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給料が遅れた・払われない:賃金支払いの5原則と請求方法

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この記事の答え

  • 賃金は労働基準法24条で、通貨で、直接労働者に、全額を、毎月1回以上⁠、一定の期日を定めて払う。支払日に払われなければ、それだけで24条⁠の問題になる
  • 辞めた人の未払賃金には、退職日の翌日から年14.6%⁠の遅延利息がつく(賃金支払確保法6条)⁠。在職中は民法の法定利率で、令和8年4月から令和11年3月までは年3%⁠。賃金の請求権の時効は当分の間3年
  • 会社が倒産したときは未払賃金立替払制度がある。令和7年度は2,223企業、28,987人⁠に118億85百万円が立替払された

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給料が支払日に入っていない、何度頼んでも一部しか払われない。こうしたときの基準は労働基準法24条です。賃金は、通貨で、直接労働者に、全額を、毎月1回以上⁠、一定の期日を定めて払うと決まっています。期日に払われなければ、それだけで24条⁠の問題になります。

辞めた人の未払賃金には、退職日の翌日から年14.6%⁠の遅延利息がつきます(賃金支払確保法6条)⁠。在職中の遅れには民法の法定利率が使われ、令和8年4月から令和11年3月までは年3%です。賃金の請求権の時効は当分の間3年で、古い分から消えていきます。

会社が倒産して払えなくなったときは、国が一部を立て替える未払賃金立替払制度があります。令和7年度は2,223企業、28,987人⁠に118億85百万円が立替払されました。条文はe-Govの法令データ、立替払の実績は厚生労働省の公表資料で、2026年10月26日⁠に確認しました。

賃金支払いの5原則:労働基準法24条

労働基準法24条⁠の1項⁠と2項を、5つ⁠の原則に分けて読みます。

原則 条文の言葉 主な例外
通貨払い 賃金は、通貨で支払わなければならない 法令や労働協約の定めがある場合、労働者の同意を得た銀行口座への振込みなど省令で定める方法
直接払い 直接労働者に支払わなければならない 条文上の例外は示されていない。本人以外への支払いは原則として認められない
全額払い その全額を支払わなければならない 法令の定め(税金・社会保険料など)⁠、過半数の労働組合または過半数代表者との書面の協定による控除
毎月1回以上払い 毎月一回以上 臨時の賃金、賞与など省令で定めるもの
一定期日払い 一定の期日を定めて支払わなければならない 同上

24条⁠に違反した使用者には、同じ法律の120条⁠で30万円以下⁠の罰金が定められています。銀行振込は、24条1項ただし書の「確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるもの」⁠と⁠し⁠て⁠、労働者の同意を前提に認められている方法です。同じ仕組みで、厚生労働大臣が指定した資金移動業者の口座への支払いも認められました。くわしくは給与のデジタル払い⁠で説明しています。

「遅れ」⁠と「一部だけ」⁠は別の原則の問題

支払日を過ぎても入金がないのは、一定期日払いと毎月1回以上払いの問題です。支払日に入金はあったが金額が足りないのは、全額払いの問題です。

一部だけ払われたときは、何が引かれたのかを給与明細で確かめます。所得税、住民税、社会保険料のように法令で決まった控除のほかに、社宅費や組合費などを引くには書面の協定が要ります。遅刻や欠勤で働かなかった時間の分と、制裁としての減給は別に扱われます。減給の上限は減給の上限で計算のしかたから説明しています。

退職したら7日以内⁠の支払いを請求できる

労働基準法23条は、労働者が退職した場合、権利者の請求があれば、使用者は7日以内⁠に賃金を払い、労働者の権利に属する金品を返さなければならないと定めています。賃金に争いがあるときは、異議のない部分を7日以内⁠に払います。

退職後に最後の給料が来ないときは、「労働基準法23条にもとづき、【金額】⁠円⁠の支払いを請求します⁠」⁠と書面で請求した日を、7日⁠を数える起点として記録します。

遅延利息:辞めた人と在職中で利率が違う

状況 利率 根拠
退職した人の賃金(退職手当を除く)⁠が退職日までに払われていない 年14.6%(退職日の翌日から支払日まで) 賃金の支払の確保等に関する法律6条⁠、同法施行令1条
在職中の賃金の支払いが遅れた 民法の法定利率。令和8年4月1日から令和11年3月31日までは年3% 民法404条⁠、法務省の告示

賃金支払確保法6条2項は、天災地変その他のやむを得ない事由で省令で定めるものによる遅れの場合、その事由がある期間には年14.6%⁠を適用しないとしています。退職手当は6条⁠の対象から外れています。

法務省によると、法定利率は3年ごとに見直され、第3期(令和8年4月1日から令和11年3月31日まで⁠)⁠の基準割合は年0.4%⁠と告示されました。第1期⁠の0.7%からの変動が1%未満のため、法定利率は年3%⁠のままです。利息の計算は、どの期間にいつから遅れたかで変わるので、請求するときは支払期日と金額を1回分ずつ並べておきます。

時効:賃金と退職手当で年数が違う

労働基準法115条は、賃金の請求権の時効を「行使することができる時から5年間⁠」⁠と定めています。ただし附則143条3項⁠で当分の間、退職手当を除く賃金は3年⁠、退職手当は5年⁠と読み替えられています。

請求権 時効 根拠
賃金(退職手当を除く) 3年(当分の間) 労働基準法115条⁠、附則143条3項
退職手当 5年 同上
災害補償その他の請求権(賃金を除く) 2年 労働基準法115条

毎月の給料は、それぞれの支払日から別々に時効が進みます。何か月分も遅れている場合、最も古い月から先に時効にかかります。請求の記録を早く残すほど、取り戻せる範囲が広くなります。

パートやアルバイトでも同じ

労働基準法9条は、労働者を「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者⁠」⁠と定めています。正社員か、パートやアルバイトかで24条⁠の扱いは変わりません。シフト制で働く人の給料が遅れたときも、勤務した日と時間の記録をもとに、同じ手順で請求します。

支払日前でも払ってもらえる場合:非常時払

労働基準法25条は、労働者が出産、疾病、災害など省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求したときは、支払期日前でも、すでに働いた分の賃金を払わなければならないと定めています。前借りとは違い、働いた分を先に受け取る仕組みです。急な入院などで生活費が足りないときは、この条文を示して会社に請求できます。

遅れた・払われないときの進め方

  1. 記録をそろえる:労働条件通知書(支払日と賃金の額)⁠、給与明細、通帳の入金記録、勤務表やタイムカードの写し
  2. 会社に書面で聞く:支払日、未払の金額、いつ払うかを、メールなど記録が残る方法で確かめる
  3. 支払いを請求する:「【年月】⁠分⁠の給与【金額】⁠円⁠が⁠、支払日の【日付】⁠を過ぎても支払われていません。【日付】⁠ま⁠で⁠に支払ってください」⁠と⁠、期限を区切って請求する
  4. 労働基準監督署に相談する:記録を持って、会社の所在地を管轄する署へ行く
  5. 民事の手続きを考える:労働局のあっせん、裁判所の手続きなど。どれを使うかは金額と会社の状態で選ぶ

労働基準監督署に行くときの持ち物と話し方は労働基準監督署への相談のしかた⁠にまとめています。監督署は24条違反などについて会社を指導する役所で、未払賃金を代わりに取り立てる窓口ではありません。払われないまま会社と話がつかないときは、民事の手続きも並行して考えます。

給料が遅れ始めたら、会社の状態も見ておく

支払いの遅れが続くときは、会社の資金繰りが苦しいこともあります。倒産すると、手続きの中で賃金を回収することになり、時間がかかります。破産などの手続きが始まったら、破産管財人の連絡先と、未払賃金の証明の手続きを確かめます。次の立替払制度は、この証明が前提になります。

会社が倒産したら:未払賃金立替払制度

厚生労働省の令和7年度の未払賃金立替払事業の実施状況⁠に添えられた制度の概要によると、立替払は、企業倒産で賃金が未払のまま退職した労働者に、未払賃金の一部を国が事業主に代わって立て替える制度です。支払などの業務は独立行政法人労働者健康安全機構が行います。

主な要件は次のとおりです。

  • 事業主:労災保険の適用事業の事業主で、1年以上事業を行っていた。法律上の倒産(破産、特別清算、民事再生、会社更生)⁠か⁠、中小企業事業主の事実上の倒産(労働基準監督署長の認定)
  • 労働者:破産手続開始等の申立て(事実上の倒産の認定申請)⁠の6か月前の日から2年間に退職した。未払賃金額を破産管財人等が証明する(事実上の倒産では監督署長が確認する)
  • 期限:破産手続開始の決定等(事実上の倒産の認定)⁠の日の翌日から2年以内⁠に請求する

対象は、退職日の6か月前から立替払請求日の前日までに支払期日が来ている未払の定期給与と退職金です。ボーナスは含みません。総額が2万円未満のときは対象外です。

退職日の年齢 未払賃金総額の限度額 立替払の上限額
45歳以上 370万円 296万円
30歳以上45歳未満 220万円 176万円
30歳未満 110万円 88万円

資料の例では、退職日に35歳⁠で未払賃金が200万円なら立替払額は160万円⁠、300万円なら上限の176万円です。

立替払の実績:直近10年度の推移

年度 企業数 支給者数 立替払額
平成28年⁠度 2,029件 21,941人 8,361百万円
平成29年⁠度 1,979件 22,458人 8,664百万円
平成30年⁠度 2,134件 23,554人 8,696百万円
令和元年度 1,991件 23,992人 8,638百万円
令和2年⁠度 1,791件 23,684人 8,411百万円
令和3年⁠度 872件 9,560人 3,642百万円
令和4年⁠度 1,285件 14,203人 4,856百万円
令和5年⁠度 2,132件 24,300人 8,621百万円
令和6年⁠度 2,623件 30,591人 11,046百万円
令和7年⁠度 2,223件 28,987人 11,885百万円

令和7年度は前年度より企業数が15.2%⁠、支給者数が5.2%減り、立替払額は7.6%増えました。支給者1人あたりの平均立替払額は41.0万円(13.6%増)⁠で⁠す⁠。

業種別:立替払額は商業が最多

順位 業種区分 立替払額 構成比 支給者数
1 商業 3,545百万円 29.8% 8,257人
2 製造業 2,158百万円 18.2% 4,414人
3 保健衛生業 1,509百万円 12.7% 3,466人
4 その他事業 1,443百万円 12.1% 3,907人
5 接客娯楽業 938百万円 7.9% 3,470人
6 建設業 900百万円 7.6% 2,045人
7 運輸交通・貨物取扱業 523百万円 4.4% 1,482人
8 教育研究業 469百万円 3.9% 801人
9 金融広告業 164百万円 1.4% 294人
10 映画・演劇業 92百万円 0.8% 124人

企業数で見ると、商業442件⁠、建設業411件⁠、製造業362件⁠の順です。建設業は企業数が多い一方、1社あたりの支給者が少なく、立替払額では6位⁠になります。

企業規模別:企業数の大半は小さな会社

労働者数 企業数 支給者数 立替払額
30人未満 2,018件(90.8%) 12,563人(43.3%) 5,053百万円(42.5%)
30〜299人 198件(8.9%) 9,888人(34.1%) 4,060百万円(34.2%)
300人以上 7件(0.3%) 6,536人(22.5%) 2,771百万円(23.3%)

300人以上⁠の企業は7件だけですが、支給者数は6,536人です。立替払の対象になった企業は小さな会社が大半ですが、大きな会社が1社倒れると、多くの人に立替払が必要になります。

入社前に、支払日と支払い方を確かめる

給料の遅れは、入社後に気づくものです。入社前にできるのは、条件を書面で確かめ、遅れたときに比べる基準を持っておくことです。

  • 労働条件通知書で、賃金の締切日と支払日、支払い方法を確かめる
  • 試用期間中の給与、最初の給料がいつ入るかを確かめる
  • 給与明細の控除の欄に、法定のもの以外の天引きがあれば、その根拠の協定や規程を聞く

入社後も、毎月の給与明細と通帳の入金日を並べて保存しておきます。遅れたときに、いつから、いくら足りないかをすぐ示せるからです。明細の読み方は給与明細の見方⁠にまとめています。会社の経営の安定は外から見えにくいものですが、離職者数や平均勤続年数などの数字は、厚生労働省のしょくばらぼに会社が載せている場合があります。求人票、面接での説明、公開データを並べて、働き続けられる会社かを確かめます。

よくある質問

給料日に給料が払われなかったら違法ですか?

労働基準法24条2項は、賃金を毎月1回以上⁠、一定の期日を定めて払うよう定めています。決まった期日に払われなければ、この定めに反します。違反した使用者には同法120条⁠で30万円以下⁠の罰金が定められています。会社に期日と金額を書面で確かめ、労働基準監督署に相談できます。

遅れた給料に利息は請求できますか?

退職した人の賃金(退職手当を除く)⁠は⁠、賃金支払確保法6条⁠と同法施行令1条で、退職日の翌日から年14.6%⁠の遅延利息がつきます。在職中の遅れには民法の法定利率が使われ、法務省の告示では令和8年4月1日から令和11年3月31日までは年3%です。

未払いの給料は何年前までさかのぼれますか?

労働基準法115条⁠は賃金の請求権の時効を5年としていますが、附則143条3項⁠により当分の間、退職手当を除く賃金は3年⁠、退職手当は5年です。古い分から時効にかかるので、早めに請求の記録を残します。

会社が倒産して給料が払われません。どうなりますか?

未払賃金立替払制度があります。厚生労働省の概要では、倒産で賃金が未払のまま退職した人に、未払賃金総額の8割を、退職日の年齢に応じた上限(45歳以上⁠は296万円⁠、30歳以上45歳未満は176万円⁠、30歳未満は88万円)⁠ま⁠で国が立て替えます。手続きは労働者健康安全機構が行います。

立替払はどのくらい使われていますか?

厚生労働省の公表では、令和7年度は2,223企業、28,987人⁠に118億85百万円が立替払されました。1人あたりの平均は41.0万円です。業種別の立替払額は商業が29.8%⁠で最も多く、企業規模別では労働者30人未満の企業が企業数の90.8%⁠を占めます。

給料の一部だけ払われるのは問題ですか?

労働基準法24条1項⁠は賃金を全額払うよう定め、控除できるのは税金や社会保険料など法令の定めがあるものと、過半数の労働組合または過半数代表者との書面の協定があるものに限っています。協定のない天引きや一方的な減額は、明細と就業規則で確かめます。

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