介護離職とは、家族の介護や看護のために仕事を辞めることです。総務省の令和4年就業構造基本調査では、2021年10月から2022年9月の1年間に、介護・看護のために前の仕事を辞めた人は10万6,200人でした。女性が8万人、男性が2万6,200人です。年齢では60〜64歳が最も多く、50代がそれに続きます。
介護をしながら働いている人は364.6万人います。2025年4月からは、社員が介護に直面したと申し出たときに、会社が制度を一人ひとりに知らせ、使う意向を確かめることが義務になりました。辞めるかどうかを決める前に、使える制度を会社から説明してもらえます。
数字は総務省統計局の公表資料と e-Stat の表で、制度は厚生労働省の公表で、2026年10月25日に確かめました。介護休業と介護休暇の日数や給付金は、介護休暇と介護休業の違いで詳しく説明しています。
介護離職の数字を出している調査
使う資料は、総務省の令和4年就業構造基本調査です。5年ごとに、15歳以上の人の働き方を調べる国の調査です。令和4年は全国の約54万世帯(15歳以上の世帯員約108万人)を対象に、2022年10月1日現在の状態を調べました。
前の仕事を辞めた理由を聞いていて、その中に「介護・看護のため」があります。この記事の「介護離職」は、この理由で前職を辞めた人の数です。辞めた時期で、過去1年間と過去5年間の2つの数え方があります。
| 数え方 |
人数 |
| 過去1年間(2021年10月〜2022年9月)に辞めた人 |
10.6万人 |
| 過去5年間(2017年10月〜2022年9月)に辞めた人 |
47.4万人 |
出典:総務省統計局、令和4年就業構造基本調査の結果の概要の表8-2と表8-4。
「年に約10万人」と言われるのは、過去1年間の数字です。過去5年間の47.4万人を5で割った数ではありません。
介護離職の推移:2017年から増加に転じた
| 調査年 |
過去1年間に辞めた人 |
うち今は働いている |
うち今は働いていない |
| 2007年 |
14.5万人 |
2.9万人 |
11.6万人 |
| 2012年 |
10.1万人 |
1.8万人 |
8.3万人 |
| 2017年 |
9.9万人 |
2.5万人 |
7.5万人 |
| 2022年 |
10.6万人 |
2.3万人 |
8.3万人 |
出典:総務省統計局、令和4年就業構造基本調査の結果の概要・図8-2。「今は働いている」は調査時点の有業者、「今は働いていない」は無業者。
結果の概要は、2007年から2017年にかけて減り続けていたが、2017年から2022年にかけて増加に転じたとまとめています。2022年は5年前より0.7万人多い数字です。増えた分は、調査時点で働いていない人で、7.5万人から8.3万人になりました。働いている人は2.5万人から2.3万人に減っています。
どの年も、辞めた人の8割前後が調査時点で仕事をしていません。介護で辞めたあと、調査の時点まで次の仕事に就いていない人が多いということです。
介護離職の年齢別ランキング
e-Stat に公表されている第136表から、過去1年間に介護・看護のために辞めた人を年齢別に並べました。多いのは60代前半と50代です。
| 順位 |
年齢 |
人数 |
うち男性 |
うち女性 |
| 1 |
60〜64歳 |
22,800人 |
4,800人 |
17,900人 |
| 2 |
55〜59歳 |
18,300人 |
5,000人 |
13,400人 |
| 3 |
50〜54歳 |
16,100人 |
2,600人 |
13,600人 |
| 4 |
65〜69歳 |
12,600人 |
4,000人 |
8,600人 |
| 5 |
45〜49歳 |
11,200人 |
1,600人 |
9,500人 |
| 6 |
70〜74歳 |
6,200人 |
1,900人 |
4,300人 |
| 7 |
40〜44歳 |
6,000人 |
1,000人 |
5,000人 |
| 8 |
75〜79歳 |
4,600人 |
2,100人 |
2,500人 |
| 9 |
25〜29歳 |
2,500人 |
900人 |
1,600人 |
| 10 |
35〜39歳 |
2,400人 |
600人 |
1,800人 |
| ― |
総数 |
106,200人 |
26,200人 |
80,000人 |
出典:総務省、令和4年就業構造基本調査の第136表(e-Stat の全国の表)。前職の離職時期が令和3年10月以降、前職の離職理由が介護・看護のため。百人単位の推計値で、男女の合計が総数と一致しない行があります。
45〜64歳の4つの年齢階級で6万8,400人になり、全体の6割を超えます。
女性は45〜49歳から60〜64歳まで、各年齢階級で9,500人から17,900人が辞めています。男性は55〜59歳の5,000人が最も多い年齢です。女性の総数は男性の3倍を超えます。
20代後半や30代でも、2,000人台の人が介護・看護を理由に辞めています。若い人の介護離職がゼロというわけではありません。
辞めた人の働き方:非正規が3分の2
辞めた10万6,200人のうち、前の仕事で雇われていた人は10万500人です。その内訳は、正規の職員・従業員が3万2,000人、非正規の職員・従業員が6万7,700人でした(同じ第136表)。
男性は正規1万2,800人、非正規1万1,100人とほぼ半々です。女性は正規1万9,200人、非正規5万6,500人で、非正規が7割を超えます。パートや契約社員でも、条件を満たせば介護休業や介護休暇を使えます。有期契約の人の条件は介護休暇と介護休業の違いで確かめます。
介護をしながら働く人:年齢別の人数
辞めずに働き続けている人も多くいます。介護をしている人は628.8万人で、そのうち働いている人(有業者)は364.6万人、58.0%です。
| 順位 |
年齢 |
介護をしながら働く人 |
介護をしている人に占める割合 |
| 1 |
55〜59歳 |
82.2万人 |
74.4% |
| 2 |
50〜54歳 |
70.4万人 |
77.4% |
| 3 |
60〜64歳 |
62.8万人 |
62.3% |
| 4 |
45〜49歳 |
39.5万人 |
77.2% |
| 5 |
65〜69歳 |
31.0万人 |
42.3% |
| 6 |
70歳以上 |
23.9万人 |
18.9% |
| 7 |
30〜39歳 |
21.8万人 |
75.5% |
| 8 |
40〜44歳 |
20.0万人 |
75.9% |
| 9 |
30歳未満 |
13.1万人 |
63.6% |
出典:総務省統計局、令和4年就業構造基本調査の結果の概要・表7-2。2022年。
5年前の2017年の調査では、介護をしながら働く人は346.3万人、割合は55.2%でした。介護をしている人の数はほぼ同じで、働きながら介護をする人の割合が上がっています。
男性で介護をしている人のうち働いているのは67.0%、女性は52.7%です。50〜54歳では男性88.5%、女性71.8%が働きながら介護をしています。
勤め先の規模別:介護休業などの制度を使った人の割合
介護をしている雇用者(会社などに雇われて働く人)321万9,500人のうち、介護休業や介護休暇、短時間勤務などの制度を使った人は37万2,300人です。勤め先の規模別に、制度を使った人の割合を高い順に並べました。
| 順位 |
勤め先の規模 |
介護をしている雇用者 |
制度を使った人 |
割合 |
| 1 |
官公庁など |
383,200人 |
73,300人 |
19.1% |
| 2 |
1,000人以上 |
704,300人 |
104,500人 |
14.8% |
| 3 |
500〜999人 |
213,900人 |
26,600人 |
12.4% |
| 4 |
100〜299人 |
398,800人 |
45,600人 |
11.4% |
| 5 |
300〜499人 |
171,100人 |
16,100人 |
9.4% |
| 6 |
30〜99人 |
446,500人 |
38,200人 |
8.6% |
| 7 |
1〜29人 |
839,200人 |
61,300人 |
7.3% |
| ― |
総数 |
3,219,500人 |
372,300人 |
11.6% |
出典:総務省、令和4年就業構造基本調査の第216表(e-Stat、上と同じ全国の表の一覧)。制度は介護休業、短時間勤務、介護休暇、残業の免除・制限、フレックス・時差出勤、その他。割合は制度を使った人 ÷ 介護をしている雇用者で計算。
29人以下の職場では、制度を使った人は7.3%です。官公庁などの19.1%と2.6倍の差があります。
使われている制度の種類:介護休暇が最も多い
| 順位 |
使った制度 |
人数 |
うち正規 |
うち非正規 |
| 1 |
介護休暇 |
144,800人 |
106,000人 |
37,000人 |
| 2 |
短時間勤務 |
74,900人 |
33,100人 |
37,500人 |
| 3 |
フレックス・時差出勤 |
73,300人 |
54,300人 |
15,300人 |
| 4 |
その他の制度 |
67,300人 |
37,300人 |
23,900人 |
| 5 |
介護休業 |
50,700人 |
33,500人 |
15,600人 |
| 6 |
残業の免除・制限 |
24,400人 |
13,200人 |
11,100人 |
出典:総務省、令和4年就業構造基本調査の第216表。介護をしている雇用者のうち、各制度を使った人(複数の制度を使った人はそれぞれに数えられます)。正規と非正規の合計は、総数と一致しません。
介護休業を使った人は、介護をしている雇用者の1.6%にとどまります。介護休業は対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れます。厚生労働省は、介護の体制を整えるための休業と説明しています。介護休暇は年5日(対象家族が2人以上なら10日)までで、時間単位でも取れます。通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせには、介護休暇や短時間勤務を組み合わせて使います。
正規の職員・従業員で介護をしている156万7,800人のうち、制度を使った人は23万4,800人(15.0%)です。非正規の141万3,800人では12万2,300人(8.7%)でした。非正規で働く人のほうが制度を使っていない割合が高く、辞めた人に非正規が多いこととも重なります。
2025年4月から会社に義務づけられたこと
育児・介護休業法の改正で、2025年4月1日から次のことが会社の義務になりました。厚生労働省の法改正のポイントと改正内容の解説で確かめました。
| 会社の義務 |
内容 |
| 個別の周知・意向確認 |
介護に直面したと申し出た社員に、制度・申出先・介護休業給付を個別に知らせ、使う意向を確かめる |
| 早い段階での情報提供 |
40歳になる年度か、40歳の誕生日から1年の間に、制度・申出先・給付を知らせる |
| 雇用環境の整備 |
研修、相談窓口、利用事例の提供、利用を勧める方針の周知のうち、いずれかを行う |
| 介護休暇の対象の拡大 |
勤続6か月未満の人を労使協定で外す仕組みをなくす |
介護をする社員がテレワークを選べるようにすることは、努力義務です。
個別の周知と意向確認の進め方
方法は、面談(オンライン可)、書面、FAX、電子メールなどのいずれかです。FAXと電子メールは、社員が希望した場合に限ります。厚生労働省は、取得を控えさせるような周知や意向確認は認められないとしています。
時期も決まっています。たとえば介護休業を始めたい日の1か月以上前に申し出たときは、始めたい日の2週間前までに意向確認を行います。日々雇われる人を除き、有期契約の人も対象です。
40歳での情報提供
介護が始まる前に制度を知ってもらうためのものです。対象年齢の社員を集めて、年度の初めなどにまとめて説明してもよいと厚生労働省は説明しています。介護保険制度もあわせて知らせることが望ましいとされています。
40歳前後で転職する人は、前の会社でも次の会社でも、この説明を受けずに過ぎることがあります。入社後に案内がなければ、人事の担当に介護の制度の資料をもらっておきます。
介護離職を避けるために、辞める前に確かめること
介護が始まった直後は、先の見通しが立たず、辞めるしかないと考えがちです。辞める前に、次の順で確かめます。
- 会社に介護に直面したことを伝え、個別の周知と意向確認を受ける
- 介護休業、介護休暇、短時間勤務、残業の免除などのうち、どれが今の状況に合うかを聞く
- 介護休業を使うときは、ハローワークの介護休業給付を受けられるかを確かめる
- 地域包括支援センターやケアマネジャーに、介護サービスで仕事の時間を確保できるかを相談する
- 職場で相談がうまく進まないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する
厚生労働省の改正内容の解説は、介護休業などの申出・取得を理由に、解雇や退職の強要、正社員からパートへの契約変更の強要などの不利益な取扱いをすることは禁止されているとしています。2025年4月からは、介護が必要な状況になったと申し出たこと自体を理由とする不利益な取扱いの禁止も加わりました。会社への伝え方は、介護の状況、必要な休み、続けたい働き方の3つに分けると話がまとまります。
体調を崩しているときは、仕事と介護の両立を考える前に休むことも選べます。休職の進め方は適応障害で休職するときでも扱っています。
転職先を選ぶときは、介護の制度の使われ方を聞く
これから介護が始まりそうな人は、応募先で制度があるかだけでなく、実際に使われているかを確かめます。
| 確かめること |
聞き方の例 |
| 制度を使った人がいるか |
介護休暇や介護のための短時間勤務を使った方はいますか |
| 相談窓口 |
介護の相談はどの部署にすればよいですか |
| 残業と休日 |
配属先の月の残業時間と、急な休みへの対応を教えてください |
| テレワーク |
介護のために在宅勤務を選べる仕組みはありますか |
制度を使った人の数は、職場の大きさで変わります。小さい職場で実績がないのは、まだ対象の人がいなかっただけのこともあります。数だけで判断せず、相談したときの対応を聞きます。
退職の理由として介護がどれくらい挙がるかは、退職理由ランキングでも別の調査から見ています。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる
全国の数字は、介護離職がどの年齢で、どんな働き方の人に多いかを知るための物差しです。その会社で介護の制度が使われているか、残業や休みの取りやすさはどうかは、求人票、面接、入社前の労働条件の説明で確かめます。
厚生労働省のしょくばらぼでは、掲載している企業の残業時間、有給休暇の取得、平均勤続年数を見られます。介護が始まっても働き続けられる職場かどうかを、数字と面接の答えの両方で比べます。