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パワハラの定義:3つ⁠の要素と6つ⁠の類型、会社の措置義務と相談先

・ナギサコーポレーション(運営)

この記事の答え

  • パワハラは「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「就業環境が害されるもの」⁠の3つ⁠をすべて満たす行為。適正な業務指示や指導は当たらない
  • 厚生労働省の令和5年度実態調査では、過去3年間に勤務先でパワハラを受けた人は19.3%⁠。業種別では建設業26.8%⁠が最も高い
  • 会社には相談窓口の設置など10項目⁠の措置義務がある。社内で解決しないときは都道府県労働局の雇用環境・均等部に相談できる

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パワハラ(職場のパワーハラスメント)⁠は⁠、労働施策総合推進法と厚生労働省の指針で定義が決まっています。職場で行われる、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの、の3つ⁠をすべて満たすものです。厳しい指導でも、業務上必要で相当な範囲なら当たりません。厚生労働省の令和5年⁠度「職場のハラスメントに関する実態調査」⁠で⁠は⁠、過去3年間に勤務先でパワハラを受けた人は19.3%でした。

会社には、パワハラを防ぐための措置をとる義務があります。大企業は令和2年6月1日から、中小企業は令和4年4月1日から対象です。この記事の条文と指針は、2026年10月26日⁠に厚生労働省とe-Gov法令検索で確かめました。自分が受けた言動がパワハラに当たるかどうかは、目的、経緯、頻度などを総合して判断されるもので、この記事で個別に決めることはできません。

パワハラの定義:3つ⁠の要素をすべて満たすもの

根拠は労働施策総合推進法⁠の31条です。事業主は、職場で行われる優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じて適切に対応する体制の整備その他の措置を講じなければならないと定めています。

条文の番号に注意します。以前の資料では30条⁠の2と書かれていますが、2026年10月1日施行の改正で条が移り、確認日現在のe-Gov法令検索では31条です。中身の定義は変わっていません。

要素 意味 当たるかを見るときの例
①優越的な関係を背景とした言動 受ける側が行為者に抵抗や拒絶をできない蓋然性が高い関係を背景にした言動 上司から部下だけでなく、知識や経験のある同僚・部下からの言動や、集団での言動も含む
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの 業務上明らかに必要のない言動、目的を大きく外れた言動、手段として許される範囲を超えた言動 人格を否定する言動、必要以上に長い叱責の繰り返し
③就業環境が害されるもの 身体的・精神的な苦痛を与えられ、働くうえで見過ごせない程度の支障が出ること 平均的な労働者が同じ状況で同じ言動を受けたらどう感じるかで判断する

「職場」⁠は⁠、ふだん働いている場所に限りません。それ以外の場所でも、業務を行う場所なら職場に含みます。「労働者」⁠は正社員だけでなく、パートタイム労働者や契約社員など、雇っているすべての人です。

指導との境目は、3つ目の要素だけでは決まりません。厚生労働省のパワハラ防止措置のリーフレットは、個別の事案の判断では、言動の目的、行われた経緯や状況など、さまざまな要素を総合的に考えることが必要だと書いています。指針は、労働者の行動に問題がある場合は、その内容・程度と、それに対する指導の態様との関係が重要な要素になるとしています。

パワハラの6つ⁠の類型と例

厚生労働省の指針は、パワハラの代表的な言動を6つ⁠の類型に分けています。これに当てはまらない言動でも、3つ⁠の要素を満たせばパワハラに当たり得ます。逆に、類型の名前に近い言動でも、業務上の必要があり相当な範囲なら当たりません。

類型 中身 指針・リーフレットの例
1 身体的な攻撃 暴行・傷害 殴打、足蹴り、物を投げつける
2 精神的な攻撃 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言 人格を否定する言動(性的指向・性自認に関する侮辱を含む⁠)⁠、必要以上に長時間の厳しい叱責を繰り返す
3 人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視 1人⁠の労働者を同僚が集団で無視し、職場で孤立させる
4 過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 新卒採用者に必要な教育をしないまま、対応できない業績目標を課し、達成できないと厳しく叱責する
5 過小な要求 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと 管理職を退職させるため誰でもできる業務をさせる、嫌がらせで仕事を与えない
6 個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること 性的指向・性自認や病歴、不妊治療などの個人情報を、本人の了解なく他の労働者に暴露する

受けた内容は精神的な攻撃が48.5%⁠で最も多い

厚生労働省は、職場のハラスメントの実態を3年ごとに調べています。最新は令和5年⁠度「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書で、労働者調査は全国の企業・団体に勤める20〜64歳⁠の男女8,000人へのインターネット調査です(2024年1月実施。経営者・役員・公務員を除く⁠)⁠。

過去3年間に勤務先でパワハラを受けたと答えた1,546人に、受けた内容を複数回答で聞いた結果です。

受けたパワハラの内容 令和5年⁠度 令和2年⁠度
精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言) 48.5% 49.4%
過大な要求(不要なこと・遂行不可能なことの強制、仕事の妨害) 38.8% 33.3%
人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視) 27.8% 20.5%
個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) 27.5% 24.0%
過小な要求(程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない) 24.5% 21.2%
身体的な攻撃(暴行・傷害) 5.8% 5.8%

殴る・蹴るといった身体的な攻撃は5.8%です。パワハラの多くは、言葉や仕事の与え方で起きています。同じ報告書では、行為者は「上司(役員以外)」⁠が65.7%⁠、「会社の幹部(役員)」⁠が24.7%でした。受けた場所は「通常就業している場所」⁠が88.6%で、「終業時間外、休日の連絡(電話、メール等)⁠」⁠も6.0%あります。

業種別ランキング:建設業26.8%⁠が最も高い

同じ調査で、過去3年間にパワハラを一度以上経験した人の割合を、勤務先の業種別に並べました。全体は19.3%です。

順位 業種 パワハラを受けた割合 回答者数
1 建設業 26.8% 482人
2 複合サービス事業(郵便局、農業協同組合等) 22.5% 71人
3 教育、学習支援業 20.6% 107人
3 医療、福祉 20.6% 635人
5 運輸業、郵便業 19.6% 515人
6 製造業 19.5% 1,996人
6 電気・ガス・熱供給・水道業 19.5% 154人
6 卸売業、小売業 19.5% 855人
9 その他サービス業 19.4% 935人
10 金融業、保険業 18.0% 471人
10 宿泊業、飲食サービス業 18.0% 200人
12 不動産業、物品賃貸業 17.5% 189人
13 情報通信業 15.0% 711人
14 学術研究、専門・技術サービス業 14.5% 172人
14 生活関連サービス業、娯楽業 14.5% 235人

業種ごとの回答者数には大きな差があります。複合サービス事業は71人⁠、教育、学習支援業は107人です。人数の少ない業種は、数人の回答で割合が動きます。上位と下位の差を、その業種のすべての会社に当てはめることはできません。

同じ報告書の図表119では、従業員規模別の経験率は99人以下19.8%⁠、100〜299人20.2%⁠、300〜999人18.8%⁠、1,000人以上18.9%で、規模による大きな違いは見られなかったとしています。

会社がとらなければいけない10の措置

パワハラを防ぐ措置は、会社の義務です。厚生労働省のリーフレットは、事業主が必ず講じなければならない措置を次のように整理しています。

区分 会社がやること
方針の明確化と周知・啓発 ①パワハラの内容と、行ってはならない旨の方針を明確にして周知する ②行為者に厳正に対処する方針と内容を就業規則などに定めて周知する
相談体制の整備 ③相談窓口をあらかじめ定めて周知する ④窓口担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにする
事後の迅速・適切な対応 ⑤事実関係を迅速かつ正確に確認する ⑥被害者への配慮の措置を速やかに適正に行う ⑦行為者への措置を適正に行う ⑧再発防止の措置を講じる(事実確認ができなかった場合も含む)
あわせて講じる措置 ⑨相談者・行為者のプライバシーを守る措置を講じて周知する ⑩相談したことなどを理由に解雇その他の不利益な扱いをしない旨を定めて周知する

相談したことや、会社の事実確認に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な扱いをすることは、法律31条2項⁠で禁止されています。

実際の取組は会社の規模で差が大きい

厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査(企業調査)付属統計表第15表は、パワハラ防止の取組を、規模別に聞いています。調査は令和7年10月1日現在で、常用労働者10人以上⁠の企業が対象です。

企業規模 取り組んでいる うち、すべて取り組んでいる 取り組んでいない
5,000人以上 100.0% 87.7% ―
1,000〜4,999人 100.0% 85.3% ―
300〜999人 100.0% 75.6% ―
100〜299人 98.4% 66.0% 1.6%
30〜99人 92.6% 42.4% 7.4%
10〜29人 83.5% 26.2% 16.5%
10人以上⁠計 87.7% 35.4% 12.3%

10〜29人⁠の企業では、6項目すべてに取り組んでいる会社は26.2%です。小さな会社では、相談窓口の名前はあっても担当者の研修やプライバシーの決まりまでそろっていないことがあります。応募先が小さい会社なら、窓口が誰で、相談した内容がどこまで伝わるのかを入社前に聞く価値があります。

パワハラを受けた後、何もしなかった人は36.9%

令和5年度の実態調査では、パワハラを受けた後の行動は「何もしなかった」⁠が36.9%⁠で最も多く、次いで「家族や社外の友人に相談した」19.3%でした。何もしなかった理由は「何をしても解決にならないと思ったから⁠」⁠が65.6%です。

会社がパワハラを知った後の対応では、「特に何もしなかった」⁠が53.2%でした(勤務先が認識していたと答えた573人⁠の回答⁠)⁠。会社がパワハラかどうかを判断せず、あいまいなままだったという回答は61.4%です。社内の窓口だけに頼ると、事実の確認が進まないこともあります。

だからこそ、起きたことを記録に残します。日時、場所、相手、言われたことやされたこと、その場にいた人、体調や仕事への影響を、その日のうちに書きます。メールやチャットはそのまま保存します。記録は、社内の窓口でも外の相談先でも、事実を伝える材料になります。

社外の相談先:労働局の雇用環境・均等部

パワハラ防止措置に関する相談は、都道府県労働局の雇用環境・均等部が受けています。会社の措置について労働者と会社の間で争いになったときは、労働局長による助言・指導・勧告(法律36条)⁠と⁠、紛争調整委員会による調停(37条)⁠の制度を使えます。援助を求めたことや調停を申請したことを理由に、会社が解雇などの不利益な扱いをすることは禁じられています。

相談先 主な役割
都道府県労働局 雇用環境・均等部 パワハラ防止措置の相談、労働局長による助言・指導・勧告、調停の申請
総合労働相談コーナー いじめ・嫌がらせを含む労働問題全般の相談。各労働局と労働基準監督署の中にある
労働基準監督署 賃金の未払いや長時間労働など、労働基準法の違反の申告

パワハラと一緒に、残業代が払われない、休日がないといった問題も起きているなら、労働基準監督署の出番です。手続きは労働基準監督署に相談するには⁠で説明しています。性的な言動や、妊娠・育休を理由にした嫌がらせが絡むなら、根拠の法律が変わります。セクハラ・マタハラの定義⁠にまとめています。

心身に不調が出たら:精神障害の労災はパワハラが最多

仕事による強いストレスで精神障害を発病した場合、労災保険の給付の対象になり得ます。厚生労働省の令和7年⁠度「過労死等の労災補償状況」⁠の別添資料2から、精神障害の支給決定件数が多い出来事を並べました。

順位 出来事 決定件数 うち支給決定件数
1 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた 403件 222件
2 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた 240件 127件
2 セクシュアルハラスメントを受けた 233件 127件
4 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった 353件 113件
5 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした 164件 110件

上司等からのパワハラは、決定403件⁠のうち222件⁠が支給決定されています。同じ表で「上司とのトラブルがあった」⁠は決定1,061件に対して支給決定36件です。認定基準では、パワハラに当たる出来事と、単なる上司とのトラブルを分けて心理的負荷を評価します。

労災とは別に、私傷病として休むなら健康保険の傷病手当金を使えることがあります。休む手続きは適応障害で休職するとき⁠で順番に説明しています。

その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる

パワハラの起きやすさを、外から数字で見ることはできません。手がかりになるのは、人が辞めていく割合や、残業の多さ、有給の取りやすさです。厚生労働省のしょくばらぼには、会社が自分で公表した離職率や平均残業時間が載っています。カイシャのホントの会社の比較ページでは、県ごとにこうした数字を並べて比べられます。

面接では「ハラスメントの相談窓口はどこにあり、誰が担当していますか」「相談があったとき、事実確認は誰が行いますか」「管理職向けの研修はありますか」⁠と聞きます。答えが具体的かどうかに、会社の運用が出ます。

よくある質問

パワハラの定義は何ですか?

労働施策総合推進法31条⁠と厚生労働省の指針では、職場で行われる、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの、の3つ⁠をすべて満たすものです。客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。

パワハラの6つ⁠の類型は何ですか?

厚生労働省の指針が示す代表的な類型は、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6つです。令和5年度の実態調査では、受けたパワハラの内容は精神的な攻撃が48.5%⁠で最も多く、過大な要求が38.8%⁠で続きます。

パワハラを受けた人はどのくらいいますか?

厚生労働省の令和5年⁠度「職場のハラスメントに関する実態調査」⁠で⁠は⁠、20〜64歳⁠の労働者8,000人⁠のうち、過去3年間に勤務先でパワハラを受けた人は19.3%です。業種別では建設業26.8%⁠、複合サービス事業22.5%⁠が高くなっています。

会社は何をしなければいけませんか?

方針の明確化と周知、相談窓口の設置、事実関係の迅速で正確な確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止、プライバシーの保護、相談したことを理由に不利益に扱わない旨の周知などです。大企業は令和2年6月1日から、中小企業は令和4年4月1日から義務です。

パワハラはどこに相談できますか?

社内の相談窓口のほか、都道府県労働局の雇用環境・均等部や総合労働相談コーナーに相談できます。労働局長による助言・指導・勧告や、紛争調整委員会による調停の制度もあり、援助を求めたことや調停を申請したことを理由に解雇などの不利益な扱いをすることは禁じられています。

パワハラで労災は認められますか?

仕事による強いストレスで精神障害を発病した場合は、労災の対象になり得ます。厚生労働省の令和7年⁠度「過労死等の労災補償状況」⁠で⁠は⁠、精神障害の支給決定1,082件⁠のうち、上司等からパワーハラスメントを受けた出来事によるものが222件⁠で最も多い件数です。

気になる会社の「ホント」⁠を⁠、会社に聞いてみませんか。

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