわけではありません。厚生労働省の短時間労働者への社会保険適用の案内は、企業規模要件の拡大予定も示しています。2026年10月時点と、その後の予定を分けて読みます。
最低賃金の減額特例許可を受けている人などには別の扱いがあります。月額の金額だけを切り取らず、公式案内の対象者の説明を確認します。過去の説明で見かける106万円の壁と社会保険の関係についても、現在の条件と、説明が書かれた時点を分けて確かめます。
両方で加入対象なら本人が主たる事業所を選ぶ
日本年金機構の複数の事業所に雇用されるようになったときの手続きでは、本人が主たる事業所を選択し、管轄する年金事務所や保険者などを決めるとしています。
選択するのは手続きや健康保険の所属に関する事業所です。片方だけ加入すればよいという選択ではありません。両方で資格を取得することと、主たる事業所を選ぶことを分けます。会社の副業許可を受けたことも、この届出の代わりにはなりません。
提出する書類は健康保険・厚生年金保険の被保険者所属選択・二以上事業所勤務届です。提出期限は事実発生から10日以内で、提出する人は被保険者本人です。提出方法や提出先、記入する情報は、日本年金機構が公開している最新の様式と案内を使います。
| 確認する順番 |
本人がすること |
勤務先に確認すること |
| 加入判定 |
各契約の時間と日数をそろえる |
その事業所で加入対象か |
| 所属の選択 |
主たる事業所を選ぶ |
保険者と担当窓口 |
| 届出 |
二以上事業所勤務届を提出する |
資格取得の処理と必要情報 |
| 通知後 |
保険料の控除額を確認する |
通知に基づく給与処理 |
出典:日本年金機構、複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き。本人の届出と勤務先側の手続きの確認事項を整理しています。
健康保険組合に加入する事業所を選ぶときは、健康保険組合への届出も必要です。日本年金機構への提出だけですべて終わると思わず、組合の担当窓口に確認します。加入先が違う勤務先を掛け持ちするなら、早い段階で両方の担当者に相談します。
届出の前に片方の会社がすべて処理すると思い込むと、本人の提出が抜けます。担当者には「【勤務開始日】から別の勤務先でも加入対象になります。所属選択の届出に必要な情報と、資格取得の処理状況を教えてください」と確認します。
報酬を合算して標準報酬月額を決める
両方の事業所で加入対象となると、各事業所で受ける報酬月額を合算し、その月額から標準報酬月額を決定します。日本年金機構の手続き案内で示されている流れです。給与の振込額や手取りを足して決めるわけではありません。
標準報酬月額は、保険料計算に使う等級上の額です。合算した給与額と必ず同じ金額になるものではありません。自分で給与総額に保険料率を掛けた結果と通知額が違うときは、標準報酬月額と各社の報酬月額から確認します。
決定した標準報酬月額による保険料は、各事業所の報酬月額に応じて按分されます。片方の会社で通常の満額を計算し、もう片方でも同じように満額を計算して、単純に足す説明ではありません。どちらの会社からいくら控除するかは、通知に基づいて処理します。
| 段階 |
見る数字 |
間違えやすいもの |
| 報酬の確認 |
各事業所の報酬月額 |
給与の手取り額 |
| 合算 |
加入対象の事業所の報酬 |
加入判定前の労働時間の合計 |
| 等級の決定 |
合算額に基づく標準報酬月額 |
給与の額と常に同額という理解 |
| 按分 |
各事業所の報酬に応じた割合 |
両方で満額を負担するという理解 |
出典:日本年金機構、複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き、制度の説明。
決定した標準報酬月額と保険料額は、それぞれの事業所に通知されます。手続きのために勤務先間で必要な確認が生じることを踏まえ、副業を届け出る社内の手順も確認します。勤務先に何も伝えず本人だけで保険料を完結できるとは考えないようにします。
給与明細で見るのは、各社の控除額と対象月です。新しい勤務先で働き始めた月と、給与から控除される月が同じ見え方になるとは限りません。通知が届く前後の処理についても、担当者に確認します。額に疑問があれば、自分で差額を決めず計算の前提を聞きます。
片方だけ加入するなら副業給与を機械的に足さない
本業では加入対象、副業先では加入対象ではないという働き方もあります。このときは、単に別の給与があるという理由で、加入していない事業所の給与まで二以上事業所勤務として合算するわけではありません。両方で加入要件を満たす人の手続きとは区別します。
ただし、「副業だから加入しない」という扱いはできません。副業先の勤務時間や日数が変われば、その事業所で改めて加入対象になることがあります。シフトを増やした日、契約変更の内容、今後の雇用見込みを担当者に伝えます。
どちらでも加入要件を満たさないときは、この二以上事業所勤務届を出せば社会保険に入れるわけでもありません。国民健康保険、国民年金、家族の健康保険の扶養など、自分がどの制度の対象かを別に確認します。扶養は複数の収入を含めた判定が関係するため、勤務先ごとの加入判定と混同しません。
副業が業務委託の場合も分けます。会社に雇われて受け取る給与と、仕事を受けて得る報酬は同じではありません。業務委託という契約名でも働き方の実態が雇用に近いなら、契約内容だけで決めず相談します。取引条件の確認はフリーランス新法と業務委託の契約で整理しています。
雇用保険の合算は別制度として確かめる
健康保険・厚生年金の二以上事業所勤務と、雇用保険のマルチジョブホルダー制度は別です。届出先も、対象年齢も、時間を合算する扱いも違います。社会保険の書類を提出したから、雇用保険の手続きも済んだことにはなりません。
厚生労働省の雇用保険マルチジョブホルダー制度の案内では、複数の事業所に雇用される65歳以上の人が対象です。対象となる2つの事業所は、それぞれ週の所定労働時間が5時間以上20時間未満で、合計が週20時間以上、雇用見込みがそれぞれ31日以上などの要件があります。
この制度は本人がハローワークに申し出ます。会社が通常の資格取得手続きをするだけで、自動的に合算される制度ではありません。申出をした日から特例的に被保険者となる仕組みなので、対象かもしれないと思ったらハローワークに確認します。
65歳未満の人が、複数の勤務先の短い時間をこの特例で合算することはできません。通常の雇用保険は主たる事業所での適用要件を確認します。健康保険の加入可否を聞いた回答を、そのまま雇用保険の回答として使わないようにします。
副業者比率の都道府県別ランキング
総務省統計局の令和4年就業構造基本調査、結果の概要表5-1から、副業者比率の高い上位を並べました。対象は非農林業従事者で、割合の単位は%です。平均でも中央値でもなく、その地域の非農林業従事者に占める副業がある人の割合です。
| 順位 |
都道府県 |
副業者比率 |
| 1 |
京都府 |
7.5% |
| 2 |
東京都 |
6.5% |
| 3 |
和歌山県 |
5.6% |
| 4 |
鳥取県 |
5.5% |
| 5 |
長野県 |
5.3% |
| 5 |
島根県 |
5.3% |
| 7 |
高知県 |
5.2% |
| 8 |
神奈川県 |
5.1% |
| ― |
全国 |
4.8% |
出典:総務省統計局、令和4年就業構造基本調査、結果の概要の表5-1、2022年の副業者比率。公表値が同じ地域は同順位。2026年10月23日確認。
全国の副業がある人は同表で304.9万人です。この統計は、ふだんの就業状態を調べたもので、社会保険の二以上事業所勤務届を出した人の数ではありません。副業には雇用以外も含まれるため、副業者の全員が両方の勤務先で社会保険に加入していると読むことはできません。
地域の比率が高くても、応募する会社が副業を認めるとは限りません。逆に比率が低い地域でも、自分の加入判定が変わるわけではありません。統計は副業の広がりをつかむために使い、手続きは自分の契約に戻って確かめます。
働き始める前に両方の担当窓口を決める
掛け持ち先が決まったら、勤務開始日と契約時間がわかる書類をそろえます。各社に別々の説明をして食い違わないよう、所定労働時間と実際の残業を分けて伝えます。加入対象かどうかが不明なら、どの条件の確認が残っているかを聞きます。
本人用のメモには「勤務先ごとの加入判定」「資格取得日」「主たる事業所」「提出日」「保険者の窓口」「通知後の控除」を分けて残します。保険料がいくらかだけを先に調べるより、どの制度のどの手続きが必要かをそろえるほうが、担当者との確認が進みます。
入社後に時間を増減させるときや、片方を辞めるときも連絡します。最初に届けた内容のままにせず、二以上事業所勤務の状態が変わったことを伝えます。資格や報酬の変更に必要な手続きは、会社と年金事務所の案内に沿って進めます。
勤務先ごとの確認メモを作る
担当者と話す前に、雇用契約書から週の所定労働時間、月の所定労働日数、契約開始日と満了日を拾います。実際のシフトがまだ決まっていないなら、契約上の条件と未確定の部分を分けます。口頭で聞いた予定を、契約で確定した時間として書かないようにします。
それぞれの勤務先に、同じ項目で加入対象かを聞きます。回答が「本業で入っているなら不要」だけなら、この事業所でも加入要件を満たすかという質問に戻します。本業で加入中という事実は伝えつつ、副業先の判定を省略しないことがポイントです。
回答を受けたら、誰に聞いたか、いつの条件で確認したか、まだ何が未確定かを残します。条件が変わったときに同じ担当者へ連絡できれば、以前の判断から何が変わったかを伝えられます。担当部署が違うなら、必要な情報をどこへ出すかも確認します。
会社を辞める・勤務時間を変えるときも連絡する
掛け持ちの片方を辞めても、もう片方の給与明細を見れば自動的にすべての変更を確認できるわけではありません。終了する契約と継続する契約を分け、退職日、最終勤務日、資格の処理を確認します。退職した事実を、継続する勤務先の担当者にも伝えます。
時間を減らすときは、加入要件を引き続き満たすかを確認します。時間を増やすときは、新たに加入対象になる日を確認します。実績の残業が増えたのか、所定労働時間そのものを変更したのかで説明が違うため、契約変更の書類をそろえて聞きます。
一時的なシフトの増減だけで、自分の資格が今日から変わると決めつけないようにします。判断に使った契約と今後の見込みを会社へ伝え、必要なら年金事務所に確認します。保険料の負担だけを先に考えて、必要な加入の手続きを止めないようにします。
税の手続きと社会保険の届出は別に進める
副業の給与や報酬について税の確認をしていても、二以上事業所勤務届の提出が済んだことにはなりません。会社への副業の申告、保険の資格の手続き、税の書類を別の項目として管理します。担当者の回答がどの手続きの話だったのかをメモします。
本人がする届出と会社がする処理の境目がわからないなら、提出する書類名まで確認します。「手続き中」とだけ聞くより、所属選択の届出を誰がいつ出すかがわかれば、確認漏れを減らせます。保険者から追加資料を求められたときも、提出先を確かめて対応します。
加入判定を聞く相手と保険料を聞く相手を分ける
勤務先の担当者には、自社の契約での加入判定と資格取得の処理を確認します。年金事務所には、複数の事業所で対象になるときの所属選択や届出を確認します。健康保険組合が関係するなら、その組合の手続きも確認します。同じ相談でも、どの機関に聞いた答えかを残します。
給与の担当者へ控除額を問い合わせるときは、何月分の保険料か、通知を受けた額で処理されているかを聞きます。別の勤務先の給与明細と対象月が違っていると、単純に足しても意味が合いません。合算や按分の仕組みがわかっていても、給与処理の対象月は別に確認します。
家族の扶養の手続きが関係する人は、加入先が決まったことを家族側の担当窓口へも伝えます。扶養の変更と勤務先の資格取得は、どちらかの書類を出せば全部済むと決めず、必要な連絡を確認します。自分が行う手続きの一覧を作ると、窓口が複数でも進み具合を把握できます。
応募先の加入条件と実際の働き方を確かめる
求人票では、社会保険完備という表示だけで判断せず、自分が応募する勤務時間で加入対象かを確認します。面接では副業の届出方法、シフトの決まり方、時間が増えたときの契約変更、手続きを担当する窓口を聞きます。制度があっても、自分の契約に適用されるかは別に確認が必要です。
厚生労働省のしょくばらぼでは、公開されている残業や休暇、採用などの情報を確認します。掛け持ちを続けられるかを考えるときは、契約上の時間に加え、実際に働く時間と休む日も見ます。掲載がなければ、その項目を面接で聞きます。
加入は勤務先ごとに判定し、両方で対象となったら本人の届出につなげます。その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。