内定取り消しは、採用すると伝えた会社が、その採用を撤回することです。内定によって労働契約が成立していれば、解雇として客観的に合理的な理由などが必要です。最新の厚生労働省の公表では、令和8年3月卒の新卒者は29事業所・80人が採用内定取消しとなりました。通知を受けたら、取消しの理由、通知日、合意していた条件を残し、相談窓口で確かめます。
会社から取り消すと言われたことと、その取消しが法律上有効なことは別です。新卒か中途か、内定か内々定か、どんな契約を結んでいたかで確認が変わります。制度と公式資料の確認日は2026年10月23日です。自分の事案の有効性や受け取れる金額を、この人数だけで判断することはできません。
最新の内定取り消しは新卒の行政集計で確認する
厚生労働省が2026年8月28日に公表した、令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況を使います。公表資料PDFは、大学や高校などを卒業して就職する予定だった人について、令和8年7月末までに所定の様式で通知された事項を集計した資料です。
取消しの対象は80人で、内訳は高校生14人、大学生等66人です。大学生等には短期大学生や専修学校生なども含まれます。大学だけの取消人数と呼ぶと対象を狭く言い換えてしまうため、資料の区分に沿って読みます。
取消しを行ったのは29事業所です。学校種別の事業所数は、高校生で11、大学生等で21ですが、異なる学校種で取消しをした事例が重なるため、足した数は全体と一致しません。人数と事業所数を混ぜたり、内訳を単純に足して別の総数を作ったりしないことです。
中途採用の取消しは、この集計の対象ではありません。通知されていない取消しまで含む総数とも言えません。80人をすべての内定者数で割った発生確率や、自分が取り消される確率として使うこともできません。数字の大きさより、対象と集計の範囲を確かめます。
産業別の内定取消人数ランキング
同じ資料の採用内定取消し状況から、産業別の人数を多い順に並べました。令和8年、2026年3月卒の新卒者についての実人数です。単位は人で、平均値や中央値ではありません。取消人数がゼロの産業は省き、同じ人数は同順位としています。
| 順位 |
産業 |
取消人数 |
| 1 |
宿泊・飲食サービス業 |
27人 |
| 2 |
情報通信業 |
10人 |
| 3 |
その他サービス業 |
9人 |
| 4 |
卸売・小売業 |
7人 |
| 5 |
学術研究・専門・技術サービス業 |
6人 |
| 6 |
製造業 |
5人 |
| 6 |
医療・福祉 |
5人 |
| 8 |
建設業 |
4人 |
| 9 |
運輸・郵便業 |
3人 |
| 10 |
金融・保険業 |
1人 |
| 10 |
不動産・物品賃貸業 |
1人 |
| 10 |
教育・学習支援業 |
1人 |
| 10 |
公務 |
1人 |
出典:厚生労働省、令和8年3月新卒者採用内定取消し等の状況、資料2ページ・採用内定取消し状況の産業別表。表番号なし。令和8年7月末までの通知分。
これは取消人数の順位です。産業ごとの採用内定者数を分母にした取消率ではないため、上位だから内定を取り消されやすい業界とは言えません。特定の事案の人数によっても順位は動きます。応募先を選ぶときに、その産業全体の安全性を決める表として使わないようにします。
取消し理由別では、その他38人、経営の悪化34人、別会社移行7人、企業倒産1人です。これは会社が通知した取消しの理由の区分で、裁判所が取消しを有効と判断した人数ではありません。経営悪化という理由が載っているから、自分への取消しも有効だとは決められません。
内定で労働契約が成立しているかを経緯から確認する
厚生労働省の内定のQ&Aは、採用内定には法的な定義がなく、態様もさまざまだと説明しています。そのうえで、入社する時期や一定の取消事由を定めた労働契約が成立していると認められることが多いとしています。
入社まで待つ期間があっても、契約が成立していることがあります。逆に、選考通過の連絡を受けたという事実だけで、どの事案でも成立すると断定はできません。採用通知の内容、承諾のやり取り、さらに契約のための手続が予定されていたかを確認します。
内定通知書という題名だけを見るのではなく、本文に何が書いてあるかを読みます。就業する場所、業務、賃金、入社予定日、契約期間、取消しの条件がどう示されていたか。自分が何に承諾し、会社がどう返答したかまで、前後のやり取りを揃えます。
紙が手元にないときも、メールや採用システムの連絡を残します。書面がないから必ず契約がないと自分で結論を出さないことです。通知書と条件書の役割の違いは労働条件通知書で確認できます。
内々定という呼び方だけでも決めない
厚生労働省の同Q&Aは、内々定では一般に契約成立の認識に至っていないことが多いとしながら、実際の拘束の程度などによって内定と認められることもあると説明しています。呼び方が内々定なら会社は自由に撤回できる、と一律に考えることはできません。
他の選考を辞退するよう求められた、入社に向けた具体的な指示があった、といった経緯も記録します。労働契約が成立していないと判断される場合でも、期待を侵害したとして損害賠償の問題が生じることがあると公式Q&Aは説明しています。賠償の有無や額は個別の事情で変わります。
会社が挙げた取消理由は具体的な事実まで聞く
契約が成立している内定の取消しは、会社の気持ちが変わったというだけで決まる話ではありません。厚生労働省の内定のQ&Aと労務管理の資料は、労働契約法16条の解雇権の濫用に関する規定が適用されると説明しています。
採用時には知ることができず、知ることも期待できなかった事実なのか。その事実によって取り消すことが、留保された解約権の趣旨に照らして合理的で、社会通念上相当なのか。公式Q&Aでは、このような考え方が示されています。取消条項が書かれているだけで、どんな撤回も認められるわけではありません。
卒業や資格の条件を満たせなかったと言われたとき
業務に必要な資格を取得することや、卒業することが採用の条件とされていたなら、何が条件だったかを確認します。採用時に示された内容と、実際に満たせなかった内容を並べます。会社が後から追加した条件なのか、当初から合意した条件なのかでも整理が違います。
資格が取れなかったという一言で終わらせず、その資格が入社時点に必要だったか、通知書にはどう書かれていたかを確認します。健康状態や経歴について指摘されたときも、具体的にどの事実を理由としているかを聞きます。属性や病名だけで取消しが認められると、自分で判断しないことです。
経営悪化や採用計画の変更と言われたとき
経営が悪化したという説明だけでは、取消しの必要性はわかりません。厚生労働省の内定のQ&Aは、経営悪化による取消しについて、人員整理の必要性、解雇回避の努力、対象者の選び方、手続の妥当性を踏まえて判断すると説明しています。
どの事業や採用枠で何が変わったか、別の配置や入社時期などの対応を検討したか、対象者をどう決めたかを聞きます。説明を受けても、その場で正しいかを決める必要はありません。会社の回答を記録し、書類と一緒に相談先へ持っていきます。
新卒の取消しはハローワーク等への事前通知が必要
厚生労働省の適切な労務管理のポイントは、やむを得ない事情で新卒者の採用内定取消しや入職時期の繰下げを行うとき、あらかじめハローワーク等への通知が必要と説明しています。根拠は職業安定法施行規則35条です。
これは事業主が行う手続です。本人にメールしたから、学校に口頭で話したから、ということだけで同じ手続を済ませたとは言えません。新卒者は学校の就職窓口にも連絡し、求人を扱ったハローワークなどと情報をつなげます。自分が会社の届出書を代わりに作る話ではありません。
事前通知があることと、個別の内定取消しが有効なことも別です。会社がハローワークへ通知済みだと言っても、それが裁判上の有効性を保証するものではありません。通知の有無に加え、取消理由と契約の成立について確認を続けます。
企業名の公表と件数の公表は別の制度
厚生労働省の内定のQ&Aは、一定の場合に取消しの内容を公表できると説明しています。例として、2年度以上続けて行ったもの、同一年度内に10人以上に対して行ったもの、説明や就職先確保への支援が不十分なものなどが挙げられています。除外や個別の条件もあります。
すべての取消しについて自動的に企業名を公開する制度ではありません。統計で数えられた事業所が、そのまますべて企業名公表の対象になるわけでもありません。公表されていない会社だから問題がない、人数が少ないから相談できない、という判断にはつながりません。
通知を受けた日は同意の返事より先に記録を残す
電話や面談で知らされたら、日時、通知の内容、説明された理由をメモします。その後、会社に書面やメールで説明を求めます。求人画面や採用システムは後から閲覧できなくなることがあるため、自分に届いた内容を保存しておきます。
| 残す資料 |
確かめる内容 |
| 求人票・募集要項 |
当初の職種と条件 |
| 内定の通知 |
入社予定日と取消条件 |
| 自分の承諾記録 |
何にいつ承諾したか |
| 取消しの通知 |
通知日・理由・扱い |
| 会社とのやり取り |
説明や変更の経緯 |
| 支出の記録 |
入社準備で負担した費用 |
同意を求める文面と、単に通知を受け取ったことを示す文面は分けて読みます。自分から辞退したことにする書類、今後何も請求しないという条項、解決金の条件があれば、その意味を確認してから判断します。受領の連絡をするだけなのか、取消しや金銭条件に合意するのかを曖昧にしないことです。
会社に確認するときは、感情の説明を長くするより、答えてほしい事項を並べます。たとえば「【通知日】に受けた採用内定の取消しについて、具体的な理由、取消しの扱いとなる日、契約上の根拠、今後の対応を書面でご説明ください」と伝えます。送信した文面も保存します。
会社が返事をしないときも、資料が全部揃うまで相談を待つ必要はありません。現時点であるものを持参し、不足している資料は何か、次に会社へ何を確認するかを窓口で整理します。回答待ちの間に、手元の原本やデータを失わないようにします。
入社延期や条件変更を辞退の話に置き換えない
令和8年3月卒の公表資料では、入職時期の繰下げは2事業所・2人です。採用内定取消しとは別に集計されています。会社が採用する意思を残していると言っても、入社日や条件が変わるなら、自分の生活や次の応募に影響します。
入社日はそのままで就業を待つのか、入社日自体を後ろへ動かすのかを聞きます。いつから賃金が発生するか、待つ期間にどんな契約上の扱いになるかも確認します。自宅待機と言われただけで、無給になる、または必ず特定額が出ると決めることはできません。
当初の職種や勤務地、給与を変える提案も、元の内定と分けて保存します。変更条件に同意してほしいという提案なのか、元の条件では採用しないという通知なのかを確認します。会社が辞退扱いと言っていても、自分から申し出ていないなら、その経緯を相談窓口に伝えます。
自分の意思で辞退する連絡を送るときの文面は内定辞退の連絡で確認できます。ただし、会社からの取消しを受けた人が、その例文をそのまま送る必要はありません。自分が採用を断るのか、会社の撤回に異議があるのかを先に整理します。
中途採用は退職の手続と取消しへの対応を分ける
中途採用の内定でも、既に労働契約が成立しているなら、取消しは解雇として問題になります。新卒の通知件数に含まれていないから保護されない、という意味ではありません。厚生労働省の内定のQ&Aが説明する契約の成立と取消理由を、応募からの経緯に沿って確認します。
前の勤務先へ退職を申し出ているなら、その日付と退職予定日も記録します。新しい会社への承諾後に何をしたか、転居や入社準備でどんな負担が生じたかを整理します。ただし、退職済みなら給与や費用をすべて自動的に補償してもらえる、と断定することはできません。
前の会社で退職の扱いを確認することと、新しい会社の取消しを争うことは別々に進めます。退職を撤回できるかは、その経緯や会社とのやり取りによります。次の収入が必ず確保される前提で支出を増やさず、当面の生活と応募活動の時間も確保します。
学校・ハローワーク・労働相談を目的で使い分ける
新卒なら学校の就職窓口と、厚生労働省が案内する新卒の相談窓口に相談します。内定取消しの経緯を伝え、会社への確認と、次の仕事探しの支援を並行して進めます。卒業後の利用対象や支援内容は窓口で確認します。
契約の成立、取消理由、条件変更などのトラブルは、厚生労働省の総合労働相談も相談先です。新卒だけでなく中途採用の人も、どこに相談すればよいかを確認できます。金銭の請求や取消しの効力を争う対応が必要なら、法律の専門家への相談も検討します。
相談では【内定の通知日】【承諾日】【入社予定日】【取消通知日】【会社の説明】【希望する対応】を揃えます。仕事探しを優先したいのか、取消理由を確かめたいのか、元の条件での就業を求めたいのかも伝えます。窓口が違っても同じ経緯を説明できるよう、時系列のメモを用意します。
会社から解決案が届いたら条件を分けて読む
取消しの通知後に、別の配属先への採用、入社日の変更、金銭による解決などを提案されることがあります。返事をする前に、その提案で元の内定がどう扱われるかを確認します。元の契約を維持する変更なのか、元の内定を終了して別の契約を結ぶ話なのかで、読むべき書面が変わります。
別の職種への採用なら、仕事内容だけでなく賃金、勤務地、契約期間、入社日を確認します。勤務先が変わる提案なら、誰と雇用契約を結ぶのかも確かめます。元の会社から説明された条件が、そのまま新しい契約にも引き継がれるとは限りません。
金銭の提案なら、何に対する支払か、いつ支払うか、支払後に双方が何を求められなくなるかを読みます。提示額を受け取ることと、取消しに関する争いをすべて終えることが同じ書面に入っていることもあります。金額の大きさだけで判断せず、条項の意味がわからなければ相談先で確認します。
返事の期限を示されたら、その期限と相談の予定をメモします。書面を読める時間がないまま署名を求められたときは、持ち帰って内容を確かめたいと伝えます。合意する前の提案と、既に合意した内容は分けて保管します。別の仕事への応募を進めていても、元の取消しについて相談するための記録は残しておきます。
次の応募では提示条件と会社の実績を確かめる
取消しを受けたことだけで、自分の能力や応募先選びがすべて間違っていたとは言えません。次の選考では、入社予定日、採用条件、承諾後に残る手続を確認します。説明と書面が食い違ったときに、どの条件で契約するのかを聞き直します。
採用人数や定着の情報は、求人票と面接で確認します。会社が厚生労働省のしょくばらぼに職場情報を載せていれば、対象年度と対象者を読んで比較します。調べ方は企業研究のやり方で整理しています。
内定取消人数の産業別順位だけで、次の会社の採用が確実かは判断できません。自分に示された契約条件と、会社が公開している採用や働き方の実績を合わせて見ます。その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。