特定親族特別控除は、19歳以上23歳未満の子などの合計所得金額が扶養控除の基準を超えても、123万円以下なら、親が段階的に控除を受けられる所得税の制度です。令和8年分では、子の合計所得金額が62万円超123万円以下のときが対象で、給与だけなら年収136万円超197万円以下に当たります。控除額は最高63万円で、子の所得が増えるほど減り、120万円超123万円以下では3万円です。
令和7年度税制改正で作られ、令和8年度税制改正で対象の下限が58万円超から62万円超に変わりました。この記事の金額は、国税庁のタックスアンサーと令和8年4月の改正のあらましで、2026年10月26日に確かめました。自分の家族が対象になるか、控除額がいくらかは、子の1年間の所得が確定する12月31日時点で決まります。
特定親族特別控除の対象:4つの条件
国税庁のタックスアンサーNo.1177は、特定親族を、その年の12月31日の現況で次の条件すべてに当てはまる人としています。主なものを並べます。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)か、里子であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 年齢が19歳以上23歳未満であること
- 年間の合計所得金額が123万円以下で、控除対象扶養親族に当たらないこと
ほかに、青色申告の事業専従者として給与を受けていないことなどの条件があります。年齢は12月31日時点で数えるため、その年に19歳の誕生日を迎える子も対象になり得ます。大学生年代の子だけでなく、働いている子やきょうだいでも、条件に当てはまれば対象です。
扶養控除との境目
子の合計所得金額が扶養親族の基準以下なら、これまでどおり扶養控除です。19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族は「特定扶養親族」と呼ばれ、国税庁のタックスアンサーNo.1180で控除額は63万円です。
その基準を超えたところから、特定親族特別控除に切り替わります。基準を1円超えたとたんに控除が0円になるのではなく、63万円から少しずつ減る形にしたのが、この制度のねらいです。
子の年齢で控除が変わる
特定親族特別控除の対象は、12月31日時点で19歳以上23歳未満の人だけです。同じ収入でも、年齢が違えば親の控除は変わります。国税庁の扶養控除の表と合わせて、令和8年分を並べました。
| 子の年齢 |
合計所得62万円以下 |
62万円超123万円以下 |
| 16〜18歳 |
扶養控除38万円 |
なし |
| 19〜22歳 |
特定扶養控除63万円 |
特定親族特別控除 |
| 23〜69歳 |
扶養控除38万円 |
なし |
その年の12月31日に23歳になっている子は、特定親族にも特定扶養親族にも当たりません。合計所得金額が62万円以下なら一般の扶養控除38万円で、62万円を超えると親の控除はなくなります。大学4年生の年に23歳の誕生日を迎える子は、バイト代の基準が大きく変わる点に気をつけます。
年の途中で働き始めた子や、アルバイトを辞めた子も、判定はその年1年間の合計所得金額と12月31日の状況で行います。年末に見込みが変わりそうなら、12月の給与までの見込み額で計算し直します。
控除額の表:子の所得が増えると段階的に減る
国税庁の表に、令和8・9年分で収入が給与だけの場合の年収を並べました。
| 子の合計所得 |
給与だけの年収 |
控除額 |
| 62万円以下 |
136万円以下 |
扶養控除 |
| 62万円超〜85万円 |
159万円以下 |
63万円 |
| 85万円超〜90万円 |
164万円以下 |
61万円 |
| 90万円超〜95万円 |
169万円以下 |
51万円 |
| 95万円超〜100万円 |
174万円以下 |
41万円 |
| 100万円超〜105万円 |
179万円以下 |
31万円 |
| 105万円超〜110万円 |
184万円以下 |
21万円 |
| 110万円超〜115万円 |
189万円以下 |
11万円 |
| 115万円超〜120万円 |
194万円以下 |
6万円 |
| 120万円超〜123万円 |
197万円以下 |
3万円 |
| 123万円超 |
197万円超 |
なし |
給与だけの年収で見ると、136万円を超えて159万円までは控除額が63万円のままです。159万円を超えると、5万円の幅ごとに控除が下がります。子のバイト代を数万円単位で調整するかどうかを考えるときは、この表の区切りを使います。
子の合計所得金額の出し方
給与だけの子なら、合計所得金額は「給与の年収 - 給与所得控除」です。令和8・9年分の給与所得控除は、年収190万円以下なら74万円です。例として、子のバイト代が年150万円なら、150万円 - 74万円 = 76万円が合計所得金額で、控除額は63万円です。
年収190万円超220万円以下の給与所得控除は、計算式が別にあります。特定親族特別控除の対象は給与だけなら197万円以下なので、表の年収の列で見れば足ります。給与以外にフリーランスの収入などがある子は、その所得も足して合計所得金額を出します。
バイト代の年収ごとの控除額
給与だけの子について、令和8年分の年収ごとに控除額を計算しました。合計所得金額は、年収から令和8年分の給与所得控除74万円を引いた額です。
| 子の年収 |
合計所得 |
親の控除 |
| 130万円 |
56万円 |
扶養控除63万円 |
| 150万円 |
76万円 |
63万円 |
| 160万円 |
86万円 |
61万円 |
| 170万円 |
96万円 |
41万円 |
| 180万円 |
106万円 |
21万円 |
| 190万円 |
116万円 |
6万円 |
| 200万円 |
126万円 |
なし |
国税庁の控除額の表に当てはめた計算例です。給与以外の所得がある場合や、特定支出控除などがある場合は変わります。
親の税金はいくら軽くなるか
控除は所得から差し引く額なので、税金が控除額と同じだけ減るわけではありません。減る所得税は、おおむね「控除額 × 親の所得税率」です。国税庁のタックスアンサーNo.2260の速算表では、課税される所得金額が195万円未満は5%、195万円以上330万円未満は10%、330万円以上695万円未満は20%です。
たとえば親の税率が10%なら、63万円の控除で所得税はおよそ6.3万円、6万円の控除ならおよそ6,000円軽くなります。実際には復興特別所得税や住民税もかかるため、正確な額は年末調整の結果か源泉徴収票で確かめます。子が年収を数万円増やしたとき、親の控除がどれだけ減るかと、子の手取りがどれだけ増えるかを並べて考えると、働き方を決めやすくなります。
令和8年分で、境目が上がった
特定親族特別控除は、令和7年度税制改正で作られ、令和7年分から使えるようになりました。その翌年の令和8年度税制改正で、基礎控除と給与所得控除の最低保障額が上がり、扶養親族の所得要件も上がりました。国税庁の改正のあらましから、境目を比べます。
| 区分 |
令和7年分 |
令和8・9年分 |
| 扶養控除の所得要件 |
58万円以下 |
62万円以下 |
| 給与だけなら |
123万円以下 |
136万円以下 |
| 特定親族の所得要件 |
58万円超123万円以下 |
62万円超123万円以下 |
| 給与だけなら |
123万円超188万円以下 |
136万円超197万円以下 |
| 給与所得控除の最低額 |
65万円 |
74万円 |
令和8年度の改正は、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。令和6年分までは、扶養控除の所得要件は48万円以下で、給与だけなら103万円以下でした。この上限を超えると特定扶養控除の63万円がまるごと消えたことが、いわゆる103万円の壁です。所得税の壁の変わり方は103万円の壁で説明しています。
年末調整での受け方
会社員の親は、年末調整で特定親族特別控除を受けられます。国税庁の令和8年度税制改正の特設ページによると、使う書類は、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、特定親族特別控除申告書、所得金額調整控除申告書が1枚になった様式です。令和8年分は前年分から様式が変わっています。
書くときの注意
- 子の令和8年1月から12月の給与の見込み額を出す
- 令和8年分の給与所得控除で合計所得金額を計算する
- 控除額の表に当てはめて、特定親族特別控除額を書く
- 12月の年末調整までに勤務先に出す
国税庁の令和8年度税制改正のQ&Aは、特定親族に給与所得がある場合、改正後の給与所得控除で合計所得金額を計算して控除額を正しく書く必要があると注意しています。前年の申告書の数字を写すと、給与所得控除の最低額が65万円のまま計算されてしまいます。
扶養控除等申告書との関係
同じQ&Aでは、扶養控除等申告書に源泉控除対象親族として書いていた特定親族が、改正で特定扶養親族に当たることになった場合は、扶養控除の対象になるとしています。その場合は、異動を書いた扶養控除等申告書を出し直します。異動の欄には「令和8年12月1日 改正」などと書くよう案内されています。
年末調整の書類全体の流れは年末調整のやり方にまとめています。令和8年分の基礎控除などの変更点は、年末調整の変更点で整理しています。
確定申告が必要になる場合
年の途中で退職して年末調整を受けていない親や、年金だけの親で、改正で新たに控除を受けられるようになった人は、確定申告で受けます。子の年収が見込みと違っていたときは、勤務先か税務署に直し方を確かめます。
税金と社会保険で、基準が別々にある
子のバイト代で気にする基準は、所得税だけではありません。
- 所得税:親の特定扶養控除と特定親族特別控除。令和8年分は給与だけで136万円・197万円が区切り
- 健康保険:親の健康保険の被扶養者になれるか。日本年金機構の案内では、令和7年10月1日以降の認定で、配偶者以外の19歳以上23歳未満は年間収入150万円未満
- 住民税:市区町村の基準で、所得税とは別に決まる
健康保険の基準も、年齢はその年の12月31日時点で判定します。ただし収入の数え方は所得税と違います。詳しくは130万円の壁と扶養の範囲で確かめます。住民税は、住んでいる市区町村の案内を見ます。
2つの基準を重ねると
令和8年分で、給与だけの19〜22歳の子について、所得税と健康保険の基準を重ねると次のようになります。
| 子の年収 |
親の所得税の控除 |
健保の収入要件 |
| 136万円以下 |
特定扶養控除63万円 |
内 |
| 136万円超〜150万円未満 |
63万円 |
内 |
| 150万円以上〜197万円 |
63万円〜3万円 |
外 |
| 197万円超 |
なし |
外 |
国税庁と日本年金機構の基準を並べた目安です。健保の収入要件は年間収入150万円未満かどうかで、ほかに生計維持などの条件もあります。健康保険の収入の数え方は所得税と違うため、年収の額がそのまま当てはまるとは限りません。
健康保険の扶養から外れると、子は自分の勤め先の健康保険か、国民健康保険などに入ることになります。親の所得税の控除が残っていても、子の保険料の負担が増えることがあるので、両方を並べて考えます。
子が働く会社の数字も見ておく
特定親族特別控除ができて、子が年収を抑えて働く必要は前より小さくなりました。そのぶん、子がアルバイト先を選ぶときには、時給と働ける時間をそのまま比べられます。時給の水準はパート・アルバイトの平均時給の記事で、地域ごとの最低賃金は最低賃金ランキングの記事で見られます。
その会社の実際の数字は、求人票としょくばらぼで確かめる
控除の額は国税庁の表で決まりますが、子がどれだけ稼ぐかは、働く会社の時給とシフトで決まります。応募先の時給、交通費、シフトの決め方は求人票と面接で確かめます。厚生労働省のしょくばらぼでは、掲載企業の残業や休暇の数字を見られます。親の年末調整の書類は、12月の締め切りの前に、子の給与明細を見ながら数字を入れます。