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健康診断は会社の義務:定期健診の11項目・費用・受けないとき

・ナギサコーポレーション(運営)

この記事の答え

  • 会社は常時使用する労働者に、1年以内ごとに1回⁠、11項目⁠の定期健康診断を行う。費用は会社が負担し、受診時間の賃金は労使で決める
  • 令和6年⁠の定期健康診断の有所見率は59.4%⁠。業種別では清掃と畜70.6%⁠、鉱業69.8%⁠、農林業67.9%⁠の順に高い
  • 結果の通知、医師の意見、必要な措置まで会社の仕事。入社前と在職中は、受診の時期と時間の扱いを確かめる

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健康診断は会社の義務です。労働安全衛生法66条⁠と労働安全衛生規則44条で、会社は常時使用する労働者に、1年以内ごとに1回⁠、定期に医師による健康診断を行うと決められています。検査は11項目で、費用は会社が負担します。受診している時間の賃金は、法律では決まっておらず、会社と働く人で決める扱いです。

令和6年⁠の定期健康診断で、何らかの所見があった人の割合(有所見率)⁠は59.4%でした。受けた人の半分を超えます。健診は受けて終わりではなく、結果を見た医師の意見と、会社の対応までがひと続きの仕組みです。

この記事の法令と資料は、2026年10月25日⁠に確認しました。入社するときの雇入れ時の健診は、入社前の健康診断⁠で分けて説明しています。

会社の義務は3つ⁠に分かれる

健康診断の決まりは、会社がすること、働く人がすること、健診のあとに会社がすることの3つ⁠に分かれます。

誰が 何をする 根拠
会社 医師による健康診断を行う 労働安全衛生法66条1項
働く人 会社が行う健康診断を受ける 同法66条5項
会社 結果を記録し、本人に知らせる 同法66条⁠の3、66条の6
会社 所見のある人について医師の意見を聴く 同法66条の4
会社 必要なら作業の転換や労働時間の短縮をする 同法66条の5

働く人の受診義務には例外があります。会社が指定した医師の健診を受けたくないときは、ほかの医師で同じ内容の健診を受け、その結果を証明する書面を会社に出せば足ります(66条5項ただし書)⁠。かかりつけの病院で受けたい人は、この形になります。

条文はe-Govの法令検索⁠で読めます。

定期健康診断の11項目

定期健診の項目は、労働安全衛生規則⁠の44条1項⁠に並んでいます。

番号 項目
1 既往歴と業務歴の調査
2 自覚症状と他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
4 胸部エックス線検査と喀痰検査
5 血圧の測定
6 貧血検査
7 肝機能検査
8 血中脂質検査
9 血糖検査
10 尿検査
11 心電図検査

出典:労働安全衛生規則44条1項(2026年10月25日時点の条文⁠)⁠。

省略できる項目と、次の改正での変更

身長、体重、腹囲、胸部エックス線と喀痰、貧血、肝機能、血中脂質、血糖、心電図は、厚生労働大臣が定める基準にもとづき、医師が必要でないと認めれば省略できます(44条2項)⁠。会社が自由に削れるわけではなく、判断するのは医師です。

45歳未満の人(35歳と40歳を除く)⁠の聴力は、医師が適当と認める方法の検査に代えられます(44条4項)⁠。若い年代の健診で聴力の測り方が違うのは、この決まりによるものです。

厚生労働省の健診のパンフレット(2026年4月版)⁠に⁠は⁠、令和9年4月1日から喀痰検査がなくなり、血清クレアチニン検査が加わる新しい項目表が載っています。2026年10月⁠の時点では、上の11項目⁠が今の決まりです。

対象になる人:パートや契約社員も入る

定期健診の対象は「常時使用する労働者」⁠で⁠す⁠。同じパンフレットは、契約期間が1年以上(予定を含む)⁠で⁠、1週間の労働時間が同じ業務をする通常の労働者の4分⁠の3以上の人と説明しています。

正社員だけの制度ではありません。週の労働時間が正社員の4分⁠の3以上で、1年以上働く予定のパートや契約社員は対象に入ります。自分が当たるかわからないときは、雇用契約書の契約期間と、週の所定労働時間を見て会社に聞きます。

深夜業を含む業務などに常時従事する人は、特定業務従事者として、配置替えのときと6か月以内ごとに1回⁠の健診になります(労働安全衛生規則45条)⁠。夜勤のある仕事に常時ついている人は、年1回ではなく6か月以内ごとに1回⁠の健診です。

雇入れ時の健診とは時期と目的が違う

雇入れ時の健診(労働安全衛生規則43条)⁠は⁠、入社するときに1回受けるものです。定期健診は、入社後に1年以内ごとに受けるものです。項目はほぼ同じですが、雇入れ時の健診には、医師の判断で項目を省く44条2項のような決まりがありません。3か月以内⁠に受けた健診の結果を出せば、その項目を省けるという決まりがあります(43条ただし書)⁠。

44条3項は、雇入れ時の健診を受けた人について、その日から1年間に限り、同じ項目を定期健診で省略できるとしています。入社の時期によっては、最初の定期健診の一部が省かれることがあります。

入社前に自分で受けて診断書を出すときの費用や提出方法は、入社前の健康診断⁠で確認できます。

費用は会社、受診時間の賃金は会社ごとの決め方

費用について、厚生労働省が掲載する昭和47年⁠の施行通達(基発第602号)⁠の第66条関係は、法律で事業者に実施の義務を課している以上、健康診断の費用は当然、事業者が負担すべきものとしています。

受診している時間の賃金は、扱いが違います。同じ通達と厚生労働省のよくある質問は、一般健康診断の受診時間の賃金を、労使が協議して決めるものとしています。そのうえで、会社が払うことが望ましいとしています。

区分 費用 受診時間の賃金
一般健康診断(雇入れ時・定期など) 事業者が負担 労使の協議で決める。払うのが望ましい
特殊健康診断(有害業務) 事業者が負担 労働時間。時間外なら割増賃金

出典:厚生労働省、昭和47年9月18日基発第602号⁠の第66条関係と、労働基準関係のよくある質問。

勤務時間中に会社の中で受けるのか、休みの日に外の病院へ行くのかで、気になる点が変わります。外で受けるよう言われたときは、その時間が勤務になるか、交通費が出るかを先に聞きます。就業規則や健診の案内文を見て、書いていなければ担当者に確かめます。

会社が決めた健診を受けずに、自分の希望で人間ドックを受けた場合や、法定外の検査を足した場合は、通達の説明と同じ扱いになるとは限りません。費用の補助があるかは、会社の制度で決まります。

受けないとどうなるか

会社が定期健診を行わないと、労働安全衛生法120条⁠により、50万円以下⁠の罰金の対象になります。66条1項⁠の違反が、この条文に挙がっています。

働く人にも受診の義務がありますが、120条⁠の対象に66条5項(働く人の受診義務)⁠は入っていません。ただ、就業規則で健診の受診を決めている会社では、断り続けると社内の規則の問題になりえます。都合が合わないなら、受けない理由ではなく、受けられる日を相談します。

忙しくて受けられない状態が毎年続くなら、それ自体が働き方の問題です。残業の多さが原因なら、残業の少ない業界⁠の記事にある上限の決まりも合わせて見ておきます。

健診のあとに会社がすること

健診の結果は、会社が本人に知らせます(労働安全衛生法66条⁠の6、労働安全衛生規則51条⁠の4⁠)⁠。会社は健康診断個人票を作り、5年間保存します(同規則51条)⁠。

所見があった人については、会社が医師の意見を聴きます。医師の意見を踏まえて、必要があれば、働く場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数を減らすなどの措置をとります(66条の4、66条の5)⁠。保健指導は、会社の努力義務です(66条の7)⁠。

常時50人以上⁠の労働者がいる事業場は、定期健診の結果を労働基準監督署へ報告します(労働安全衛生規則52条)⁠。この報告を集めたものが、次の節の統計です。

血圧・脂質・血糖・腹囲がそろって引っかかったとき

労災保険には、定期健診の結果を受けて使える「二次健康診断等給付」⁠があります。労働者災害補償保険法26条⁠と同法施行規則18条⁠の16で、次の4つ⁠の検査すべてで異常の所見があると診断された人が対象とされています。

一次健診の検査 中身
血圧 血圧の測定
血中脂質 LDL・HDLコレステロール、中性脂肪のいずれか
血糖 血糖検査
腹囲・BMI 腹囲の検査かBMIの測定

出典:労働者災害補償保険法施行規則18条⁠の16第1項⁠。

対象になると、脳や心臓の状態を詳しく調べる二次健診と、医師や保健師の特定保健指導を受けられます。二次健診は1年度に1回までです。すでに脳血管や心臓の病気の症状がある人は除かれます。

請求は、一次健診を受けた日から3か月以内に、健診を受ける病院を通して出します(同規則18条の19)⁠。一次健診の日付と結果が一次健診のものであることは、会社の証明を受けます。4項目⁠がそろって引っかかったら、結果票が届いた時点で会社の担当者に相談します。

長時間労働の人には、健診とは別に医師の面接指導の仕組みがあります。産業医との面談は、産業医面談とは⁠で説明しています。

業種別の有所見率ランキング:清掃と畜が70.6%

厚生労働省の定期健康診断結果調から、令和6年⁠の業種別の有所見率を高い順に並べました。有所見率は、健診を受けた人のうち、何らかの項目で所見があった人の割合です。

順位 業種 有所見率
1 清掃と畜 70.6%
2 鉱業 69.8%
3 農林業 67.9%
4 運輸交通 66.0%
5 官公署 65.6%
6 建設業 65.1%
7 商業 62.9%
8 貨物取扱 62.7%
9 通信業 62.6%
10 畜産水産 59.9%
11 他の事業 58.8%
12 金融広告 58.7%
13 教育研究 58.3%
14 接客娯楽 58.1%
15 製造業 58.0%
16 保健衛生 55.8%
17 映画演劇 54.1%

出典:厚生労働省、令和6年定期健康診断実施結果の第8表(業種別)。e-Statの業種別の表⁠の所見のあった者の人数と受診者数から出した割合を、小数第2位⁠で四捨五入しています。

業種の名前は、労働基準法の別表第一の事業区分にもとづく資料の呼び方です。商業は物品の販売や保管、理容などの事業、保健衛生は病気の人の治療や看護などの事業、清掃と畜は焼却・清掃・と畜場の事業です。日本標準産業分類の業種とは区切り方が違います。

細かい区分では、運輸交通の中の道路旅客(バス・タクシーなど)⁠が73.9%⁠、道路貨物が67.5%でした。同じ運輸交通でも、鉄道等は48.8%です。製造業の中では電気ガスが68.1%⁠、輸送機械が53.6%⁠と差があります。

数字の読み方の注意

この集計は、常時50人以上⁠の事業場が報告した定期健診の結果です。小さな会社の健診は入っていません。

有所見率は、その業種の仕事が体に悪いという意味の数字ではありません。年齢の高い人が多い業種ほど、血圧や血中脂質の所見は出やすくなります。業種ごとの年齢構成は、この表では揃えていません。

所見ありは、すぐに治療が要るという意味でもありません。どの項目で、どの程度の値だったかは、本人の結果票で医師の判定を見ます。

有所見率の推移:令和6年⁠が最も高い

同じ資料の年次別の表で、全体の有所見率の動きを見ます。

年 有所見率
令和元年 57.0%
令和2年 58.5%
令和3年 58.7%
令和4年 58.3%
令和5年 58.9%
令和6年 59.4%

出典:厚生労働省、令和6年定期健康診断実施結果の第7表(年次別)。e-Statの年次別の表⁠の値を、小数第2位⁠で四捨五入しています。令和4年⁠は規則改正の前後を加重平均した推計値と、表の注にあります。

平成7年⁠の36.4%から、ほぼ毎年上がってきました。令和6年⁠の59.4%は、平成7年からの表の中で最も高い値です。令和6年⁠の受診者は12,954,936人で、所見があった人は7,700,820人です。

項目別に見ると、令和6年⁠は血中脂質31.2%⁠、血圧18.4%⁠、肝機能16.2%⁠の順に高い値でした。一番多い所見は、血液検査でわかるものです。

健診の結果は会社にどこまで伝わるか

定期健診は会社が行う健診なので、結果は会社に届き、会社が記録を保存します。会社は医師の意見を聴くためにも、結果を見る立場にあります。

そのぶん、扱い方にも決まりがあります。労働安全衛生法104条は、会社が働く人の心身の状態に関する情報を集めて使うのは、健康の確保に必要な範囲に限るとしています。本人の同意など正当な理由がある場合を除きます。健診の結果を人事評価に使ってよいという決まりはありません。

ストレスチェックは別の扱いです。結果は本人に通知され、本人の同意なしに会社へ渡すことはできません(66条の10第2項)⁠。健診と一緒に案内されても、仕組みが違います。

今の会社と応募先で確かめること

健診の扱いは、就業規則や社内の案内で会社ごとに違います。次の点を確かめておくと、入社後に困りません。

確かめること 聞き方の例
受診の時期と場所 定期健診は毎年何月ごろ、社内と外部のどちらで受けますか
受診時間の扱い 受診している時間は勤務扱いですか
費用と交通費 外部で受けるとき、費用と交通費の精算はどうしますか
夜勤の健診 夜勤がある場合、年2回⁠の健診はどう受けますか
再検査の扱い 再検査になったとき、費用の補助や休みの扱いはありますか
結果の扱い 結果は誰が見て、どこで保存されますか

再検査や精密検査は、法律で会社に実施が義務づけられた健診とは別のものです。費用や勤務の扱いは、会社の制度で決まります。

その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる

健診の決まりは法律で全社共通ですが、受けやすさは会社によって違います。残業が多く、休みの日に健診へ行くしかない職場もあります。

厚生労働省のしょくばらぼでは、掲載企業の残業時間や有給休暇の取得状況を見られます。働き方の数字を見てから、健診の時期や受診時間の扱いのように公開されていない点は、面接や入社前の連絡で聞きます。

よくある質問

健康診断は会社の義務ですか?

義務です。労働安全衛生法66条⁠と労働安全衛生規則44条で、会社は常時使用する労働者に、1年以内ごとに1回⁠、定期に医師による健康診断を行うと決められています。働く人の側にも、会社が行う健康診断を受ける義務があります。

定期健康診断の項目は何ですか?

労働安全衛生規則44条⁠の11項目です。既往歴と業務歴、自覚症状と他覚症状、身長・体重・腹囲・視力・聴力、胸部エックス線と喀痰、血圧、貧血、肝機能、血中脂質、血糖、尿、心電図です。身長や腹囲などは、医師が必要でないと認めれば省略できます。

健康診断の費用は誰が払いますか?

厚生労働省が掲載する昭和47年⁠の通達(基発第602号)⁠は⁠、法律で実施を義務づけた健康診断の費用は事業者が負担すべきものとしています。自分の希望で追加した検査は、この説明と同じ扱いになるとは限りません。

健康診断を受けている時間の給料は出ますか?

一般健康診断の受診時間の賃金は、厚生労働省のFAQで「労使間の協議によって定めるべきもの⁠」⁠とされ、会社が払うことが望ましいとされています。有害業務の特殊健康診断は労働時間で、賃金の支払いが必要です。

パートやアルバイトも定期健康診断の対象ですか?

厚生労働省のパンフレットでは、常時使用する労働者を、契約期間が1年以上(予定を含む)⁠で⁠、1週間の労働時間が同種の業務の通常の労働者の4分⁠の3以上の人と説明しています。この条件に当たれば対象です。

健康診断で所見がある人はどのくらいいますか?

厚生労働省の定期健康診断結果調では、令和6年⁠の有所見率は59.4%です。受診者12,954,936人⁠のうち7,700,820人⁠に所見がありました。常時50人以上⁠の事業場が労働基準監督署に報告した結果の集計です。

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