有給休暇の年5日取得義務は、法定の年次有給休暇が年10日以上付与される人について、会社が基準日から1年以内に5日を取得させる制度です。2019年4月からすべての使用者が対象になりました。厚生労働省の公式解説で対象者と数え方を確認できます。「有給は年5日まで」という上限ではありません。
働く人が確認するのは、自分の基準日、付与日数、対象期間に取得した日数です。会社が日を決める年休だけで5日を追加するのでもありません。本人が請求して取得した日や、計画年休として取得した日も数えるため、休み方を分けて記録します。
年10日以上の年休が付与される人が対象
根拠は労働基準法第39条第7項・第8項です。具体的な運用は、厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」の5〜7ページで説明されています。制度と現行条文は2026年10月22日に確認しました。
| 確認する項目 |
基本の扱い |
| 対象 |
法定の年休が年10日以上付与される労働者 |
| 取得させる日数 |
そのうち年5日 |
| 対象期間 |
原則として基準日から1年以内 |
| 義務を負う側 |
使用者である会社 |
出典:労働基準法第39条第7項・第8項、厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」5〜6ページ。人数や取得率の調査表ではなく、法定制度の整理です。
正社員という名称かどうかだけでは決まりません。管理監督者や有期雇用労働者も対象に含まれます。パートやアルバイトでも、法定の付与日数が10日以上になると対象です。
前年からの繰越しを足した残日数と、その年の法定付与日数は分けます。対象を判断する際に見るのは、単に残っている年休が10日あるかではありません。付与の記録で、その年の付与日数と繰越分を確かめます。
法定の付与日数が10日に届かない人にも、年休そのものがないわけではありません。年5日の取得義務の対象かどうかと、年休を請求できるかどうかは別の話です。対象外という説明だけで、残っている年休まで使えないと受け取らないようにします。
通常の付与日数:勤続6か月で10日、6年6か月以上で20日
年休の原則的な発生要件は、雇入れから6か月の継続勤務と、全労働日の8割以上の出勤です。継続勤務後の各付与時点でも、法の定める出勤要件を確認します。付与日数だけを見て、誰でも無条件にその日数になると考えないようにします。
次は厚生労働省の解説3ページにある原則の付与日数です。調査の平均や中央値ではなく、要件を満たしたときの法定日数を示します。
| 継続勤務期間 |
年休の付与日数 |
| 6か月 |
10日 |
| 1年6か月 |
11日 |
| 2年6か月 |
12日 |
| 3年6か月 |
14日 |
| 4年6か月 |
16日 |
| 5年6か月 |
18日 |
| 6年6か月以上 |
20日 |
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」3ページ「原則となる付与日数」、労働基準法第39条第1項・第2項。
この日数の全部が会社指定になるわけではありません。年5日の義務を守ることと、労働者が年休を請求できることは両立します。法定日数が増えても、会社の取得義務がそのまま同じ日数まで増える制度ではありません。
入社日と付与日が必ず半年ずれているとも限りません。会社が前倒し付与をしていることもあります。会社の案内に入社時付与と書かれているときは、法定分をいつ、何日に分けて付与しているかを確認します。
パートの比例付与:週の日数と勤続期間で確認する
比例付与の対象は、週所定労働時間が30時間未満で、週所定労働日数が4日以下、または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。短時間勤務という呼び方だけで、一律に少ない日数になるわけではありません。
次の表は同じ解説3ページの比例付与表です。横に長くならないよう、勤続期間を分けました。勤務日数の区分は契約の内容を確認して使います。
| 週所定労働日数・年間の日数区分 |
6か月 |
1年6か月 |
2年6か月 |
| 4日・169〜216日 |
7日 |
8日 |
9日 |
| 3日・121〜168日 |
5日 |
6日 |
6日 |
| 2日・73〜120日 |
3日 |
4日 |
4日 |
| 1日・48〜72日 |
1日 |
2日 |
2日 |
| 週所定労働日数 |
3年6か月 |
4年6か月 |
5年6か月 |
6年6か月以上 |
| 4日 |
10日 |
12日 |
13日 |
15日 |
| 3日 |
8日 |
9日 |
10日 |
11日 |
| 2日 |
5日 |
6日 |
6日 |
7日 |
| 1日 |
2日 |
3日 |
3日 |
3日 |
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」3ページ「所定労働日数が少ない労働者に対する付与日数」。単位は法定の付与日数。週で定める契約と年で定める契約の区分を確認し、出勤要件も満たす必要があります。
この表で週4日の区分は勤続3年6か月から10日、週3日の区分は5年6か月から10日になります。条件を満たしてその日数が付与されると、年5日取得させる義務の対象になります。
週30時間以上働く人など、比例付与の条件に当てはまらない人は、パートという名称でも原則の日数の表を確認します。契約の勤務日数や時間が変わった人は、今の契約内容と付与時点の扱いを会社に照らします。過去の表をそのまま使って自己判断しません。
取得率の規模別ランキング:会社の平均と個人の義務は別
義務の説明と、取得状況の統計は分けます。厚生労働省の令和7年の就労条件総合調査の第5表によると、2024年(令和6年)の労働者1人平均取得日数は12.1日、取得率は66.9%です。次は企業規模別に取得率の高い順に並べています。
| 順位 |
常用労働者の企業規模 |
年休取得率 |
平均取得日数 |
| 1 |
1,000人以上 |
69.0% |
12.8日 |
| 2 |
300〜999人 |
66.8% |
12.3日 |
| 3 |
100〜299人 |
65.5% |
11.7日 |
| 4 |
30〜99人 |
64.9% |
11.3日 |
出典:厚生労働省の令和7年の就労条件総合調査の結果の概況の第5表「労働者1人平均年次有給休暇の取得状況」。常用労働者30人以上の民営企業が対象。取得率は取得日数計を付与日数計で割った割合で、繰越日数を除きます。
平均取得日数が5日を超えていても、対象者全員が5日取得した証拠にはなりません。会社全体の平均と、労働者ごとの取得義務は違います。取得率が高い会社でも、自分の基準期間の記録は別に確認します。
業種別の数字や取得率の全体像は有給休暇の取得率で確認できます。応募時に企業の数字を比べるときは、取得率だけでなく、平均取得日数と対象者も読みます。
会社の時季指定は、本人の意見を聞いて行う
本人が請求して取得した分などを差し引いても5日に届かないとき、会社は取得時季を指定して取得させます。会社の都合だけで黙って日付を登録する手続きではありません。厚生労働省の解説5ページは、本人の意見を聞き、できる限り希望に沿うよう意見を尊重する努力義務を説明しています。
意見の聞き方は、面談だけに限りません。取得計画表やメール、システムなどを使う方法も解説されています。働く側は、会社がどの方法で希望を聞くか、いつまでに返答するかを確認します。
年休の希望日を提出したことと、実際に休暇を取得したことは分けます。予定表に入れた後で勤務に変わったなら、取得記録もその事実に合わせる必要があります。申請画面が承認済みでも、当日働いたままなら、その扱いを確認します。
希望日に業務が重なるときも、誰が調整するかを決めておくと話が進みます。休む本人が同僚に頼み切るしかない職場なのか、上司が仕事を割り振るのかを聞きます。制度の説明と、実際に休むための引き継ぎをセットで確かめます。
自分で取った年休と計画年休も、5日に数える
厚生労働省の解説6ページでは、本人の請求・取得、計画年休、会社による時季指定のいずれかで合計5日以上取得すれば足りるとしています。本人がすでに5日取得した人に、会社が義務のためとして追加で5日を指定する制度ではありません。
計画年休は、労使協定で計画的に年休の取得日を定める仕組みです。法定の年休日数のうち5日を超える部分について定めます。「5日残す」と「5日取得させる」は、使っている数字が同じでも意味が違います。
前者は労働者が自分で請求できる日数を残すための規定で、後者は対象者に確実に取得させる義務です。一斉休業がある会社では、その日が所定休日なのか計画年休なのかを確かめます。名称が夏季休暇でも、年休を使う日なら残日数に関わります。
年休がまだ付与されていない人や、日数が足りない人の一斉休業時の扱いも、会社に確認します。同じ日に職場が閉まるというだけで、全員が同じ年休処理になるとは限りません。
半日年休は0.5日、時間単位年休は5日の計算に入れない
同解説のQ&Aでは、半日単位で取得した年休は0.5日として扱えると説明しています。会社が半日単位で時季指定する場合は、労働者が半日単位の取得を希望したことも確認します。
時間単位の年休は、この年5日の取得日数には算入できません。時間単位でこまめに休める制度があることと、年5日の義務を満たしたことは別です。残日数が時間表示のシステムでも、義務の取得日数がどう表示されるかを確認します。
会社独自の特別休暇や、もともとの所定休日も、年次有給休暇の5日にそのまま置き換えることはできません。どの休暇区分で処理されたかを記録で見ます。年間休日との分け方は年間休日105日でも説明しています。
休暇の使い方が複数ある職場ほど、休んだ日を一つの合計にまとめないことです。年休、特別休暇、振替休日などの欄を分けると、義務の対象期間に何日取ったかを追いやすくなります。
管理簿には、取得時季・日数・基準日を記録する
労働基準法施行規則第24条の7は、使用者に年次有給休暇管理簿の作成を求めています。明らかにするのは、労働者ごとの時季、日数、基準日です。会社全体の合計表だけではありません。
保存期間は、現行の同条で、年休を与えた期間中と、その期間の満了後5年間です。ただし、同規則附則第71条の経過措置により、当分の間は3年間とされています。古い解説の「3年間」を見るときも、現行条文の本則と経過措置を分けて読みます。
管理簿は、労働者名簿や賃金台帳と合わせて調製する方法もあります。解説6ページは、必要なときに出力できる仕組みであればシステム管理も差し支えないとしています。紙の専用帳簿がないことだけで、未作成とは判断しません。
働く人は、会社が持つ管理簿の名称より、自分の基準日と取得履歴を確認できるかを見ます。記録と実際の出勤が違えば、対象の日と処理区分を示して訂正を求めます。年末に合計だけを見て思い出すより、取得後に記録を確かめるほうが食い違いを見つけやすくなります。
就業規則への記載と、違反したときの罰則
使用者による時季指定を行う場合、厚生労働省の解説7ページでは、対象となる労働者の範囲と時季指定の方法等を就業規則に記載する必要があるとしています。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準法第89条の就業規則作成・届出義務も確認します。
年5日の取得義務に違反する労働基準法第39条第7項違反には、第120条で30万円以下の罰金が定められています。同解説は、対象労働者1人につき1罪として扱うと説明しています。
ただ、取得不足を見つけたら、その場で必ず一定額の罰金が決まるという意味ではありません。違反の状況や行政の対応、刑事手続きは個別に扱われます。読者個人の職場に対して、この記事だけで処分を断定しません。
働く側が困ったときは、付与日、会社から受けた説明、申請や取得の記録を整理します。制度の一般的な説明を知りたいのか、申請を断られたことや記録の扱いを相談したいのかを分けると、相談先にも事情が伝わります。
前倒し付与や基準日の統一がある会社は、対象期間を聞く
厚生労働省の解説8〜10ページは、法定の付与日より前に年休を与える扱いを説明しています。入社日に一部を付与し、後日残りを付与する会社などでは、通常の入社半年後だけを見て数えると、対象期間を取り違えることがあります。
自分の記録では、最初にいつ何日付与されたか、後でいつ追加されたかを確認します。会社が基準日をそろえる扱いをしているなら、その後の基準日も聞きます。前倒しの方法によって管理期間の扱いが関わるため、単純に暦年に置き換えません。
解説には、基準日の重複した期間を比例按分して管理する方法もあります。これは会社の付与と管理の方法に関わる説明です。読者自身の勤務履歴を確認せずに、必要な取得日数をここで一律に計算することはできません。
会社には「私の今回の基準日と、取得義務を管理する期間を教えてください」と聞きます。システムに付与日が複数表示されるなら、どの期間の取得日として数えているかも確認します。画面の残日数だけでは、管理期間はわからないことがあります。
休暇を申請したのに働いた日は、取得済みのままにしない
年休の予定を入れた後に仕事を頼まれたら、申請した休暇がどう変更されたかを確認します。勤務記録と休暇記録が違うままでは、実際に休んだ日と管理上の取得日数が合わなくなります。
休暇当日に対応した仕事があるなら、開始と終了、指示の内容、対応後にどう処理されたかを記録します。どの範囲が労働時間に当たるかなど、個別の判断が必要な点は会社や相談窓口に確認します。休暇の名称だけで、すべてを取得済みと決めません。
会社から「残日数は減っていない」と説明されたときも、義務の取得日数の欄と照らします。残日数の管理と、基準期間内に取得した日数の管理は目的が違います。片方だけ修正されていないかを確認すると、後からの食い違いを減らせます。
期限が近づいてから休めないと言われた場合は、申請した日、返答、代わりの日の提示があったかを整理します。会社の年5日取得義務は、本人が希望を出さなければ自動的になくなるものではありません。取得の計画と業務の調整を会社に確認します。
休む日の担当をどう埋めるかは、取得の記録とは別に解決する必要があります。単にシステムの残日数を減らすだけでは、休暇を取ったことにはなりません。予定、実際の勤務、記録を同じ内容にそろえるところまで確かめます。
求人票・面接・しょくばらぼで、5日の先の運用まで確かめる
応募先の求人票では、入社時の付与、初回の基準日、計画年休の有無を読みます。「年5日取得」とだけ書かれていても、年休を自由に請求できる範囲や、実際の取得日数まではわかりません。
面接では、「配属先では休暇の希望をいつ、どこに出しますか」「担当者が休む日の業務は誰が引き継ぎますか」「計画年休と本人が申請して取る日を分けて教えてください」と聞きます。法律を守っているかという広い質問より、日々の手続きが見えます。
厚生労働省のしょくばらぼに取得日数や取得率の掲載があれば、年度と対象者を確かめます。平均値で個人ごとの5日取得を証明しようとせず、実績の背景を面接で聞きます。情報をまとめる順番は企業研究のやり方も使えます。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。年5日の義務を入口に、基準日、休暇の種類、取得記録、引き継ぎまで聞けば、入社後にどう休めるかを具体的に確認できます。