会社員でも、給与の年間収入が2,000万円を超える人は確定申告が必要です。給与が1か所で、その全部が源泉徴収の対象となる人は、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると申告が必要になります。多くの会社員は年末調整で所得税の精算が終わりますが、医療費控除などを受ける手続きは自分で行います。
根拠は国税庁の給与所得者向けの案内です。制度の確認日は2026年10月23日。申告する年分をそろえ、給与、給与以外の所得、控除の順に確認します。以下の金額は、手取りや返金額を表す数字ではありません。
年末調整で終わるかは、給与以外の所得も見て決める
会社は毎月の給与などから所得税を源泉徴収し、年末調整の対象になる人について年間の税額を精算します。ただし会社が把握している給与や申告された控除だけでは、本人の税の手続きがすべて終わらないことがあります。
国税庁No.1900、給与所得者で確定申告が必要な人は、申告が必要な条件を挙げています。給与収入が高い人だけの話ではありません。別の勤務先から給与を受けた人や、業務の報酬、不動産の賃料などがある人も、所得の区分と金額を確認します。
| 働き方や収入の状況 |
所得税の申告で確認する条件 |
| 給与の年間収入が高い |
2,000万円を超えるか |
| 給与が1か所で全額が源泉徴収対象 |
給与・退職以外の所得合計が20万円を超えるか |
| 給与が複数で全額が源泉徴収対象 |
年末調整されなかった給与収入と他の所得の合計が20万円を超えるか |
| 同族会社の役員など |
その会社から貸付金の利子や賃貸料などを受け取っているか |
| 年の途中で退職 |
年末調整を受けたか、源泉徴収された税が過大でないか |
出典:国税庁No.1900、給与所得者で確定申告が必要な人、概要。退職後の還付についてはNo.2030、還付申告。複数給与の判定には申告不要となる例外もあるため、本文の説明も確認します。
複数給与の例外として、給与収入の合計から一定の所得控除を引いた金額が150万円以下で、給与・退職以外の所得合計が20万円以下なら申告不要とされています。この計算からは雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除きます。給与が複数ある人は、単に副業の金額だけで判断せず、No.1900の注記と自分の書類を照合します。
会社で年末調整を受けたことは、申告が不要である証明にはなりません。年末調整の後に申告する人も、会社の給与を抜かして副業だけを申告するのではなく、年間の所得と控除を正しく申告します。
副業の収入と所得を、同じ欄に書かない
報酬を受け取る仕事の収入は、入金や売上に当たる金額です。所得は、所得の種類に応じた計算をした後の金額です。給与以外の副業で必要経費を差し引くときも、私生活の支出を何でも経費へ入れられるわけではありません。
副業がアルバイトなどの給与なら、給与収入として扱います。業務委託の報酬と同じ計算に置き換えないことです。働き方が似ていても、契約と支払いの実態が違えば確認する資料も変わります。給与の源泉徴収票と、報酬の明細は分けて保存します。
20万円という数字も、すべての収入に共通する非課税枠ではありません。国税庁No.1900は、給与の支払先や源泉徴収などの条件を含めて所得税の申告義務を説明しています。自分に条件が当てはまるかから確認します。
さらに、国税庁No.1900の質疑応答は、医療費控除などのために確定申告をするなら、申告不要の条件に当たる20万円以下の所得も一緒に申告する必要があると説明しています。還付を受ける部分だけ選んで申告することはできません。
所得税と住民税の申告も別に確認します。所得税の申告不要の扱いを、そのまま住民税に当てはめません。住民税については居住する自治体の最新案内を読み、所得税の申告をしない人も窓口に確認します。給与から引かれる住民税の仕組みは住民税はいつから引かれるかで整理しています。
業種別の給与ランキングと申告の判定
国税庁の令和7年分民間給与実態統計調査では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円です。次のランキングは同じ資料の業種別平均給与の上位です。給与の規模感はわかりますが、確定申告をする人の割合や、納める税額の順位ではありません。
| 順位 |
業種 |
平均給与・千円 |
| 1 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
8,544 |
| 2 |
金融業・保険業 |
7,256 |
| 3 |
情報通信業 |
6,819 |
| 4 |
建設業 |
5,903 |
| 5 |
製造業 |
5,730 |
出典:国税庁、令和7年分の民間給与実態統計調査の結果の4ページ、業種別の平均給与・平均賞与。表番号なし。2025年の1年間を通じて勤務した民間の給与所得者が対象。賞与を含む年間給与の平均で、中央値ではありません。表は原資料の千円単位です。
業種平均が給与収入の申告基準より低くても、自分が申告不要とは決まりません。平均には給与の違う人が含まれますし、副業や医療費控除の事情も入っていません。勤務先の業種ではなく、自分が受け取った金額で判断します。
源泉徴収票の支払金額、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、源泉徴収税額は、別の数字です。給与の収入額を確認する欄と、所得や控除を確認する欄を混ぜないことです。欄の読み方は源泉徴収票の見方で確認できます。
転職した年は、前職の給与を含めて今の勤務先で年末調整したかも確認します。前職分を含む書類へ、同じ給与をもう一度加えると二重計上になります。源泉徴収票の摘要や会社の説明を確認し、わからなければ発行元へ聞きます。
医療費控除は、対象の支払いから補てん額を引いて計算する
国税庁No.1120、医療費を支払ったときは、本人または生計を一にする配偶者などの親族のために、その年に支払った医療費を対象としています。診察を受けた年と、実際に支払った年が異なるときは、支払った年を確認します。
控除額は、対象医療費の合計から保険金などで補てんされる金額を引き、さらに10万円を引いて求めます。総所得金額等が200万円未満なら、10万円の代わりに総所得金額等の5%を引きます。医療費控除の上限は200万円です。マイナスの控除を作る計算ではありません。
5%を掛けるのは年収や手取りではなく総所得金額等です。給与の人は源泉徴収票の支払金額をそのまま使わず、他の所得も含めた申告上の数字を確認します。年収が少なければ医療費が10万円を超えなくても対象になり得ますが、支払いの内容や補てん額まで確かめてから計算します。
保険金などは、その給付の目的となった医療費を限度に差し引きます。ある治療に対する給付がその治療費を上回っても、余った分を無関係の治療費から引く扱いではありません。支払った医療費と、それを補てんする給付を結び付けて整理します。
病院、歯科、薬局などの領収書をまとめるときは、診療を受けた人、支払先、支払額、補てん額を分けます。家族が別々に立て替えた支払いを、誰が負担したか曖昧なまま重複して集計しないようにします。家族の申告と同じ支払いを二重に使わないことです。
すべての健康関係の支出が医療費になるわけではありません。対象か迷う支出は、国税庁No.1122、医療費控除の対象となる医療費と照合します。通常の健康診断や予防目的の支出を、治療費と同じように一括で入れないようにします。
医療費が戻る制度ではなく、所得を計算する際の控除
医療費控除で計算した額は、戻ってくる税額そのものではありません。課税対象となる所得を計算する際に差し引く金額です。源泉徴収税額、他の控除、所得の状況によって結果は変わります。控除額を見て、同額が振り込まれると考えないことです。
国税庁No.2030、還付申告は、源泉徴収や予定納税で納めた所得税がない人には、還付される所得税はないと説明しています。源泉徴収票の税額も見ずに、必ず還付されるとは言えません。
医療費控除を受けるには、領収書などから医療費控除の明細書を作成します。所定の医療費通知を使うと記載を簡略化できますが、通知にない支払いまで自動で拾われるとは限りません。別に支払った医療費や補てん額も確認します。
No.1120では、明細書の確認のため、確定申告期限等から5年を経過する日まで、領収書の提示や提出を求められることがあるとしています。通知を添付した医療費などの扱いは案内を確認します。入力が終わった直後に、書類を全部捨てないようにします。
市販薬はセルフメディケーション税制の対象かを確認する
国税庁No.1129、セルフメディケーション税制は、一定の取組を行った人が、本人や生計を一にする親族のために対象の医薬品を購入したときの特例です。薬局で買ったものをすべて足す制度ではありません。
保険金などで補てんされる分を除いた対象購入費から12,000円を引き、最高88,000円を所得控除にできます。対象商品かは領収書等の表示や公式の対象品目を確認します。化粧品、日用品、対象外の薬を混ぜた購入総額で計算しないことです。
一定の取組には、勤務先の定期健康診断や一定の予防接種などがあります。申告する本人が取組を行っている必要があり、家族だけが受診したことでは足りません。取組をした年も、申告対象の年と照合します。取組に使った健診費用などは、この特例の控除対象購入費に含めません。
通常の医療費控除とは選択適用で、同じ申告者が両方を併せて受けることはできません。別々に集計して選びます。No.1129は、選択した後に更正の請求や修正申告で選択を変えることはできないと説明しています。申告後に考えるのではなく、送信前に比較します。
ふるさと納税は、寄附先の数と他の申告の有無を見る
総務省のふるさと納税ポータル、ふるさと納税の流れは、ワンストップ特例を使える人を、確定申告の不要な給与所得者等で、寄附先が5団体以内の人と説明しています。寄附先への特例申請も必要です。
数えるのは寄附の回数ではなく自治体の数です。同じ自治体へ複数回寄附しても、それだけで複数団体にはなりません。ただし必要な申請を済ませたかは寄附先で確認します。寄附をしただけで、自動的に特例の申請が終わると考えないようにします。
医療費控除や副業などで確定申告するなら、申請済みのワンストップ特例は無効になります。国税庁No.1155、ふるさと納税は、申請した分を含めて寄附金控除を計算するよう案内しています。医療費の入力が終わっても、寄附の入力を忘れないことです。
ふるさと納税には控除の上限があります。寄附額のうち2,000円を超える部分が対象という説明だけを読み、いくら寄附しても負担が同じだとは考えません。給与が減った年や、他の控除を受ける年は、前年の収入で調べた上限をそのまま使わないようにします。
e-Taxは、入力から送信の完了まで確認する
国税庁のe-Tax、個人でご利用の方は、確定申告書等作成コーナーから申告書を作成し、送信できると案内しています。申告する年分と所得の種類を選び、画面の案内に従って入力します。前年に保存した申告書を、そのまま今年分として使わないようにします。
準備する書類は、給与の源泉徴収票、給与以外の収入や必要経費がわかる記録、医療費の明細、寄附を証明する書類などです。マイナンバーカード等の利用方法は申告時の公式案内で確認します。自動取得できる情報があっても、対象年、金額、重複の有無は自分で照合します。
源泉徴収票は添付が不要でも、申告書を作るためには必要です。書類の添付を省けることと、数字を確認しなくてよいことを混同しません。前職分を含むか、支払いが完了しているか、補てん額が抜けていないかを順に見ます。
作成した申告書は保存し、送信結果まで確認します。計算結果の画面を見ただけでは提出は終わりません。納税が必要なときは納付方法も確認します。還付先の口座に誤りがないかも、送信前に見直します。
寄附や医療費を入力した後は、申告書の控除欄に反映されているかを確認します。証明書を保存したことと、その内容を申告へ反映したことは別です。自動連携を使った人も、読み込んだ情報と手入力分が重複していないかを照合します。
家族の分をまとめて整理するなら、誰が負担した支払いかを集計前に確認します。資料を持っている人が必ず控除を受ける人になるとは限りません。判断に迷うときは、支払った状況がわかる記録を用意し、税務署などへ確認してから入力します。
申告前に、所得と控除の書類を別に並べる
集計を始めるときは、受け取ったお金の資料と、控除を受けるための支払いの資料を分けます。副業の経費、医療費、ふるさと納税を同じ支出として一括で引くことはできません。何の所得を計算するための支出か、所得控除に使う支払いかを区別します。
| 整理する資料 |
送信前に確かめる点 |
| 給与の源泉徴収票 |
年分、前職分を含むか、訂正の有無 |
| 副業の売上や報酬 |
給与か給与以外か、記録の漏れ |
| 必要経費の記録 |
仕事との関係、私用分との区別 |
| 医療費と補てんの記録 |
支払った年、給付の対象となる治療 |
| 医療費通知 |
通知にない支払い、二重入力の有無 |
| 寄附の証明 |
その年の寄附がすべて入っているか |
書類をそろえても、どの欄へ入れるか判断できないことはあります。税務署などへ相談するときは、副業をしているという説明だけでなく、どんな契約で何の支払いを受けたかを伝えます。契約書、明細、支出の記録があれば、確認すべき点を具体的にできます。
年の途中で退職し、再就職していない人も、源泉徴収票を保管します。No.2030は、年末調整を受けず税額が納め過ぎになっているときの還付申告を案内しています。退職したという事情だけで還付が確定するわけではなく、年間の所得と控除を計算して確認します。
還付申告の提出期間は、No.2030ではその年の翌年から5年間です。これは申告義務のある人の期限を延ばすルールではありません。自分が義務のある申告をする人か、義務はないが還付を求める人かを先に確かめます。期限が不明なまま、還付申告の期間だけを読んで待たないようにします。
入力をやり直すときは、保存した申告データと手元の集計のどちらが新しいかも確認します。途中の計算を複数残して混ぜると、寄附や所得を重複させる原因になります。送信した内容の控えと、計算の根拠になる書類を対応させて保存します。
転職した年は、会社の手続きと自分の申告を分けて確かめる
転職や退職があった年は、どの給与まで年末調整されたかを会社へ確認します。医療費や寄附の書類は自分でそろえ、勤務先が知らない所得を抜かさず申告します。わからない税の扱いは、書類を用意して税務署などの公式相談先へ聞きます。
給与の平均や、他の人の還付額は、自分の申告の代わりにはなりません。働く会社を選ぶときも、平均年収だけでなく、基本給、賞与、手当、残業代の内訳を並べます。企業研究のやり方に沿って、契約条件と実績を分けて読みます。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめます。税金が戻るかという期待を給与の比較に足さず、まず会社から支給される給与と働く条件を確認します。