通勤時間の平均を公的データで見ると、有業者の「通勤・通学」の総平均時間は週全体で43分、平日で53分です。最新の生活時間の公表結果は、総務省「令和3年社会生活基本調査」の2021年の値で、2026年の実態ではありません。通勤・通学をしなかった日も含む1人1日当たりの平均で、片道の時間ではありません。
平日に通勤・通学をした人だけの行動者平均は、全国で1時間19分です。こちらは通学者も含む別の集計です。自分の通勤と比べるときは、片道か1日の合計か、出勤した日だけか、働く人だけかをそろえます。求人を見るときは、勤務地から実際の通勤経路を調べます。
有業者の通勤・通学は週全体43分、平日53分
次の表は令和3年社会生活基本調査の主要統計表です。15歳以上の有業者について、通勤・通学の総平均時間を示しています。男女別も同じ項目を使い、単位は1人1日当たりの分です。
| 対象 |
週全体の総平均時間 |
平日の総平均時間 |
| 有業者・男女計 |
43分 |
53分 |
| 有業者・男性 |
49分 |
60分 |
| 有業者・女性 |
36分 |
44分 |
出典:総務省「令和3年社会生活基本調査」主要統計表第2-1表・男女、ふだんの就業状態、行動の種類別総平均時間―週全体、第2-2表・同―平日の有業者・通勤・通学欄。2026年10月22日確認。
総平均時間は、その行動をしなかった人や日も含めて平均します。働いていても、休日や在宅勤務の日には通勤をしないことがあります。そうした日も入るため、「出勤日にかかる通勤の平均」とは違います。
週全体と平日でも値が変わります。週全体は土曜日・日曜日も含む集計です。平日の53分を、毎日出社している人の往復時間と決めることはできません。表が表している対象をそろえてから、自分の状況と比べます。
男性60分、女性44分から働き方の原因はわからない
平日の有業者では、男性60分、女性44分です。ただし、同じ年齢、同じ職種、同じ勤務先の男女を比べた数字ではありません。雇用形態、住む場所、勤務日数なども違う人が入っています。
この差を、働く意欲や家庭での役割の違いとして説明することはできません。個人の通勤時間を決めるのは、実際の勤務地と住居、交通手段、勤務の組み方です。平均から自分に許される通勤時間を決める必要もありません。
「平均より短いから問題ない」と判断する前に、通う時間帯と、生活の中で何を削ることになるかを見ます。所要時間が同じでも、座れる移動と乗り換えが続く移動では負担の感じ方が違います。統計が示す時間と、自分が続けられる条件を分けて考えます。
平日に通勤・通学をした人の全国平均は1時間19分
総務省「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要」の表6-1は、平日に通勤・通学をした人の行動者平均時間を示しています。全国は1時間19分です。
この表は、10歳以上の通勤・通学の行動者を対象とする集計です。有業者だけに限定した最初の表とは対象が違います。学生などの通学時間も入るため、「会社員の平均通勤時間は1時間19分」と言い換えることはできません。
| 集計の違い |
全国の時間 |
何を数えたか |
| 有業者・平日の総平均時間 |
53分 |
通勤・通学をしなかった日も含む |
| 通勤・通学の平日の行動者平均時間 |
1時間19分 |
その日に通勤・通学をした人。通学者も含む |
出典:前掲主要統計表第2-2表、総務省「令和3年社会生活基本調査 結果の概要」表6-1(本文16ページ)。いずれも2021年の1人1日当たりの平均。
行動者平均は、「実際にその行動をした人が、どのくらい時間を使ったか」を見るための数字です。総平均は「集団全体として、どのくらい時間を使ったか」を見る数字です。同じ通勤・通学でも、問いが違います。
就職先を決めるために比較するなら、自宅から職場へ行き、帰宅するまでの移動を自分で確認します。全国の平均に合わせることより、勤務開始に間に合い、帰宅後の生活が成り立つかを確かめるほうが先です。
都道府県別ランキング:最長は神奈川県1時間40分
次の順位は、令和3年の平日に通勤・通学をした人の行動者平均時間です。居住する都道府県ごとの比較で、勤務地の都道府県別ではありません。単位は1人1日当たりの時間・分、中央値ではありません。
全国47都道府県のうち上位と下位を抜粋しています。同じ時間は同順位です。全国平均は順位に含めません。
| 順位 |
都道府県 |
通勤・通学の行動者平均時間 |
| 1 |
神奈川県 |
1時間40分 |
| 2 |
千葉県 |
1時間35分 |
| 2 |
東京都 |
1時間35分 |
| 4 |
埼玉県 |
1時間34分 |
| 5 |
奈良県 |
1時間28分 |
| 6 |
大阪府 |
1時間27分 |
| 7 |
兵庫県 |
1時間24分 |
| 8 |
京都府 |
1時間21分 |
| 9 |
茨城県 |
1時間18分 |
| 9 |
愛知県 |
1時間18分 |
| 41 |
秋田県 |
1時間00分 |
| 41 |
新潟県 |
1時間00分 |
| 41 |
石川県 |
1時間00分 |
| 44 |
鳥取県 |
59分 |
| 45 |
愛媛県 |
57分 |
| 46 |
山形県 |
56分 |
| 46 |
宮崎県 |
56分 |
| ― |
全国 |
1時間19分 |
出典:総務省「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要」表6-1「都道府県別通勤・通学の行動者平均時間(2021年)―平日」。資料掲載の順位と値を使用。
首都圏だけでなく、奈良県、大阪府、兵庫県なども上位に入っています。ただし、県全体の平均から、特定の市や駅の通勤時間まではわかりません。同じ県内でも、自宅と勤務先の組み合わせで通勤は変わります。
最短の県で仕事を探しても、希望する勤務先が自宅から近いとは限りません。反対に、平均が長い県に住んでいても、近隣で働く人や在宅勤務の人もいます。地域の順位は、求人票の勤務地を調べるきっかけとして使います。
神奈川県1時間40分は片道ではない
この調査の通勤・通学時間は、1日の行動時間です。神奈川県の1時間40分を「片道の平均」と読むと、実際の表の意味が変わります。行きと帰りなど、その日に行った通勤・通学の時間をまとめた集計として読みます。
反対に、1日の平均を単純に半分にして「片道の公表値」にするのも避けます。行きと帰りが同じ所要時間とは限らず、この表は片道を調査した平均ではありません。片道の所要時間が知りたいなら、自分の出勤時刻に合わせて経路を確認します。
資料の「1.19」は1.19時間ではない
概要表の表記は「時間.分」です。全国の1.19は1時間19分、神奈川県の1.40は1時間40分を表します。小数の時間として計算すると別の値になります。
引用された数字を読むときは、単位の見出しも見ます。分への換算をしている表なら、元の時間と分に戻して確かめます。通勤の比較では、こうした単位の取り違えが、片道と往復の取り違えと重なることがあります。
2021年の調査で、今の出社状況はわからない
生活時間の調査は2021年10月に行われました。結果の概要では、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言などが解除された後の時期であり、生活時間の配分に影響があったことを説明しています。
その後の出社と在宅勤務の組み合わせ、勤務地の変更、交通の状況を、この数字に付け足すことはできません。「今は平均が短くなっている」「出社回帰で長くなっている」と、この調査だけで断定することもできません。
総務省は社会生活基本調査を5年ごとに実施します。ただし、調査する年と結果が公表される年は同じとは限りません。令和8年の調査が行われることを理由に、令和3年の表の見出しだけを2026年に変えないようにします。この記事の数値は2021年の実績です。
求人で確認する情報は、現在の勤務条件です。「在宅勤務制度あり」という記載だけで、通勤が減ると決めません。配属予定の職種で使えるか、入社直後にも使えるか、出勤のルールがどうなっているかを聞きます。
求人票では最寄り駅より先に就業場所を確認する
勤務地欄に都道府県名や本社所在地しか書かれていなければ、実際の配属場所を確認します。本社の最寄り駅が近くても、勤務するのが別の拠点なら通勤経路は変わります。
採用時点の場所だけでなく、就業場所の変更の範囲も見ます。厚生労働省「労働条件明示のルールの案内」では、雇い入れ直後の就業場所と、変更の範囲の明示を説明しています。転勤や拠点変更があるかは、今の通勤時間と一緒に確認します。
| 求人票で見る欄 |
足りなければ聞くこと |
| 就業場所 |
初回の配属先と、場所が決まる時期 |
| 就業場所の変更の範囲 |
転勤や拠点変更がある地域 |
| 就業時間 |
始業・終業と、勤務時間帯の変更 |
| 在宅勤務 |
配属予定部署の出勤ルールと利用条件 |
| 通勤手当 |
支給条件、上限、認められる経路 |
| 休日・勤務日 |
出勤する曜日と勤務予定の決まり方 |
求人票の空欄を、自分の都合のよい条件で埋めないことです。勤務地が未定なら、今確認できる配属先の範囲と、確定後に条件を確認する機会を聞きます。内定を受ける前に、自分が通える範囲かを判断できる状態にします。
自宅の玄関から職場まで、出勤する時刻で調べる
経路検索では、駅から駅だけの時間で終わらせません。自宅から駅やバス停まで、乗り換え、職場の最寄りから建物までを含めます。勤務先に着いてから受付や移動があるなら、その流れも説明会などで確かめます。
検索する時刻も合わせます。昼間の最短経路が、始業に間に合う時間帯で使えるとは限りません。始発や終電、バスの運行、乗り換えの待ち時間を確認します。帰りの経路も別に見ると、残業や遅い時間の勤務に対応できるかがわかります。
混雑や遅延への備えも、所要時間とは別の確認です。代わりの経路があるか、交通が止まった日に会社へどう連絡するか、通勤経路の変更が認められるかを確認します。毎日ぎりぎりの接続が前提になるなら、その経路を続けられるかを考えます。
車や自転車で通うなら、認められる交通手段と駐車・駐輪の条件を見ます。距離だけで所要時間を決めず、実際に通う時間帯の道路や出入りの状況を調べます。交通手段の許可と、通勤手当の支給条件も分けて聞きます。
通勤手当があっても、全額支給とは限らない
「通勤手当あり」は、選んだ経路の費用がすべて支給されるという意味ではありません。上限、認定される経路、定期券か出勤日数による支給かなど、会社の条件を確認します。
通勤時間を短くする経路と、会社が認める経路が違うこともあります。自分で選ぶ前に、申請する経路と支給額を採用担当へ確認します。自己負担が生じるなら、毎月の給与とは別に支出として書きます。
在宅勤務と出社を組み合わせる仕事でも、交通費の支給方法を聞きます。出社日が変わるときの扱いが曖昧だと、想定した負担とずれます。通勤費を含む給与例を見たら、通勤費を除いた給与も確認し、比較する会社で項目をそろえます。
引っ越しを考えているなら、通勤手当と住居費を別々に見ます。職場の近くに住めば移動は短くても、毎月の固定費が変わります。補助の有無だけで判断せず、自分に適用される条件と実際に払う費用を確認します。
面接前に、通勤条件の確認メモを作る
応募先が増えると、会社の所在地と実際の配属先を取り違えやすくなります。求人ごとに、勤務地、始業時刻、終業時刻、通勤経路、出勤の頻度をまとめます。未定の欄は未定と書き、いつ決まるかを質問にします。
自宅からの経路は、早さだけでなく乗り換えの回数や歩く区間も見ます。同じ所要時間でも、交通手段を変えるたびに移動が必要な経路と、そのまま乗り続けられる経路では条件が違います。自分が負担に感じる点を、時間とは別に書いておきます。
始業時刻が複数ある仕事なら、すべての勤務時間帯で通えるかを確認します。通常の勤務だけ通えても、早い時間や遅い時間の勤務で交通機関が使えないなら、その扱いを聞きます。会社が近いかどうかだけで判断すると、この違いが抜けます。
面接で「通勤は大丈夫ですか」と聞かれたら、想定する勤務地と勤務時間を確認したうえで答えます。配属が未定なら、確認できている範囲と、確定後に確認したい点を伝えます。通えると答えてから、別の勤務地が前提だったと気づくことを防げます。
将来の拠点変更や勤務変更も、範囲を聞く
入社直後は通いやすくても、拠点の移転や配置変更で条件が変わることがあります。今の住所からの時間に加え、就業場所の変更の範囲を読みます。転勤があるなら、転居を伴う可能性や、勤務地の希望を伝える機会を確認します。
在宅勤務についても、現在の実施と将来の保証を分けます。配属先が今は在宅中心でも、出勤の指示がある仕事なら、その際に通える条件かを考えます。制度が変わったときの連絡や、出勤を求められる場面を採用担当に聞きます。
通勤に関する希望は、「近い会社がよい」だけでなく、何を確保したいかを添えて整理します。帰宅後に必要な予定があるなら、その予定と両立できる勤務時間帯を確認します。移動時間の上限だけでは、実際の生活と合うかを判断し切れません。
求人を比べたメモには、情報を確認した日も残します。同じ求人でも勤務地や勤務の説明が更新されることがあります。内定時に示された条件と、応募時のメモを照らし合わせ、変わったところがあればその場で確認します。
通勤は残業と出勤日を合わせて考える
通勤が短くても終業が遅いなら、帰宅時刻は遅くなります。通勤だけでなく、配属先の残業、勤務時間帯、出勤日を並べます。生活の中で使える時間は、その組み合わせで変わります。
残業は会社全体の平均と配属先の実績を分けて聞きます。勤務地に着く時刻と帰宅する時刻がわかると、睡眠、食事、通院、家族の予定などと合わせて考えられます。残業時間の平均と業界別の違いも、応募先の実績を聞く前の比較に使えます。
出勤する日数も確認します。年間休日の数だけでは、どの曜日に出勤するかまではわかりません。年間労働日数の見方で、休日や勤務日の確認点を整理しています。在宅勤務の日がある仕事では、その日数を平均から推測せず、配属先の運用を聞きます。
通勤を短くしたい理由を、応募条件に直す
通勤を短くしたいなら、何が困っているかを具体的にします。帰宅が遅い、乗り換えが負担、通院に間に合わない、勤務予定の変更に対応できないなど、困る場面で必要な条件が変わります。
勤務地だけ変わっても、勤務時間帯が同じ問題を起こすなら解決しません。応募先には、住所に加えて始業と終業、出勤する曜日、在宅勤務の条件を確認します。面接で理由を説明するときも、平均より長いかどうかより、働き続けるために何を変えたいかを伝えます。
求人票・面接・しょくばらぼで、その会社の実際の条件を確かめる
有業者の平日の総平均53分も、通勤・通学をした人の全国平均1時間19分も、2021年の集計です。自分の通勤の正解を決める数字ではありません。応募先ごとに、勤務する場所と時間帯、出勤の頻度を確認します。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。勤務地と通勤手当は求人票で読み、残業や休暇の公表値はしょくばらぼで調べ、配属先の出勤ルールは面接で聞きます。企業研究のやり方に沿って確認した条件を並べ、自宅から通えるか、働き続けられるかを判断します。