人手不足の業界は、正社員等では運輸業・郵便業が最も不足感の強い産業です。厚生労働省の令和8年8月労働経済動向調査では、労働者過不足判断D.I.は+61ポイントで、建設業と学術研究・専門・技術サービス業が各+59で続きます。調査産業計は+47ポイントです。ただし、この数字は欠員率でも採用の成功率でもありません。応募する仕事の求人と、配属先の勤務実態を別に確かめます。
2026年10月22日時点で確認した最新の同調査は、令和8年8月1日現在の状況です。正社員等とパートタイムでは不足感の順位が違います。自分が応募する雇用形態を決めてから表を読み、産業全体の数字をそのまま個別の会社に当てはめないことです。
正社員等の人手不足ランキング
使用する一次資料は厚生労働省、労働経済動向調査の令和8年8月結果の概要の表3です。産業別の正社員等労働者過不足判断D.I.を高い順に並べました。同じ公表値は同順位です。
単位はポイントで、不足と答えた事業所割合から過剰と答えた事業所割合を引いた値です。賃金や欠員数の平均・中央値ではありません。表の調査時点は令和8年8月1日で、先行き見通しの値は使っていません。
| 順位 |
産業 |
不足D.I. |
| 1 |
運輸業・郵便業 |
+61 |
| 2 |
建設業 |
+59 |
| 2 |
学術研究・専門・技術サービス業 |
+59 |
| 4 |
医療・福祉 |
+55 |
| 5 |
情報通信業 |
+52 |
| 6 |
サービス業(他に分類されないもの) |
+51 |
| 7 |
製造業 |
+45 |
| 8 |
不動産業・物品賃貸業 |
+42 |
| 9 |
生活関連サービス業・娯楽業 |
+38 |
| 10 |
宿泊業・飲食サービス業 |
+32 |
| 11 |
金融業・保険業 |
+31 |
| 12 |
卸売業・小売業 |
+26 |
| — |
調査産業計 |
+47 |
出典:厚生労働省、令和8年8月労働経済動向調査、結果の概要表3。単位はポイント。無回答を除いて集計。
運輸業・郵便業の数字が高くても、その産業にあるすべての仕事が同じ程度に不足しているわけではありません。運転、仕分け、営業、事務など、採用する仕事の内容は違います。産業名を見て応募の判断を終えず、募集職種まで進んで確認します。
建設業と学術研究・専門・技術サービス業は同じ値ですが、求められる仕事や資格は大きく違います。同順位を、未経験で入る難しさまで同じと読むこともできません。必要な経験、入社後の教育、独り立ちまでに任される作業を求人票で確認します。
パートタイムの不足感ランキング
次は同じ調査の表4です。正社員等と分けて、パートタイム労働者のD.I.を高い順に並べています。対象時点、単位、計算の考え方は前の表と同じです。
| 順位 |
産業 |
不足D.I. |
| 1 |
サービス業(他に分類されないもの) |
+42 |
| 2 |
宿泊業・飲食サービス業 |
+34 |
| 3 |
卸売業・小売業 |
+32 |
| 3 |
生活関連サービス業・娯楽業 |
+32 |
| 5 |
医療・福祉 |
+31 |
| 6 |
運輸業・郵便業 |
+29 |
| 7 |
不動産業・物品賃貸業 |
+24 |
| 8 |
製造業 |
+14 |
| 9 |
学術研究・専門・技術サービス業 |
+10 |
| 10 |
金融業・保険業 |
+8 |
| 11 |
情報通信業 |
+6 |
| 12 |
建設業 |
+5 |
| — |
調査産業計 |
+26 |
出典:厚生労働省、令和8年8月労働経済動向調査、結果の概要表4。単位はポイント。無回答を除いて集計。同値は同順位。
正社員等で上位の建設業は、パートの表では下位です。反対に、卸売業・小売業は正社員等の表より上位にあります。業界が人手不足という見出しだけで、自分の希望する雇用形態まで同じだと判断すると、求人の実態を見誤ります。
パートの応募では、仕事内容だけでなく必要とされる曜日や時間帯を聞きます。事業所全体で不足していても、希望する昼間の枠は埋まっているかもしれません。募集時間、シフトの決め方、契約上の所定時間と実際の勤務を照合します。
正社員等とパートのD.I.を足して、業界の総合点を作ることもしません。違う雇用形態についての事業所の回答であり、人数の不足を合算した数字ではないためです。自分の応募に必要な表を選ぶほうが、次の確認につながります。
D.I.は不足する人数の割合ではない
調査産業計の正社員等は、不足と答えた事業所が50%、過剰が3%で、差が+47ポイントです。+47を、必要人数の47%が欠けていると読むのは誤りです。採用人数や欠員数を直接数えた表ではありません。
運輸業・郵便業は不足62%、過剰1%で+61です。建設業は不足59%、過剰0%で+59です。同じD.I.であっても、その元になる不足と過剰の組合せは違うことがあります。値の大きさだけでなく、何を引き算したかを押さえます。
この調査は事業所が状況を判断して回答するものです。人員計画、受注、勤務の組み方などを反映した不足感であり、応募者側から見た求人の条件の良さを評価していません。賃金が高い順、残業が少ない順、採用されやすい順のどれとも違います。
調査対象もすべての職場ではありません。主要産業の常用労働者30人以上の民営事業所を対象としています。付属統計表の第3-1表では、雇用形態別の過不足状況をさらに確認できます。個別の小さな事業所まで網羅した求人一覧ではない点を踏まえて使います。
同じ調査の雇用判断D.I.とも区別します。雇用判断は前の期間より人が増えたか減ったか、過不足判断は人手が足りるかどうかです。採用で人が増えていても、仕事の増加に追いつかず不足と答えることはあり得ます。表題の似た数字を置き換えないことです。
職業別求人倍率で応募する仕事を見る
人手不足の産業がわかったら、次は職業別に確認します。産業は事業所の事業の種類、職業は人が担当する仕事の種類です。医療・福祉の会社の事務職と、医療の専門職は、同じ仕事として扱われません。
厚生労働省の一般職業紹介状況、令和8年8月分の参考統計表表7-2から、仕事の例を抜き出しました。全国計の常用でパートを除く原数値です。新規学卒の市場全体や、民間サイトだけの求人まで含む数字ではありません。
| 職業の例 |
有効求人倍率 |
| 建築・土木・測量技術者 |
6.86倍 |
| 介護サービス職業従事者 |
3.50倍 |
| 情報処理・通信技術者 |
1.48倍 |
| 一般事務従事者 |
0.29倍 |
出典:厚生労働省、一般職業紹介状況、令和8年8月分、参考統計表7-2。全国計、常用・パート除外。有効求人数を有効求職者数で割った倍率。抜粋を高い順に掲載したもので、全職業の上位ランキングではありません。
一般事務従事者は、産業を問わず事務の仕事を数えた区分です。ある産業で人が足りないから、その産業の事務職も同じように募集が多いとは言えません。職種を変えずに業界を変える転職では、この違いを特に確かめます。
倍率は就職の確率でもありません。資格、勤務地、勤務時間、経験の条件が一致しなければ、求人数が多くても応募できないことがあります。倍率の高い仕事に自分の経験がどうつながるかを、求人票の業務と応募要件で確認します。
ニュースで使われる全国の有効求人倍率と、この職業別表の値も混ぜません。前者には季節調整した全体の値があり、この表は特定の就業形態の職業別原数値です。定義と計算は有効求人倍率の読み方で整理しています。
不足の理由は求人の文面だけで決めない
同じ職種で募集が続いていても、その理由は表からわかりません。事業が増えたのか、退職者を補うのか、拠点を新設するのか、必要な資格を持つ人が見つからないのかを、募集の背景として聞きます。
求人票の急募という言葉は、入社を急いでほしい事情を示すことはあっても、働きやすさの説明ではありません。入社可能日を聞かれたら、自分の退職や生活の予定と分けて調整します。急いでいるから条件の確認を省いてよいわけではありません。
募集人数も、体制と一緒に聞くと意味がはっきりします。増員なら何の業務が増えるのか、補充ならどの仕事を引き継ぐのかを確認します。現在の人数と採用後の担当範囲を聞けば、入社直後から想定以上の仕事を抱えるかを考えられます。
欠員の理由を尋ねても、前任者の個人情報を聞く必要はありません。知りたいのは、今回の採用で任せる仕事と、無理なく引き継ぐ体制です。前任者の評価や噂を材料にせず、業務の範囲と手順を確かめます。
人手不足でも教育担当がいるかを聞く
未経験歓迎と書かれていたら、経験不問の文字だけで安心せず、教える人と期間、最初に任される仕事を聞きます。人手が足りない職場では、採用する人が入ってもすぐ教育に時間を割けないことがあります。実際の体制を確かめないとわかりません。
面接では、研修があるかだけでなく、研修後に困ったときの相談相手を尋ねます。担当者が不在の日に誰へ聞くのか、作業の確認を誰が行うのかも確認します。制度名よりも、仕事が回る仕組みを聞くほうが入社後を想像できます。
| 確認したいこと |
面接での聞き方 |
| 採用の背景 |
増員と欠員補充のどちらですか |
| 入社直後の仕事 |
最初に担当する業務を教えてください |
| 教育担当 |
通常業務で質問する相手は誰ですか |
| 人員不足時の運用 |
欠勤者が出た日の分担はどう決めますか |
| 業務の見直し |
採用以外に負担を減らす取組はありますか |
答えが抽象的なら、直近の入社者にどのような順で業務を任せたかを尋ねます。自分と同じ条件で入った人の個人情報を求める必要はなく、仕事を覚えるまでの流れを知るための質問です。
人が増えればすべて解決するとも限りません。手順が曖昧だったり、指示が複数から来たりすると、人数を増やしても混乱します。採用と同時に、業務の整理や担当の変更が進んでいるかを聞きます。
残業・休日・離職を同じ部署で確かめる
不足しているという説明だけで、残業が多いとは断定できません。ただ、応募者としては負担がどこに出ているかを確認したいところです。配属先の残業の実績、忙しい時期、休日出勤、休暇中の引き継ぎを聞きます。
平均だけでなく、自分の担当する職種の勤務を聞きます。事務と現場で働く時間帯が違う会社では、会社全体の数字が自分の生活をそのまま表すとは限りません。夜勤や早朝勤務があるなら、回数と予定の決まり方を別に尋ねます。
人が定着しているかを見るときは、入社者と離職者の対象を揃えます。新卒の離職と中途の離職、正社員とパートの数字を混ぜないことです。離職率の読み方で対象の違いを確認し、求人票にない数字を質問として残します。
仕事の負担を聞くことは、仕事を避けることではありません。自分が担当できる範囲と、無理なく続けられる勤務条件を照合するためです。忙しいが支援がある職場と、忙しさの説明も支援もない職場では、入社前に確認できる内容が違います。
業界平均と提示される給与を分けて比べる
人手不足なら給与も高いはずだ、と決めないことです。D.I.は人員の不足感で、賃金水準や賃上げを直接測っていません。資格が必要な職種と補助的な業務では、同じ産業でも給与の設定が変わります。
提示された月給は、基本給、固定残業代、夜勤や休日の手当を分けます。業界平均より高く見えても、勤務時間が長い分や特定の手当を含んでいるかもしれません。賞与は実績と支給条件を区別します。
資格を取れば給与が変わると説明されたら、資格手当、取得費用の負担、実際に担当する仕事の変更を聞きます。将来の収入例だけで今の契約条件を判断せず、入社時に確定する金額を先に揃えます。
地域と時間帯を変えて求人の条件を比較する
全国の産業別D.I.が高くても、通勤できる地域に希望する求人があるとは限りません。仕事の種類を決めたら、勤務地、雇用形態、勤務時間で絞って求人を読みます。全国の不足感と、手元の求人の少なさが違って見えても、それだけで統計が誤っているわけではありません。
求人を比べるときは、同じ職種名でも業務が同じかを確かめます。営業の補助、顧客への連絡、現場の作業が一つの職名にまとめられていることがあります。入社後にどこまで担当するのかを確認し、職名の一致だけで比較を終えないことです。
自分の希望時間と募集時間が違うなら、変更できるかを応募前に聞きます。相談可能という言葉があっても、希望どおりになるとは限りません。採用側が必要としている時間帯と、自分が働ける時間を具体的に伝えます。
募集が長く続く理由を確認する
同じ求人を繰り返し見かけても、辞める人が多いとすぐに決めないことです。継続的な増員、勤務地ごとの募集、掲載の更新など、理由は複数あります。求人の掲載回数を離職率の代わりに使うことはできません。
面接では、今回入る人が担当する仕事と、採用後のチームの体制を聞きます。募集の背景と仕事内容の説明がつながっているかを確認します。常に採用しているという回答なら、どのような事業や人員計画による募集なのかを尋ねます。
複数の説明が食い違うときは、採用担当と配属先で条件の理解が揃っているかを確認します。求人票の担当範囲と面接で聞いた範囲に差があれば、そのままにせず、入社時の書面ではどちらになるかを質問します。
書類や面接で求められる経験が広すぎるなら、入社時に必須の経験と、入社後に身につける仕事を分けて聞きます。人手不足という説明だけでは、育成を前提とした募集か、すぐ一人で担当する募集かはわかりません。応募者にも採用側にも、最初に任せる仕事の理解が揃うことが必要です。
応募の前にできる仕事と学ぶ仕事を整理する
人手不足の仕事を探すときも、経験を広く言い換えるだけでは応募先との接点が伝わりません。自分が担当した作業、使った道具や仕組み、周囲と調整した内容を整理し、求人に書かれた業務と照らします。初めて担当する作業は、経験したこととして書かないことです。
似た業務でも、安全管理や資格の要件が違う仕事があります。経験があるからすぐできると考えず、応募資格と研修の内容を読みます。会社から経験を評価されたら、実際に任される範囲がどこまでかを確認します。
未経験の部分については、入社前に必要な準備と入社後の教育を分けて聞きます。習得の予定が曖昧なまま、人が足りないので何でも担当するという話になっていないかを確かめます。仕事の範囲がわかれば、給与の提示や勤務予定との関係も判断しやすくなります。
複数の求人で比較するときは、雇用形態と担当業務が揃うものを並べます。短時間の補助業務と、責任を持って一人で行う仕事を、同じ職種名だけで比べないことです。不足感の順位から離れ、自分が入社する条件で比較します。
求人票・面接・しょくばらぼで会社の実数に戻る
ランキングは、調べる産業と職種を広げる入口です。最終的には、今回の募集の業務、応募要件、配属先の人数、教育担当、勤務時間を求人票と面接で確かめます。産業の不足感を、その会社の採用理由の代わりに使わないことです。
厚生労働省のしょくばらぼには、掲載企業の採用・離職や働き方の情報があります。公表された年度と雇用区分を確認し、求人票の条件と照合します。調べる順番は企業研究のやり方も使えます。
公開されていない数字は、配属先の実績として会社に聞きます。人手不足だから働きやすい、あるいは働きにくいと決めず、その会社の実際の数字を求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。