確定拠出年金は、積み立てる掛金と運用結果で将来の給付額が決まる年金制度です。会社が掛金を出す企業型DCと、自分で掛金を出すiDeCoがあります。会社員のiDeCoの上限は現在、企業年金に加入していなければ月23,000円、加入していれば原則月20,000円です。後者は会社の掛金などによって、実際に出せる額が小さくなります。
厚生労働省の確定拠出年金制度の概要と、国民年金基金連合会の公式案内を2026年10月23日に確認しました。2026年12月の改正は、今の限度額とは分けて読みます。求人票に「確定拠出年金あり」とあっても、会社が毎月いくら負担し、自分がいくら負担するかは、その一言ではわかりません。
企業型DCは会社の制度、iDeCoは個人で申し込む制度
DCは確定拠出年金の略称です。受け取る額を先に約束する制度ではなく、掛金を個人別に管理し、その残高をもとに給付します。会社に制度があることと、将来の受取額が保証されていることは別です。
厚生労働省の制度概要は公式の説明で読めます。企業型DCの実施主体は規約の承認を受けた事業主、iDeCoは国民年金基金連合会です。どちらも公的年金に上乗せする私的年金で、厚生年金そのものを置き換えるものではありません。
| 確認する点 |
企業型DC |
iDeCo |
| 申し込みの入口 |
勤務先の制度 |
本人が加入手続き |
| 主な掛金負担者 |
会社 |
本人 |
| 本人の上乗せ |
規約による |
自分の掛金を設定 |
| 受取額 |
掛金と運用結果で変動 |
掛金と運用結果で変動 |
| 転職時 |
資産の移換を確認 |
加入区分等の変更を確認 |
出典:厚生労働省、確定拠出年金制度の概要、制度の概要の各項目。制度の違いを整理した表で、統計のランキングではありません。
企業型DCがある会社でも、すべての雇用区分が同じ条件で入れるとは限りません。採用時に対象者、加入する時期、会社掛金の決め方を聞きます。試用期間中の扱いや、休職時の掛金も、規約や社内の案内で確かめる項目です。
iDeCoは会社がなくても本人が申し込む制度ですが、会社員の拠出限度額は勤務先の企業年金に影響されます。本人の口座で積み立てるから会社の制度と無関係、と扱うことはできません。
企業型DCの利用割合は企業規模でどう違うか
厚生労働省の令和5年就労条件総合調査、第18表から、退職年金制度のある企業のうち企業型DCを利用する企業の割合を高い順に並べました。常用労働者30人以上の民営企業を対象とした令和5年1月1日現在の制度です。単位は%で、平均掛金や受取額の中央値ではありません。
| 順位 |
企業規模 |
企業型DCを利用 |
| 1 |
1,000人以上 |
70.9% |
| 2 |
300〜999人 |
58.3% |
| 3 |
100〜299人 |
49.5% |
| 4 |
30〜99人 |
45.8% |
| — |
調査計 |
50.3% |
出典:厚生労働省、令和5年就労条件総合調査の概況、資料PDFの第18表。退職年金制度の支払準備形態、確定拠出年金の企業型の列。複数回答です。
この表の分母は退職年金制度がある企業です。退職給付制度がない企業や、退職一時金だけの企業も含めた全企業の半数がDCを導入している、という意味ではありません。企業規模別でも、それぞれの規模で退職年金制度を持つ企業を分母にしています。
退職給付の詳細項目を扱う令和5年調査の値であり、令和7年の制度利用率に読み替えることもできません。新しい年の労働時間の調査と、退職年金の詳細調査は区別します。ここからわかるのは制度の利用状況で、資産運用の成績や、会社の福利厚生全体の良し悪しではありません。
複数回答なので、同じ企業が確定給付企業年金と企業型DCを併用していることもあります。「DCあり」を見たら、ほかの企業年金があるかも確認します。iDeCoの上限計算にも、その情報を使います。
現在の会社員の限度額は、企業年金の有無から読む
2026年10月23日に確認した厚生労働省の制度概要では、会社員のiDeCoは次の区分です。これは制度上の上限で、会社員の平均掛金でも、毎月出すべき額でもありません。
| 勤務先の年金への加入 |
現在のiDeCoの上限 |
| 企業年金等に加入していない |
月23,000円 |
| 企業型DCやDB等に加入している |
月20,000円以内、合算枠も適用 |
出典:厚生労働省、確定拠出年金制度の概要、対象者・拠出限度額等。DBは確定給付企業年金です。
企業年金加入者は、月55,000円から企業型DCの事業主掛金と、DB等の他制度掛金相当額を差し引いた額の範囲にも収めます。月20,000円という上限だけで計算を止めないことです。
DB等の掛金相当額は、本人の給与明細からそのまま読み取れるとは限りません。会社の規約や加入者向けの案内で確認します。企業型DCの会社掛金だけがわかっていても、DB等を併用していれば、それだけでは上限が出せません。
| 手元で集める情報 |
確かめる場所 |
| 企業型DCに加入しているか |
入社時の説明、制度案内 |
| 毎月の会社掛金 |
加入者向けの画面、会社の通知 |
| DB等への加入の有無 |
人事の説明、年金規約 |
| 他制度掛金相当額 |
規約、加入者向けの周知 |
| 本人が上乗せしているか |
給与明細、拠出の設定 |
求人票の「退職金制度あり」だけから、企業年金加入者の区分とは決められません。退職一時金と企業年金のどちらか、両方かを確かめます。制度全体の違いは退職金の基本でも整理できます。
企業型DC自体の限度額は、原則として月55,000円からDB等の他制度掛金相当額を控除した額です。DB等に加入していなければ原則月55,000円ですが、これは会社が必ず毎月その額を負担するという意味ではありません。制度の上限と、会社の規約で決める実際の掛金を分けます。
会社掛金が給与に連動するなら、どの賃金を基にするかも確認します。基本給、等級、勤続期間など、会社が採用する算定方法を読まないと、求人票の月給だけでは掛金を計算できません。入社時の説明資料に金額例があるなら、どの雇用区分と条件の例かを確認します。
給与から本人の掛金が差し引かれているときは、会社掛金と合わせた総額だけでなく、本人が払った分を分けて記録します。掛金を変更した後は、申し込みの月と実際に反映される月が一致するかも案内で確かめます。
会社の掛金と本人の上乗せを混ぜない
企業型DCで、会社掛金に本人が上乗せする仕組みをマッチング拠出といいます。利用には勤務先の規約上の定めが必要です。本人の上乗せとiDeCoの拠出を同時に自由に使えるわけではありません。
厚生労働省の改正の案内では、2026年4月1日からマッチング拠出の加入者掛金が事業主掛金を超えてはいけないという制限が撤廃されています。古い社内資料の「本人の掛金は会社掛金まで」という説明を見つけたら、現在の規約と利用できる額を確認します。
制限撤廃は、企業型DC全体の拠出限度額までなくなったという意味ではありません。会社の制度に上乗せの仕組みがあるか、本人の設定を変えられる時期はいつか、iDeCoとどちらを利用する手続きになっているかを確認します。選ぶ商品の種類や運用配分を決める話とは分けます。
令和6年末の見直しと、これからの改正を分ける
2024年12月から、DB等の他制度掛金相当額を反映する仕組みとなり、企業年金加入者のiDeCo上限は月20,000円にそろえられました。ただし、企業型DCの上限には既存制度向けの経過措置もあります。勤務先がどの扱いかを見ずに、会社掛金の数字だけで制度違反と決めないことです。
次に控えているのが2026年12月1日の改正です。国民年金基金連合会の制度改正と、厚生労働省の拠出限度額の改正後の図で確認できます。
会社員などの第2号加入者は、勤務先の企業年金の有無等による差を解消し、企業年金と共通の限度額を月62,000円に引き上げる予定です。これは会社員全員がiDeCoに月62,000円を追加できるという話ではありません。会社のDC掛金やDB等があれば、共通枠の中で考えます。
| 時期 |
会社員が読むポイント |
| 現在 |
企業年金なしと加入者で上限が異なる |
| 2026年12月1日から |
企業年金との共通枠は月62,000円 |
| 改正後も |
勤務先の掛金等を確認する必要がある |
出典:国民年金基金連合会、2026年12月の制度改正の概要。厚生労働省、DC拠出限度額の令和8年12月以降の図。確認日は2026年10月23日です。
加入可能年齢の拡大も同じ改正に含まれます。公式案内は70歳未満への拡大を説明していますが、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金の受給状況、これまでの加入等の条件があります。年齢だけで加入できると判断せず、申込時点の公式の加入要件を確認します。
掛金の所得控除と、受け取り時の課税は別に確認する
国民年金基金連合会のiDeCoの制度の特徴は、掛金、運用中、受給時の税制を説明しています。本人が払ったiDeCo掛金は全額が所得控除の対象です。ただし、払った額がそのまま税金から返ってくるという意味ではありません。
所得控除は課税される所得から差し引く仕組みです。本人の課税所得がなければ、所得控除による税負担の軽減が生じないこともあります。同じ掛金を払った人同士でも、同じ金額の節税になるとは限りません。
企業型DCの会社掛金は、本人がiDeCo掛金として払ったお金とは区別します。会社が出した分まで本人の年末調整の控除額へ足してはいけません。給与明細の控除欄と、会社が負担した掛金の通知を別に保存します。
iDeCoの掛金を申告するときは、掛金の払込方法や証明書の案内を確認します。年末調整で使う書類、提出先、提出時期を会社に聞けば、口座から引き落とされた記録だけで足りるのかという迷いを減らせます。手続き全体は年末調整のやり方でも確認できます。
受け取りを一時金にするなら退職所得、年金として受け取るなら公的年金等に係る雑所得として扱います。退職所得控除や公的年金等控除があるから、全員が無税になるわけではありません。
退職金とDCの一時金を受け取る時期、加入期間や勤続期間の重なりによって、控除の計算に影響します。「退職金とは別の口座だから控除も完全に別」と決めないことです。課税の整理は退職金の税金へつなげ、具体的な受取時期の決定前に公式の税務案内と本人の記録を照合します。
入社後の通知は掛金と残高を分けて保存する
加入者向けの通知には、掛金を入れた記録と、その後の資産残高が載ります。掛金の合計と現在の残高は同じ数字とは限りません。運用結果や手数料の扱いがあるため、会社が約束した掛金を出したかの確認と、現在の残高の確認は分けて行います。
会社掛金に疑問があるなら、対象月、規約上の算定方法、通知に載る掛金を照合します。残高が減っているという点だけで、会社が掛金を出していないと判断しないことです。逆に、残高が増えていても、規約どおりの掛金が反映されたかは別に確認できます。
年末調整に使う証明書も、資産残高を示す通知とは用途が違います。控除の証明に必要な書類を提出し、残高の画面だけで代用できると決めないことです。会社の担当部署から提出書類を指定されたら、何の掛金を証明する書類なのかを確認します。
転職を控えているときは、勤務先の担当窓口と、年金資産の記録を扱う窓口を区別して控えます。給与の問い合わせは会社、資産の移換は案内に記載された窓口というように、質問の中身を整理します。退職日が近づいてからすべての通知を探し直すより、現在の制度名と連絡先を先にまとめます。
老齢給付は原則として60歳まで引き出せない
DCは普通預金と違い、必要になったときに自由に解約して生活費に回せる制度ではありません。老齢給付の受け取りは原則60歳からです。退職や失業、住宅購入だけで自由に出金できるわけではありません。
厚生労働省の制度概要では、60歳時点の通算加入者等期間が10年未満だと、受給できる年齢が段階的に後ろへずれます。ここで見るのは現在の会社の勤続年数だけではありません。以前の企業型DCやiDeCoの期間など、制度上の通算記録を確認します。
受け取れる年齢に達したら、残高が自動で銀行口座へ振り込まれると考えるのも誤りです。給付の請求方法、受取方法、必要書類は制度の案内で確認します。受給資格の確認と、税務の確認を同時に進めると、書類を集め直す手間を減らせます。
障害給付金や死亡一時金、厳しい条件を満たす脱退一時金は、老齢給付とは別の仕組みです。例外の名前だけを見て「退職後なら脱退できる」と当てはめないことです。自分が該当するかは、制度を管理する窓口に記録を示して確かめます。
転職するときは、資産を移す手続きを退職準備に入れる
企業型DCのある会社を辞めても、積立資産が退職日の給与と一緒に現金で支払われるわけではありません。転職先の企業型DCやiDeCoなどへ移す手続きが必要になります。移せる先は、転職先の制度や規約によって変わります。
国民年金基金連合会の退職時の案内で、自分が企業型DCの加入者だったのか、すでにiDeCoに入っているのかを分けて確認します。退職先と転職先の制度名が似ていても、口座が自動で一つになると決めないことです。
会社を辞める前に、加入者向けの通知、記録を確認する方法、資格を失う日、移換の案内が届く住所を確認します。会社用のメールだけで受け取っていた情報は、退職後も確認できる方法を問い合わせます。ログイン情報そのものを会社の担当者へ渡す必要はありません。
移換を放置すると、一定期間後に国民年金基金連合会へ自動移換されることがあります。自動移換は、そのまま希望する運用が続くことを意味しません。手数料や受給のための期間にも影響するため、届いた案内の期限を確認して手続きを進めます。
iDeCoにすでに入っている人も、転職で企業年金の加入状況が変われば確認が必要です。退職して国民年金の区分が変わるときも同じです。引き落としが続いているかだけでは、現在の加入区分と限度額が正しいかはわかりません。
求人票・面接・しょくばらぼで会社の負担と運用実績を確かめる
応募先を比べるときは、月給と会社のDC掛金を別々に記録します。DC掛金は将来の年金に向けたもので、今日使える手取りとは違います。月給へ足して「毎月使える額」を作らず、会社が負担する掛金、本人が任意で負担する額、受け取れる時期に分けます。
面接では「【応募職種】は企業型DCの対象ですか。会社掛金の決め方と、本人が負担する仕組みを教えてください」と聞けます。選択制の仕組みがあるなら、給与として受け取る場合との違いや、社会保険等への影響の説明も求めます。
人事制度の説明だけでわからないときは、規約や入社後の案内をいつ確認できるか聞きます。退職金の有無、勤続期間による扱い、休職中の掛金、転職時の連絡窓口までわかると、入社後に何をするかが見えてきます。
厚生労働省のしょくばらぼでは、会社が登録した職場情報を確認できます。DCの細かな規約や掛金が載っていなければ、求人票と面接で補います。その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。