内定承諾の期限は、法律では決まっていません。返事の期限は会社が決めるもので、1週間のこともあれば、1か月待つ会社もあります。延ばしてもらえるかは、頼んでみないとわかりません。承諾した後でも辞退はできます。期間の定めのない雇用は、申し入れの日から2週間で終わると民法627条が定めているからです。
ただ、辞退できるからといって、承諾を軽く出してよいわけではありません。会社はその人の入社を前提に採用を締めます。この記事では、期限を延ばしてもらう頼み方、承諾した後の辞退の決まり、政府の就活ルールの日程と、内閣府・文部科学省の令和7年度の調査を見ます。法令と資料は2026年10月25日に確かめました。
辞退するときのメールの書き方は内定辞退のメールに例文をまとめています。会社の側から取り消されたときは内定取り消しとはを見てください。
内定承諾の期限は会社が決める
内定を出すときに、会社は「【日付】までにお返事ください」と期限を示すことがあります。この期限を定めた法律はありません。1週間、2週間といった長さは、会社の採用の予定で決まります。
政府の就職・採用活動の日程にも、承諾の返事の期限は書かれていません。就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議の日程の考え方(令和7年12月26日)は、2027年度の卒業・修了予定者について次の日程を原則としています。
| 活動 |
日程 |
| 広報活動の開始 |
卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降 |
| 採用選考活動の開始 |
卒業・修了年度の6月1日以降 |
| 正式な内定日 |
卒業・修了年度の10月1日以降 |
出典:就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議、2027年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方の3。
同じ資料は、この要請は企業の採用活動を法的に拘束するものではないとしています。実際には10月より前に内々定を出す会社が多く、内々定の段階で承諾の返事を求められることがあります。
内々定はいつごろ出ているか
同じ日程の考え方は、内閣府の学生への調査などをもとに、4月までに累計で学生の約9割が採用面接を受け、約7割が内々定を得ていると書いています。6月までには、累計で約9割の学生が内々定を受けています。正式な内定日の10月1日よりずっと前に、承諾するかどうかを決める場面が来るということです。
学生が就職活動が終わったと考える時期は、「内々定をもらった企業の中から就職先を決定した時」と「志望度の高い企業から内々定をもらった時」で合わせて約6割でした。「内定式に出た時・正式な内定通知を受けた時」は1割弱にとどまります。多くの人にとって、承諾の返事が実際の区切りになっています。
内々定と内定の違い
厚生労働省の内定のQ&Aでは、採用内定に法的な定義はないとしたうえで、一般には、始まりの日と取り消しの事由を付けた労働契約が成立した状態を指すことが多いと説明しています。
内々定は、多くの場合、まだ労働契約を結んだという認識には至っていないと考えられるとしています。ただし、拘束の度合いが強ければ内定と認められることもあり得るとしています。呼び方より、会社とどんな約束を交わしたかで扱いが変わります。
期限を延ばしてもらう頼み方
ほかの会社の選考の結果を待ちたいときは、期限の前に延長を頼みます。期限を過ぎてから連絡すると、辞退したものとして扱われることがあります。頼むときに伝えることは、次の4つです。
- 内定へのお礼
- 返事を待ってほしい理由(ほかの選考の結果を待っている、家族と相談したいなど)
- いつまでなら返事ができるか(具体的な日付)
- 延ばせないときは、その旨を教えてほしいこと
ほかの会社の選考を待つ理由は、正直に伝えて構いません。ぼかして伝えると、何日待てばよいのかが会社にわかりません。
電話とメールの例
電話で頼み、内容をメールでも残すと、言った・言わないを防げます。
【会社名】人事部 【担当者名】様
このたびは内定のご連絡をいただき、ありがとうございました。
お返事の期限を【日付】と伺っておりますが、選考中の企業の結果が【日付】に出る予定です。
大変恐縮ですが、【日付】までお返事をお待ちいただくことはできますでしょうか。
難しい場合は、その旨をお知らせいただけますと幸いです。
【氏名】
延ばしてもらえないこともあります。そのときにどちらを選ぶかを、頼む前に決めておきます。決めずに頼むと、断られたその場で迷います。
承諾した後の辞退:民法627条と厚生労働省の解説
内定の承諾は、入社の約束です。それでも辞退はできます。民法627条1項は、期間の定めのない雇用は、各当事者がいつでも解約の申し入れができ、申し入れの日から2週間で終わると定めています。
厚生労働省の内定のQ&Aでは、内定者からの辞退は基本的に問題ないものの、それがあまりに信義則に反するような場合は、損害賠償を求められる可能性もあり得るとしています。一方で、労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできないため、責任は損害賠償にとどまるとも説明しています。
内々定の辞退については、職業選択の自由(憲法22条1項)があるため、辞退が違法になることはほとんど考えにくいとしています。
辞退を決めたら早く伝える
承諾した後に辞退するなら、決めた時点ですぐに伝えます。会社は、その人の分の採用をやめていることがあります。連絡が遅れるほど、会社の補充が難しくなります。
まず電話で採用の担当者に伝え、その後にメールで残します。担当者に電話がつながらないときは、先にメールで伝え、改めて電話をかけます。理由は細かく書かなくても構いません。お世話になったお礼と、辞退するという結論をはっきり書きます。入社前の研修などで会社が費用を出している場合も、辞退した後にその返還を求められたときは、すぐに払わず内容を確かめます。
承諾書に書かれていることを読む
内定承諾書は、会社ごとに書き方が違います。入社を約束する一文のほかに、卒業できなかったときの扱い、提出する書類、入社前の研修への参加などが書かれていることがあります。署名の前に全文を読み、わからない言葉は人事の担当者に聞きます。
「承諾後の辞退は認めない」と書かれた書面があっても、厚生労働省の解説は、労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできないとしています。ただ、書かれている内容に納得できないまま署名すると、後で会社と話がこじれやすくなります。気になる一文があれば、出す前に意味を確かめます。
学生はどう理解しているか:内閣府の令和7年度調査
内閣府の学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査は、大学4年生と大学院2年生に就職活動の実態を聞いています。令和7年度(2025年度)の有効回答は4,415人でした。資料は調査の概要と報告書の全体版にあります。
全体版には、就職活動に関わる法律について、正しいと思うものを聞いた結果があります。
| 順位 |
学生に示した文 |
正しいと思う(今年度) |
2024年度 |
2023年度 |
| 1 |
内定と引き換えにオワハラをしてはならない |
97.2% |
95.9% |
96.3% |
| 2 |
内々定に「入社する」と伝えた後でも辞退できる |
94.9% |
94.6% |
94.1% |
| 2 |
セクハラ・オワハラで企業が脅迫罪や強要罪に問われることがある |
94.9% |
94.4% |
94.3% |
| 4 |
内定期間中の研修について、辞退後に企業が費用の返還を求めることはできない |
85.9% |
82.3% |
84.3% |
| 5 |
内定承諾書に法的拘束力はなく、提出後も辞退できる |
77.8% |
76.8% |
74.3% |
| 6 |
内定に「入社する」と伝えた後でも辞退できる |
77.6% |
77.3% |
73.6% |
出典:内閣府、学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査(令和7年度)報告書の全体版、⑧就職活動に関連する法律についての理解。今年度は全体3,285人の回答。文は資料の表現を短くしたもの。
学生が「正しい」と思っている割合で、法律の解釈そのものを示した表ではありません。内定の後の辞退については、約2割の学生が「できない」と考えています。内々定と内定で、辞退できると思う割合が17ポイント以上違います。
承諾書を出したら辞退できないと思って、迷ったまま急いで出したり、反対に出すのを避けて内定を失ったりすることがあります。承諾書の性質と、辞退するときの伝え方を先に知っておけば、期限の前に落ち着いて決められます。
オワハラの実態:内定承諾書の提出を求める相談が最多
同じ内閣府の調査では、内々定を1社以上から受けた学生のうち、8.3%がオワハラを受けたことがあると答えました。2023年度と2024年度はどちらも9.4%でした。調査は、オワハラを「企業等から、あなたの意思に反して他の企業等への就職活動の終了を強要するようなハラスメント行為」と示して聞いています。
大学の側の数字もあります。文部科学省の大学等への調査(令和7年度就職・採用活動に関する調査結果、令和8年3月)では、学生からオワハラの相談を受けたことがある大学等は26.8%でした(回答977校)。承諾書を求められても、出すかどうか、いつ出すかは自分で決められます。期限が短すぎて決められないときは、延ばしてもらえるかを頼み、あわせて大学に相談します。
困ったときの相談先
政府の日程の考え方では、都道府県労働局とハローワークも学生からの相談を受け付け、事実を確かめたうえで対処するとしています。大学のキャリアセンターにも相談できます。内閣府の調査では、オワハラを受けた学生のうち実際に相談したのは50.8%でした。一人で抱えず、期限の前に相談します。
期限までに決められないときの決め方
二つの会社で迷うときは、気持ちの強さではなく、同じ項目で並べて比べます。項目をそろえると、何が決め手になるかが見えます。
| 比べる項目 |
【会社A】 |
【会社B】 |
| 入社直後の仕事 |
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| 勤務地と転勤の範囲 |
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| 基本給と賞与の実績 |
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| 年間休日と残業の時間 |
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| 3年後に任される仕事 |
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空いている欄があれば、その会社に聞くことです。聞けば埋まる欄なら、期限の前に人事の担当者に質問します。質問への答え方も、会社を選ぶ材料になります。
比べる項目そのものが決まらないときは、就活の軸を先に書き出します。譲れない条件が一つ決まれば、迷っている二社のどちらが合うかを判断しやすくなります。
承諾の前に確かめること:労働条件の明示
承諾の返事をする前に、給与、勤務地、仕事の内容を書面で確かめます。会社は労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。明示された条件が事実と違うときは、すぐに契約を解除できます(同条2項)。
| 確かめる項目 |
見る書類・聞くこと |
| 給与 |
基本給と手当の内訳、固定残業代の有無 |
| 勤務地 |
入社直後の勤務地と、変更の範囲 |
| 仕事の内容 |
入社直後の業務と、変更の範囲 |
| 入社日 |
新卒は4月1日か、転職は今の会社を辞められる日 |
| 承諾の方法 |
承諾書の提出か、メールの返事で足りるか |
内定通知書との違いは労働条件通知書の記事で説明しています。書面が出てこないまま承諾を求められたら、先に条件を書面でもらえるか聞きます。
転職の内定では、退職日とあわせて相談する
転職では、今の会社をいつ辞められるかで入社日が決まります。承諾の期限を延ばしてもらうときは、入社できる日も一緒に伝えます。退職の申し出から引き継ぎまでの流れは退職は何日前にまとめています。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる
承諾の期限を延ばすか、辞退するかを決めるときは、会社どうしを同じ項目で比べます。給与や休みは求人票と労働条件通知書、配属や働き方は面接での質問で確かめます。
厚生労働省のしょくばらぼでは、掲載している企業の新卒の採用数と離職者数、残業時間、有給休暇の取得を見られます。迷っている会社が載っていれば、同じ表に書き出して比べます。