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入社したら労働条件が違う:労基法15条⁠の即時解除と相談先

・ナギサコーポレーション(運営)

この記事の答え

  • 労働基準法15条2項は、契約時に明示された労働条件が事実と違えば、労働者は即時に契約を解除できると定める。就業のために住居を変えた人が14日以内⁠に帰郷するときは、会社が旅費を負担する
  • 求人票は募集時の明示、労働条件通知書は契約時の明示。どの書類の条件と違うのかで、使う条文と相談先が変わる
  • 令和6年度のハローワークへの申出等は3,297件⁠。内容は賃金929件⁠、就業時間661件⁠、仕事の内容591件⁠の順に多い

口コミや求人票ではわからないことは、会社に直接聞けます。まだ載っていない会社にも質問をリクエストできます。名前は会社に伝わりません。

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入社してから、聞いていた給料、勤務時間、仕事の内容、勤務地が違うと気づくことがあります。労働基準法15条2項は、契約を結ぶときに明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。就業のために住居を変えた人が、解除の日から14日以内⁠に帰郷する場合は、会社が必要な旅費を負担します(15条3項)⁠。

ハローワークの求人票と実際が違うという申出等は、令和6年度に全国で3,297件ありました。内容は賃金、就業時間、仕事の内容の順に多くなっています。条文は2026年10月26日⁠にe-Govの法令データで、件数は厚生労働省の公表資料で確認しました。

ただし、「違う」⁠と感じたことが、そのまま15条2項⁠の「相違」⁠になるとは限りません。何の書類に、どの条件が、どう書かれていたかで話が変わります。まず書類と事実を並べ、それから相談先を選びます。

労働基準法15条⁠が定めること:明示の義務と即時解除

労働基準法15条⁠は3つ⁠の項に分かれています。

項 定めていること
1項 使用者は、労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。賃金や労働時間など省令で定める事項は、省令で定める方法で明示する
2項 1項⁠で明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できる
3項 2項⁠の場合、就業のために住居を変更した労働者が契約解除の日から14日以内⁠に帰郷するときは、使用者は必要な旅費を負担する

15条1項⁠と3項⁠に違反した使用者には、同じ法律の120条⁠で30万円以下⁠の罰金が定められています。明示をしない、帰郷旅費を払わないといった行為が対象です。

即時解除は「契約時に明示された条件」⁠と事実の比較

2項⁠で比べるのは、契約を結ぶときに会社が明示した条件と、実際の働き方です。多くの会社では、労働条件通知書や雇用契約書がその書面にあたります。書類の見方は内定通知書と労働条件通知書と雇用契約書とは⁠で整理しています。

即時解除は、退職の申し出とは別の仕組みです。退職の申し出は、会社の了解や一定の期間を前提に話が進むことが多い一方、2項⁠は相違があれば即時に解除できると書いています。どちらで進めるかは、相違の中身と、自分が続けて働きたいかで決めます。

求人票の条件は「募集時の明示」

求人票や求人広告は、契約を結ぶ前の募集の段階で示されるものです。職業安定法5条の3は、ハローワークや職業紹介事業者、募集を行う者に、業務の内容と賃金、労働時間などの条件を求職者へ明示するよう定めています。

同じ条の3項は、紹介や募集で示した条件を、契約を結ぶときに変える場合、変更する内容を相手に明示するよう求めています。求人票と労働条件通知書が違うときは、変更の明示があったか、それを受け取って契約したかを確かめます。

また職業安定法5条⁠の4は、求人の広告などで虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、募集を行う者は情報を正確で最新の内容に保たなければならないと定めています。

段階 主な書類 根拠の条文
募集・紹介 求人票、求人広告、紹介状 職業安定法5条⁠の3第1項・2項⁠、5条の4
内定から契約 労働条件通知書、雇用契約書、変更の明示 労働基準法15条1項⁠、職業安定法5条⁠の3第3項
入社後 給与明細、勤務表、辞令 労働基準法15条2項(事実との相違)

明示される項目が増えた:変更の範囲と更新上限

厚生労働省の労働条件明示のルール改正の案内では、2024年4月から労働基準法施行規則5条⁠の改正で、次の項目が加わりました。

対象 明示のタイミング 追加された項目
全ての労働者 全ての労働契約の締結時と有期契約の更新時 就業場所・業務の変更の範囲
有期契約の労働者 有期契約の締結時と更新時 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限⁠)⁠の有無と内容
無期転換申込権が発生する人 その契約の更新時 無期転換を申し込める旨、無期転換後の労働条件

募集の段階でも、厚生労働省の募集時等の明示事項の追加の案内⁠のとおり、2024年4月1日から職業安定法施行規則で、業務と就業場所の変更の範囲、有期契約を更新する場合の基準が明示事項に加わりました。

「変更の範囲」⁠は⁠、雇い入れ直後だけでなく、将来の配置転換なども含めて変わり得る範囲です。入社後に別の支社へ異動を命じられた場合、それが明示された変更の範囲の内か外かが、話を進めるときの最初の確認点になります。

ハローワークへの申出:件数の推移と内容

厚生労働省は、ハローワークの求人票と実際が異なる旨の申出等⁠の件数を毎年度公表しています。ハローワークに寄せられた申出・苦情等を数えたもので、民間の求人サイトや紹介会社の分は入っていません。

年度 申出等の件数 (参考)新規求人件数
平成29年⁠度 8,507件 6,468,438件
平成30年⁠度 6,811件 6,600,951件
令和元年度 5,778件 6,282,348件
令和2年⁠度 4,211件 5,029,012件
令和3年⁠度 3,870件 5,593,670件
令和4年⁠度 3,890件 6,103,010件
令和5年⁠度 3,761件 5,992,291件
令和6年⁠度 3,297件 5,833,519件

件数は減っています。ただ、申出をしなかった人は数に入りません。件数が少ないことは、求人票と実際が違う職場が少ないことの証明にはなりません。

内容別:賃金・就業時間・仕事の内容が上位

順位 申出等の内容 令和6年⁠度 令和5年⁠度
1 賃金に関すること 929件(20.2%) 1,108件(21.6%)
2 就業時間に関すること 661件(14.4%) 711件(13.9%)
3 職種・仕事の内容に関すること 591件(12.9%) 644件(12.6%)
4 選考方法・応募書類に関すること 470件(10.2%) 642件(12.5%)
5 休日に関すること 320件(7.0%) 332件(6.5%)
6 雇用形態に関すること 274件(6.0%) 280件(5.5%)
7 就業場所に関すること 207件(4.5%) 219件(4.3%)
8 雇用期間に関すること 201件(4.4%) 215件(4.2%)
9 社会保険・労働保険に関すること 152件(3.3%) 169件(3.3%)

賃金が1位です。基本給と手当の内訳、固定残業代の有無、試用期間中の給与は、求人票と給与明細で数字を突き合わせられる項目です。入社後最初の給与明細が届いたら、求人票と並べて確かめます。

要因別:求人票の内容が実際と異なるが最多

要因(主なもの) 令和6年⁠度 令和5年⁠度
求人票の内容が実際と異なる 1,478件 1,609件
求人者の説明不足 932件 1,221件
言い分が異なる等により要因を特定できないもの 373件 450件
求職者の誤解 364件 307件
ハローワークの説明不足 59件 76件

「求職者の誤解」⁠も364件あります。求人票の読み違いを防ぐには、わからない欄を面接で聞き、答えを記録しておくことです。

産業別:医療・福祉が最も多い

順位 産業 令和6年⁠度 令和5年⁠度
1 医療、福祉 725件 687件
2 サービス業(他に分類されないもの) 470件 555件
3 卸売業、小売業 415件 514件
4 製造業 351件 451件
5 運輸業、郵便業 296件 301件
6 建設業 208件 248件
7 宿泊業、飲食サービス業 179件 198件
8 学術研究、専門・技術サービス業 137件 153件
9 生活関連サービス業、娯楽業 115件 110件
10 不動産業、物品賃貸業 87件 101件

件数は、その産業の求人の多さにも左右されます。この表は件数の順で、求人1件あたりの割合ではありません。産業ごとの「違いやすさ」⁠をこの表だけで比べることはできません。

違うと気づいたら:まず書類と事実を並べる

感じた違和感を、確かめられる形に直します。次の3列⁠でメモを作ると、相談先でも話が早く進みます。

項目 書類に書かれていたこと 実際
賃金 求人票、労働条件通知書の基本給・手当・固定残業代 給与明細の支給額と内訳
労働時間 始業・終業、休憩、残業の有無 勤務表、タイムカード、メール送信時刻
仕事の内容 雇い入れ直後の業務と変更の範囲 実際に指示された業務
就業場所 雇い入れ直後の場所と変更の範囲 辞令や配属先の住所
休日 休日の曜日、年間休日 勤務カレンダー

書類は写真ではなく、受け取った原本やPDFを保存します。メールで届いたものは、送信日時がわかる形で残します。口頭で説明を受けた内容は、日付、相手、内容をその日のうちに書き留めます。

次に、会社へ確認します。「求人票では月給【金額】⁠円⁠とありましたが、【月】⁠の給与明細では【金額】⁠円⁠で⁠し⁠た⁠。どちらが契約の内容か教えてください」のように、事実だけを書いた文面にします。返事が来たら、それも保存します。

即時解除を使う前に考えること

即時解除は強い手段です。使う前に、次の点を整理します。

  • 相違は、契約時に明示された条件と事実の違いか。入社後に合意して変えた条件ではないか
  • 働いた期間の賃金を受け取る手続き。辞めても、働いた分の賃金を請求する権利は残る
  • 住居を変えて入社した場合、解除の日から14日以内⁠に帰郷するか。帰郷旅費の請求に関わる
  • 次の仕事や生活費の見通し

会社が条件を書面どおりに直すと言うなら、続ける選択もあります。その場合も、直す内容と時期を書面でもらいます。

雇用保険の手続きで離職理由がどう扱われるかは、離職の経緯をもとにハローワークが判断します。自分で決めつけず、書類を持って相談します。

よくある違い別:何を確かめるか

申出の内容別で上位に入った項目ごとに、書類のどこを見るかをまとめました。

違い 書類で見る欄 確かめること
給料が少ない 賃金欄(基本給、手当、固定残業代、試用期間中の額) 手当の支給条件を満たしているか、固定残業代を超えた分が支払われているか
残業が多い、終業が遅い 就業時間、休憩、所定外労働の有無 勤務表と実際の退勤時刻、残業代の支払い
仕事が違う 業務の内容(雇い入れ直後と変更の範囲) 今の業務が変更の範囲に入っているか
正社員と聞いたのに契約社員 契約期間、更新の有無、更新上限 期間の定めの有無が書面でどうなっているか
休みが少ない 休日、年間休日、休暇 勤務カレンダーの休日数、休日出勤の扱い
勤務地が違う 就業場所(雇い入れ直後と変更の範囲) 配属先が明示された範囲の内か外か

表の右の列は、相談先でも最初に聞かれる点です。給与明細や勤務表など、数字が書かれた書類をそろえておくと話が早く進みます。

会社への確認文の例

会社に聞くときは、感情ではなく事実を並べます。メールや社内チャットなど、記録が残る方法を選びます。

【部署名】【担当者名】様 入社時にいただいた労働条件通知書(【日付】⁠付⁠)では、【項目】⁠が【書面の内容】⁠となっています。実際には【実際の内容】でした。どちらが契約の内容になるのか、また書面と異なる場合の扱いを、書面またはメールで教えてください。 【氏名】

返事が口頭だけなら、「本日【日付】⁠に【担当者名】様から【内容】⁠と伺いました⁠」⁠とメールで送り、記録に残します。返事がない、または説明が書面と合わないときは、次の相談先に進みます。

相談先:書類の種類で窓口を選ぶ

こんなとき 相談先
ハローワークの求人票と違う 紹介を受けたハローワーク、またはハローワーク求人ホットライン
労働条件が明示されない、明示と違う働かせ方が続く 会社の所在地を管轄する労働基準監督署
契約の内容をめぐって会社と話がつかない 労働局の雇用環境・均等部(室)⁠、総合労働相談コーナー

厚生労働省の明示ルールの案内は、労働条件が明示されないなど労働基準法違反と思われる場合は労働局の監督課と労働基準監督署へ、労働契約に関する民事上の紛争は労働局の雇用環境・均等部(室)⁠へ⁠、⁠と分けて案内しています。

総合労働相談コーナーは、解雇や労働条件などの相談をまとめて受ける窓口です。労働基準監督署への持って行き方は労働基準監督署への相談のしかた⁠にまとめています。

応募と内定の段階で、違いを防ぐ

入社後のずれを減らすには、契約前に条件を書面で固めることです。オファー面談で確かめる項目はオファー面談とは⁠で整理しています。

  • 求人票の数字(基本給、手当、固定残業代の時間と金額、年間休日)⁠を⁠、労働条件通知書と1行ずつ照らし合わせる
  • 就業場所と業務の「変更の範囲」⁠がどこまでかを読む。転勤の可能性はここに出る
  • 試用期間中の給与や条件が別に書かれていないかを見る
  • 面接で口頭で聞いた説明が書面にないときは、書面に入れてもらうか、メールで確認しておく

求人票の条件は会社が出したもので、実際の運用は会社ごとに違います。残業時間、有給休暇の取得日数、離職者数などの数字は、厚生労働省のしょくばらぼに会社が載せている場合があります。求人票、面接での回答、公開データを並べ、条件が一致しているかを確かめてから契約に進みます。

よくある質問

入社後に条件が違ったら、すぐ辞められますか?

労働基準法15条2項は、契約時に明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。対象は明示された条件と事実の違いです。自分の場合に当たるかは、書面を持って労働基準監督署などで確かめます。

求人票と労働条件通知書の内容が違うのは違法ですか?

職業安定法5条⁠の3第3項は、紹介や募集で示した条件を契約時に変える場合、変更する内容を相手に明示するよう求めています。変更そのものより、変更が明示されたか、合意があったかを確かめます。ハローワーク経由ならハローワークに申し出ます。

引っ越して入社したのに条件が違った場合、旅費は出ますか?

労働基準法15条3項は、15条2項⁠で契約を解除した人が就業のために住居を変えていて、解除の日から14日以内⁠に帰郷する場合、使用者が必要な旅費を負担すると定めています。14日⁠を過ぎる前に動けるよう、解除日と帰郷日を記録します。

ハローワークの求人票と実際が違うという申出は何件ありますか?

厚生労働省の公表では、令和6年度の申出等は全国で3,297件でした。令和5年度は3,761件⁠、平成29年度は8,507件です。内容別では賃金に関することが929件⁠で最も多く、就業時間661件⁠、仕事の内容591件⁠が続きます。

2024年4月から何が明示されるようになりましたか?

労働基準法施行規則の改正で、全ての労働契約の締結時と有期契約の更新時に、就業場所と業務の変更の範囲を明示することになりました。有期契約では更新上限の有無と内容も加わりました。募集時にも、職業安定法施行規則で同じ趣旨の項目が加わっています。

どこに相談すればよいですか?

ハローワークの求人ならハローワークか求人ホットライン、労働条件が明示されないなど労働基準法違反と思われる場合は労働基準監督署、契約内容をめぐる民事の争いは労働局の総合労働相談コーナーや雇用環境・均等部(室)⁠で⁠す⁠。厚生労働省の明示ルールの案内に相談先が載っています。

気になる会社の「ホント」⁠を⁠、会社に聞いてみませんか。

残業、休み、評価のしかた、職場の雰囲気。求人票に書いていないことを質問すると、会社に回答をお願いして、届いた答えをこのサイトに載せます。まだ載っていない会社にもリクエストできます。無料で、名前やメールアドレスは会社に伝わりません。

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