育児時短就業給付金は、2歳未満の子を育てるために所定労働時間を短くして働き、賃金が下がった雇用保険の被保険者に、時短中の賃金の原則10%を支給する給付です。たとえば時短中の月給が20万円なら、その月の給付は2万円です。賃金が時短前の90%を超えると支給率が下がり、時短前と同じ額以上なら支給されません。
2025年(令和7年)4月1日に創設され、雇用保険事業年報の令和7年度速報では、受給者数は448,576人でした。この記事の金額と条件は、厚生労働省のパンフレット(2026年8月1日時点版)と雇用保険法の条文で、2026年10月26日に確かめました。自分が受け取れるか、毎月いくらになるかは、時短前の賃金と時短中の賃金で決まるため、勤務先かハローワークで確かめます。
育児時短就業給付金の対象
根拠は雇用保険法の61条の12です。厚生労働省のパンフレットは、受給資格を次の2つで説明しています。
- 2歳未満の子を養育するために、1週間あたりの所定労働時間を短縮して働く被保険者であること
- 育児休業給付の対象となる育休から引き続き、同じ子について時短を始めたこと。または、時短を始めた日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月あること
被保険者は、雇用保険の一般被保険者と高年齢被保険者です。「育休から引き続き」には、育休が終わった翌日から時短を始める場合のほか、育休終了日と時短開始日の間が14日以内の場合も含みます。
対象になる時短勤務
パンフレットでは、育児時短就業を、2歳に満たない子を養育するために、本人の申出にもとづいて会社が講じた週の所定労働時間を短縮する措置としています。
- 短縮後の週の所定労働時間に、上限・下限はない
- 育児・介護休業法の短時間勤務制度(1日原則6時間)に限らない
- 週の勤務日数を減らして、週の所定労働時間が短くなる場合も含む
- 子の養育のために短時間正社員やパートに転換、転職した場合も含む
ただし、短縮後の週の所定労働時間が20時間を下回ると、原則として雇用保険の被保険者でなくなり、給付の対象から外れます。小学校就学までに週20時間以上に戻ることが就業規則などの書面で確認できる場合は例外です。
フレックスタイム制では清算期間の総労働時間を、変形労働時間制では対象期間の総労働時間を短くしたときに対象になります。シフト制は、実際の労働時間から1週間の平均を出して短縮を確かめます。
会社の短時間勤務制度そのものの対象や期間は、育児の時短勤務で整理しています。給付の対象になるかどうかは、会社の制度の名前ではなく、週の所定労働時間が実際に短くなっているかで見ます。
毎月の支給要件
受給資格があっても、支給されるのは次の4つをすべて満たす月だけです。
- 初日から末日まで続けて被保険者である月
- 週の所定労働時間を短縮して働いた期間がある月
- 初日から末日まで続けて、育児休業給付・介護休業給付を受けていない月
- 高年齢雇用継続給付の対象になっていない月
月の途中で退職すると、その月は対象外です。月末に退職した場合は、その月も対象になります。週20時間未満の条件で転職した場合も、被保険者にならないため対象外です。時短中に育休や介護休業の給付を受けた月があると、その月は支給されません。
いくら出るか:時短中の賃金で決まる
支給額は、時短開始時の賃金月額と、その月に支払われた賃金で決まります。時短開始時の賃金月額は、時短前の直近6か月の賃金を180で割った日額に30を掛けた額です。育休から引き続き時短を始めた人は、育児休業給付で使った休業開始時賃金日額をそのまま使います。
| その月の賃金 |
支給額 |
| 時短開始時の90%以下 |
賃金 × 10% |
| 90%超〜100%未満 |
賃金 × 調整後の率 |
| 100%以上 |
支給なし |
90%を超える月は、賃金と給付の合計が時短開始時の賃金月額を超えないように、支給率を10%から下げます。パンフレットの早見表では、賃金率95%なら支給率4.74%、98%なら1.84%です。
「その月の賃金」の数え方
パンフレットでは、その月に支払われた賃金から、臨時に支払われる賃金と、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除きます。賞与は入りません。その月を対象にした賃金でも、ほかの月に支払われたものは含めません。
数か月分の通勤手当をまとめて払う場合は、払った月以後の各月に、その額を月数で割った額が支払われたものとして扱います。給与明細の総支給額と、給付の計算に使う賃金が一致しないことがあるのは、このためです。
育休から14日を超えて空いた場合
育休が終わった翌日から数えて、時短を始めた日の前日までが14日を超える場合は、「育休から引き続き」には当たりません。このときは、時短を始めた日の前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の完全月が12か月あるかで受給資格を確かめます。事業主による時短開始時の賃金の届出も必要です。育休から引き続く場合は、この届出はいりません。
パンフレットの計算例
| 時短開始時 |
その月の賃金 |
支給額 |
| 30万円 |
20万円 |
20,000円 |
| 30万円 |
28万円 |
18,004円 |
| 496,200円 |
445,000円 |
39,121円 |
2つ目の例は、28万円が30万円の90%(27万円)を超えるため、支給率が6.43%に下がります。3つ目の例は、10%の44,500円を足すと支給限度額を超えるため、限度額から賃金を引いた額になります。
上限・下限の額
| 項目 |
額 |
| 支給限度額 |
484,121円 |
| 最低限度額 |
2,562円 |
| 開始時の賃金月額の上限 |
496,200円 |
| 開始時の賃金月額の下限 |
96,090円 |
支給限度額は、その月の賃金と給付の合計の上限です。賃金だけで484,121円以上なら、給付は出ません。計算した支給額が2,562円以下の月も出ません。
いつからいつまで出るか
給付の対象になるのは、時短を始めた日の属する月から、時短を終えた日の属する月までの各暦月です。ただし、次の日の属する月で終わります。
- 子が2歳に達する日の前日(2歳の誕生日の前々日)
- 産前産後休業、育児休業、介護休業を始めた日の前日
- 別の子のために時短を始めた日の前月末日
- 子を養育しないことになった日
会社の短時間勤務制度は、法律上は3歳になるまでが義務です。2歳以降も時短を続けることはできますが、育児時短就業給付金は2歳になる前で止まります。3歳以降の働き方の選択肢は、子育て中の柔軟な働き方の措置で確かめます。
時短前に、毎月の受取額を試算する
時短開始時の賃金月額が30万円の人について、時短中の賃金ごとに給付と合計を計算しました。
| 時短中の賃金 |
給付 |
賃金と給付の合計 |
| 21万円 |
21,000円 |
231,000円 |
| 24万円 |
24,000円 |
264,000円 |
| 27万円 |
27,000円 |
297,000円 |
| 28万円 |
18,004円 |
298,004円 |
| 30万円 |
0円 |
300,000円 |
パンフレットの支給率で計算した例です。28万円の行はパンフレットの例②の額です。社会保険料や税金を引く前の額です。
賃金が時短開始時の90%までは、賃金が減るほど給付も小さくなりますが、合計は賃金の1.1倍です。90%を超えると支給率が下がり、合計が時短開始時の賃金月額を超えないように調整されます。時短の時間を決めるときは、この合計と、保育園の送り迎えなどに必要な時間を並べて考えます。
子の年齢ごとに使える制度
給付と、会社が用意する制度は、対象になる子の年齢がずれています。
| 子の年齢 |
会社の制度 |
雇用保険の給付 |
| 2歳未満 |
短時間勤務制度 |
育児時短就業給付金 |
| 2歳〜3歳未満 |
短時間勤務制度 |
なし |
| 3歳〜小学校入学前 |
柔軟な働き方の措置 |
なし |
2歳から3歳までの1年間は、時短勤務を続けても給付は出ません。給付がなくなる月から、手取りが賃金の分だけに下がります。時短中の賃金だけで家計が回るかを、2歳の誕生日の前に確かめておきます。
転職しても受け取れる場合がある
厚生労働省の留意点の案内では、育児時短就業給付金の手続きをしていた人が転職し、新しい会社で雇用保険の被保険者になると、資格取得の確認通知書に「育児休業等給付受給可」と表示されることがあります。この人が2歳未満の子のために時短で働き、前後の被保険者期間の間に基本手当などの受給資格決定を受けていなければ、新しい会社で給付を再開できます。
新しい会社で最初からパートや短時間正社員として入り、週の所定労働時間が前の会社より短い場合も含まれます。ただし、当初の時短を始める前と比べて賃金が下がっていない場合などは、支給されないことがあります。転職先には、入社の手続きのときに給付を受けていたことを伝えます。
申請の流れ
パンフレットによると、手続きは原則として事業主が行います。
- 時短開始時の賃金の届出(育休から引き続く場合は不要)
- 受給資格確認
- 支給申請(原則として2か月ごと)
最初の支給対象月の初日から数えて4か月以内に、初回の支給申請をします。パンフレットの例では、時短を7月10日に始めたなら、最初の支給対象月は7月で、提出期限は10月31日です。本人が希望すれば、受給資格確認と支給申請を自分で行うことも、1か月ごとに申請することもできます。
令和8年8月1日からは、同じ子について育児休業給付を受けていた人は、母子健康手帳の写しなどを改めて出す必要がなくなりました。フレックスタイム制、変形労働時間制、シフト制の人の週所定労働時間の計算方法も見直されています。
受給者は初年度で45万人
雇用保険事業年報の令和7年度速報から、育児休業等給付の4つの給付を並べました。
| 給付 |
受給者 |
給付額 |
| 育児休業給付 |
609,302人 |
8,380億円 |
| うち出生時育休 |
106,931人 |
198億円 |
| 出生後休業支援 |
293,620人 |
113億円 |
| 育児時短就業 |
448,576人 |
142億円 |
育児時短就業給付金の受給者は448,576人で、同じ年に始まった出生後休業支援給付金の293,620人を上回りました。育児休業給付は初回受給者の数なので、受給者の数とは数え方が違います。出生直後の上乗せの給付は出生後休業支援給付金で、育休中の給付は育児休業給付金で確かめます。
時短を考えるときに確かめること
給付は賃金の10%なので、時短で減った賃金の全部を埋めるものではありません。たとえば時短開始時の賃金月額が30万円で、時短中の賃金が20万円になると、給付の2万円を足しても22万円です。時短の時間と給付を合わせた手取りを、時短を始める前に計算しておきます。
会社に確かめることは次のとおりです。
- 時短のときの基本給と手当の計算方法(時間に比例して減るか)
- 賞与や評価で、時短の期間をどう扱うか
- 2歳以降、3歳以降に使える時短や柔軟な働き方の制度
その会社の数字は、求人票・面接・しょくばらぼで見る
給付金は雇用保険から出るため、どの会社でも計算は同じです。会社によって違うのは、時短勤務を何歳まで使えるか、時短中の賃金や評価がどう決まるかです。応募先では、就業規則の短時間勤務の規定と、実際に使っている社員の人数を聞きます。
- 短時間勤務を、子が何歳になるまで使えるか(法律の3歳を超えるか)
- 時短中の基本給、手当、賞与の計算方法
- 時短中の評価と昇給の扱い
- 育児時短就業給付金の申請を、会社が2か月ごとに出しているか
給付は賃金の10%で、残りの減った分は会社の賃金の決め方で変わります。時短を使う前提で応募するなら、この4つを入社前に確かめます。厚生労働省のしょくばらぼでは、掲載企業の育児休業や両立支援の情報を見られます。