2026年の賃上げは、厚生労働省がまとめた民間主要企業の春季賃上げ集計で5.18%、月例賃金の妥結額は18,167円です。10月21日公表の令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査では、改定率4.4%、改定額13,926円でした。同じ賃上げでも対象が違うため、数字が違います。どちらも自分の給与が同じ率で増えるという意味ではありません。
最低賃金も別に読みます。地域別最低賃金の全国加重平均は令和7年度1,121円、令和8年度の答申集計では1,177円です。制度と資料は2026年10月22日に確認しました。答申額、実際の適用額、発効日を分け、自分の勤務地で確かめます。
春季賃上げと実態調査は対象が違う
春季集計の一次資料は厚生労働省、令和8年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況の第1表です。もう一つは令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査の第2表です。
| 資料 |
率 |
月例賃金の額 |
| 民間主要企業春季賃上げ集計 |
5.18% |
18,167円 |
| 賃金引上げ等の実態調査 |
4.4% |
13,926円 |
出典:厚生労働省、令和8年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況、第1表。同省、令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査、第2表。いずれも令和8年の値で、年収や手取りの増加額ではありません。
春季集計は、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上で労働組合があり、妥結額などを把握できた主要企業428社が対象です。各企業の組合員数による加重平均です。原則として定期昇給込みの妥結額ですが、一部に特定の年齢の妥結額を含むと注記されています。
実態調査は、常用労働者100人以上の会社組織の民営企業を対象とし、労働組合のない企業も含みます。賃金改定を実施した、または予定して額も決定している企業と、改定しない企業について集計した値です。引上げた企業だけの数字ではありません。
実態調査の率も、企業の率を単純に平均した中央値ではありません。労働者数による加重平均として公表されています。給与の高低や企業規模の構成が違う集計を、同じ条件の競争のように並べないことです。
そのため、春季の5.18%を日本の全員の賃上げ率と呼ぶことはできません。実態調査の4.4%も小規模な会社をすべて含む数字ではありません。ニュースで率を見るときは、資料名と対象企業をセットで確認します。
春季の産業別賃上げ率ランキング
春季集計の第1表から、産業別の賃上げ率が高い順に上位10区分を載せました。個人の評価による昇給だけの数字ではなく、春季交渉で把握できた妥結状況です。対象は前節の主要企業で、全国の全企業の産業平均ではありません。
| 順位 |
産業 |
賃上げ率 |
| 1 |
金融・保険 |
6.48% |
| 2 |
建設 |
6.45% |
| 3 |
情報通信 |
6.41% |
| 4 |
精密機器 |
5.97% |
| 5 |
機械 |
5.95% |
| 6 |
電力・ガス |
5.72% |
| 7 |
ゴム製品 |
5.61% |
| 8 |
化学 |
5.56% |
| 8 |
自動車 |
5.56% |
| 10 |
窯業 |
5.50% |
| — |
全体 |
5.18% |
出典:厚生労働省、令和8年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況、第1表。対象企業の組合員数による加重平均。公表された率が同じ区分は同順位。全体を除く21産業区分の上位10区分です。
金融・保険は集計4社、情報通信は7社です。産業の数字であっても、その産業のすべての職場を広く同じ密度で調べた表ではありません。対象企業数が違うため、細かな率の差だけで応募先の優劣を決めないことです。
率と額の順位も同じではありません。同表の妥結額は金融・保険が23,554円、建設が22,879円、情報通信が25,684円です。率が高いほど増える金額も必ず大きいわけではなく、現行賃金の水準などが関わります。年収の順位として読むこともできません。
春季集計の平均年齢は40.0歳です。初任給の増加や、新卒として提示される給与と同じ対象ではありません。新卒の応募では、自分に提示される基本給と手当、入社後の昇給の仕組みを別に聞きます。
実態調査の最新結果は年後半の予定も含む
厚生労働省は令和8年の結果の報道発表資料を2026年10月21日に公表しました。令和8年中に1人平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は92.0%です。これは企業の割合であり、労働者の92.0%が昇給したという意味ではありません。
同調査の1人平均賃金は、所定内賃金の1か月1人当たり平均です。諸手当などは含みますが、時間外・休日・深夜の割増手当や慶弔などの特別手当は含みません。賞与込みの年収が同じ率で伸びたと解釈しないことです。
集計は9月から12月の決定済み予定も含みます。公表日までにすべての増額が給与明細へ反映された実績だけではありません。企業の予定を含む数字を、年末に確定した受取額として説明するのも避けます。
| 区分 |
改定額 |
改定率 |
| 調査計 |
13,926円 |
4.4% |
| 労働組合あり |
14,757円 |
4.5% |
| 労働組合なし |
13,033円 |
4.2% |
出典:厚生労働省、令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査、第2表。予定を含む1人平均賃金の改定。労働組合の有無別の差は、組合の効果だけを取り出した値ではありません。
定期昇給とベースアップの違い、昇給の平均の詳しい読み方は昇給の平均で扱っています。ここでは最新年の要点を押さえ、自分の会社の説明が何を含む改定かを確認します。ベースアップのみの率と、定期昇給込みの率を同じものとして比較しません。
最低賃金の全国加重平均の推移
地域別最低賃金の全国加重平均は、都道府県の時間額を適用労働者数で重み付けした値です。全国一律で支払われる最低時給ではありません。以下は年度ごとの改定額の推移で、暦年の平均賃金や実際に受け取った時給の平均とは違います。
平成24年度から令和7年度までは、厚生労働省の生活衛生関係営業の現況、課題、支援策について、資料2の最低賃金額の推移の9頁にある全国加重平均額を掲載しました。令和8年度は、地域別最低賃金額の答申状況の別紙を使い、段階を明記します。
| 年度 |
全国加重平均の時間額 |
| 平成24年度(2012) |
749円 |
| 平成25年度(2013) |
764円 |
| 平成26年度(2014) |
780円 |
| 平成27年度(2015) |
798円 |
| 平成28年度(2016) |
823円 |
| 平成29年度(2017) |
848円 |
| 平成30年度(2018) |
874円 |
| 令和元年度(2019) |
901円 |
| 令和2年度(2020) |
902円 |
| 令和3年度(2021) |
930円 |
| 令和4年度(2022) |
961円 |
| 令和5年度(2023) |
1,004円 |
| 令和6年度(2024) |
1,055円 |
| 令和7年度(2025) |
1,121円 |
| 令和8年度(2026・答申) |
1,177円 |
出典:厚生労働省、厚生科学審議会の第46回生活衛生適正化分科会、資料2の9頁、最低賃金額の推移。同省、令和8年度の地域別最低賃金額の答申状況、別紙の全国加重平均欄。令和8年度は答申集計であり、全地域で発効済みという意味ではありません。
この表を、自分の時給の増加の履歴として読むことはできません。勤務地の額が違い、現在の時給がすでに最低賃金を上回っている人もいるためです。全国の推移は最低水準の改定の動きを見るために使います。
全国加重平均には、重みとして使う労働者数の更新の影響が入る年もあります。厚生労働省の全国加重平均額と引上げ率の推移、参考3は、平成28年度と令和5年度の額に更新の影響分が含まれると注記しています。過去の差額を全部、同じ人が受けた昇給と見なさないことです。
令和8年度は発効日を勤務地で確認する
答申集計の全国加重平均は1,177円で、前年度から56円の引上げです。ただし、56円は全国の集計値の差です。すべての都道府県で同じ額が増えるという意味ではありません。
厚生労働省の令和8年度最低賃金額答申の公表は、各地方最低賃金審議会の答申を取りまとめたものです。個別に適用される最低賃金は、決定後の各地域の額と発効日を確認します。答申の資料だけで、確認日現在のすべての勤務地の適用額を断定しません。
勤務地の最低賃金が改定されても、給与明細の月給総額へ一定額を足すだけの計算とは限りません。月給制では、比較に使う賃金の範囲と所定労働時間から時間額へ換算して確かめます。時間外の割増分や対象外の手当まで含めた月給総額で比べると誤ります。
都道府県別の額と発効日の確認は最低賃金2026で進められます。居住地だけで判断せず、自分が働く場所と適用関係を確認します。派遣などで就業先が異なるときも、給与担当に適用する最低賃金を尋ねます。
賃上げの説明は基本給と手当を分けて聞く
会社から賃上げがあったと説明されたら、給与明細で変わった項目を確認します。基本給が増えたのか、役割の変更による手当なのか、勤務が増えて割増手当が増えたのかを分けます。受取額が増えても、賃金表の引上げとは限りません。
前の月と比べるときは、勤務日数や残業時間も見ます。残業が増えて総支給額が上がった月を、基本給が上がった月と取り違えないためです。反対に、基本給が上がっても残業が減ったため総額があまり変わらないこともあります。
昇格や職種変更があった人は、その変化も別にします。全社的な賃金改定と個別の処遇変更が同じ時期なら、合計だけではそれぞれの意味がわかりません。評価通知や賃金改定の案内を給与明細と並べます。
| 会社からの説明 |
確認する内訳 |
| ベースアップを実施 |
賃金表と自分の基本給の変更 |
| 定期昇給を実施 |
対象者・評価・反映する月 |
| 月給を引き上げ |
基本給・固定残業代・手当の変更 |
| 年収が増える見込み |
賞与の前提と確定した給与 |
| 最低賃金に対応 |
適用地域・発効日・時間額の計算 |
手取りは税や社会保険料などの影響も受けるため、賃上げ率をそのまま手取りの増加率として使わないことです。総支給、控除、差引支給を区別し、改定された賃金の内容を確かめます。この記事の集計率から個人の手取り額は算定しません。
転職では今年の改定が提示額に含まれるか聞く
求人の給与を見るときは、掲載日と更新日を確認します。年度途中の賃金改定前の金額なのか、改定後なのかで、説明会の話と求人票がずれることがあります。口頭の説明を聞いたら、最新の書面に反映されているかを確かめます。
今後賃上げを予定していると言われても、決定済みかどうかは別です。入社時に確定する基本給と手当、まだ予定の賞与や改定を分けます。過去の春季実績を、入社後の個人への保証と読み替えないことです。
求人票の昇給ありという記載だけでは、全員が毎年同じ率で上がるかはわかりません。評価の方法、対象者、反映時期、前年度の実績を聞きます。試用期間や入社時期によって初回の改定の扱いが違うかも確認します。
業界の給与水準も知りたいときは業界別の平均年収で対象と期間を揃えます。年収の水準、春季の伸び、最低賃金の時間額は別の数字です。違う物差しを使って、ある業界は給与が高いと結論づけないことです。
賃上げ率だけで仕事内容と勤務条件を選ばない
賃金が上がる職場でも、自分が続けられる勤務かは別に確かめます。担当範囲が広がるのか、夜勤や休日出勤があるのか、勤務地や転勤の範囲はどうかを聞きます。増額と同時に仕事の条件が変わるなら、その両方を比べます。
人手不足への対応で賃上げしたという説明があれば、採用だけでなく仕事の分担や教育も確認します。新人に教える人がいるか、担当者が休む日に代わりがいるかは、給与の集計率からはわかりません。
比較表には、自分に確定する給与と、これから確認する条件を書き分けます。年収例をそのまま自分の欄に写さず、その例の年齢や勤務条件が違うかも確かめます。まだ説明を受けていない欄を、期待で埋めないことです。
前年と比較するときは同じ調査の対象を読む
春季集計の全体は、令和7年の賃上げ率5.52%に対し、令和8年は5.18%です。ただし、集計企業数は前年390社、今年428社で、毎年まったく同じ企業を固定して比較した値ではありません。この差だけで、各社が前年より賃上げを抑えたとは断定できません。
同じ資料の前年欄を使っても、対象の注意書きまで読む必要があります。産業別でも把握できた企業数は異なります。応募する会社の改定の動きを知りたいなら、その会社が何を対象として何を公表しているかを確認します。
実態調査の改定率は前年も今年も4.4%ですが、個人全員が同じ率で据え置かれたという意味ではありません。改定する企業、しない企業、給与水準の構成が集計に入ります。会社の制度を調べるときは、全体の平均をそのまま評価の基準にしません。
内定時には確定した条件を同じ形で並べる
提示された給与は、現職の給与明細と内訳を揃えて比べます。通勤など条件付きの手当を含むか、賞与が何を前提にした額か、残業代が別途かを確認します。月給だけ同じ欄に置いても、働く条件まで揃った比較にはなりません。
入社後の賃上げを期待するなら、制度の説明と適用の条件を聞きます。直近の集計率に近い増額が続くと仮定して、必要な収入を計算しないことです。確定する給与で生活の予定を立て、将来の改定は説明を受けた内容として別に残します。
給与の説明で不明点が残ったら、率を聞き直すより、自分の基本給がどの月からどう変わるかを確認します。会社全体の方針と個人への適用を分けて尋ねると、集計値だけではわからない条件を具体的に確かめられます。
賃金改定の資料を読むときは対象期間を残す
応募先の説明をメモするときは、今年という言葉をそのまま残さず、何年のどの改定の説明だったかを書きます。年度の途中で面接を受けると、春の改定と翌年度の予定が同じ会話に出ることがあります。決定済みの内容と検討中の内容を分けます。
会社全体の実績が示されたら、自分の雇用区分や職種がその対象に入るかも聞きます。正社員向けの改定の説明が、短時間勤務や契約期間のある求人にも同じように当てはまるとは限りません。適用条件は個別の募集で確認します。
過去の改定通知が公開されていても、それだけで現在の提示額は確定しません。面接で説明された額と、内定時の労働条件の書面を照合します。額に差があるなら、改定の反映なのか、手当の条件が違うのかを尋ねます。
比較のために必要なのは、会社の賃上げ方針を評価する感想ではなく、自分の給与に何が反映されるかという事実です。不明なままの点を残さず、説明を受けた日付と条件を揃えて確認します。
求人票・面接・しょくばらぼで会社の改定実績を確かめる
応募先では、基本給、手当、固定残業代、賞与を求人票で分けます。面接では、直近の賃金改定の対象と反映時期、自分の提示額に改定が入っているかを確認します。平均の率と自分に適用される条件をつなぐ作業です。
厚生労働省のしょくばらぼに残業や休暇、採用・離職の情報があれば、給与と合わせて読みます。賃上げの詳細が載っているとは限らないため、未掲載の改定実績は面接で聞きます。掲載値は年度と対象者を確認します。
春季の5.18%、実態調査の4.4%、最低賃金の全国加重平均は、社会全体の動きを知る入口です。選ぶときはその会社の実際の数字へ戻り、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。