有給休暇は、会社が労使協定を結んでいれば、年5日以内の範囲で時間単位で取れます。労働基準法39条4項の決まりで、協定がない会社では時間単位の取得はできません。厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」では、時間単位で取れる制度がある企業は30.4%です。1,000人以上の企業では42.3%、30〜99人の企業では27.8%でした。
時間単位で取った分は、会社が守る「年5日の取得義務」に数えません。通院や子どもの用事で1〜2時間だけ抜けたいときに便利な制度ですが、日単位の有給と数え方が違います。自分の会社で使えるか、何時間まで使えるかは、就業規則と労使協定で確かめます。この記事の制度の内容は、2026年10月25日に厚生労働省の資料と法令で確認しました。
時間単位の有給は、労使協定がある会社だけの制度
年次有給休暇は、1日単位で取るのが原則です。労働基準法39条4項は、会社が労使協定を結んだ場合に限り、年5日以内の分を時間単位で与えられると定めています。
労使協定は、会社と、労働者の過半数で組織する労働組合との書面の約束です。労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する人と結びます。会社が一人で決めて就業規則に書くだけでは足りません。
協定があれば、本人が時間単位で請求したときに、時間単位で有給を取れます。協定がない会社で「1時間だけ有給を使いたい」と頼んでも、制度としては使えません。その場合は、日単位か、会社が認めていれば半日単位で取ることになります。
半日単位は協定がなくても取れることがある
半日単位の有給は、時間単位とは別の扱いです。厚生労働省の時間単位付与の資料では、本人が希望し、会社が同意すれば、日単位の取得の妨げにならない範囲で半日単位で与えられるとしています。労使協定がなくても取れる仕組みです。
会社によって、半日単位はあるが時間単位はない、時間単位はあるが半日単位はない、どちらもある、と分かれます。求人票の「有給休暇あり」だけでは、どの単位で取れるかはわかりません。
労使協定で決める4つのこと
厚生労働省の資料では、労使協定で決める内容を4つ挙げています。
| 決めること |
中身 |
| 対象になる人の範囲 |
時間単位で取れる人を決める |
| 時間単位で取れる日数 |
5日以内で決める |
| 1日分の時間数 |
所定労働時間をもとに決める |
| 1時間以外の単位 |
2時間単位などにするときの時間数 |
出典:厚生労働省、年次有給休暇の時間単位付与の資料、労使協定に規定する内容。
対象の人は、取る目的では限れない
対象の人の範囲は、協定で決めます。一部の人を外すことはできますが、理由は事業の正常な運営との調整に限られます。厚生労働省の資料は、工場のラインで働く人を外す例を、事業の正常な運営が妨げられる場合は可としています。
一方で、育児をする人に限るなど、取る目的で範囲を決めることはできません。資料では、取得目的による制限なので不可としています。「通院のときだけ使える」という決め方も、目的で限る形になります。
単位は1時間以上で、分単位はできない
取る単位は、1時間か、2時間・3時間などの時間単位です。分単位など、1時間に満たない単位は認められていません。1時間以外の単位にするときも、1日の所定労働時間を上回ることはできません。
「30分だけ遅れて出たい」というときに、時間単位の有給を30分で使うことはできない、ということです。会社の制度で1時間単位なら、1時間分を使います。
1日分は何時間か:端数は切り上げて数える
時間単位で取れる5日分が何時間になるかは、1日分の時間数で決まります。1日分の時間数は、所定労働時間をもとに決めます。所定労働時間が8時間なら、1日分は8時間で、5日分は8時間 × 5日 = 40時間です。
所定労働時間に1時間に満たない端数があるときは、時間単位に切り上げてから数えます。厚生労働省の資料の例では、所定労働時間が7時間30分の人は1日分を8時間とし、8時間 × 5日 = 40時間分です。7時間30分 × 5日の37時間30分を切り上げて38時間とする数え方ではないと書かれています。
日によって所定労働時間が違う人は、1年間の1日平均の所定労働時間をもとに決めます。シフトで働く人は、自分の1日分が何時間で設定されているかを会社に確かめます。
残りの日数と時間の数え方
資料には、残りの管理の例も載っています。所定労働時間8時間、有給が20日、そのうち5日まで時間単位で取れる会社で、3時間を取ると、残りは19日と5時間になります。時間単位で取れる日数は、5日から4日に減ります。
同じ例の続きを、資料の表から並べました。
| 取り方 |
残りの日数 |
時間単位で取れる日数 |
残りの時間 |
| 最初 |
20日 |
5日 |
なし |
| 3時間を取る |
19日 |
4日 |
5時間 |
| 1日を取る |
18日 |
4日 |
5時間 |
| 6時間を取る |
17日 |
3日 |
7時間 |
| 5時間を5回取る |
14日 |
0日 |
6時間 |
| 14日を取る |
0日 |
0日 |
6時間 |
| 6時間を取る |
0日 |
0日 |
0時間 |
出典:厚生労働省、年次有給休暇の時間単位付与の資料、残日数・残時間数の管理の具体例。所定労働時間8時間、有給20日、時間単位は5日までの会社の例です。
時間単位で使うと、まず1日分の8時間を崩して残りの時間に回します。日単位で1日を取っても、残りの時間は減りません。時間単位で取れる日数が0日になっても、すでに崩した残りの時間は使えます。
残りが「◯日と◯時間」の形で表示されるのはこのためです。給与明細や勤怠のシステムで、日数と時間数が別々に出ていたら、両方を合わせて残りを読みます。
繰り越した分も含めて年5日まで
有給は、使わなかった分を翌年に繰り越せます。時間単位の分も繰り越せますが、厚生労働省の資料では、繰越分を含めて5日分以内とされています。前年に時間単位の分が残っていても、翌年に時間単位で使える分が5日を超えて増えるわけではありません。
資料の例では、所定労働時間8時間、1年目に10日、2年目に11日の有給がある人が、1年目に日単位で5日、時間単位で20時間を取っています。残った2日と4時間が繰り越され、2年目の有給は13日と4時間になります。このうち時間単位で取れるのは、繰越分を含めて最大5日分です。
繰り越しの全体の決まりは有給の繰り越しで整理しています。
時間単位で取った分は、年5日の取得義務に入らない
年10日以上の有給がある人について、会社は年5日を確実に取らせる義務があります。この5日に、時間単位で取った分は数えません。
厚生労働省の年5日の解説では、時間単位の年休は会社による時季指定の対象にならず、本人が自分で取った場合も、その時間分を5日から引くことはできないとしています。半日単位で取った分は、1回0.5日として5日から引けます。
| 取り方 |
年5日の義務に数えるか |
| 日単位 |
1日として数える |
| 半日単位 |
1回0.5日として数える |
| 時間単位 |
数えない |
| 会社独自の特別休暇 |
数えない |
出典:厚生労働省、年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説。
時間単位でこまめに休んでいても、日単位や半日単位で5日分を取っていなければ、会社は時季を指定して取らせることになります。年5日の義務の仕組みは有給の年5日義務で詳しく整理しています。
時間単位の有給を導入している会社の割合
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」の原表12-1では、年次有給休暇の時間単位取得制度がある企業は30.4%でした。制度がない企業は69.1%です。対象は常用労働者30人以上の民営企業で、令和7年1月1日時点の制度の有無を企業ごとに数えた割合です。
企業規模別:大きい会社ほど導入割合が高い
| 企業規模 |
制度がある企業 |
1企業平均の可能日数 |
| 1,000人以上 |
42.3% |
4.9日 |
| 300〜999人 |
40.2% |
5.1日 |
| 100〜299人 |
34.3% |
4.8日 |
| 30〜99人 |
27.8% |
5.3日 |
| 規模計 |
30.4% |
5.1日 |
出典:厚生労働省、令和7年就労条件総合調査、原表12-1。単位は%と日。可能日数は、制度がある企業の1企業平均の時間単位で取れる日数です。
1,000人以上の企業では4割を超えますが、30〜99人では3割に届きません。中小の会社に応募するときは、時間単位の制度がない前提で、半日単位があるかも合わせて確かめます。
業種別ランキング:複合サービス事業、電気・ガスが5割を超える
| 順位 |
業種 |
制度がある企業 |
| 1 |
複合サービス事業 |
53.5% |
| 2 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
51.5% |
| 3 |
教育、学習支援業 |
51.0% |
| 4 |
金融業、保険業 |
49.1% |
| 5 |
医療、福祉 |
48.4% |
| 6 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
40.2% |
| 7 |
建設業 |
32.0% |
| 8 |
製造業 |
30.5% |
| 9 |
不動産業、物品賃貸業 |
27.0% |
| 10 |
情報通信業 |
26.7% |
| 11 |
鉱業、採石業、砂利採取業 |
24.0% |
| 12 |
卸売業、小売業 |
21.8% |
| 13 |
サービス業(他に分類されないもの) |
21.5% |
| 14 |
生活関連サービス業、娯楽業 |
21.3% |
| 15 |
運輸業、郵便業 |
18.4% |
| 16 |
宿泊業、飲食サービス業 |
11.5% |
| ー |
調査産業計 |
30.4% |
出典:厚生労働省、令和7年就労条件総合調査、原表12-1、企業規模計。常用労働者30人以上の民営企業に占める割合です。
上位と下位で4倍以上の差があります。複合サービス事業は郵便局や農協など、宿泊業・飲食サービス業はホテルや飲食店などです。なぜ業種で差が出るのかは、調査からはわかりません。業種の数字は傾向として読み、応募先の制度は個別に確かめます。
導入割合の推移
| 調査年 |
制度がある企業 |
| 令和5年 |
25.0% |
| 令和6年 |
24.8% |
| 令和7年 |
30.4% |
出典:厚生労働省、各年の就労条件総合調査、年次有給休暇の時間単位取得制度の有無別企業割合の表(令和5年は第12表、令和6年・7年は原表12-1)。調査産業計、企業規模計。
令和6年までは2割台半ばで推移し、令和7年に30.4%になりました。年によって調査の対象企業は入れ替わるので、小さな動きは誤差も含めて読みます。
制度がある会社の9割近くは5日まで
同じ調査の原表12-2では、制度がある企業のうち、時間単位で取れる日数を5日としている企業が88.4%でした。1日は1.0%、2日は2.6%、3日は1.5%、4日は0.9%です。
法律の上限の5日まで使える会社が大半ですが、5日より少なく決めている会社もあります。表には6日以上の区分もありますが、その中身は表からはわかりません。自分の会社が何日分、何時間分まで時間単位で使えるかは、協定の日数で確かめます。
会社の都合で日単位を時間単位に変えることはできない
時間単位の有給も、有給休暇の一つです。厚生労働省の資料では、事業の正常な運営を妨げる場合は、会社の時季変更権が認められるとしています。「その時間帯は困るので別の時間にしてほしい」と言われることはあります。
ただし、本人が日単位で請求したものを時間単位に変えることや、時間単位で請求したものを日単位に変えることはできません。取る単位を選ぶのは本人です。
計画的付与との関係も決まっています。会社が協定で日を決めて有給を取らせる計画的付与として、時間単位の有給を与えることはできません。時間単位の有給は、本人が時間単位で請求したときに使うものです。
1時間分の給料の計算
時間単位で休んだときの給料は、日単位の有給と同じ方法で決めます。平均賃金、所定労働時間働いたときの通常の賃金、標準報酬日額(労使協定が必要)のどれかを、その日の所定労働時間数で割った額が1時間分です。どれを使うかは、日単位と同じにして就業規則に定めます。
月給の人が通常の賃金で計算する会社なら、時間単位で休んでも、その時間分の給料は減りません。給与明細で、欠勤や遅刻の控除として引かれていないかを確かめます。
時間単位の有給を使う前に確かめること
制度があっても、申請の方法や締め切りは会社ごとに違います。使う前に次のことを確かめます。
| 確かめること |
どこで見るか |
| 時間単位の制度があるか |
就業規則、労使協定 |
| 自分が対象に入るか |
労使協定の対象者 |
| 何時間まで使えるか |
協定の日数と1日分の時間数 |
| 何時間単位で取るか |
1時間か、2時間などか |
| 残りの時間数 |
勤怠システム、給与明細 |
| 申請の方法と期限 |
社内の申請ルール |
有給がそもそも何日あるかは、勤続年数と働く日数で決まります。付与日数の表は有給の付与日数で、取得率など有給全体の数字は有給取得率の平均で確認できます。
協定があるのに使わせてもらえない、対象から外れている理由が説明されないといったときは、協定のどの定めによるかを会社に聞きます。それでも納得できないときは、労働基準監督署などの公的な窓口に相談できます。
その会社の実際の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで確かめる
時間単位の有給は、法律で必ずある制度ではありません。業種別の表のとおり、制度がある会社は業種によって1割から5割と差があります。応募先で使えるかは、会社ごとに確かめるしかありません。
求人票では、休暇の欄に時間単位や半日単位の記載があるかを見ます。書かれていなければ、面接や内定後の条件確認で「有給は時間単位や半日単位で取れますか」と聞きます。通院や子育て、介護などで短い時間の休みが必要な人は、入社前に確かめておく価値がある質問です。
有給の取得日数や取得率は、厚生労働省のしょくばらぼで、掲載している会社の数字を調べられます。制度があることと、実際に取れていることは別です。制度の有無と取得の実績を、両方そろえて見ます。